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# Vol.04『[実践] 理念経営Labo』（2023 WINTER 1-3）

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人と組織の可能性を発見する研究誌理念経営実践2023WINTERLabo1-3Vol.4［特集］自律･自走の組織をつくる！キャリアも働き方も自分らしくＤＩＹしよう！カインズ執行役員CHRO西田政之互いの個性を理解し持ち味を生かし合うヤッホーブルーイング代表取締役社長井手直行人生と会社の理念を繋ぎ「だれもがキラボシ」にアワーズ代表取締役社長山本雅史［特別企画］挑戦を楽しむ組織で未来を切り拓くパナソニックインダストリー代表取締役社長執行役員坂本真治職場からお客様へ幸せの輪を広げたい［松下幸之助経営塾志の実践］桶庄代表取締役社長佐藤寛之［道をひらく～私の流儀～］元ソフトボール日本代表、中学校教諭田本博子MAKEHAPPYPROJECTメンバー

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『［実践］理念経営Labo』刊行にあたって現代の企業や組織において、経営理念を経営の軸に据えることの重要性はますます高まっています。一つには、資本主義社会のあり方が問い直され、企業の果たすべき責任がよりいっそう重視されつつあることが挙げられます。たとえば、行きすぎた株主重視の反省から、企業には社会的な課題解決が一段と強く求められるようになりました。ESG（環境、社会、ガバナンス）投資やSDGs（持続可能な開発目標）への関心の高まりからも、その傾向は明らかです。また、従来の経営理念に加えて新たに「パーパス」（存在意義）を掲げる企業も数多く出てきました。一方で、政府による働き方改革の推進、雇用慣行の変化、特に最近は新型コロナ感染症拡大をきっかけとしたリモートワーク導入促進の流れの中で、働く人々の価値観においても多様化が進み、組織を統合するための経営理念の役割も見直されています。私どもPHP理念経営研究センターは、複雑化する環境においても企業や組織が活力を持って高品質な商品やサービスを創出し、持続的な発展を遂げてゆくために、新たな理念経営のあり方を追求することを年に設立いたしました。この使命はパナソニックグループ創業者で弊社PHP研究所創設者でもある松下幸之助の「思い」から発しています。松下は、昭和7（1932）年5月5日、「人々の日常生活の必需品を充実豊富にして、その生こんしん活内容を改善拡充する。松下電器製作所はこの使命の達成を究極の目的とし、今後一層渾身の力を振るまいしんい、一路邁進せんことを期す」という趣旨の自社の「真使命」を宣言し、パナソニックグループを世界へと飛翔させました。また終戦後の世の乱れ、人心の荒廃を思い知らされたところから、「繁栄を通じて、平和と幸福を実現する」（PeaceandHappinessthroughProsperity）との思いに立ち、昭和21（1946）年11月3日にPHP研究所を設立いたしました。「初めに思いありき」の言葉通り、松下のいずれの事業活動もすべて「思い」を原点とした理念経営にほかなりません。こうした考えに立ち、PHP理念経営研究センターの情報発信の場として『［実践］理念経営Labo』をこのたび刊行いたします。誌名に「Labo」（ラボ）とつけたのは、本誌を生きた「理念経営の研究室」とし、より先端的な課題への取り組みに挑みたいとの思いがあってのことです。理念経営に挑戦している経営の現場を現代的見地にもとづいて取材し、理念実践の新たな指針を創出することを目指して誌面づくりに尽力していきたいと考えています。読者の皆様には、ぜひとも「Labo」の共同研究者として情報、ご感想を賜り、明日の「理念経営」のあり方に一石を投じるべくご支援、ご指導をお願いいたしたく存じます。2022年4月PHP理念経営研究センター代表渡邊祐介

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Contents──2023WINTER1-3（Vol.4）【SpecialInterview】挑戦を楽しむ組織で未来を切り拓く競争力を高めるための意識改革、公募制、学び合いプロジェクト誌面内容がよりよくわかる特別動画を右のQRコードからご視聴いただけます。動画は随時追加予定。メルマガにてご案内します。（メルマガ登録はP43下をご参照ください）パナソニックインダストリー代表取締役社長執行役員坂本真治4特集自律･自走の組織をつくる！【Interview】キャリアも働き方も自分らしくDIYしよう！戦略人事のプロが仕掛ける組織改革【Interview】互いの個性を理解し持ち味を生かし合う自由闊達な組織に変えたチームづくりと能力発揮の仕掛け【Interview】人生と会社の理念を繋ぎ「だれもがキラボシ」にみずから考え行動する社員がゲストにSmileをもたらすカインズ執行役員CHRO西田政之ヤッホーブルーイング代表取締役社長井手直行アワーズ代表取締役社長山本雅史101418松下幸之助経営塾【志の実践】社員を輝かせる森林経営個性が有機的に繋がり、共存共栄を生み出す【塾生通信】日に新たSeries【道をひらく～私の流儀～】人間力を養いチームを支える存在にソフトボール日本代表として得た学びを次の世代へ伝える【松下幸之助の経営哲学】経営は本来成功するようにできているなぜ「自然の理法」に従うべきなのか④【経営マインド探訪】「生かされている哲学」が企業と社会に繁栄をもたらす【プロ・ファシリテーターが斬る!!組織づくり・人づくりのヒント】傾聴はなぜ難しいのか【BOOKS〈知をひらく〉～経営の着眼点～】闘魂を燃やし続けた稀代の経営者桶庄代表取締役社長佐藤寛之元ソフトボール日本代表、中学校教諭田本博子PHP理念経営研究センター首席研究員川上恒雄明治学院大学名誉教授、新潟産業大学特任教授大平浩二PHP研究所人材開発企画部長的場正晃ＰＨＰ理念経営研究センター研究員時政和輝22262832363842【特別対談再録】初めに願いありきパナソニックグループ創業者京セラ創業者松下幸之助×稲盛和夫40

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SpecialReportSpecialInterview挑戦を楽しむ組織で未来を切り拓く競争力を高めるための意識改革、公募制、学び合いプロジェクトパナソニックインダストリー株式会社代表取締役社長執行役員坂本真治さかもと・しんじ＊1982年松下電器産業株式会社入社。松下電子部品株式会社にてデバイス関連の事業責任者を経て、2013年パナソニック株式会社オートモーティブ＆インダストリアルシステムズ社常務、’14年パナソニック株式会社役員、’19年専務執行役員、インダストリアルソリューションズ社社長、’21年インダストリー社社長、’22年4月パナソニックグループの事業会社化に伴い現職に就任。パナソニックインダストリー株式会社本社：大阪府門真市／設立：2022年4月／事業内容：電気部品・電子部品・制御機器・電子材料等の開発・製造・販売2022年4月に事業会社制に移行したパナソニックグループ。デバイス領域の事業を担うパナソニックインダストリーでは、独自の企業理念を策定し、松下幸之助創業者が重んじた「自主責任経営」の実践を目指している。とりわけ、競争力を高めるために挑戦を生み出すことを重視し、リーダー層の意識改革や公募制などの人事制度改革、そして自主性にあふれる組織風土づくりに取り組んでいる。それらの狙いについて、坂本真治社長が詳しく語ってくれた。取材・構成：塚田有香写真撮影：五十嵐邦之お客様とともに未来をつくり上げる会社へ2022年4月にパナソニックが事業会社制へ移行したのに伴い、デバイス領域の事業を担うパナソニックインダストリー株式会社が発足しました。FAソリューション、電子材料、コンデンサ、EVリレーをコア事業とし、当社の強みを活かせる領域に絞り込んで、さらなる競争力の強化を目指しています。新体制への移行にあたり、私たち年前から準備を進めてきました。最初に取り組んだのが、経営陣のマインドセットの切り替えです。これまでは外へ向けて発信するのも、外からの風圧を受けるのも、パナソニック本社でした。しかし今後は各事業会社が自主責任経営を実践し、市場やお客様と直接向き合っていくことになる。そのためには当社の経営に携わる全員の意識改革が求められます。そこで外部講師を招いて講習を行ない、自分たちの責任や4［実践］理念経営Labo2023WINTER

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挑戦を楽しむ組織で未来を切り拓く権限の範囲がどう変わるのかを理解するとともに、「競合の上場企業の取締役と同じ振る舞いができているか」をみずから問い直してもらいました。次に着手したのが、ミッション・ビジョン・バリュー・行動指針の策定です。松下電器産業時代からの経営理念を表した「綱領」「信条」「私たちのじゅんぽう遵奉すべき精神（七精神）」を継承しつつ、グローバル企業として社内外に発信していくには、その理念を当社の事業形態に照らし合わせたうえで、今の若い世代や海外の方にもわかりやすい言葉に書き換える必要がありました。そこで経営陣が議論に議論を重ね、企業理念を策定しました。［ミッション］多様なデバイステクノロジーでより良い未来を切り拓き、豊かな社会に貢献しつづける。［ビジョン］未来の兆しを先取り、お客様とともに社会変革をリードする。［バリュー］「人財資産」「技術基盤」「創造基盤」「顧客志向」の4つのコアバリューと8つのバリュー［行動指針］しんし「お客様に真摯に向き合おう」「挑戦しよう、失敗から学ぼう」などの7項目さらには、当社のビジョンをスローガンに落とし込んだ「YourCommittedEnabler」も掲げました。当社が手がけるパッシブコンポーネント（受動部品）は、その名の通り、どうしても受け身になりがちな事業領域です。製品やサービスを考案し、デバイスのスペックを決めるのはお客様であり、当社はそれを忠実に再現して高品質の部品をお届けする。これが従来のビジネスモデルでした。しかし私たちが思い描く当社のあるべき姿は、より能動的です。お客様が手がける仕事の一歩先まで見通し、課題を先回りして解決できるような製品やサービスを提供する。お客様とともに未来をつくり上げていく会社でありたいとの思いをブランドスローガンに込めました。この“あるべき姿”を実現するため、当社では4年前から事業計画の立て方を大きく変えました。以前は5カ年の中期計画を毎年更新して事業計画を回していましたが、このやり方では保守的なプランになりがちでした。というのも、デバイスメーカーの場合、お客様であるモビリ業界の事業展開に対応して計画を立てることになるので、「お客様との約束」を守るために実現可能なことを計画しがちになるところに課題がありました。私たちが、ごく近い先々を見て「できることをやる会社」から、もっと先の将来を見据えて「やるべきことをやる会社」に変わるには、10年後の未来を想定し、そこを起点にバックキャストで逆算して現在をとらえる必要があるでしょう。そこで経営幹部や事業部長たちに「10年後の当社はどうあるべきか」を考えてもらい、未来のあるべき姿と現在の5カ年計画にギャップがあれば、それをどう是正するかを真剣に議論しています。すでに4年前から実施しているので、今後はさらにブラッシュアップして、より柔軟に変化対応できるよう取り組んでいきたいと考えています。DEIの実現に向け人事異動を公募制に組織風土づくりについては、PHP研究所の研修でも用いられている「成長ドライバ理論」（松山大とうぶちのりゆき学の東渕則之教授が開発）のフレームワークを参考に進めています。なかでも、企業経営を駆動する主な要素の1つであるビジネスモデルについては、この10年間でかなり思い切ったポートフォリオの組み替えを行なってきました。しかし、それを支える要素にあたる、社員の学習と成長を促す企業風土や関係性の部分については、競争力強化につながる基盤づくりが十分できたとはいえません。松下幸之助創業者が「事業は人なり」と説いていたように、どれだけ立派な企業理念を掲げ、優れた事業戦略を立てても、それを実行するのは「人」です。そこで今回の事業会社化にあたり、経営の土台となる人事戦略の強化を掲げました。これまで人事戦略については、「本社とその人事部門が考えるもの」との認識が少なからず社内にありましたが、それを自分事として本気で考えたとき、改革すべき点が山ほど見えてきたのです。まず人事制度においては、国内拠点の基幹職（部長級、課長級）と主務職（係長級）を公募制にすることを新たに決めました。これを「若手登用のため」と報道するメディアが多かったのですが、公募制導入の真の狙いは別のところにあります。1つは、幹部登用におけるジェンダーギャップの解消です。ダイバー［実践］理念経営Labo2023WINTER5

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シティ、エクイティ＆インクルージョン（DEI：多様性、公平性、包括性の実現）の時代にあって、当社は女性幹部職が少ないという課題を抱えています。従来の人材登用の仕組みは、会社が指名した社員に半年から10カ月程度のタフな集中研修を受講させ、最終選考で通過した人を次のステージに上げるというものでした。しかし、家事や育児の負担が女性に偏りがちな日本では、たとえ幹部候補と目されても、選抜プロセスの負荷が大きいために辞退せざるをえない女性も多いのが現状です。ならば指名制ではなく、基幹職、あるいは主務職に値する能力があると自覚する人がみずから手を挙げる制度にすれば、誰でもチャレンジしやすくなる。これが公募制を導入した狙いの1つです。もう1つの狙いは、年齢差別の解消です。公募制に年齢制限はなく、50代の方が課長職に手を挙げてもOKです。職務にふさわしい能力を身につけた人なら、年齢を問わず誰もが挑戦できる体制づくりが目的であって、若手の登用だけが狙いではありません。この公募制についても1年以上前から準備を進め、主務職以上のジョブ・ディスクリプション（職務記述書）を作成して、職務内容を厳密に定義しました。加えて、いつでもどこでも利用できる学習のためのプラットフォームエブリ）」を開設し、好きな時間に自宅などからリモートで研修を受講できる仕組みも整備しました。仮に課長職になるのにいくつかのコースを修了することが条件だとすると、それを半年間でクリアしてもいいし、数年かけて学んでもらっても構いません。あるいは他職種へのキャリアチェンジを希望する人が、それぞれの職種で求められる能力を身につけるために各研修を受講することもできます。一人ひとりが思い描く将来設計を実現するための環境は整備できたので、今後は新しい人事制度や研修制度を社内に浸透させて、実際に行動する人をいかに増やせるかが勝負だと考えています。人事部門では「ファーストペンギンファースト」のスローガンを掲げ、「挑戦する行動を後押しし、支援する文化を目指します」と社内外に向けて明確に発信してくれています。リスクを恐れず未知のことに挑戦する精神の持ち主をリスペクトし、周囲も一緒に挑戦する組織にしたい。その思いがこの言葉に込められています。学び合いのプロジェクトで変革を生み出す組織へもともと当社では事業会社化する前から、社員が自主的に学び合う組織風土づくりを積極的に進めてきました。その象徴となる取り組みが、今年で5年目を迎える「MAKEHAPPYPROJECT」（メイクハッピープロジェクト：MHP）です。オンラインを軸とした学び合いの活動を通じて、新しい仲間とのつながりや個人が成長できる機会をつくっています。この活動がチャレンジや変化を楽しむ風土を育み、当社が変革を生み出す組織に進化するための土台になると考えています。私がMHPに一番期待しているのは、「知る」効果です。組織を超えた仲間との交流を通じて、当社にはどのような部署や仕事があるのかを知ることができます。またプロジェクトには役職者も数多く参加しており、役員や事業部長、ビジネスユニット長などが登場して、社員たちとフランクな会話を交わす場も設けられています。すると社員は役職者の人となりや価値観を知ることができて、お互いのあいだにある垣根が低くなる。仲間を知り、上司を知り、事業を知るには、大変有効な取り組みだと感じています。そしてなにより、参加するメンバーたちには活動を心から楽しんでほしいと思っています。プロジェクトを継続し発展させていくには、一人ひとりが自分で活動の意義を見出し、学びや交流を楽しむことがとても重要だからです。私も経営トップとして全面的に協力し、皆さんがハッピーになれるように今後も活動を盛り立てていくつもりです。6［実践］理念経営Labo2023WINTER

