https://my.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/

# ビジュアルブック2024（日本語版）

## Page 001
![Page 001の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000001.jpg)

【ページ内のテキスト情報】



## Page 002
![Page 002の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000002.jpg)

【ページ内のテキスト情報】



## Page 003
![Page 003の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000003.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

京都大学の研究者たちが育む知は、時間と空間を超えて広がり、未来のさらなる知を生み出し、世界が直面する課題の解決策につながっていきます。こうした知の集積は、社会の共通資本です。これを私たちは「KyotoUFutureCommons」と名付け、広く皆さまに共有する取り組みを始めました。本冊子では、125人の研究者が描く未来像を、寄せられたメッセージを通じて紹介し、研究が社会にもたらす変革の力をお伝えします。https://commons.research.kyoto-u.ac.jp/1

## Page 004
![Page 004の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000004.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

1897年に創設された京都大学のモットーは、自重自敬の精神に基づく自由の学風であり、「地球社会の調和ある共存に貢献すること」を基本理念として、多彩で独創的な研究活動を進めてきました。125年を超えるこの精神的伝統を引き継いで、今も4000人以上の研究者たちが、人と社会の未来をみつめながら、あらゆる領域で日々創造的研究に励んでいます。本冊子は、本学の若手研究者125人の自らの研究を通して描いた未来への提案をまとめたものです。今この地球上の人と社会は複雑で困難な多くの課題に直面しており、容易にその未来を見通すことができなくなってきています。私たち研究者ができることは、新たな知の領域を切り拓くことによって、少しでもこの課題の解決に貢献していくことです。本冊子は、本学の若い研究者達からの提案の最初の号ですが、もちろん最後の号ではありません。これからも発信は続きます。この冊子が、皆様に新たな知との出会いをもたらし、学術の可能性を再発見する契機となることを願っています。京都大学総長2

## Page 005
![Page 005の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000005.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

京都大学の研究活動に対する皆様のご支援に心より感謝申し上げます。本学では、長年培われた知的基盤の上に最先端の科学を追求し、真理の探究に邁進しています。私たちは常に新しい分野の開拓に挑戦してきました。その原動力となるのは、研究者の好奇心や探求心、「こんな未来を創りたい」という思いです。この冊子では、専門分野を越えて広がる研究の姿を示しています。研究者たちが描く未来社会と、その実現に向けた取り組みが、地球規模の課題解決にどうつながるかをご覧いただけると思います。研究者は常に様々な発見をしています。その発見が素晴らしいと人々は驚き、さらには感動を呼び起こし、やがて世界を変えていく。本学の研究者は切磋琢磨し、感動を生む発見をめざして未来への努力を続けています。この冊子を通じて、伝統と革新が融合した本学の研究の魅力を感じていただき、未来への希望を抱いていただければ幸いです。今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。理事（研究推進担当）・副学長3

## Page 006
![Page 006の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000006.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

Contribution北川宏理学研究科教授20年ほど前から、異なる元素を原子レベルで混ぜ合わせて新しい物質を作る「元素間融合」に取り組んできました。2020年、水を電子分解して水素を製造する触媒として性能の高い5つの元素（ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金）を原子レベルで混合し、合金を作ることに世界で初めて成功しました。しかし、この“秀才”5元素合金の性能を調べると、単独の金属で最も優れた性能を持つ白金の2倍にとどまり、正直なところ私はがっかりしました。他方、水素を発生せず、触媒としては“劣等生”の金、銀、オスミウムを先の5元素に混ぜて世界初の８元素合金を作ったところ、反応効率は白金の11倍、5元素合金の5倍になったのです。これは驚きでした。この研究成果から、私たちの社会や教育についても考えさせられました「能力別クラス」や画一的な「金太郎飴教育」。「選択と集中」の限界、を示唆しているのではないか。多様性を担保しなければ、新しい発想は生まれません。異なる思想や、文化が交わるときに新たな化学反応が起こるのです。大学には、学生の多様性を確保し、多様な人間同士の掛け算から予想もつかないワクワクする反応が自然と起こる環境作りが求められます。そして、自ら「異物」となって世界を変えていく勇気と、常識にとらわれない発想を持つ人がどんどん出てきてほしいと思います。予期せぬ組み合わせから生まれる発見が、未来を切り開くのです。4

## Page 007
![Page 007の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000007.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