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挑戦を楽しむ組織で未来を切り拓く職場からお客様へ幸せの輪を広げたい挑戦を楽しむ組織づくりに向けての社員主体の取り組みとして、坂本社長が期待を寄せる「MAKEHAPPYPROJECT（メイクハッピープロジェクト）」。どのように活動を行なっているのか、プロジェクトの中心メンバーに取り組みとその狙いや思いをうかがった。取材・構成：佐々木賢治写真撮影：五十嵐邦之折田真也さん（企画センター経営企画部MAKEHAPPY風土活性課）むらこそ村社智宏さん（企画センター経営企画部MAKEHAPPY風土活性課）こうだ好田慎一さん（メカトロニクス事業部パワーデバイスビジネスユニット技術三部兼MAKEHAPPY風土活性課）――このプロジェクトはどのようにして生まれたのでしょうか。村社2018年にパナソニックグループが100周年を迎えた際、中堅社員から社内組織風土をよくするプロジェクトを立ち上げたいという提案が出されたのが始まりです。従業員のいろんな何かをハッピーにしようという思いから「MAKEHAPPYPROJECT」と命名されました。私年目の2020年からプロジェクトメンバーとなり、現在リーダーを務めさせてもらっています。当初は有志が仕事の合間に集まって活動していましたが、2020年からは本業以外の仕事でもパナソニックグループ内で複業として認められる社内複業制度を活用しています。本業とは別に業務時間の20%までをプロジェクトにあてることが可能となり、仕事として取り組めるようになりました。さらに2022年10月からプロジェクトが部署化され、私と折田さんは専任で活動しています。好田現在、私も含めて社内複業のメンバーが4名、他に経営企画・人事・ブランドの各部署からの専門職名、合計9名です。社年なので、毎年メンバーが入れ替わります。村社メンバーにはプロジェクトでの経験を職場に持ち帰ってもらいます。また、毎年新たなメンバーに加わってもらうことで、多様性を活かし、活動の輪が広がることを目指しています。――活動はどのような内容ですか。村社基本的には社内外から著名な講師を招いて講演していただいたり、何かのテーマについて対談したりする、というのが主な活動です。ハッピーに満ちた組織風土づくりを目指していくために、イベントのテーマを決めるにあたって私たちがヒントとしている考え方が2つあります。1つは、慶應義塾大学の前野隆司教授が唱えられている「幸せの4つの因子」（やってみよう・なんとかなる・ありのままに・ありがとう）。もう1つは、『パーパス・マネジメント』（クロスメディア・パブリッシング）の著者である丹羽真理さん（アイディール・リーダーズ株式会社共同創業者）が挙げられている要素」（存在意義・関係性・自分らしさ・心身の健康）です。これらにもとづいて、パーパスにかかわる活動を「はぴ学」、関係性についての活動を「はぴ会」、自分らしさの活動を「はぴ色」、心身の健康に関する活動を「はぴ楽」と4つのジャンルに分けて、イベントを提案しています。［実践］理念経営Labo2023WINTER7

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――各ジャンルでテーマはどのようにして決めているのですか？折田基本的には従業員へのアンケート結果をもとにプロジェクトメ因子」「仕事に要素」の中から企画しています。各メンバーが企画書を作成し、メンバー間でプレゼンして全員の賛同が得られたら、その企画を進めるという具合です。村社仕事や経営において私たちが実際に抱えている課題と、参加者の皆さんがやってほしいと望んでいること。それらの重なっている部分を重視してテーマに取り上げるように心がけています。外から見える姿はゆるい雰囲気を醸し出していますが、イベントのテーマ決めにはすごく時間をかけて、丁寧に取り組んでいます。企画書を毎回入念に作成し、外部講師とも検討して内容をさらに練ってもらったりもします。折田そういった裏の努力は見えないようにしつつ、従業員に普段の業務よりは少し気楽に参加してもらいたいという思いもあります。村社テーマ選びでもう1つ心がけているのは、パナソニックインダストリーの行動指針のどの部分に沿っているかを意識することです。また、パナソニックグループの「私たちの遵奉すべき精神（七精神）」には「感謝報恩の精神」がありますが、そこでは感謝が幸福につながると説かれています。私たちの活動の目指すところそのものです。最近ではコロナのため、「七精神」を職場で唱和する機会も少なくなってしまいました。私たちのプロジェクトを通してその理念を学べるように、テーマ選びにおいても心がけています。――全体の参加者の数は、どのぐらいですか。村社参加者数は年々増えており、2022年には延べ4万人を超えました。当社だけでなく、約半数が他の事業会社から参加していただいています。年代も幅広く、正社員に限らず派遣社員の方も活動に共感して、参加してくださっています。他の事業会社の方には「いいね」と言ってもらい信頼性を高めるウィンザー効果（第三者発信で情報の信頼性が高まる心理効果）を狙っており、パナソニックグループ全体もよりハッピーになってもらいたいと望んでいます。事業会社化で組織は別々になりましたが、「幸せの、チカラに。」というグループスローガンを掲げているわけですから、目指す姿で共通する部分も大きいのです。ちなみに、当社社長の坂本さんはイベントに度々参加し、オンラインでは書き込みもして応援してくれています。好田人気のある企画は、リアルタイムの参加が500～600人ぐらいで、アーカイブは1000回を超えるほど再生されています。アーカイブの充実は、参加者が増えた大きな要因の1つです。――活動の輪が順調に広がっているようですね。この活動によって企業風土によい変化は出てきましたか。村社社内のアンケート調査から、このプロジェクトに参加している人はエンゲージメントが高いという結果が出ていています。折田私の周りにも賛同してくださる方が増えてきており、たとえば組合のショップから、イベント講師のスタジオでの撮影の様子。グリーンバックにCG画像が映し出される著書を店頭に置いて販売したいと要望を受けるようになりました。当社のDEI推進室や健康経営事務局などにも賛同してもらえ、連携してイベントを行なっています。――最後に今後の抱負をお聞かせください。村社現在、当社での参加率は国内全体の30%ぐらいです。まずはそれを100%に持っていきたいですね。そして、今後の展開として海外の事業所でも活動が広がっていけばと考えています。私たちが目指しているのは、従業員の皆さんのウェルビーイングの向上であり、「ハッピーな職場」です。ハッピーは人から人へ伝染するものなので、まずはプロジェクトメンバー自身がハッピーを感じられることが大切です。メンバーのハッピーが従業員の皆さんに伝染し、そしてまたそのハッピーがお客様へと広がり、世の中をハッピーで溢れさせる。その原動力となっていければ、まさに「幸せの、チカラに。」という状態を実現することにつながるのではないでしょうか。私たちがイベントの締めに使っている日本の素敵な言葉「お幸せに～」を、もっと日常的に使う言葉として浸透させていきたいですね。L8［実践］理念経営Labo2023WINTER

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［特集］自律･自走の組織をつくる！理念経営を実践する大きなメリットの1つは、理念を掲げることによって社員が共通の目標を理解し、まいしんじょういかたつその実現に向けて一丸となって邁進することにある。その点、かつては上意下達のトップダウンで目標が与えられれば、それなりに実行力が発揮された。だが、「ＶブーカＵＣＡ」と呼ばれる予測困難なこの時代にあっては、中長期の目標設定がむずかしく、実行を担う組織やチームのあり方が問われる。社員一人ひとりがみずから考えて行動できる「自律・自走の組織」によって、複雑で変化の激しい経済環境を切りひらくことが成長のカギとなる。そこで今回は、理念経営を実践し、社員がイキイキと活躍している企業の事例を通して、組織の自発性を育む方法について考えてみたい。

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Interviewキャリアも働き方も自分らしくDIYしよう！戦略人事のプロが仕掛ける組織改革株式会社カインズ執行役員CHRO兼人事戦略本部長兼CAINZアカデミア学長西田政之にしだ・まさゆき＊1987年に大学を卒業後、証券会社に就職。米国のMBA留学を経て、系列の投資会社でファンドマネージャーや外資系金融機関で金融法人営業等を経験する。2004年から人事コンサルティング会社マーサーへ転じ、人事・経営分野へキャリアを転換。同社取締役COOを経て、’15年にライフネット生命保険へ移籍して取締役副社長兼CHROに就任。’21年6月より現職。一般社団法人日本CHRO協会理事、日本アンガーマネジメント協会顧問を務める。株式会社カインズ本社：埼玉県本庄市／創業：1989年／事業内容：ホームセンターチェーンの経営ホームセンターのリーディングカンパニーであるカインズは、日本最大のHR（HumanResources）ネットワーク「日本の人事部」が主催する「HRアワード2022」企業人事部門にて最優秀賞に選ばれた。人材マネジメント改革の旗振り役は、2021年6月に同社執行役員CHRO（最高人事責任者）に就任した西田政之氏だ。個の主体性を引き出す人事戦略「DIYHR®いっきかせい」を策定、一気呵成に推し進めて、半年後にはキャリアを自律的にじょういかたつ割に向上するなど、著しい成果を上げている。どのようにして上意下達の根強い文化から、自律型組織に変貌することができたのか。西田氏にその秘訣を語っていただいた。取材・構成：時政和輝写真提供：カインズ10［実践］理念経営Labo2023WINTER

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特集自律・自走の組織をつくる！個の力をいかに引き出すか「個が主役の時代」。今、様々な方面から、この言葉が飛び交うようになりました。まわりを見渡すと、社会に役立つ事業やイノベーションは、一人の人間の強烈なパッションによって生まれています。イーロン・マスク氏等はその代表ですね。加えて、世界経済フォーラム議長のクラウス・シュワブ氏は、これからの時代は資本主義に代わって、イノベーションを起こす起業家精神や才能が重要になる才能主義（タレンティズム）に転換するだろう、と予測しています。私たちがいる小売業でもこのことを実感します。これまでは、商材の機能や価格で十分に勝負ができました。しかし、今は個人の承認欲求が高まってニーズが多様化し、その一つひとつに応えていくことは極めて困難です。また、同時に働き手も、自己成長できる職場環境かどうかといった点を重視するようになりました。こうした状況を受けて、カインズ年から、「次のカインズを創る」ための3カ年中期経営計画「PROJECTKINDNESS」をスタート、大規模な改革に着手しました。私はその中で人事領域を担当し、個の力を引き出す自律型の組織づくりに取り組んでいます。私はかねてから、「自律」という言葉に注目してきました。「自律」とは、一般に「自分のことは自分でやっていくこと」と理解されます。しかし、私はもう一歩踏み込んで、「自力と他力のバランスを自分で決めること」だと考えます。自分でできることは限られている。だから、他者の力を借りる必要がある。それには、自分は何ができて何ができないのか、まず自分を知る「自己探索」が肝要です。仏教の禅の世界では「己めい明」といい、最新の経営学ではインこじ事きゅう究ド人の経営学者サラス・サラスバシー氏が、「エフェクチュエーション」という理論を提唱しました。「エフェクチュエーション」とは、優れた起業家に共通する思考様式や行動プロセスを体系化したもので、その中に徹底した「自己観察」があると指摘されています。そこで私は、個が主役になる時代に、それぞれが自己を探索し、それを組織が支援するような人事のあり方を模索しました。「DIY」を中心に据えた人事戦略2021年6月、私が執行役員CHROに就任して最初に取り組んだのは、現場の聞き取り調査です。実は、入社する2カ月前から、顧問契約を結んで店頭に立ちました。日中はメンバー（従業員）の働きぶりやお客様の様子などを観察し、閉店後はメンバーへインタビューして、現場の情報を集めました。カインズは長年、チェーンストア理論による本部主体のマネジメントの中で培われた上意下達の典型的なピラミッド型組織でした。上からの指示を完璧に遂行する実直さは目を見張るほどですが、そのために社員が主体的に志向し行動するには難しい環境がありました。また、急に成長したことで、現場から本部に人材が流れ、現場では玉突き人事が頻発し、疲弊していました。どうすれば上意下達の文化から抜け出し、メンバーみずからが夢や目標を掲げ、やりがいを持って働けるようになれるのか。この問題を解く鍵が、現場を体験する中で見つかりました。それが、「DIY」（DoItYourself）です。一般的にDIYは「日曜大工」を意味しますが、カインズでは、ものづくりを通して「くらしをより良く楽しくする」と幅を持たせています。店舗には、「カインズ工房」という気軽にDIYを体験できるスペースがあり、初級者から上級者まで、広くサポートする体制ができあがっています。DIYは、いわばカインズ文化の底流にあるものです。それならば、私たちは「人事のカインズ工房になろう！」と発想しました。人事全員がメンバーに寄り添いながら、なりたい自分になることを全力でサポートしていくことを目指して打ち出したのが、新人事戦略「DIYHR®」です。「自分らしい働き方」をキーワードに、次の５つの分野から成り立っています。①DIYCareerPath®②DIYLearning®③DIYCommunication®④DIYWorkstyle®⑤DIYWell-being®①「DIYCareerPath®」は、キャリアを自分らしく。これまでは店長になることが主なキャリア目標でしたが、今ではデジタル、広報、商品開発など、本部を中心に140以上の職種が存在しますので、自分がやりたい仕事を選べる社内公募型の異動制度を設けました。②「DIYLearning®」は新たな［実践］理念経営Labo2023WINTER11

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学びを自分らしく。キャリアパスをデザインし、実現するための学びの場「CAINZアカデミア」をスタートしました。なかでも次の３つの公募型研修は人気があります。リベラルアーツが学べる「カインズ白熱教室」は、妙心寺退蔵院の松山大耕さんや著作家の山口周さん、クリエイティブディレクターの佐藤尚之さんなど、著名な方を招いての特別講義が好評です。また、30年後の未来を構想し、そこからバックキャスティングして新たな発想を生み出す「SF思考ワークショップ」は、自分の枠から飛び出す感覚が得られるので非常に刺激的です。そして、「ビジネススキル研修」では、大手経営コンサルティングファームであるアクセンチュアの現役コンサルタントから、ロジカルシンキングやプロジェクトマネジメントなど、即実践で使えるスキルが学べます。これらの研修は、誰でも見られるように動画をすべてアーカイブ化しました。知的好奇心をくすぐる質の高い学びは、自学を促し、キャリアの選択肢を広げてくれます。人事メンバーには、繰り返し「みんなで『DIYHR®』のエバンジェリストになろう」と伝えている質の高い対話が自律を促す続いて③「DIYCommunication®」は、コミュニケーションを自分らしく。1on1（ワンオンワン）やコーチングをコミュニケーションのベースとして、社内外の交流と相互理解を促す仕組みを整備します。特に1on1を通してメンバーの自己探索をしっかりとフォローできるように考えました。「何のために生きるのか」「どこへ向かいたいのか」「何をやり遂げたいのか」。一人ひとりにこうした哲学的な問いかけをして、自分の思いに気づくよう促します。加えて、社内での情報共有を円滑にするため、社内ラジオ「らららジオ」をスタートしました。文書では、忙しくてなかなか読めないというメンバーの声がきっかけです。仕事紹介やお客様からの声、産業医の健康相談コーナーのほかに、私が社外の経営者と対談する番組「CHROTALKLIVE」があります。反響が大きいのは、新店舗や改装オープン日の朝礼のライブ配信。店長は感極まって声を詰まらせながら、メンバーに感謝の気持ちを伝えるのですが、その感動が臨場感を持って全社に届けられます。④「DIYWorkstyle®」は、勤務スタイルを自分らしく。ライフイベントに応じた自由な働き方ができる仕組みづくりです。副業、兼職、時短勤務などのプラットフォームづくりを進めています。キャリアパスを広げるために、社内インタ－ンや社内副業の制度も整えました。最後に⑤「DIYWell-being®」は、心身の健康を自分らしく。身体のケアはもちろん大事ですが、まずは心理的安全性の確保に力を入れています。挑戦に失敗はつきものですから、再チャレンジできるような職場環境を目指します。ここであげたのは一部の施策ですが、自分のキャリアについて主体的に考え、学ぼうとし、また上司や人事メンバーがフォローしていけるような土台を構築しています。人事全員がエバンジェリストにこのような多岐にわたる人事戦略を実施するためには、まず人事組織自体が変わる必要があります。以前の人事部には28人が在籍していましたが、パート、アルバイトも含めた全従業員数が約2万8000人であることを考えると、過小組織でした。これでは当然、人事は受け身にならざるをえず、人事戦略を練るどころではありません。そこで、人事メンバーを100人に増やし、コーポレート本部にあった人事部を独立させて、「人事戦略本部」としました。新たな制度や仕組みを継続的に立案し、能動的に働きかけます。そしてその中に、HRBP（HRビジネスパートナー）を設置しました。ＨRBPは、事業部門の責任者のパートナーとして人事面から事業をサポートします。いわば各部の人事部長であり、人事戦略を浸透・実行する役割を果たします。組織を拡充すると同時に、人事メンバーには、私たち自身がまず自律12［実践］理念経営Labo2023WINTER