宇宙世紀を支える月の水資源とシスルナ科学榎戸輝揚理学研究科月や火星、小惑星などの宇宙フロンティアを開拓するには、その玄関口である月に水資源を見つけることが大切です。月面には絶え間なく宇宙線が降り注ぎ、中性子を発生させています。私たちは、中性子が水素の原子核（陽子）に衝突して減速する性質を利用して、中性子の測定から水資源を見つけ出す計画を進めています。この計画では、これまで取り組んできたX線天文学で培った宇宙放射線の測定技術や、雷や雷雲からガンマ線を観測するシチズンサイエンスのノウハウも活用し、月周辺に多数の観測網の展開をめざします。実現すれば、月周回機での中性子寿命の測定といった素粒子実験や、地球と月の間の領域（シスルナ領域）の全体を用いたガンマ線バーストでの宇宙論の研究に貢献するなど、「シスルナ科学」ともいうべき宇宙世紀の新しい分野が拓かれます。5

## Page 008
![Page 008の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000008.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

地上に太陽を核融合エネルギーの実現へ金史良エネルギー理工学研究所核融合エネルギーを利用する「核融合発電」は、持続可能な未来を実現する革新的技術として注目されています。海水を燃料とするため原料枯渇の心配がなく、既存の発電方法に比べて地球環境への負荷も軽減されます。さらに、高レベルの放射性廃棄物が排出されないため安全性も高く、エネルギー問題を根本的に解決する可能性を秘めた発電方法です。京都大学では、独自に考案された実験装置「ヘリオトロンJ」を用いて、プラズマをヘリカル磁場で閉じこめて核融合エネルギーを生成する研究が行われており、私は、プラズマを閉じ込める上で最大の障害となる「乱流」の特性を理解して制御する手法の開発に取り組んでいます。太陽が熱や光を生む仕組みである核融合反応の活用技術が、地球上に生きる人々の生活向上につながることを期待しています。6

## Page 009
![Page 009の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000009.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

物理学とAIの融合で探る世界の新しい認知方法橋本幸士理学研究科人間が世界を認知するとはどういうことでしょうか。物理学は、数学的な記述によって私たちの周りの世界、そして宇宙におけるさまざまな現象を法則化し、予言する学問です。特に、私の専門とする素粒子論は、世界を構成する根源を探ることを究極の目標としています。一方、近年飛躍的に研究が進んでいる生成AI。こちらも、人間が世界を認知する方法をコンピュータでモデル化し、そして次に出てくる言葉や映像を予測していく学問的探究の成果と言えるでしょう。人間が世界を認知する方法としての、これらを統合した「学習物理学」という新しい学問を、私は築こうとしています。7

## Page 010
![Page 010の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000010.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

大きな量子系を数学によって理解する緒方芳子数理解析研究所私は、量子多体系の物理を数学的な立場から研究しています。量子多体系とは、原子核や電子の運動など、たくさんのミクロな要素が量子力学に従って相互作用しながら時間発展していく物理系の総称です。たとえば、近年注目されている量子コンピュータはこの量子多体系の仕組みをもとに発案されています。また、金属が電気を流したり、磁気を帯びたり、熱を伝えたりといった身の回りの物理現象も、精緻に理解しようとすれば量子多体系に行き着きます。量子多体系の持つ性質を一般的かつ数学的に厳密に定理の形で示していくことで、物理学の理論に数学による裏付けを与え、物理現象をより深く理解することに貢献したいと思っています。8

## Page 011
![Page 011の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000011.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

トポロジーの力を理論物理学にさらにその先へ山下真由子理学研究科トポロジーは図形や空間、さらにそれらが高次元化・抽象化された対象を扱う数学の分野で、私は特に理論物理学との関係を研究しています。「連続変形で不変な性質」を調べるトポロジーの考え方は、素粒子物理学や物性物理学でも有用だとわかってきました。数学が持つ抽象化のパワーは物理現象の統一的な説明を可能にし、物理学からの動機が新しい数学的発見をもたらすこともあります。このように数学と物理学が相互作用しながら発展していくのが刺激的です。私の研究が今の社会にどう貢献するかを具体的に説明するのは難しいですが、純粋数学の研究は数十年後・数百年後に思わぬ形で応用されることが多く（たとえば量子コンピュータなど）、私たちの研究もその一例となることを信じています。これからも分野間の架け橋になるような研究をしていきたいです。9