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特集自律・自走の組織をつくる！的であろうと訴えました。「人事の役割はメンバーの挑戦と成長を促すことだ」「理念浸透を私たちが率先してやろう」「みんなで『DIYHR®』のエバンジェリスト（伝道師）になろう」等と。組織の大変革しで、人事メンバーには負担を強いてしまったかもしれませんが、変化への期待が大きかったこともあり、大方の賛同を得てスムーズに進めることができています。その効果として、人事戦略本部の朝会に変化がありました。人事メンバーの発案で、曜日ごとに「DIYHR®」の５本の柱から一つをテーマに交流しよう、と動きが生まれました。たとえば、「DIYWell-being®」がテーマのときは、本部メンバーにいるヨガのインストラクターを招いてみんなでヨガをやったり、「DIYCommunication®」がテーマのときは、聴覚障害のあるメンバーが講師になって手話を学んだりします。他にも情報共有として、プロジェクトの協力依頼やメンバーへの賞賛はもちろんですが、それらにとどまらずグルメや趣味についての情報交換を行なったりもします。メンバーからの賞賛や刺激が、新しいことに挑戦する動機づけにもなって、メンバー発案の施策が生まれるようになりました。それまで、暗い雰囲気で避けられがちだった人事ですが、周囲からは「今の人事は明るくなって楽しそう」と嬉しい反響があったり、店舗巡回の際には「人事に異動したい」という声を多く聞くようになりました。このように、正しいディレクションと小さな勇気の後押しがあれば、人と組織は変わっていけると、店舗巡回時の1on1を通して、従業員一人ひとりに寄り添い向き合う自信を持つことができました。圧倒的な施策の数とスピード感「DIYHR®」を実施して半年後には、その効果が数字にも表れてきました。自分でキャリアを考える人は全体の8割に増加し、公募型研修の受講時間はのべ6500時間を超え、1on1の実施率は6割に上ります。正社員のeNPS（従業員エンゲージメント指標）は4ポイント改善しました。社内ラジオの聴取率は25％ですが、他社で導入する多くが1桁であるといわれていることを考えると、驚異的な数字です。これらの施策が評価されて、「日本の人事部」が主催する「HRアワード2022」企業人事部門にて、最優秀賞に選んでいただきました。高い評価を得られた理由としては、人事の全領域をカバーする圧倒的な施策の数とスピード感だと思います。それらに加えて、人事全体がメンバー一人ひとりに寄り添って、徹底した信頼づくりに励んでいます。「マブダチ作戦」と呼んでいますが、キャラバン隊を組んで、各店舗に理念や制度の説明と対話をしに回りました。私自身、できる限り店舗を巡回し、パートやアルバイトも含めて1on1を行なっています。1店舗につき10人ぐらいで、3、4店舗を回りますので、1日で30～40人と話をすることもあります。1人わずか5～10分程度ですが、この時間が非常に濃厚です。１回でも話をすれば、「もう“マブダチ（親友）”だから、メールでもSNSでも何でも相談してね」と伝えています（笑）。すると、なかには、「現場で働く私たちの声を役員が聞いてくれて嬉しい」と涙ぐむ人もいました。カインズを支えているのは、パートとアルバイトのメンバーです。彼ら彼女らの声をないがしろにして、会社は発展しません。こうした地道な取り組みのおかげで、「今回の改革は本気だ」と現場に伝わって、前向きに受け止めてもらえたのだと思います。これからもメンバーへの発信・傾聴・対話を重ねていけば、一人ひとりが主役となって、カインズらしい組織文化をつくり上げることができると信じ、まいしん邁進していきます。L［実践］理念経営Labo2023WINTER13

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Interview互いの個性を理解し持ち味を生かし合う自由闊達な組織に変えたチームづくりと能力発揮の仕掛け株式会社ヤッホーブルーイング代表取締役社長井手直行いで・なおゆき＊1967年生まれ。福岡県出身。国立久留米工業高等専門学校卒業。大手電気機器メーカー、広告代理店などを経て、’97年ヤッホーブルーイング創業時に営業担当として入社。地ビールブームの衰退で赤字が続く中、ネット通販業務を推進して2004年に業績をＶ字回復させる。’08年社長に就任、以後、「よなよなエール愛の伝道師」として活躍。ニックネームは「てんちょ」。株式会社ヤッホーブルーイング本社：長野県軽井沢町／創業：1997年／事業内容：クラフトビール製造および販売「よなよなエール」「インドの青鬼」「水曜日のネコ」などの個性的なクラフトビールで熱量の高いファンを獲得し、19期連続増収・過去最高益を更新しているヤッホーブルーイング。スタッフがイキイキと活躍する自由闊たつ達な風土で知られ、有名企業からも続々と視察に訪れる。だが、かつてはまったく逆で、自律・自走の組織とはほど遠い状態だったという。はたして、どのような取り組みによって組織を変えることができたのか。低迷期から牽引してきた井手直行社長が、赤裸々に語ってくれた。取材・構成：池口祥司写真・資料提供：ヤッホーブルーイングかっ呼びかけても無反応の“お通夜みたいな朝礼”「こんなに楽しいイベントに参加できて本当によかった。スタッフの皆さんもイキイキとされていますね」ファンイベントを開催すると、そんなふうに言っていただけることが多くなりました。当社のスタッフが人生に幸せを！」の理念を大切にして、クラフトビールを楽しむ文化の普及に力を合わせてくれているからこそいただけるお声でしょう。今では「働きがいのある会社」ランキング（GPTW）の年連続で選出されるほどに、皆で盛り上がってチャレンジできる企業文化が定着しました。しかし、ここまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。私が入社した1997年当時、親会社である星野リゾートが自律型組織をつくって経営改革を行なっていたのとは対照的に、当社は「上司の命令を受けて部下が動く」という、昔ながらの組織文化。「地ビールブーム」のあいだはそれが問題とし14［実践］理念経営Labo2023WINTER

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特集自律・自走の組織をつくる！て表面化することなく右肩上がりに成長していましたが、ブームが去ってからが大変でした。売れ残った製品を廃棄する日々で、モチベーションは著しく低下。現場の責任者が辞めてしまうなど社内は混乱を極め、ぎしんあんき誰もが疑心暗鬼となり組織は機能不全の状態に陥ってしまいました。その後、2004年から本格的に取り組んだインターネット通販事業でなんとか息を吹き返したものの、業績に比例して組織もよくなったかといえば、そうではありませんでした。毎日ネット注文が殺到し、私は張り切って対応していたのですが、他のメンバーの反応は「おかげで残業や休日出勤が増えて困る」という冷ややかなものだったのです。一事が万事そんな具合でした。たとえば朝礼では私が一方的に話すばかりで、業務対応の協力などを呼びかけても無反応。何か話してほしいと言っても、返ってくるのは「特にありません」「通常業務です」の二言だけ。まるで“お通夜みたいな朝礼”でした。衝突を乗り越え強いチームをつくるどうすれば、みんながもっと同じ方向に向かって力強く進めるようになるのか。まず思いあたったのは、経営理念をつくることでした。誰もはらが肚落ちするような理念をつくりたいと考えあぐねる中で偶然目にしたのが、創業以来の看板製品「よなよなエール」で使っていた「ビールに味を！人生に幸せを！」というキャッチフレーズ。スタッフにもある程度浸透しているこのメッセージをベースにして、「画一的な味しか①フォーミング（同調期）生産性・チーム力メンバーは様子見で指示待ち（他律）なかった日本のビール市場にバラエティを提供し、新たなビール文化を創出する。そして、ビールファンにささやかな幸せを提供する」というミッションをつくり上げました。そして、もう一つ取り組んだのが「チームビルディング」研修。チームを組んでロープやフラフープを使ったアクティビティに挑戦し、全員で力を合わせることを学ぶ約3カ月のプログラムです。チームビルディングにおいては、途中で必ずメンバー同士の意思疎通こんとんで問題が生じ、衝突が頻発する混沌期（ストーミング）を迎えます（図表１参照）。でも、それは想定内のこと。そこであきらめてしまうのではなく、じっくり時間をかけて乗り越えることがとても重要です。その過程で、メンバーはお互いの個性や強みを理解し合い、それらを生かしながらチームとして物事を成し遂げることに喜びを感じるようになります。各々に自律性や協調性が芽生え、エンゲージメントの高いチームへと生まれ変わるのです。ミュニケーション量の壁多くの組織では、この混沌期の段階で衝突を恐れて改革をやめてしまいます。それを乗り越えた先に、大きな成果があるにもかかわらず。た図表1チームの成長ステージ②ストーミング（混沌期）各自の本音の意見が出て衝突が頻発。生産性が低下（ストーミングの谷）コミュニケーション質の壁③ノーミング（調和期）各人の強みを生かした役割分担が明確になり成果が出る。成功体験の共有で自分たちのルールができる（自律）フラフープを使ってチームワークを高めるアクティビティの様子とえば大きな石を押して動かそうとする場合でも、動き出すまでのところが一番しんどいですよね。でも一旦動き出したら勢いづいて進むので、そこが踏ん張りどころです。だから私は、他のスタッフから「繁忙期で人手が足りない」と不満が出ても、チームビルディングの研修をやめませんでした。多少の問題はいろいろと起きるかもしれないけれども、やるなら1日でも早いほうが絶対にいい。そう信じて、結果が出るまで辛抱強く続けていきました。④トランスフォーミング（変態期）コ納あうんの呼吸で動得感けるようになる。の自分の役割を果たすことがチームへの貢献につながり、帰属意識が高まるチーム壁グループ組織に進化をもたらしたブレークスルーポイントその後も私は、ビジョンに合った行動を取ることやチームで働くこと［実践］理念経営Labo2023WINTER15

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について、ことあるごとにメッセージを伝え続けました。それを本当の意味でメンバーが肚落ちする大きなきっかけとなった出来事があります。2010年に都内のビアパブで開催したファンイベントです。今では5000人規模のイベントも開催していますが、当時の参加者は40人程度。それでも、北海道から参加してくださった方もいれば、関西から夜行バスで駆けつけてくださった方もいて、会場はものすごい熱気に包まれていました。イベントはビールのテイスティングやクイズ大会で大盛り上がり！ただし、収支ははっきり言って赤字です（笑）。それでも、お金以上に大きな収穫がありました。「楽しい！」と喜んでくださるお客様の笑顔に接することで、スタッフが自分たちの仕事の意義を実感する機会となったのです。それまで私が幾度となく口で説明してもなかなか伝わり切らなかった理念の意味が、実践を通じて一人ひとりの胸の中にすっと自然なかたちで浸透していったように思います。このイベントは、私たちの組織が進化する“ブレークスルーポイント”となりました。自分たちで考えたイベントでファンの方が喜んでく2019年春のイベントにて（前列中央：井手氏）ださって、それを見た自分たちも嬉しくなる。そして、もっと多くのファンに喜んでもらえるように、製品づくりやイベントの企画に取り組む。それによって、より多くのファンに喜んでもらえる――。つまり、ファンの輪が広がるとともに、私たちスタッフも成長していく流れが生まれたのです。そのプロセスは、上向きでらせん状に広がっていくようなイメージになります。自律、自走できる組織になるための仕掛けでは、実際にどうやってスタッフや組織の成長を生み出していくか。それにはスタッフの自律や自走を支える仕掛けが必要だと考えています。まず、スタッフが自分の個性や持ち味を存分に発揮し、意欲的に挑戦できる仕組みが欠かせません。そこでフラットな組織づくりを進めて、社長以外の責任者はディレクターだけとし、やる気があれば新卒1年目以外は誰でもそれに立候補して挑戦できるようにしました。社内プロジェクトについても同様で、自分のコア業務以外の好きなプロジェクトに年間勤務時間の2割までを目処に参加してよいことにしています。また、一人ひとりが自分の強みを知って生かすために「クリフトンストレングス・テスト」（自分の強みを診断できるウェブサービス）を実施。それによって判明した特徴を個性・持ち味として各自が首から下げている名札にも明記しており、チームメンバーの相互理解とチーム力向上に役立ててもらっています。一方で、こうした能力発揮の仕組みを担保する基礎として必須なのが、自由闊達に意見が言える風土づくり。つまり、コミュニケーションの量と質の両方を高めることです。たとえば、“お通夜みたい”だった朝礼は、今では信じられないぐらいにスタッフの笑顔であふれかえっています。どうしてそうなったかというと、毎日30分間みんなで「雑談」をするようにしたのです。仕事とは関係のない日常生活での事柄などを一人ひとりが話して、みんなで感想を言い合ったりします。ただそれだけのことですが、お互いの理解から職場内での信頼関係が深まり、イキイキと働くことにつながります。また、お互いに親しみを持ち、気軽に意見を言いやすくするため、スタッフはみんなニックネームで呼び合うようにしているのも当社の特徴です。私はネットストアで店長をしていた経緯から、ニックネームは「てんちょ」。社内はもちろん、社外の人からもそう呼ばれたりします。ちなみに部署名も親しみが持てる名称にしていて、ファンイベントの企×FAN団」、人事・総務は「ヤッホー盛り上げ隊」、物流は「ハッピーお届け隊」などと呼んでいます。他にもコミュニケーションを活発にする仕掛けはいろいろとあって、整理すると右の図表２のようになります。会社として利益を上げ、成長を続けるには上半分のところが重要ですが、それには下半分のものが欠かせないと私たちは考えています。16［実践］理念経営Labo2023WINTER

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特集自律・自走の組織をつくる！というのも、たとえば会議の場で、会話もしたことがない人から急に「いや、その考えは違うと思います」と言われたら、あまりいい気はしないですよね。でも、いつもコミュニケーションが取れているメンバー同士であれば、発言する側も「こんなことを大切にする人だから、こういうふうに言ってみよう」と考えるでしょうし、受け取る側も「こういう意図で言ってくれているんだな」とわかるのです。当社ではリアルな会議の場だけでなく、イントラで公開する議事録にもコメントできるようにしているので、どの会議にも活発に意見が寄せられます。それはやはり、日頃からコミュニケーションがしっかり取れているからこそだといえるでしょう。評価は行動に注視してフィードバックするスタッフの自主性を引き出すうえで、評価制度も重要だと考えています。当社では、プロセス重視の成果主義で評価しています。たとえば、本社のある軽井沢のような観光地では、その年の天気で人出が大きく変わり、地域全体の売上も左右されます。でも、この「天気」は運・不運以外の何ものでもありません。ですから当社では「成果＝行動×運・不運」ととらえ、行動をしっかり注視したうえで評価するようにしています。また、上司によって評価の目線にズレが生じないように「目線合わせ委員会」という場を設け、そこで評価者同士が各々のチームメンバーの評価をチェックし合うようにしています。たとえば、部下のプロジェクトでの取り組みを上司がよく知らない場合でも、他の評価者がしっかりフォローできるので、公正な評価になります。もちろん、ただ単に評価するだけでなく、なぜその評価だったかという理由もスタッフ本人にフィードバックします。「あなたはこのシーンでＡの行動を取ったけど、Ｂの行動を取れるようになれば、さらにパフォーマンスが上がって、いい成果につながるはずだよ」と、できるだけ具体的に伝えるようにしています。このフィードバックは、ディレクター選出の際も同じです。選出されなかった人に、投票結果だけでなく他のメンバーからのアンケート結果もできる限り伝えることで、納得感を醸成し、次のチャレンジに生かせるようにしています。図表2よなよなエール流コミュニケーションマップ進化し続けて10年後には世界で評価される組織へ“お通夜のような朝礼”をしていた頃から見れば、スタッフがみんな自由闊達に意見を言い合い、みずから考えて動けるようになったことは、とても大きな成長です。しかかんかんがくがく侃々諤々、議論！ワイワイガヤガヤ、気軽！笑顔が絶えない雑談朝礼（右：井手氏）し、私は現状を維持するのではなく、さらに進化させていきたいと考えています。組織は成長する過程で様々な課題に直面します。当社もこれからもっと大きな組織へと成長していく過程で、きっと新たな課題に直面することになるでしょう。けれども、私はまったく心配していません。ここ10年ぐらいで国内ではそれなりに評価される組織になれたということは、もう10年あれば世界でも評価される組織に進化できるのではないかと、大きな希望を持っているからです。お客様の笑顔のために、楽しみながらチャレンジを続けられるチームメンバーとなら、必ずそれを達成できると私は信じています。L［実践］理念経営Labo2023WINTER17

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Interview人生と会社の理念を繋ぎ「だれもがキラボシ」にみずから考え行動する社員がゲストにSmileをもたらす株式会社アワーズ代表取締役社長山本雅史やまもと・まさし＊1977年生まれ。大阪府出身。2004年、アワーズに入社。その後’15年に3代目として経営を引き継ぐ。社長就任後は、「こころでときを創るSmileカンパニー」という企業理念を経営の基軸として掲げ、その実現を目指す「理念経営」を実践する。’18年、世界最大級の旅行サイト「トリップアドバイザー」が主催する「旅好きが選ぶ！日本の動物園・水族館ランキング」にて、自社が運営する「アドベンチャーワールド」が1位を獲得。株式会社アワーズ本社：大阪府松原市／創業：1977年／事業内容：動物園、水族館、遊園地および博物館の経営。飲食店および売店の経営たくさんのジャイアントパンダが暮らすことで有名な和歌山県南部の白浜町にある複合型テーマパーク「アドベンチャーワールド」。このテーマパークを運営するアワーズでは、祖父・父に続いて3代目の社長に就任した山本雅史氏が、みずからの社長就任と同時に「理念経営」を導入し、一人ひとりが持ち味を生かして活躍できる場の構築に取り組んできた。社内において理念が浸透してきた現在、同社の社員たちは自発性を発揮し、イキイキと働いているという。この状態に至るまでの道のりと、具体的な取り組みの内容について、山本氏に語っていただいた。取材・構成：桐本真理写真提供：アドベンチャーワールド18［実践］理念経営Labo2023WINTER

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特集自律・自走の組織をつくる！危機意識から生まれたスターだけに頼らない方針「ジャイアントパンダの飼育数日本一」としてよく知られているアドベンチャーワールドは、動物園・水族館・遊園地の3つを併せ持った全国でも珍しいスタイルのテーマパークです。80万㎡を超える広大なパーク内に約140種類の動物を飼育しており、サファリツアーやマリンライブをはじめ、ゾウやキリンへのエサやり体験、アシカやミニブタたちがパフォーマンスを披露するライブなど、様々なイベントを通して動物たちの魅力をゲストの皆さんに伝えています。パンダだけではなく、どの動物にもスポットライトを当ててイベントを企画していることには理由があります。実はかつて、看板スターとして人気を集めていたオルカ（シャチ）が突然亡くなり、テーマパークとしての魅力が大きく損なわれたことがあったのです。「スターだけに頼っていてはいけない」という危機意識から、パーク全体をブランディングし直す動きが生まれ、新たなイベントや動物見学ツアーなどを企画するようになりました。このとき以来大事にしているのが、「だれもがキラボシ」という考え方です。特別な存在のみがスポッ大型動物に接近し、手渡しでエサやり体験トライトを浴びるのではなく、だれもがスターになる。それは動物だけに限らず、当社の人間も含めてです。スタッフ全員がそれぞれの場所で自分らしく輝ける存在（キラボシ）になろう――この想いは、私たちの基本理念となっています。マネジメント観を変えたミッション経営との出合い私も、祖父と父が経営してきた当社に入ってからの数年間は、だれかにスポットライトを当てるどころか、まわりの人のことをあまり考えずに突っ走って失敗することが何度もありました。将来後を継ぐかもしれないことをプレッシャーに感じつつ、アドベンチャーワールドでしか提供できないサービスや商品をつくりたいとはやる気持ちで、様々な企画を発案していました。たとえば、イルカが泳ぐプールの横で、イルカが食べるのと同じ魚をバーベキューで楽しむ「BBQwithDolphin」というイベント。ゲストにイルカへの親近感を持ってもらうことがコンセプトで、「きっと喜んでもらえる！」と絶対的な自信を持っていました。しかし、独りよがりだったため、いざ周囲に協力を仰いでも共感や理解がまったく得られず、うまくいきません。「なぜみん現在7頭のジャイアントパンダが暮らす多くのゲストでにぎわうエントランスなわかってくれないんだろう」ともんもん悶々とした思いを抱えていました。ですから、自分が経営者になるということに対しても、迷いや不安がありました。当時社長だった父は、数字に強く、緻密に経営戦略を練り上げていく分析家タイプの経営者でした。一方、私はそういうタイプではありません。何を武器として経営者を目指していけばよいかわからず、模索する日々が続きました。そんなときに出合ったのが、元スターバックスコーヒージャパンCEOの岩田松雄氏による「ミッション経営」の講演でした。そこで耳にした一言に、深い感銘を受けたのです。「スターバックスが提供しているのは、コーヒーではなく、その場所ならではの『体験』である」スターバックスといえば、スタッフの心のこもった接客がよく知られていると思いますが、そこにはマニュアルもなければ、上司からの指示もありません。働く一人ひとりが自発的にしていることなのだそうです。当時の私は「自分のやり方は正しい」と思い、それを周囲に押しつけているようなものでした。「部下の仕事とは、上司の指示通りに動くことだ」とさえ考えていました。しかし、この考え方がスタッフに自発性を失わせているのではないか。スターバックスのように、一人ひとり［実践］理念経営Labo2023WINTER19

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が自発的に考え、行動できるよう導くマネジメントを実現することができれば、それはまさに、「だれもがキラボシ」の状態になると気づかされたのです。みずからの人生に理念はあるか岩田氏の講演をきっかけに、ミッションをベースにした経営手法について学びを深めたいと思った私は、尊敬する先輩経営者からの誘いで「理念経営」に関する研修プログラムを受講しました。その研修では企業理念について考える前に、まず自分自身の理念を確立できているかどうかを問われました。「あなたにとって大切なものは何ですか？」「何のために生きていますか？」これらの問いに、当時の私は何も答えることができませんでした。理念経営に関心を持っていたにもかかわらず、自分の人生における理念については一度も考えたことがなかったのです。限られた研修期間の中で、私はその問いに対する答えを必死に探しました。そして考え抜いた末に出てきたのが、「かかわるすべての人をSmile（＝幸せ）にする。」ということ。家族はもちろん、スタッフやお客様を笑顔にして幸せにすることが、自分の生きがいであり、人生のテーマであると自分の中で明確に掲げることができたのです。そして、この人生における理念にもとづいて、経営者として理念経営を志していきたいという思いを強くしました。まず取りかかるべきは、どのような企業理念を掲げるか。私は全社員に当社の魅力や誇るべき部分について意見を寄せてもらい、スタッフと議論を重ねました。その結果、当社がこれまでに大切にしてきた価値観を明文化したキーワードを選び、「こころでときを創るSmileカンパニー」という理念を定めたのです。この理念経営に取り組む過程を経て、私は父の後を継ぐ覚悟を持つことができ、2015年に3代目の社長に就任。理念にもとづく人づくり・組織づくりに着手していきました。社内研修や仕組みを通してみずから気づき、考える打ち立てた理念をどのように社内に浸透させていくか。それにあたって大前提とすべきは、理念を無理やり押しつけても絶対に定着しないということです。押しつけて考え方を変えようとするのではなく、社員が理念について考える時間やきっかけをたくさんつくって、みずから気づきを得たり考えを深めてもらうことが重要だと考えています。その際にまず考えてほしいのは、私と同じように、自分が人生の中で何を大切にしたいか。それを明確にして、当社の企業理念との重なる部分をイメージできれば、個人の人生と会社人生における自己実現がリンクしていきます。そうなると、「会社や上司から言われたから」と“やらされ感”で動くのではなく、アワーズという舞台で自分のやりたいことを実現するために自発的に行動していくようになるはずです。自走する組織になるためには、こうした社員を増やしていくことが必要となります。そこで、自分自身の理念について真剣に考えてもらう場として、全社員を対象に「理念研修」を実施。私みずから講師を務め、人生で大切にしたいことを考えてもらいました。そのうえで企業理念について考える機会を設け、チームごとに「5年後、10年後のあるべき姿」についてディスカッションしました。また、日々の仕事と企業理念との結びつきを意識してもらう仕組みも重要です。そのため、企画稟議書のフォーマットを変えました。稟議を申請する際には、「この企画を通して、どんなSmileを創りますか？」「そのSmileをどうやって実現しますか？」といった項目を考えて、目的意識を明確にすることを必須としたのです。この変更以来、企業理念からかけ離れた企画稟議書が挙がってくることは、ほとんどなくなりました。スタッフ一人ひとりがそれぞれの持ち味を発揮し活躍している20［実践］理念経営Labo2023WINTER

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特集自律・自走の組織をつくる！自発的な人材が集まりそれぞれの持ち味を発揮これらのような取り組みを通して、少しずつ社員に理念が定着し、自発性が育まれてきたことを感じます。そもそも、採用の段階から変わりました。かつては「動物が好き」「テーマパークが好き」という動機で志望する人が多かったのですが、近年は「企業理念に深く共感したから」と言ってくれる志望者が増えました。もし「動物が好き」という理由だけで入社した人が飼育部でなく事務方などの部署に配属されたとしたら、本人はやりがいを感じにくく、自発的な行動も生まれにくいかもしれません。でも現在は当社の企業理念に共感し、「人を喜ばせたい」という気持ちを持った人が当社を選んでくれているので、入社後の配属がたとえ本人の希望と異なったとしても、それぞれの持ち場で自分のやりがいを見出し、持ち味を発揮してくれています。また近年、アドベンチャーワールドに新社屋を建てたのですが、その建築プロジェクトにおいてもスタッフが自発性を大いに発揮してやり遂げてくれました。以前はオフィスがパーク内に点在していたので、かかわりのない人とはまったく顔も合わさないという状態で、コミュニケーションが希薄になる問題がありました。当然、部署間で心理的な距離感も大きくなり、隔たりが生まれます。これでは理念経営がうまくいくはずありません。Smileを創り出すために、もっと社員同士のコミュニケーションがあちこちで自然と生ま約2年をかけ完成した新社屋の外観れ、みんながイキイキと働けるようなオフィスに変える必要がありました。そこで、部署の垣根を越えて有志がプロジェクトメンバーとなり、企業理念の実践と活発なコミュニケーションの実現に繋がるように、新社屋のコンセプトからレイアウトに至るまでのほとんどすべてを自分たちで検討し、設計を固めてくれました。途中で思うところがあっても私はあえてなるべく口出しせず、メンバーたちの自主性に任せるようにしたのです。他の社員たちも、コンセプトを決めるにあたって実施したアンケートや当日の引越し作業など、何らかのかたちでかかわってくれていますので、最終的には全社員を巻き込んでのプロジェクトとなりました。完成した新社屋は、部署を隔てる壁を取り払ったワンフロアでフリーアドレスに。気軽に使えるコミュニケーションスペースはもちろん、当社の歴史や先人たちへの敬意が込められたギャラリー、健康メニューが格安で提供される社員食堂もあって、心温まる空間になっています。プロジェクトチームが「人と未来を育む麗しの我が家」というコンセプトを打ち出し、社員同士が家族のように支え合い、ともに成長していく「家」のような空間を見事に具現化してくれました。私からの指示がなくとも社員たちが一丸となって自発従業員約350名が働く、ワンフロアとなった新社屋的に動いてくれた姿に、企業理念がしっかりと浸透しつつあることを実感しています。評価もみずから行なう自走できる組織へ今後私が取り組んでいきたいと考えているのは、今よりさらに社員の自発的な挑戦を促し、応援していける環境づくりです。その中には評価制度の変更も含まれており、現在検討しているのが、“評価しない”制度。自走できる組織をつくるのであれば、そもそも他人から評価されるために何かをするというのはおかしなことではないでしょうか。最終的には、自分で自分を評価するというかたちが理想です。成果報酬とか期間評価という考え方も、徐々になくしていきたいと考えています。もちろん、頑張って成長した人はそれに見合った報酬が得られたり、さらに上を目指す人にはより多くの人に影響を与えられるポジションが用意されていたりと、そういう仕組みも同時に構築していくつもりです。社員がそれぞれの持ち場で自分らしいSmileを生み出し、「だれもがキラボシ」となってゲストにSmileをもたらす。その実現を目指して、これからも歩みを止めず、新しいことに挑戦していきます。L［実践］理念経営Labo2023WINTER21

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【志の実践】社員を輝かせる森林経営個性が有機的に繋がり、共存共栄を生み出す名古屋Rエイジ不動産のモデルルームにて株式会社桶庄代表取締役社長CEO兼CHRO佐藤寛之さとう・ひろゆき＊1982年生まれ。2011年9月に同社入社。’19年5代目取締役社長に就任。「すべては、私たちの明日の笑顔のために！」というミッションを掲げ、仕事を通じて社会への幸せの連鎖、「善循環」を広げている。著書に『人が輝く森林経営――創業200年を見据えて』（ＰHP研究所）がある。「松下幸之助経営塾」第4期卒塾。株式会社桶庄本社：愛知県名古屋市／創業：1872年／事業内容：マンション・一戸建・集合住宅のリノベーション事業、リフォーム・メンテナンス事業、不動産仲介事業など名古屋を拠点に住宅リフォーム・リノベーションや住宅設備機器の販売施工修理を手掛ける桶庄。社名にあるように桶屋を発祥とする創業150年の老舗だ。その5代目である佐藤寛之社長が、初の単著『人が輝く森林経営――取材・構成：川上恒雄写真提供：桶庄しにせ創業200年を見据えて』を2022年10月に出版した。同書に込めた思いを、佐藤社長本人に聞く。20歳の頃の自分を励ましてあげたい――佐藤社長がモットーとされている「森林経営」とは、どのような経営でしょうか。森の中の木々は、互いの根が絡み合って、簡単には倒れません。風雨にさらされても、１本だけで立っているよりも強い。会社の経営も同様であると考えています。桶庄は現在4つの事業から成り立っており、これらが相互に有機的に結びつくことで共存共栄し、将来的にはさらに大きなグループ会社として永続繁栄す22［実践］理念経営Labo2023WINTER

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社員を輝かせる森林経営ることを目指しています。そこで働く社員もまた、個性や多様性を発揮しつつ、その能力を生かし合うことにより、「人が輝く森林経営」を実現できるでしょう。表現の似ている経営の考え方としては、伊那食品工業の塚越寛さん（現同社最高顧問）が唱える「年輪経営」が広く知られています。年々着実に成長することを目指して、同社がそれを実践されているのは素晴らしいことだと思っています。ただ私は、木が1本ではなく、複数が有機的に結びつくことにこだわっています。私は幼少の頃から自然が好きで、互いに生かし合っているのはすごいことだと子供心に感じていました。また、進学した高校では、教育理念として「共生」を掲げていました。「ともいき」と読みます。現在の経営において共存共栄を重視することに連なっていると思います。――初の単著ですね。本を書きたいと思われた動機は何ですか。いろいろ理由があって、大学を4回生のときに中退しました。そのときに2つのことを決めました。1つは将来、大学の教壇に立つ。これは実現しました。もう1つは経営に関する本を書く。20年たって、ようやく形になりました。聴講に来てくれる大学の学生さんには、本書を無料で配布します。私は大学時代、商学部で学んだのですが、先生方は、たいしたことを書いているとは思えない高額のテキストをなぜ学生に買わせるのか、疑問に思っていました。単位をお金で買わせるのか、と。だから私は無料で学生さんに差し上げます。そこまでするのには理由があります。実はこの本は、20歳の頃の自分へのメッセージでもあるのです。私の好きな作家の司馬遼太郎さんが、すべての小説は22歳の自分に向けて書いた手紙だと述べておられるのを読んで、カッコイイと思ったことがあります。私の場合、20歳の頃は、多くの不安や悩みを抱えた大学生でした。若さだけがあった当時の自分にこの本を渡し、「未来はそんなに悪くないぞ、志を立てろ」と言ってあげたいです。伝統を重んじつつ理念を磨き上げる――ご自身の生い立ちから、現在の経営者としてのお考えやその実践まで、佐藤社長の様々な側面を理解できる本ですが、著者であるご自身として特に力を入れた部分、メッセージを伝えたい部分はどこですか。どの章も、力を込めて書きました。ただ、あえて挙げるとすれば、「第二章さらば青春の日々」で触れた、遺書を書いたときの話です。2011年の東日本大震災の後、著しく体調を崩し、深刻な病に侵されているのではないかと不安になりました。それだけでなく、首筋の脇にしこりができ、不安が増幅します。というのも、大学時代の友人が首のしこりを病院で診てもらったところ、ガンだと判明し、間もなくして亡くなったからです。私もその友人同様、大学時代は大酒を飲みタバコを吸うような生活を送っていたので、ガンではないかと思いました。血液検査をしてもらったところ、しゅよう消化器系にかかわる腫瘍マーカーの値が異常値と出ました。次に精密検査を大病院で受けたのですが、結果が出るまで10日もかかるといいます。そのあいだ、自分は死ぬのだと決めつけ、大学中退からずっと絶縁関係にあった父を含めた家族や、当時交際していた妻への遺書を書いたのです。死んだら後悔すると思い、ありったけの感謝の気持ちをつづりました。佐藤氏の初の単著2022年、PHP研究所刊定価：1,705円（10%税込）検査結果はガンではありませんでした。実は、わずかながらその希望を捨てきれず、自分あてにもう1通、「今回、死なずに生き延びた自分へ」と題した手紙をしたためていました。もう1度人生をいただけたら、こんな生き方でありたいと書いたのです。自分の人生観が深まりました。桶庄の企業理念は、このときの手紙をもとに策定したので、非常に確固としたものになっています。――本書の中で2018年に改定した企業理念「ゴールドスタンダード」が紹介されています。コーポレートスローガン「すべては、私たちの明日の笑顔のために！」、そして４つの約束、すなわち「お客様に対する約束」「従業員同士の約束」「会社に対する約束」「私たちの仕事と生活［実践］理念経営Labo2023WINTER23