## Page 012
![Page 012の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000012.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

無限次元の空間の「まんなか」を捉える入江慶数理解析研究所現代の幾何学では、さまざまな「空間」を考察の主な対象としています。その際に、空間の大域的な「形」を理解するうえで基本となるのがホモロジーという理論です。これは純粋に数学的な興味から100年以上前に考えられた理論ですが、近年はデータ科学等の実社会に関わる分野でも使われているようです。私の主な研究対象は、アンドレアス・フレアという数学者が1980年代に考えたフレア・ホモロジーというものです。比喩的に言えば、これはある種の無限次元の空間の『まんなか』を捉える理論であると私は考えています。私は専ら数学的な興味からフレア・ホモロジーを研究していますが、この理論もいずれは実社会に影響を与えるようになるのかもしれません。10

## Page 013
![Page 013の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000013.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

はるか遠くの星々を通して太陽系誕生の謎を探る大屋瑶子基礎物理学研究所銀河と星、そして太陽系をはじめとする惑星系など、この宇宙には長い時間をかけて豊かな構造がつくられてきました。そういった宇宙形成の歴史は同時に、物質組成の発展の歴史でもあります。これらの過程を物理と化学の両方の視点から総合的に理解することが、「私たちが住む太陽系はどのように生まれたのか」という根源的な問いを解き明かす鍵となります。そこで私は、世界各国に設置された電波望遠鏡を使い、地球から数百光年も離れた星や惑星系を観測して、「惑星系が生まれる時に何が起こっているのか」「そこにはどんな物質があるのか」を研究しています。はるか遠くで星々が誕生する様子を通して、46億年前の生まれたばかりの太陽系の姿を類推し、太陽系の起源という大きな謎に迫り続けています。11

## Page 014
![Page 014の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000014.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

数学でビックデータのかたち・うごきをとらえる平岡裕章高等研究院（CAS・ASHBi）12現代社会にはデータが氾濫しています。しかし、それら膨大なデータを学習するAIの「ブラックボックス問題」に見られるように、データが内包する真の価値を十分には活用できていません。このようなビッグデータを有効利用するには、適切な数学言語でデータの本質となる構造を記述し、その記述言語を用いて現象の背後にある機構に意味を与え理解するプロセスが不可欠です。私が取り組む研究では、最先端の数学とデータ科学手法を駆使してデータの「かたち」と「うごき」に着目した記述子（データの本質的構造を表現する数学的記述言語）を開発することで、この問題の解決に取り組みます。そのために数学・データ科学・応用の三位一体体制で研究を行い、既存の学問分野の枠を凌駕する新融合領域「データ記述科学」の創成をめざしています。

## Page 015
![Page 015の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000015.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

社会システムをアルゴリズムで最適化する川原純情報学研究科私は、社会システムをアルゴリズムによって最適化する方法を研究しています。電線のネットワークで電気を家庭に運ぶにあたって、電気を停止させずにメンテナンスを行うための切り替え手順を考案したり、国政選挙の選挙区を策定する際に一票の格差を小さくするための選挙区の分け方を考えたり、災害時に住民が避難する避難所を最適な方法で割り当てたりと、社会システムには解決すべきさまざまな課題が存在します。これらの問題を、点と点を結ぶ線からなる構造である「グラフ」として表現し、グラフの問題を解くための方策である「アルゴリズム」を考案することで、より良い最適化の方法を模索しています。研究論文発表だけではなく、実際に社会で動くアルゴリズムの実装をめざして、日々の研究に取り組んでいます。13

## Page 016
![Page 016の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000016.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

ランダム行列理論で複雑なシステムの本質に迫るCOLLINS,BenoitVincentPierre理学研究科私の研究の主な目的は、ランダム行列理論という数学の理論を用いて大規模で複雑なデータやシステムの構造を解析し、背後にある普遍的な法則を明らかにすることです。この理論は、統計学や量子情報理論といった分野で応用され、たとえば金融市場の動きを解析する、無線通信システムの性能を評価するなど社会のさまざまな場面で重要な役割を果たしています。特に今後は、情報量の飛躍的な増加にともなって社会のシステムはより複雑になっていくでしょう。今まで以上に高度なデータ解析手法が求められる中、より効率的に情報を処理し利用するための強力なツールとしてのランダム行列理論の可能性を探究することで、経済や社会問題の解決に貢献できると期待しています。14