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の舞台である地域社会に対する約束」から構成されています。これらはご自身で考え抜かれたものということなのでしょうか。企業理念は経営者の人生観を言語化したものであるべきだと考えています。ただ、桶庄は私が創業した会社ではありません。150年の伝統や、先々代の祖父や先代の父の思いも尊重すべきです。たとえば、新たな企業理念を考えるにあたり、先々代の頃から強調されてきた「善循環」の心得を重視しました。先々代の祖父は常々、「ギブアンドテイク」の意味をよく考えるべきだと話していたそうです。「ギブ」すなわち与えることの結果として、「テイク」すなわち得られることがあるのだと。自社だけが利益を得ればいいという考え方では、会社は存続しません。まずは与えるという善意の好循環が、お客様、取引先、社員、地域社会、そして自社である「私たち」のあいだで生まれることで、「私たちの明日の笑顔」があるのです。――「魂を磨き高める」生き方を大事にされていることが、本書の内容からうかがえます。同様のことを強調していた稲盛和夫さん（京セラ創業者）の影響を受けたのでしょうか。先ほど述べた、自分あての手紙の中で、「もし今回死なずに生き残れたら、お預かりした魂をここまで磨いてまいりましたと胸を張ってご報告し、お返しできるような生き方をします」といった趣旨のことを書きました。桶庄に入社する前のことで、当時は恥ずかしながら稲盛さんについて何も知りませんでした。入社後に当時社長の父のかばん持ちとして東京出張に行った際、帰りの新幹線の中で父から、ほとんど使っていない電子書籍の端末を誕生日プレゼントにもらいました。そこに入っていたのが稲盛さんの本１冊だけ。名古屋までの暇つぶしに読み始めたところ、いつしかその内容に引き込まれ、とりわけ「人生とは、心を高め、魂を磨くことにある」と書かれていることに衝撃を受けました。自分は間違っていなかったのだという確信を持つことができ、うれしさがこみ上げてきたのを覚えています。社員に目を向け黒字化を果たす――そのお父様が病に倒れて経営を引き継ぐことになったそうですね。老舗の会社にあって、まわりから経営のことで口出しされるなど若さゆえの苦労はありませんでしたか。私は5代目ですが、何代目であろうと、結果を出すことができれば、まわりは自分の経営を認めてくれます。まずは赤字だった経営を黒字にすることに注力しました。これは稲盛さんに刺激を受けたことにも関係しています。あるとき、稲盛さんが日本航空の再建に取り組まれたあとの同社の業績推移のグラフを見ました。ずっと赤字だったのに、稲盛さんがかかわられてから黒字が続いている。経営者が変わっただけで、そんな一瞬にして数字が変わることを知り、衝撃を受けました。さすがに稲盛さんとは同じことができないかもしれないけれど、数字は経営の客観的事実であることから、結果を出すことに力を入れました。1年目で黒字化に成功し、7期連続で利益をあげ、経営に口出しされることはほぼなくなりましたね。――何か黒字化への秘策があったのですか。数字で結果を出すといっても、私自身に営業のセンスがなく、営業担当の社員に数字をあげろと言って聞かせることはできないという自覚は持っていました。それよりも、どうやったら人を動かせるのかということをすごく考えました。社長になる前から、一人の社員の要望に応えて人事担当者となり、社員とのコミュニケーションに努めてきたことが奏功したと思います。かつては、社員に対するケアをあまり重視していない会社でした。人事の諸制度はありましたが、運用の点で社員の納得がいくものではなかったようです。社員に寄り添うことで、徐々に理解してくれる人が増えていったという手ごたえを感じました。私が桶庄のCEOであるとともに、CHRO（最高人事責任者）であることには、そのような背景があります。――本書を読むと、佐藤社長が本当に社員を大事にされていることがわかります。たとえば社長みずから、一般社員と1on1（ワンオンワン）ミーティングをされていますね。桶庄では4年前に1on1を導入しました。通常は月に1回、社員とその直属の上司で行なっています。最対1の面談に抵抗がある人が多く、軌道に乗るまで2～3年かかりました。社員の希望があれば、私と面談できるようにもしました。けっこう希24［実践］理念経営Labo2023WINTER

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社員を輝かせる森林経営望があって、平日の夜はほとんど面談という月もあります。社員と食事をとりながら行ないます。社長室ではなく、社員が指定する場所に私が出向きます。食事代は私が支払うので、なかには「お腹が空いたから」という理由つわもので面談を申し込んでくる強者もいます（笑）。とはいえ、私は他社の経営者と夜に集まってお酒を飲んだりしないので、夜の時間は空いていますし、社員との飲食代にお金を使うことには意味があると考えています。そもそも社長と2人きりで会ってくれる社員がいるのは、ありがたいことです。面談の内容は、近況報告や、配属先の店舗の様子など様々です。雑談でも、私にとっては有益です。社長はやはり自分から取りにいかない限り、社内の情報がなかなか入ってこないポジションですから。黙っていると、都合よくろ過された情報ばかりが上がってくる。面談はもちろん、社員の成長のために実施するものですが、私は社員全員の人事考課にかかわっている立場上、社員とコミュニケーションを交わすこと自体に意味を見出しています。理念浸透のポイントは入社までのプロセスに――そのように社長と社員が率直に言葉を交わせる関係にあるのなら、企業理念の浸透も進んでいるのではないでしょうか。社長になる前、ある専門家から、理念の浸透はそもそもむずかしいという話を聞きました。ではどうすべきかと問えば、理念に合う人や、理念を理解している人しか採用すべきではないというのです。私も、みずから会社説明会で私自身の考え方を訴え、採用面接官となり、桶庄の理念に賛同していただける方だけを創業150年にあたる2022年入社式の集合写真採用するようにしました。そして採用内定者は、入社日の4月1日に発表する「決意表明」に向けて、前年月から準備を始めます。毎月集まって課題図書を読んだり、発表に関して相互アドバイスを行なったりするのです。こうしたプロセスを経ると、同期のあいだで、単なる仲のよい関係をせっさたくま超えて、互いに切磋琢磨する同志といえるような深い関係性が生まれてきます。「森林経営」で大切なのは、絡み合う根の部分、会社でいえば考え方の土台に相当するでしょうか。ここをしっかりと、新入社員が会社に入る段階で形成するのです。そうすると、「善循環」にもあるように、互いに助け合い、協力し合うということが当たり前になります。したがって、社員は入社した頃には、桶庄の考え方が身についているので、結果的に理念も浸透していくのではないでしょうか。を覚えます。仕事もそうです。「やれ」と言われてやる仕事は得てして面白くないし、失敗しても自分に責任を感じない。逆に自分でやってみたいと思う仕事であれば、失敗したら悔しいし、失敗を克服する原因を本気で考える。だから、社員が社長の指示ばかりで動いているようでは好ましくありません。都合の悪いことが生じると、「社長から言われただけで、別にやりたくはなかった」とか「社長の指示が悪かった」といった言葉が飛び交います。「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」という区別がありますね。給与や評価を上げるなどの「外発的」なことも大事ですが、私は基本的に、自分の興味や関心、使命感から生まれてくる「内発的動機づけ」が重要であると考えています。「内発的」であれば、仕事そのものへのやりがいや喜びも生まれてきます。桶庄は私一人の会社ではありませ――佐藤社長の若い頃に関する記述で、他人に口出しされるのが嫌いであったと書かれていますが、今はどうなのですか。基本的に変わっていないと思います。他人は私の人生の結果に責任を負えないし、私も他人のそれに責任を負えない。無責任に他人のことをん。皆が互いに生かし合って「人が輝く森林経営」を目指しています。拙著でも、社員がやりがいや喜びを持って、相互協力しながら働くようになるための取り組みを紹介しています。とはいえ、まだまだ課題が多いのも現実です。桶庄の創業200年に向けて、今後も経営の改善に努めああだこうだと評する風潮には疑問ていきたいと考えています。L［実践］理念経営Labo2023WINTER25

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塾生通信日に新た「松下幸之助経営塾」の情報と、卒塾生の近況をお伝えします第21回の「同志会」初めて東京で開催2022年10月21日、松下幸之助経営塾の卒塾生の集い「ＰＨＰ松下幸之助経営塾同志会」の第21回が、新たに卒塾した第23期生を迎えて開かれました。会場は東京都千代田区の神田明神。南側の隨神門に松下幸之助が奉納した隨神像が置かれています。初の東京開催で、従来の2日間から1日に日程を短縮して行なわれました。「同志会」の世話人会代表で三宝電機（大阪府大阪市）の嘉納秀憲社長（第1期）による開会のごあいさつに続き、ユーグレナ社長の出雲充氏が特別講話「僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。～わが志の軌跡と真使命～」を行ないました。同氏が途上国の食料問題などに直面した経験から、栄養価の高いミドリムシを用いた事業の真使命を悟ったのは37歳、松下幸之助が産業人の真使命を掲げた年齢と同じだったといいます。変化の速い現代では若者のアイデアを活用すべきであるとの方針から10代の学生を取締役に抜擢した話もあり、参加者から、大きな感銘と刺激を受けたという声が聞かれました。続いて、工具や建築資材、金物などを販売する國貞（東京都足立区）の鈴木進吾社長（第1期）の同志発表「100年企業を目指して！～いま描く未来図と人づくり～」。卒塾後10年の取り組みと今後の展望を力強く発表しました。閉会後は明神会館に場所を移して懇親会が開かれ、今回も盛り上がった「同志会」となりました。なお、松下幸之助経営塾は、第24期と第25期が進行中です。創業80周年を迎え『フィロソフィー』刊行「同志会」を初の東京会場・神田明神で開催しました（撮影：永島寿）藤本智治氏（第21期）が社長を務める丸和運輸（大阪府大阪市）が、創業80周年を迎えたのを機に『MARUWAフィロソフィー』を刊行しました。同社の理念から働き方、歴史までが、携帯しやすいようにコンパクトに詰まった1冊。藤本社長の「あとがき」によると、社員同士の温かな「和」に満ちた会社であってほしいという創業者の思いから「丸和」を冠した社名がつけられたとのことです。PHP研究所が制作協力しました（非売品）相次ぐ受賞おめでとうございます！2022年10月、新宮運送（兵庫県たつの市）の木南一志社長（第2期）と同社運転者の西川橋藏氏が、国土交通省の「令和４年自動車関係功労者大臣表彰」を受けました。自動車関係事業に多年精励され、功績顕著な方に授与されます。1社から経営者と従事者の同時選出は、全日本トラック協会の坂本克己会長によると、聞いたことがないそうです。同年10月、石橋常行氏（第2期）が社長を務めるWOODYYLIFE（岐阜県岐阜市、ひだまりほーむグループ）が、関ケ原製作所と武川建築設計事務所と共同で、2022年度グッドデザイン賞（日本デザイン振26［実践］理念経営Labo2023WINTER

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塾生通信日に新た興会主催）を受賞することが決まりました。受賞対象は、岐阜県の関ケ原にあるカフェ「cafemirai」。審査委員から「民家のように控えめなひさし佇まい。１階は庇が巡り、人が寄り付きやすい空間。地元の材料や技術を積極的に取り入れ、これみよがしなデザインが一つもない、地域に開かれた自然体の場」と高い評価を得ています。日本一笑顔になれるお菓子屋さん神吉一寿氏（第1期）が社長を務める吉寿屋（大阪府摂津市）が、2022年10月、奈良県天理市に2200種類ものお菓子をそろえた「お菓子のデパートよしや天理店」をオープン。スーパー「卸値市場ハッスル3」からの「新しい観光スポットとなるような場所にしてほしい」という要望に応えた大型店舗で、オープニングセレモニーには並河健市長も来賓として出席しました。コンセプトは「お菓子を通じて世の中を幸せにする」「日本一笑顔になれるお菓子屋さん」。天里市2200種のお菓子が集まった「お菓子のデパートよしや天理店」（写真提供：吉寿屋）と福祉連携協定を結んで子育て世帯などにお菓子の支援をするほか、YouTuber「LazyLieCrazy」をアンバサダーに起用して、お菓子の魅力を発信するとのことです。L経営者が“経営の志”を確立・再確認するための研修講座松下幸之助経営塾本セミナーの特徴松下幸之助の経営哲学を根本から学べる唯一の講座弊社で70年有余にわたり研究を重ねた“松下幸之助の経営哲学の真髄”を、経営者の皆様に分かりやすくお伝えするためのセミナー形式の講座です。人間観を養い高め、経営者としてのあり方を学ぶ本講座は、時代や環境の移り変わりの中で生まれる新しいマネジメント手法を学ぶものではありません。経営者のただ今、新規申込受付中詳しくはホームページで資料のご請求はホームページまたは下記窓口へお問い合わせください。https://www.php.co.jp/seminar/m-keieijuku/株式会社PHP研究所第二事業普及本部〈京都〉TEL075（681）1295FAX075（681）2656〈東京〉TEL03（3520）9631FAX03（3520）9648「志」をキーワードとして、松下幸之助が最も大切にした“経営理念の確立と浸透・共感”を実現すべく、その基となる自然・宇宙観や人間観等を学び、より本質的な“経営者としての器量”を養い高めていただく講座です。「志」の確立に向けた、充実の10カ月10カ月の在籍期間中に１泊２日のセミナーを全６回、隔月で開催。学びと実践、検証をくり返しながら成果を高めていただけます。また、１クラスは最大でも12名の少人数制で、受講者間の討議・交流による相互啓発など受講者お一人おひとりに充実した環境を提供いたします。プログラム第１回『志から理念へ～経営の使命～』第２回『本質を考える～自然の理法～』第３回『原理原則を貫く～基本の徹底～』第４回『人を育てる～事業は人なり～』第５回『経営を革新する～日に新た～』第６回『志を伝える～私の命知発見～』開催要領◦受講資格：経営者ご本人、後継経営者（経営幹部）◦募集人数：12名⃝開講期間：10カ月1開催1泊2日、全6回（隔月開催）⃝受講料：118万8000円（税込）⃝会場：株式会社PHP研究所京都本部（JR・近鉄「京都」駅八条口より徒歩５分）［実践］理念経営Labo2023WINTER27

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道をひらく～私の流儀～京都市立勧修中学校教諭田本博子たもと・ひろこ＊明徳商業高等学校（現京都明徳高等学校）卒業後、1992年に日立製作所に入社、ソフトボール選手として活動。2000年、シドニーオリンピックソフトボール銀メダリスト。’05年からコーチ専任となる。’08年には北京オリンピックのコーチとして金メダル獲得に貢献。同年日立製作所を退団。’11年、京都市立下京中学校に新規採用教諭として赴任。’13年、京都市立嵯峨中学校教諭。’21年の東京オリンピックでは京都市の聖火リレーランナーを務めた。’22年から京都市立勧修中学校教諭。人間力を養いチームを支える存在にソフトボール日本代表として得た学びを次の世代へ伝える身長149cmと小柄ながら、持ち前の明るさで皆を盛り上げ、人一倍の存在感を放つ女性。時には厳しく、でも愛情たっぷりに子供たちを指導する田本博子氏の周りには、常に笑顔があふれている。かつてシドニーオリンピックでは選手として、北京オリンピックではコーチとして、メダル獲得に貢献した田本氏だが、その道のりは決して順風満帆ではなかったという。華々しい経歴の裏側にあった苦労と努力、そして周囲を引き寄せる人間力に迫る。取材・構成：長尾梓写真提供：田本博子氏（P31上を除く）“エリート”でなくともチャンスはつかめるオリンピック選手というと、子供の頃から目立った存在で、国際大会を多数経験していると思われるのではないでしょうか。確かにそういった“エリート”が多い世界ですが、私の場合ちょっと例外です。身体が小さかったので、ボールを遠くまで投げることができない。毎日練習して少しずつ上達し、日立製作所のチームに奇跡的に入ることができたものの、社会人の世界ではまったく通用せず、最初の4年間はほとんど試合に出場できませんでした。一人だけ試合に出られないという悔しい思いもしました。そんな私が、のちに日の丸をつけてオリンピックに参加できたのです。選手としてだけでなく、日本代表のコーチとしても。チャンスはどこに転がっているかわからないもの28［実践］理念経営Labo2023WINTER

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道をひらく～私の流儀～です。エリートではなかったものの、ソフトボールを好きな気持ちは昔から人一倍強かったかもしれません。小学4年生のときに地域のクラブチーム「ホワイトビッキーズ」に入部して以来、ソフトボール一筋でした。週に4日の練習日以外は家のブロック塀にボールを打ったり投げたり、公園で練習したり、近所の河川敷で走り込みをしたり。宿題は学校でやり終え、放課後はすべてソフトボールの練習に充てていました。とにかくうまくなりたい一心だったので、まったく苦ではなかった。まさに「寝ても覚めても」で、夜は布団の中でソフトボールの専門誌を抱いたまま寝ていて、「この子、どれだけ好きなんや！」と、母を驚かせたこともあったほどでした。生き残るために磨いた盛り上げる力と洞察力社会人時代、ほとんど試合に出られなかった4年間は、生き残るために必死でした。せめて代走で起用してもらえるように、クロスプレーで子供の頃からソフトボールに明け暮れる日々だったセーフになるスライディングを研究し、何度も練習を重ねました。身体が小さく、力の面では大きな人に敵わないので、なんとか存在感を示そうと誰よりも大きな声を出し、チームを盛り上げることも心がけました。小学校の頃から副キャプテンタイプで、キャプテンの決めたことに「よっしゃ、やろうぜ！」と皆を巻き込んでいくのが得意だったのです。また、試合中に相手選手の動きや顔つき、審判の癖をよく分析していました。ベンチで待機中、監督の横でわざと聞こえるように「あのショート、ちょっと動きが悪いな。あれ盗塁したら絶対セーフになるのにな」とつぶやいたところ、本当に監督が盗塁のサインを出したこともありました（笑）。声を出してチームを鼓舞すること、監督の考えや相手チームの動きを読むこと、いずれも自分が生き残るためにやっていたことでした。チームに何も貢献していない、不要だと判断されれば、当然切り捨てられる厳しい世界。試合に出られないならそれ以外のところで存在感を示し、チームに貢献する必要があったのです。そうした地道な努力を続けてこられたのは、後押ししてくれる人の存在がたくさんあったからです。私が代走で出るときには、日立の応援団がものすごく沸いてくれました。陰で練習をしていることを皆知ってくれていたのです。また、1年目にはこんな出来事もありました。寮の空き地にバッティングのできる場所が2カ所あり、皆そこで自主練をします。レギュラーの先輩から順に練習するので、私に足の速さを活かし、クロスプレーでも強さを発揮順番が回ってくるのは夜の10時すぎでした。10時半までに入浴を済ませなければならず、10分ほどしか練習ができません。すると、先輩がやってきて、黙ってティー台にボールを置いてくれたのです。私は泣きながらそれを打ちました。そんなふうに見捨てず助けてくれる先輩もいて、とても温かいチームでした。先輩になんとかいいところを見せたいと思いました。試合に出られない期間が長くありながらもチームに置いてくれた会社、そしてチームメイトには、心から感謝しています。指導者になってから、自分がやってもらってよかったことを選手にすると、「コーチのために打ちます！」と言ってくれたりする。このように、人から人へいい影響がつながっていくこともとてもうれしいですね。歴史を塗り替えたい！金メダルへの強い思い代走、守備固め、代打……と、少しずつ試合に出させてもらえる機会が増え、日立に入って5年目にようやくスタメン入り。4年間、あきら［実践］理念経営Labo2023WINTER29

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めずに続けてきた地道な努力が実を結んだ瞬間でした。次は大きな大会に出られるように、さらに練習を重ねました。そして活躍できるようになって9年目のときに迎えたのが、シドニーオリンピックの選考会。そこで運よく宇津木妙子監督の目に留まり、拾っていただいたのです。でも、それからがサバイバルでした。選考会で選ばれた30名が、試合を重ねながら徐々にふるいにかけられ、最終的に残るのは15名。ただメンバー同士はとても仲がよく、特に100日間泊まり込みで練習をする「100日合宿」では、苦楽を共にするため絆が深まったものです。合宿中は皆、朝から晩までバットをけいれんして振っていて、たとえ手が痙攣も、その手をテーピングでバットに固定して練習していました。宇津木監督は、選手がウォーミングアップをしていると必ず自分も参加し、厳しくも常に選手目線で士気を高めてくださるような方でした。100日間シドニーオリンピック決勝で対戦したアメリカチームのピッチャー、ミッシェル・スミス選手とともに（上）北京オリンピックではコーチとして金メダル獲得に貢献。左は上野由岐子選手（下）のうち1日だけいただいた休日には、実家に帰ってご先祖様に感謝の気持ちを伝えることも、宇津木監督から教わりました。冒頭で申し上げたように、チームの先輩たちは、その前のアトランタオリンピックや世界選手権、アジア大会など、大きな大会への出場経験が多数ある方ばかり。私とは住む世界が違うような人たちです。ところが話してみると、自分のせいで負けた試合や、それによって大事な大会に進めなかった経験を、全員が持っていました。雲の上の存在だと思っていた先輩たちも、苦労や挫折を味わいながらここまでたどり着いたのだと知り、勇気づけられたことを覚えています。そして迎えたシドニー本番、日本代表チームは順調に勝ち進み、予選リーグを1位で通過。4年間勝てなかったアメリカを破ったことで、金メダルを期待されていました。準決勝でオーストラリアに勝利し、いよいよ決勝。対戦相手は再びアメリカでした。この試合は記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。同点で迎えた延長8回裏、ワンアウト、ランナー1・2塁で、相手打者をレフトフライに打ち取ったと思った瞬間、雨で濡れた地面に足を滑らせた先輩選手が落球、サヨナラのランナーがホームに帰り、惜しくも金メダルを逃してしまったのです。私はセンターからレフトにカバーに行きましたが間に合いませんでした。当然、先輩はとても落ち込んでいました。でも私は、金メダルが取れなかったことよりも、このチームでもう試合ができないということが悲しかった。それほどいいチームだったのです。宇津木監督も、「いいチームだったから勝たせてあげたかった」と言っていて、誰も先輩の責任にはしたくなかった。しかし、この試合以降、オリンピックのソフトボール競技というと、このシドニー大会の決勝シーンばかりが取り上げられました。8年後、コーチとして参加させてもらった北京オリンピックで、それを「変えたい」と言ってくれた選手がいました。アテネの前大会に内野手として出場した三科真澄選手でした。今回の北京大会で金メダルを取って、ソフトボールの映像を、歴史を、優勝のシーンに塗り替えたいというのです。ミーティングでその言葉を聞いたとき、みんな泣いていました。シドニーでの敗戦を経験し、先輩の落ち込む姿を間近で見ていた者としては、本当にうれしい言葉でした。そして、それは現実のものとなりました。金メダルには、これまでの歴史や、携わってきたすべての人の思いが結集していました。その思いを背負って努力してきた選手たちの苦労を知っているだけに、報われたときの喜びはひとしおで、選手時代とはまた違った感動がありました。選手としても指導者としても、オリンピックという大舞台を経験させてもらえたことは、本当に幸せなことです。チームで学んだ経験を学校教育に生かすソフトボールはとりわけ「人間力」が要求されるスポーツで、そこ30［実践］理念経営Labo2023WINTER

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道をひらく～私の流儀～が魅力の一つだと思っています。サッカーやバスケットボールは、ボールそのものがゴールに入って得点となります。バレーボールやテニスも人が打つけれど、最終的に勝敗を決めるのはボールです。でも、ソフトボールや野球においては、勝負を決するのはベースを踏む人間なのです。かつてある試合で、オーストラリアのバッターが、フェンスを越える打球を放ち、ダイヤモンドを一周。しかし、喜びのあまりホームベースを踏み忘れ、キャッチャーがアピールをしてアウト、幻のホームランとなったことがありました。柵越えの球を打ったことで「これはもう勝った！」と舞い上がったのかもしれません。でもキャッチャーはちゃんと見ていた。最後の最後までおろそかにしない注意深さが求められる競技なのです。だから今、指導している中学校のソフトボール部でも、私は基本的なことを徹底して伝えるようにしています。たとえばボールを捕るときは、その先の「投げる」ことまで考えて捕るようにする。投げるときも、相手を思いやり、相手が捕りやすいところに投げるようにする。それらの基本がしっかりできて初めてプレーが成立します。一人ひとりが愛され、応援されるチームを目指す（田本氏は左から3人目の背番号「31」）野球やソフトボールの経験がある方には当然のことに思えるかもしれませんが、この「当たり前のことを徹底する」というのが本当に大切だと考えています。大舞台になるほど、そこのミスで勝敗が分かれるものだからです。また、常に先のことを考えてプレーをするというのは、私自身が社会人時代に心がけてきたことであり、それによって見えないところでチームに貢献できたという思いもあります。生徒たちには、試合で審判をしてくれる先生に心をこめて「お願いします」と言うなど、礼儀や挨拶に関してもうるさく言います。モットーは、選手一人ひとりが愛され、応援されるチームになること。そうすればお互いの長所を認め、いい影響を与え合えるようになると思っています。そうしたチームになることで、どんなに厳しい練習でも、同じ一つの目標に向かって頑張れる。たとえ試合に出られなくても、自分の持ち味を活かし、チームのためにできることがないかと考えられるようになると思うのです。人間ですから、試合に出られず不満に思ってしまうこともあります。結果がすべての世界です。でもそこで、「それならもっと頑張ろう」と努力をする選手と、不満を言うだけの選手では、当然のことながら前者のほうがうまくなります。伸びる子は「素直」です。これは松下幸之助さんも大切にされていま松下幸之助の揮毫「素直」の前で。幸之助の『道をひらく』が愛読書した。やはり素直に受け止められる子は伸びるし、どこに行っても好かれる。もちろん反抗期も大事です。そうした時期を経ておかないと、社会に出てから歪みが生じてきます。だから私は生徒たちに「口だけの反抗はアカン。やることをやっての反抗なら先生は許す。素直な負けず嫌いになりましょう」といつも言っています。これらは、私自身が経験したからこそ言えることであり、私にしか教えられないことかもしれません。あきらめない心、努力が報われる喜び、基本の大切さ……。すべて、ソフトボールとの出合いによって経験し、学びました。ソフトボールを通して関わったすべての人のおかげです。そうした学びを多くの人に伝えること、そして指導者として生徒たちの人間力を養い、それぞれの強みを引き出していくことが恩返しであり、私の使命だと思っています。L［実践］理念経営Labo2023WINTER31

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松下幸之助の経営哲学経営は本来成功するようにできているなぜ「自然の理法」に従うべきなのか④川上恒雄（PHP理念経営研究センター首席研究員）写真撮影：貝塚裕経営は人間の営みである。しかし松下幸之助は、人知のみに頼る経営は、仮に短期的に成功しても、長期的には衰退する可能性が高いと訴えた。自然の理法の前では、人知ははかないものであるとみていたのである。今回は、企業経営の文脈において、自然の理法に従うことの意味を考える。経営の秘訣は雨が降れば傘をさす前回、「宇宙根源の力」が自然の理法にもとづいて万物に働きかけているという松下幸之助の世界観を説明した。この世界観によれば、個々の人間にも与えられているその力――幸之助はそれを「生命力」と呼んだ――を人は生かすべきだとされるが、そのやり方は自然の理法に従うものでなければならないという。そのため、経営や商売のやり方もまた、自然の理法に則するべきであるというのが幸之助の主張である。幸之助の経営に関する主著『実践経営哲学』（PHP研究所）において、「自然の理法」「天地自然の理」「自然の摂理」といった表現が頻出していることがその証左である。しかし、自然の理法にもとづく経営のやり方とはいかなるものか、幸之助は具体的に明示していない。ただ、1960年頃、新聞記者に成功の秘訣を尋ねられた際、次のように答えたという。「『おまえはどうして今日そう成功したのか』という質問を最近、各方面でされるんであります。（中略）つい先ほども、新聞記者諸君から同じような質問を受けたんであります。『松下さん、あんたは非常に成功したと思うが、あんたの成功はどういうところにあったんか、ひとつ話してくれ』ということでありました。私はそれに対しまして、こういう答えをしたんであります。『ぼくの経営方針というものは、まあ天地自然の法によるんだ』。すると、『天地自然の法によるというような、きみ、むずかしいこと言うな。具体的に言うとどういうことか』と、こういう質問でありますので、『具体的に言うと、雨が降れば傘をさすことだ』と、こういう話をしたんであります。それはどうも、人をおちょくるような話ではないかということであったんでありますが、自分はそういうことを天地自然の法という表現を使ったのであります」（PHP総合研究所研究本部編『松下幸之助発言集1』PHP研究所、112～113ページ）ここでの「天地自然の法」とは「自然の理法」と同義である。幸之助は自分自身でもよほどこのエピソードが気に入っているのか、1964年の講演でも次のような話をしている。「先般も新聞社の方々が見えまして、私に、『あなたの会社は急速に発展した。どういうわけでそうなったのか、その秘訣があればひとつ語ってくれないか』という質問がございました。そこで、『秘訣というとむずかしいが、皆さんも何か記事になさるんであれば、まあ話しましょう』と言うて、私の経営はひと言にしていうと、天地自然の法にもとづくということを言ったのです。すると、『天地自然の法にもとづくというだけでは記事にならん。それはもっと具体的にいえばどういうことか』ということでしたので、『具体的にいうと、雨が降れば傘をさすということです』という話をしたんであります」（『松下幸之助発言集7』155～156ページ）「雨が降れば傘をさす」とは、外で雨に降られたら濡32［実践］理念経営Labo2023WINTER

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松下幸之助の経営哲学れないように傘をさすのが一般的であるように、当然のことを当然のこととして行なうことを表現している。さらに幸之助によれば、こうした行為は当然なすべきことなのだから、頭を使うようなむずかしいものではないという。ところがなぜか経営や商売になると、むずかしく事を考え、当たり前のことを当たり前にやらないケースがみられると指摘する。たとえば、商品の販売価格を原価や仕入値よりも安く設定しない、販売した代金を回収する――といったことを商売ではごく自然に行なうはずなのに、商品を売れば売るほど損失が膨らんだり、黒字倒産をしたりする会社が珍しくないというのだ。幸之助は、「経営はきわめてやさしいともいえる。というのは、それは本来成功するようにできていると考えられるからである」（『実践経営哲学』文庫版45ページ）、「商売なり経営というものは、もともと成功するようになっている」（『経営のコツここなりと気づいた価値は百万両』PHP研究所、文庫版17ページ）と断言する。つまり、雨が降れば傘をさすごとく、当然のことを当然として行なう、基本中の基本を徹底する、ひいては原理原則に従うことに忠実であれば、経営はおのずと成功するというのだ。幸之助が経営者として自然の理法を特に強調したのは、高度経済成長期のことである。好況期は順調に見えた企業も、「昭和四十年不況」に直面し、経営が大きく傾くことすら珍しくなかった。銀行借り入れに依存して債務が膨らんだり、まだ一企業体として小さいのにアメならリカの大企業に倣って多角化したり、過当競争による無理な価格引き下げで利益を確保することができない企業が目立ったからだ。一方、松下電器は資金に余裕を持つ「ダム経営」や、重電分野に手を出さず家電を専業とする方針を貫き、適正価格の維持に努めた。自然の理法にかなわない、すなわち無理のある経営は長続きしないことを戒めたのである。ただ、幸之助にとっての「自然の理法」「当然のこと」のすべてが、他の人にとってもそうであるとは限らない。たとえば『実践経営哲学』によると、正しい経営理念を策定する、共存共栄に徹する（自分の会社だけが栄えるのではなく）、対立しながらも調和し合う（たとえば労使の関係）――といったことが自然の理法にかなった経営の心得としてあげられている。これらを「当たり前のこと」とみなすかどうかは、規模や業種、もっと広くは時代や場所によっても異なるだろう。けれどもそれは、幸之助にとってあまり重要なことではない。なぜなら、万物は流転することもまた、自然の理法であるとみなしていたからだ。具体的な例でいうと、幸之助の著書『指導者の条件』（PHP研究所）にはおよそ100の「リーダーの要件」が示されているが、これら「要件」のあいだに完全な整合性がとれているわけではない。置かれている状況によって「要件」は変わるのだ。「自然の理法」もまた、普遍の法則であるかもしれないが、その現れ方、活用のされ方は、時代によって変わるものだと幸之助は考えていたのだろう。それが次の「生成発展の原理」である。万物は日に新たである生成発展の原理幸之助は万物の絶えざる変化を、「生成発展」「日に新た」などと表現した。たとえば1972年5月に発表した「新しい人間観の提唱」の中で、「宇宙に存在するすべてのものは、つねに生成し、たえず発展する。万物は日に新たであり、生成発展は自然の理法である」（『人間を考える』PHP研究所、新書版22ページ）と述べている。なお、1951年9月に発表した「人間宣言」においても、「日に新た」の個所が「日々に新た」と表現されている以外はすべて同じ文章がみられる。生成発展が自然の理法であるという認識を、幸之助がずっと変わらず持ち続けていたことを示している。また、「新しい人間観の提唱」では、そのあとに続けて「人間には、この宇宙の動きに順応しつつ万物を支配する力が、その本性として与えられている」（同22ページ）と記されており、宇宙の生成発展に順応することで万物を支配する力が、人間には本来与えられているという。見方を変えれば、生成発展に順応していなければ、その本来の力を発揮できないことになる。［実践］理念経営Labo2023WINTER33

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こうした宇宙における万物の生成発展と人間の役割を、経営や商売の次元に降りて考えると、どのように表現できるだろうか。幸之助は『実践経営哲学』の中で次のように述べている。「成長、発展のテンポというものには、その時々で違いはあろうけれども、この人間の共同生活は限りなく生成発展していくものだということになれば、それに応じた物資なりサービスなりの供給も時とともに増加させていくことが求められてくる。そうでなくては生成発展にならない。だから企業経営としても、原則としては次々と新たな開発、新たな投資を行なっていくことが必要になってくるわけである」（『実践経営哲学』文庫版27～28ページ）むろん開発や投資ばかりでなく、経営の様々な側面において変わっていくことが生成発展であり、自然の理法に順応することである。ただしそれは事業活動に限られた話ではなく、「大自然、大宇宙は絶えず生成発展しており、その中でわれわれは事業活動を営んでいるのだという基本の認識」が根底にあってこそ、力強い経営ができるというのだ（同28～29ページ）。繰り返しになるが、変わるべきだからといって小さな人知にとらわれて奇策に走るのではなく、人知を超えた自然の理法にあくまで従うという謙虚な姿勢が求められることを、幸之助は強調している。謙虚な姿勢によって特定の考えにとらわれず、視野が広がり、自然の理法が見えてくるからだ。幸之助が大切にしてきた「素直な心」から、この点をさらに論じてみたい。視野を広げる素直な心自然の理法に従おうとしても、そもそも理法なるものの内容が明確にわからない。そこで幸之助は、「雨が降れば傘をさす」ように、当たり前のことを当たり前にやる、当然なすべきことをなすことであると説明した。経営は本来、成功するようにできており、基本中の基本、原理原則を徹底すればよいというのである。しかし、仮に頭でそれがわかっていたとしても、自然の理法にかなった経営を常に実践できるわけではない。万物は生成発展するのだから、今の時代の原理原則が将来も通用するかわからないし、日本国内で基本中の基本であっても国外ではそのように認識されていないかもしれない。自然の理法にどのように順応すべきか、いつでもどこでもわかるのであれば、幸之助も経営に苦労しなかったはずだ。経営において必ずしも自然の理法に従うことができないもう一つの理由は、経営者自身の心のあり方にある。私利私欲にまみれると、自然の理法のことなど考えなくなってしまうのだ。「どうしたら楽をして儲かるのか」「ライバル業者を出し抜く方法はないか」などといった策略をめぐらすことで頭がいっぱいになる。幸之助は繰り返し、経営者は私心にとらわれてはならないことを訴ふかんえた。私心にとらわれると、視点が偏り、俯瞰して物事を見ることができなくなるからだ。この点は幸之助自身にとっても課題だった。「企業は社会の公器である」と説いてはいるものの、1人の人間であることには変わりなく、ときとして私的な欲望が心の中に湧いてくるという。けれども、自己を客観視する自己観照によって、心のあり方を修正することを心がけ、「素直な心」に努めて近づこうとした。素直な心とは、端的に言えば、とらわれることなく物事の実相を見抜く心の有り様である。幸之助によると、それは神の心でもあるから、生涯かかってもその境地に達することはできないが、素直な心に到達しようと日々努力する姿勢が大切なのだという。幸之助は、素直な心になれば自然の理法が見えると、たとえば1948年に開かれた和歌山県人会の集会で訴えている。「天地自然の理法はどこにあるかということは、各人各人のしみ出るような体験からつかめるともいえますが、それだけでなく素直な心を培養するという心がけでものを見ていけば、天地自然の理法というものも分かってきて、その人の動くところすべて理に適した動き方をするようになると思います。学問にとらわれず、知識にとらわれず、権力にとらわれず、地位を利用するような動きもしなくなる。すべて自然の理のままに、正しい行いがだんだん高まっていくということになると思いま34［実践］理念経営Labo2023WINTER

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松下幸之助の経営哲学す」（『松下幸之助発言集36』362ページ）この30年後（1978年）に出版した『実践経営哲学』においては、素直な心の意義をさらに積極的に展開している。「経営というのは、天地自然の理に従い、世間、大衆の声を聞き、社内の衆知を集めて、なすべきことを行なっていけば、必ず成功するものである。その意味では必ずしもむずかしいことではない。しかし、そういうことができるためには、経営者に素直な心がなくてはならない。天地自然の理に従うとは、雨が降れば傘をさすというようなものだと述べた。雨が降れば、ごく自然に傘をさす、それが素直な心なのである。それを意地を張って傘をささないということは、心が何かにとらわれているからである。それでは雨にぬれてしまう。経営はうまくいかない。世間、大衆の声に、また部下の言葉に謙虚に耳を傾ける。それができるのが素直な心である。それを自分が正しいのだ、自分のほうが偉いのだということにとらわれると、人の言葉が耳に入らない。衆知が集まらない。いきおい自分一人の小さな知恵だけで経営を行うようになってしまう。これまた失敗に結びつきやすい。京都東山の真々庵にて素直な心になれば、物事の実相が見える。それにもとづいて、何をなすべきか、何をなさざるべきかということも分かってくる。なすべきを行い、なすべからざるを行わない真実の勇気もそこから湧いてくる」（『実践経営哲学』文庫版162～164ページ）このように幸之助は、素直な心を持たないと、ある一定の見方にとらわれて、視野を狭くしてしまうことを指摘した。自分だけが儲かればよい、名声を得たいといった欲求が強ければ強いほど、何か無理なことをしようとする。無理とは文字通り、理がない、すなわち自然の理法に反することである。一方、私心にとらわれず、客観的に自己を見つめ、素直な心であれば、視野が広がり、その時々において何をなすべきかという自然の理法が見えてくるというのである。幸之助の世界観に立ち返れば、宇宙根源の力が、自然の理法に従って、人間を含めた万物に働きかけている。その働きに素直に呼応することが大切なのだが、こうした宇宙的規模の大局的見地を持たず、私的欲望のままに経営を行なえば、偏った見方にとらわれ、いずれ事業は衰退することを、幸之助は教えてくれる。逆に自然の理法の存在を信じることによって、人知のはかなさを知り、謙虚で素直な心になることによって、視野が広く力強い経営となることを、幸之助は強調したのだと思われる。L［実践］理念経営Labo2023WINTER35

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経営マインド探訪「生かされている哲学」が企業と社会に繁栄をもたらす大平浩二（明治学院大学名誉教授、新潟産業大学特任教授）岐路に立つ現代の企業経営。日本経済を導いた経営者たちの考え方をひも解き、今に求められる指針を見出す数値・データ化の「実証」偏重に対する危惧自分の仕事を目に見えるかたちで知り、かつ確かめたいと思うのは、経営者に限らず人間の基本的な欲求としてごく自然のことである。情報が瞬時に世界中へ広がる今日のような時代においては、なおさら結果をできるだけ即座に、かつ簡潔に知りたいと考えるものだろう。そのため、現実を数値・データ化し、それにもとづいて物事を判断する「実証」と呼ばれる手法がとられ、様々な局面で大きな成果をあげている。これは近代西洋科学を基礎としたアプローチである。しかし、人間にとって重要なのは、はたして結果だけであろうか。そして、今の経済社会においては、「実証」という名の下に結果として示される数字が偏重されすぎていないだろうか。というのも、仕事の中で今までにないような大きなアイデアを発見し、それが成果に結びつくまでのプロセスには、必ずしも実証的（数値的）には証明（説明）できない部分が少なくないはずである。そこにどのような要因が作用しているのかを探ることが重要だという観点から考察してきたのが拙著『見えないものを見る力』であり、これまでの本連載でもあった。そのポイントを示すと、1つは「苦しさに耐える経験から目をそらしてはならない」という意味での「ネガティブ・ケイパビリティ」である。詳しくは前々回を参照されたいが、このプロセスには強い情熱と信念が不可欠であることを付言しておかなくてはならない。もう1つは、この情熱や信念を支える「主体性（軸足）」である。前回は諏訪の地場産業を例に解説したが、今回はそれがどのようにして生まれるかについての企業事例を紹介しよう。「生かされている哲学」による発見経営者（人間）の考えを形づくるプロセスは、人によって多少の差はあるが、大まかには以下のように分けうると考えられる。①生まれ育った気候風土（自然環境）②家族を原点とする人との交流③日本においては農業を起点とする地域共同社会④時代背景と仕事⑤思索と感性この考え方は、「その土地特有の要因が、人と社会と文化を形づくってきた」とする哲学者の和辻哲郎や作家の司馬遼太郎の歴史観にも通じるだろう。諸々の要因の組み合わせは、決して簡略化した数値で表されるものではない。しかし、そこにこそ人間意識の根底を形づくる“何か”が存在するのである。今回、その観点から取り上げるのは、香川県にある「勇心酒造」。19世紀なかばの安政元年創業の知る人ぞ知る造り酒屋である。5代目社長を務める徳山孝氏は、日本酒造りという伝統的な発酵技術と近代西洋科学の成果をうまくつなぎ合わせて、新しい皮膚の水分保持能「ライスパワーエキス」を発見するに至った。現在までに40種類を超えるエキスが発見されているが、なかでもNo.11は、「皮膚水分保持能の改善」という医薬部外品として年に認可されている。日本酒造りは、ご承知のように、こうじ米、麹菌、酵母、水、そして季節の諸条件といった自然の素材の組み合わせで成り立っている。その微妙とじで総合的な判断は、昔から杜氏の感36［実践］理念経営Labo2023WINTER

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経営マインド探訪性に委ねられてきた。言い換えれば、すべてが自然の産物からでき上がっているといってよい。徳山氏は、すべての生き物が存在する大きな自然や、家庭から社会全体に至るまでの人間がつくり上げた諸制度を背景として思索を重ねる中で、みずからの「主体性」が育まれたと語る。その主体性は背景を侵食するものではなく、両者はバランスが保たれるかたちで共存する。こうした関係を徳山氏は「生かされている」と表現している（詳しくは同社HPと拙著を参照）。それに対して、近代西洋科学の根底にある思想では、主体性が自然を征服しようとし、いわば「生きていく」という強い姿勢で表れる。徳山氏は、近代西洋科学だけではとらえることができなかった多くの微生物の働きと、米が持つ本質との組み合わせの中に、今までとは異なる様相を見出し、そこから新しい素材である「ライスパワーエキス」を発見した。いわば、「創造（伝統の知恵）」と「科学」の合一であり、彼なりの「ネガティブ・ケイパビリティ」と「主体性」から編み出された「生かされている哲学」がそこにうかがえる。無限の要素の中から“何か”を感得するには同じように微生物を研究し、子供時代から農業経験のあった大村智教授（北里大学特別栄誉教授、2015年度ノーベル生理学・医学賞受賞）は次のように語っており、徳山氏と共通する思いがあると思われる。「日本という国は生物の力をうまく活用して今日まできた歴史がありせんだつますね。我々の先達たちは、本当によく微生物の生態を知って、そして他人のために、世の中のためにという姿勢でずーっと来ている。その中のほんの一点として私が存在する」（ノーベル賞受賞時の北里大学でのインタビューより）背景の中で育まれた「主体性」という自分の拠って立つ軸足を持ち、まわりの世界とのバランスを保ちながら存在するというところに「生かされている哲学」の基本がある。その哲学があれば、時代時代の局面において、表面的な流れに右往左往する必要はない。問題は、どのようにしてみずからの「主体性」をつくり上げるかである。その過程は、見えない要素の無限の連続だといえる。無限の要素がつながる中から、何を感得するかが問われるように思う。やはり徳山氏も、無限の要素の中から新しい素材の発見に結びつく“何か”を感得したのである。それは感性の領域といえるものだろう。筆者の勝手な推測であるが、パナソニック創業者の松下幸之助の「素直な心」や京セラ創業者の稲盛和夫りたの「利他の心」には、その感性と相通じるものがあるのではないだろうか。一流の経営者を目指すのであれば、目に見える数字だけを追いかけるのではなく、「主体性」を育む感性を大切にする必要がある。「生かされている」が長寿・繁栄を生み出すものづくりに限らず、日本の経済界や産業のすべてにおいて、各自が主体性を持ち、「生かされている」という考えの下に企業経営を行なうことこそが、本当のSDGs（持続可能な開発目標）やESG（環境・社会・ガバナンス）につながるのではないだろうか。そうした企業や経営者は、必ずしも規模（量）の追求を第一目標とはしないため、無理をしてファンドに迎合する必要がない。地域や株主との長い共存関係を構築し、身の丈に合った経営を進めていけばよいのである。それが結果的に、みずからと社会の繁栄につながるはずである。200年以上続く長寿企業を見てみると、日本は世界で最も数多く存在し、全体のおよそ半数を占める。なかでも造り酒屋や和菓子屋をはじめとした製造業が多いが、それらの企業の創業者が持っていた「主体性」と「ネガティブ・ケイパビリティ」が受け継がれてきた結果ではないかと想像する。長く愛され存続している企業というのは、「主体性」を持ってそれぞれの地域に根差し、日々「ネガティブ・ケイパビリティ」に耐えつつ感性を磨き続けているのである。大平氏の最新刊『見えないものを見る力』2022年、PHP研究所刊定価：1,760円（10％税込）おおひら・こうじ1951年生まれ。明治学院大学経済学部専任講師、助教授、教授を経て、現在名誉教授。ケルン大学客員教授（1991〜92年）、2021年より新潟産業大学特任教授を務める。専攻は経営学説史、経営組織論。経営哲学学会会長、日本経営学会理事等を歴任。L［実践］理念経営Labo2023WINTER37

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プロ・ファシリテーターが斬る!!組織づくり・人づくりのヒント傾聴はなぜ難しいのかPHP研究所人材開発企画部長的場正晃PHPでの長年の現場経験をもとに、組織や人材開発に役立つ情報をわかりやすく解説職場の活性化のカギを握る傾聴。一見、簡単な行為のように見えますが、実は奥が深く実践には困難が伴います。本稿では、傾聴が難しい理由を明らかにすると同時に、効果の上がる実践方法を考察したいと思います。職場のグッドサイクルを回す職場には様々な問題が存在します。マサチューセッツ工科大学元教授のダニエル・キムが提唱する「成功循環モデル」によると、職場の状態とパフォーマンスの関係は、「Ⓐ関係の質」「Ⓑ思考の質」「Ⓒ行動の質」「Ⓓ結果の質」の４つの要素で説明されます。そして、職場に問題を抱え、業績も上がらない組織の多くはバッドサイクル（Ⓓの低迷→Ⓐの悪化→Ⓑの低下→Ⓒの低下→Ⓓのさらなる悪化→……）に陥っているとされます。このモデルが主張しているのはとてもシンプルなメッセージです。すなわち、職場の問題を解決して生産性の高い組織をつくるためには、グッドサイクル（Ⓐの向上→Ⓑの向上→Ⓒの向上→Ⓓの拡大）を回していく必要があるというこ④結果の質とです。そしてグッドサイクルの起点である「Ⓐ関係の質」を向上させるには、コミュニケーションの強化、特に傾聴の実践が決定的に重要なカギを握るのです。傾聴の効用と基本の型上司が部下の話に傾聴すれば、どういう変化が起きてくるでしょうか。部下の内面では、「自分は上司から必要とされている存在だ」という思いが強化され、自己肯定感の高まりや、上司への信頼感が醸成されるでしょう。一方、上司にとって傾聴は、部下や職場に関する情報を収集することができたり、部下との良好な関係をつくることができたりして、強いリーダーシップの発揮を可【グッドサイクル】①⑤関係の質③行動の質②思考の質①関係の質：お互いに尊重し、一緒に考える②思考の質：気づきがある、面白い③行動の質：自分で考え、自発的に行動する④結果の質：成果が得られる⑤関係の質：信頼関係が高まる能にする原動力となるでしょう。このように傾聴という地味な行為が、個と組織をインスパイアし、関係の質の向上につながるのです。傾聴を行ううえで押さえるべき基本の型として、以下の７つがあげられます。❶環境設定：相手がリラックスして話ができる距離や向き合い方、場所等を確認する❷アイコンタクト：時々、相手と視線を合わせて「話を聞いているよ」というメッセージを送る❸うなずき・あいづち・うながし：相手の話にリアクションを示す❹キーワードの繰り返し：相手が①⑤結果の質最も伝えたいことばを繰り返す例）「将来的に営業の仕事がしたいんだね」【バッドサイクル】②⑥関係の質④行動の質③思考の質①結果の質：成果が上がらない②関係の質：対立、押し付け、命令する③思考の質：面白くない、受身で聞くだけ④行動の質：自発的・積極的に行動しない⑤結果の質：結果が上がらない⑥関係の質：関係が悪化する38［実践］理念経営Labo2023WINTER

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組織づくり・人づくりのヒント❺要約・確認：相手の話をまとめて確認する例）「あなたの話を要約すると、資格取得にチャレンジしたいということでいいですか」❻受容：相手の話を受け止める❼質問・提案：相手の同意を得てから質問・提案する傾聴の難しさ以上、７つの観点から傾聴の基本の型をご紹介しましたが、残念ながらそれらを実践するだけでは思うような効果が得られません。型の実践とあわせて、傾聴する際のマインド設定が重要なのですが、それが簡単ではないのです。傾聴していると、相手から発せられた情報が自分にインプットされます（例：「夏休みにハワイに行きました」）。その過程でインプットした情報に刺激されて、自分の内面にある関連情報が想起され、そちらに意識が向かっていくことが往々にして起こりがちです（「ハワイといえば大学時代の友人が住んでいたな。あいつ、どうしているかな」）。つまり、形の上では傾聴しているけれど、内面では別のことを考えて、目の前にいる人の話に100%の意識を向けられないことが多いのです。これが傾聴の難しさの最大の理由といえます。カギを握る人間観松下幸之助のエピソードを見ていると、彼が傾聴の達人であったことがうかがい知れます。例えば、松下政経塾で、問題を起こした若い塾生をいきなり叱責するのではなく、相手の言い分、意見にじっくり耳を傾けていたという事例や、松下電器の入社３年目の若手社員が経営方針と異なる提案をしても、最後まで相手の提案に耳を傾けたという事例などが残されています。なぜ、幸之助はどのような相手に対しても傾聴することができたのでしょうか。それは、幸之助の持っている人間観に起因していると思われます。つまり、小学校４年までしか教育を受けていないという原体験が、「自分以外はすべて師である」という考え方に昇華され、誰に対しても謙虚に素直に話を聴く姿勢ができあがったのでしょう。松下幸之助と同じことはできないかもしれませんが、肯定的な人間観を持って、「この人の話からは何らかの学び・気づきを得ることができるはずだ」と考えてみてはどうでしょうか。そのようなマインドセットをしたうえで、上記の型を押さえた聴き方を繰り返すことで、人と組織を変える、力のある傾聴ができるようになっていく、すなわち傾聴のレベルの向上が図られるでしょう。組織を牽引する経営者、管理監督者の方々には、傾聴の力を磨き高め4444る努力をし続けていただきたいものです。＊PHP研究所では、よりよき人材を育成するための各種マネジメント研修を提供しています。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。まとば・まさあき1990年、（株）PHP研究所に入社し、研修局に配属される。以後、一貫して、PHPゼミナールの普及、および研修プログラムの開発に取り組む。2001年から2003年まで神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得する。中小企業診断士。著作に『“強い現場をつくるリーダー”になるための5つの原則』（PHP通信ゼミナール）。LPHPゼミナール課長研修マネジメント革新コース「与える」マネジメントから「引き出す」マネジメントへ本セミナーの特徴課長職（ミドルマネジメント・中級）管理職を対象とした公開型セミナー。「与える」から「引き出す」へ、マネジメントを革新します。新任課長の昇格時研修、既任課長のフォロー研修に好評です。研修のねらい部下と組織の力を「引き出す」マネジメントの3つの条件①他を頼るのではなく自らの責任で課題を達成しようとする「使命感」②部下や周りの人材の意見に耳を傾ける「素直な心」③部下の可能性を信じる「人間観」対象受講料定員期間肯定的な人間観使命感を共有し、素直な心で衆知（多くの意見・考え方）を集め、肯定的な人間観で人を見ることが「引き出す」マネジメントの要諦です。実施要項総学習時間課長職の方々※一つのまとまった組織を運営し、組織としての成果を最大化することが求められている方々77,000円（税込）※1資料代［集合研修は昼食代］含む※2「社員研修VA+」会員は10％割引集合研修：18名オンライン開催：25名※1開催1社5名まで2日間詳しくはウェブサイトをご覧ください引き出すマネジメント使命感14.5時間素直な心［実践］理念経営Labo2023WINTER39

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特別対談再録初めに願いありき松下幸之助（パナソニックグループ創業者）×稲盛和夫（京セラ創業者）2022年8月24日に逝去した京セラ創業者・稲盛和夫氏は、「京セラフィロソフィ」という経営理念を打ち立ててその実践くっしを追求し続け、数々の企業を成長へと導いた当代屈指の「理念経営の体現者」であった。創業してまもない頃は経営で悩んだ時期もあったものの、松下幸之助との出会いで経営者として目覚めたという。かつて両者が経営観を語り合った特別対談の一部を紹介し、理念経営の先達の冥福を祈念したい。人間の強い願望こそ松下まさにあなたのやり方を見てますと、時代の1歩先を見てやっておられますわね。ところが一般的には、時代とともにか、1歩後に下がってついていくというところですな。確かに稲盛さんのおっしゃる通り、経営の原点というんですか、経営に対するしっかりした考え方を持って、特にこれからは経営をやっていかんとね。そういうことからすれば、あなたの会社はほんとうに自主的な事業をやっておられる。われわれもおおいに見習わないといけないと思いますよ。稲盛いいえ、とんでもございません。私がそういうことに目を開かせていただいたのは、実は、松下さんのお話を京都でお聞きしたからでございます。松下ほおー、いつごろのことでしたか？稲盛、8年前、たしか“ダム式経営”という話を聞かせていただいたことがありました。私はちょ、3年目で、会社経営で非常に悩み、困って、聴衆の一番後ろのところに座って聞いておりました。そのときに、ものすごく感銘を受けたんです。講演が終わりましたときに、私の周囲にいた中小企業の経営者たちが、小声でいろいろな感想を言っていました。多くの人たちも私と同じようにおおいに感銘いたしておりましたが、質疑応答のときになり、1人の人が「ダム式経営が必要だと松下さんは言われたが、松下さんご自身、今は成功されて余裕があるから言えるけれど、われわれにはまったく余裕がない。どうしたらダムがつくれるのか、そのことを教えてほしい」というような質問をしたんです。そうしたら松下さんは、「そうですなあ……、そらやっぱし、ダム式経営をやろうと思わんといかんでしょうな。ハッハハハ」と言って笑われたわけです。（笑）松下なるほど……。稲盛そのとき私はほんとうにガツーンと感じたのです。余裕のない中小企業の時代から「余裕のある経営をしたい、オレはこういう経営をしたい」と、ものすごく強い願望を持って毎日毎日1歩1歩歩くと、何年かの後には必ずそうなる。「やろうと思ったってできやせんのや。なにか簡単な方法を教えてくれ」というふうな、そういうなまはんかな考えでは、事業経営はできない。「できる、できない」ではなしに、まず、「そうでありたい。オレは経営をこうしよう」という強い願望を胸に持つことが大切だ、そのことを松下さんは、言っておられるんだ。そう感じたとき、非常に感動しましてね。ただ、多くの聴衆の中には、そういう精神的なものについてはあまり好きではないものだから、なにかもっと簡便な、アメリカ的な経営のノウハウでも教えてもらえるのではないか、こうやったら余裕ができますよと教えてもらえるのではないかと期待していたのでしょうね。松下同じことをお話してもほんとうに理解してくださる方もいれば、10年かかってもなかなかわかってくれない人もいます。稲盛さんはうまいことわかってくださったが……。だから今、稲盛さんは成功されているんですよ（笑）。わからない人は、まだ迷っているかもしれませんな。稲盛ますます近代化し、科学万能時代みたいですけれども、やはり人間がやる以上、そういう人間の強い40［実践］理念経営Labo2023WINTER

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初めに願いありき願望というものが大切なのですね。「酒もええかげんにせえ」稲盛ところで今日、価値観の多様化などとよくいわれますね。社員一人ひとりがさまざまな考え方を持つようになってきまして、そういう中では企業なり会社を運営して行く場合、社員全員を1つの考え方に統一する必要はなく、それぞれの個性豊かなやり方をさせてやるべきじゃないだろうか、という主張がありますが、松下さんはこの点いかがお考えでしょうか。松下みんなそれぞれに価値観も違えば、また個性も違うしね。それぞれが自分の特色を発揮して、思う存分にやればいいと、基本的には考えています。ただ、われわれは“この山へ登るんですよ”という目的だけは、はっきりとさせなかったらいけない。自動車会社なら自動車をつくるのだと。だから飛行機つくったらあきまへんでと（笑）。それぞれの個性をおさえて、こうせえ、ああせえとばかり言わないで、できるだけ自由奔放に仕事をさせたらいい。けれども、目的を誤ってはいかんということだけは言わないといけないと思うんですよ。稲盛確かにそうですね。国家とか地域社会、学校という段階までは自由な文化人としての発想でいいと思います。ただ、会社というところでは、どうもそれだけでは困る。今おっしゃったように、まさに登る山があり、そこへ登るんですからね。登山パーティにたとえるなら、この山へ登ると決めて、登る人を集めたんであって、勝手なことをするために集めたんではない。かりに、私がその登山パーティのリーダーだとします。中には、山に登るという目的だけは一緒でも、夜は酒を食らおうが、それは勝手やないか、こう考える人間が出てくる。あしたは岩場にかかってロッククライミングをやらねばならん。24時間かかっても登り切れないかもしれない。こういうときに、後ろのものがゆうべの二日酔いでふらふらしてた（笑）のでは、これはどうにもなりません。本人のみならず、パーティ全員の生命にかかわる問題ですからね。だから、リーダーとして「酒もええかげんにせえ」と言わなければならない。そうすると、「なんでこういう制約を加えられなきゃならんのや」「いや、山へ登るためには、最低限のルールが要るんだ」と、こう説得しなければならないわけですね。これは、事業を営む場合も同じだと思うのです。今後ますます文明が高度化してきまして、自由人的な発想の人が多くなってくるわけで、新入社員の中には「なんや、このオッサン、ほんまに、おやじにも先生にも怒られたことないのに、なんで怒られなならんのや。勝手やないか」というようなことを言う。今、それとの葛藤みたいな感じなんです、私……（笑）。私のやり方はまさに保守反動の権化といえるかもしれませんが……（笑）。しかし、登山パーティのリーダーは、その登山パーティの生命まで預かっていますから、いいかげんな無責任なことはできない。カッコよくいつも「そりゃあわかるよ、わかるよ」と言っているのは、人がいいのではなく、逆に人が悪いのではないだろうかという気がするんですがね。松下あなたのおっしゃる通りですね。「山へ登る」という目的ははっきりしてるから、こうしないと山へ登れない、そんなことをしたら登れないと、言わざるを得ないですな。目的があれば、自然に、それを達成するためには言うべきことを言わないといけませんから、山から下るような方向へ行ったら、ちょっと待てと、そらあかんでと、言わないといけないわけですな。だから、原則は自由であっても、目的に反することは許されませんね。稲盛よく“人・物・カネ”というものをどう動かすかということが経営だといわれますが、それよりも、その“人”が持つ精神的なもののほうがこの3つよりは、もっと大切ではないだろうかという気が、実はしているのです。事業を成功させ得る人というのが持つべき精神構造みたいなものを、ほんとうにわかった連中が何人いるかで、その企業の強さが決まるように思います。ですから、みんなに私の考え方というものを伝えよう、伝えようと心掛けています。実際の技術的な問題よりは倍ほどそのほうに時間をとっているような気がします。松下つまり、制約がなくてあり、あってないようなことですね。そういう状態においてみんなをまとめていくということが必要ですな。稲盛それはもうほんとうに極意でございましょうねえ。私みたいな凡人は、制約を一生懸命つくってますけれども。（笑）松下その枠をきつくするか、弱くするか、全然ないようにするかということは、リーダーと非リーダーとの内容程度によりますわな。（『Voice』1979年6月号「21世紀をめざして」より一部抜粋）L［実践］理念経営Labo2023WINTER41

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BOOKS〈知をひらく〉～経営の着眼点～闘魂を燃やし続けた稀代の経営者PHP理念経営研究センター研究員星墜つ」。2022年8月末に「巨各メディアが一斉に報じた。同月24日、京セラ創業者で名誉会長である稲盛和夫氏が逝去した（享年90）。経済界に多大な影響をもたらした巨人の訃報に接して、各いた界のリーダーから悼む声が相次いしのだ。氏の著書を取り出し偲んだ人は多いに違いない。本書2冊は、稲盛ライブラリーが所蔵する稲盛氏の膨大な講話録をしょうりょう渉猟したものだ。『誰にも負けない努力』は現場の責任者に向けて、『経営のこころ』は経営者・経営幹部層に向けて熱いメッセージが述べられている。社内外のリーダーに直接語った内容だけに臨場感にあふれ、“魂から発した言葉”を直々に感得できるのが特徴だ。これらを、パナソニックグループ創業者・松下幸之助の言葉と比べてみると、共通する内容があるものの、受ける印象が大きく異なることに気づく。稲盛氏は闘魂の塊のような人だ。タイトルの「誰にも負けない努力」は、稲盛哲学の全体の中で、最も根底にあるものだと説明している。稲盛哲学のエッセンスは大きくみて、経営哲学を記した「京セラフィロソようていフィ」、経営の要諦をまとめた「経営12カ条」、そして人生の要諦をまとめた「6つの精進」の3つに分けられるが、これらすべてに共通する信念が、「誰にも負けない努力」であるという。また、それは氏の歩んできた人生を最も端的に表している時政和輝（4ページ）と同時に、自然界に生きるものの義務だとも述べる。「過酷な条件の中で、植物も動物も、みんなひたむきに必死で生きています。いい加減に、怠けて生きている動植物はありません。その自然界のさまをみても分かるように、地球上に住んでいる我々人間も真面目に、一生懸命に生きることが最低条件であろうと思う」（39ページ）一生懸命に生き、働くことは、自然の摂理として当然のことであり、それをはずれて仕事や人生の成功はないというのだ。稲盛和夫述、稲盛ライブラリー編『誰にも負けない努力』2019年、定価：1,430円『経営のこころ』2022年、定価：1,540円(いずれも10%税込、PHP研究所刊)それに比べて、松下の言葉は整然としていて静けさがある。もちろん、仕事への真剣さについては同様に語っている。「人生は真剣勝負である。だからどんな小さな事にでも、生命をかけて真剣にやらなければならない」（『道をひらく』PHP研究所）。しかし、その一方で、「清らかな泉のように、毅然たる一輪の花のように、強く正しく働いてゆこう」（同書）と、情熱をむき出しにしない芯のある強さを感じる。では、「経営の真髄」についてはどうだろうか。稲盛氏は、『経営のこころ』で「経営には、モノもカネも大事だが、いちばん強くて頼りになるのは『人の心』である。だからこそ、心で結ばれた強固な集団をつくることに焦点をしぼり、人の心をベースとした経営をしていくのである」（16ページ）と述べる。稲盛氏は経営においても、徹底して「心のあり方」を重視した。「誰にも負けない努力」によって自身の魂を磨き高めると、「利他の心」が生まれてくる。この私心のない思いは、従業員の魂をゆさぶり、心を燃えあがらたいまつにせていく。みずからの闘魂を松明して、全従業員に燃え移していくイメージに近い。本書2冊を一読すれば、稲盛氏の野性的ですさまじい生命力によって、自身の心が活き活きしてくることに気づくだろう。一方、松下が心を尽くしたのが「衆知経営」だ。「私にいささかなりとも功績があるとすれば、『衆知を集めてやらなくてはいけない』ということをつねに考え、心がけてきたことであろう」（『事業は人なり』PHP研究所）松下は、歴史上1人として同じ人物はいないからこそ、それぞれの違いを尊重し、意見を聞こうと努めた。「10人の人がおれば10人の人の知恵を借りる。100人の人がおれば100人の知恵を借りる。1億あれば1億の知恵を借りるという心がまえでやっているんです」と語る。松下の場合は、自分と同じ道でなくてよい、自分だけしか歩めない、天与の尊い道を歩め、と背中を温かく押してくれる。けいがい両氏の謦咳に接することができれば、また違った印象を受けるのだろう。もはや残された著書や音声を通じてしか会えない寂しさを思う。L42［実践］理念経営Labo2023WINTER

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松下幸之助肉声講話＋PHP理念経営研究センタースタッフ解説PHP研究所公式チャンネルにて好評配信中！……ほか多数ご視聴＆チャンネル登録はこちらから→2023WINTER1-3（Vol.4）2023年1月27日発行発行人渡邊祐介編集主幹川上恒雄編集長佐々木賢治発行所PHP理念経営研究センター［編集スタッフ］〒601-8411京都市南区西九条北ノ内町11番地TEL075-681-9166メールkenkyu1@php.co.jpURLhttps://www.php-management.com/長尾梓／時政和輝／桐本真理［制作・普及協力］池口祥司／的場正晃／石田賢司／川本佑斉／西岡拓真動画順次公開＆メルマガ登録受付中誌面の内容がよりよくわかる特別動画をこちらのウェブサイトで順次公開しています。↓また、上記動画の公開時期および『［実践］理念経営Labo』の最新情報をメルマガ（無料）にてお届けします。ご希望の方はこちらのウェブサイトよりメールアドレスをご登録ください。↓［デザイン／制作］朝日メディアインターナショナル株式会社©PHPInstitute,Inc.2023Allrightsreserved

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パナソニックミュージアムＰＨＰオンラインセミナー研究員が解説する松下幸之助の経営観・人生観毎回大好評のパナソニックミュージアム主催ＰＨＰオンラインセミナー。4期目となる今期は、2022年10月1日から、「エピソードから知る経営者・松下幸之助」と「松下幸之助に学ぶ『こころ』と『人生』」の2本立てでお届けしています。ビジネスパーソンにおすすめエピソードから知る経営者・松下幸之助講師まもなく開催渡邊祐介PHP理念経営研究センター代表1/28sat.「自己観照」講師：川上2/25sat.講師「決断の作法」講師：渡邊幸之助を初めて知る方にもおすすめ松下幸之助に学ぶ「こころ」と「人生」川上恒雄PHP理念経営研究センター首席研究員3/25sat.閲覧無料予約不要「現代の『素直な心』とは」講師：川上2023WINTER1-3（Vol.4）2023年1月27日発行ＰＨＰ理念経営研究センター時間：14時00分～15時00分（各回共通）・事前予約不要、参加費無料時間になりましたらアクセスしてください。・詳細はパナソニックミュージアムHPで随時更新されます。・YouTubeLive（ChannelPanasonic）にて配信後、2カ月間アーカイブ公開（下記参照）。パナソニックミュージアムHP講座一覧ページアーカイブ情報202210/1sat.「人を育てる―ほめ方叱り方」公開終了10/29sat.「運命を生かす」公開終了11/26sat.「仕事と成功」1/31まで限定公開中！アーカイブ再生回数各回10万超！