## Page 017
![Page 017の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000017.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

最適な選択を科学する「数理最適化」福田エレン秀美情報学研究科人はさまざまな状況で「最も良い結果」をめざします。たとえば、企業は限られた予算で最大限の利益を得ようとします。運転手は数多くのルートの中から、最も早く目的地に到着する道を選びます。ゲームプレーヤーは最良の選択をして勝負に挑みます。このように日常の中で生じる「最適化」の問題を解決するために、「数理最適化」という研究分野があります。数理最適化は、現実の問題を数学の言葉で記述し、計算機を用いて解決策を導き出す技術です。私はその中でも、複雑な数理モデルに対する解決策（アルゴリズム）の開発に取り組んでいます。将来的には、より複雑な応用問題に対応できる高速なアルゴリズムを開発し、人々の「最適な選択」を科学の領域から支えたいと考えています。15

## Page 018
![Page 018の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000018.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

理論物理学をブートストラップする中山優基礎物理学研究所コンピュータを起動することを「ブート（ストラップ）する」と言いますが、これは昔、底なし沼にはまった男が、自分の靴の皮紐（ブートストラップ）を持ち上げて危機を脱したという寓話に由来します。このように、外部の情報を借りずに内部的な条件だけで問題を解く手法は「ブートストラップ」と呼ばれ、その考え方は21世紀の理論物理学において一つの潮流となっています。物理学の究極法則は、外部から与えられたインプットではなく、内部構造の無矛盾性のみで決まっているのではないでしょうか？実際に、宇宙の始まりや物質の相転移、核力の構造など、物理学の難問が次々とブートストラップの手法で解明されています。自然界の統一的な基本法則の解明をめざして、皆さんもブートストラップしてみませんか？16

## Page 019
![Page 019の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000019.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

column伝統と革新の基礎理学「新シキ時代ノ代表者トナレ」これは、湯川秀樹が物理学研究の目標を定めたとき、ノートに記した決意の言葉です。そこから約1世紀。京都大学の基礎理学研究分野では、たゆまぬ真理の探究により国際的に顕著な業績を収めてきました。この精神を受け継ぎ、京都大学は基礎理学を追究する研究所を設立しています。1953年には、湯川のノーベル賞受賞を記念して基礎物理学研究所を創設。素粒子から宇宙まで、幅広い研究が行われています。その10年後には、数理解析研究所が日本初の数学・数理科学の専門研究所として開設されました。フィールズ賞や、ガウス賞、チャーン賞、ブレイクスルー賞などの受賞者を多数輩出し、確率微分方程式の発見や、代数解析学の構築・発展など、常に世界をリードし続けてきました。現在、応用数学分野は、AIやビッグデータ解析技術の発展により注目が高まっています。企業との共同研究も展開され、その一つの、未来のモビリティ社会の基盤研究では、安心して使えて誰もが納得する移動を数学的に保証する新たなアルゴリズムの開発が進められています。素粒子物理学の分野でも、革新的な研究が進められています。爆発的に進化している機械学習を理論物理学研究と融合させ、新法則の発見や新物質の開拓など基礎物理学の重要な課題に挑み始めました。京都大学は、これからも純粋理学の最前線に立ち、新たな時代を切り拓く挑戦を続けていきます。17

## Page 020
![Page 020の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000020.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

「強度」の根源を理解し、壊れない材料を実現する平方寛之工学研究科われわれ人類は革新的な製品を創出するたびに、予期せぬ破壊によって大きな損失を受けてきました。これを防ぐには、使用する材料がどれくらい強いかをよく理解し、その特徴を活かして製品を設計することが不可欠です。しかし、材料の強度がどのように決定されるかを深く理解してコントロールする技術は、いまだ十分には確立されていません。私は、材料に電子や光を照射して余剰な電子を注入すると、もとの材料の特性が大きく変わる現象に注目しています。ガラスのように脆い材料が、電子注入によって金属のように変形しやすい材料に変わることもあるのです。この研究を通して、材料の強度を変化させる根源的な仕組みを解明し、さまざまな破壊現象に耐える「壊れない材料」を実現することで、持続可能な社会の実現に貢献したいと考えています。18

## Page 021
![Page 021の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000021.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

「摩擦」のコントロールで高性能な機械をつくる平山朋子工学研究科皆さんは、「摩擦」というと何を思い浮かべますか？「国家間の摩擦」や「人間関係の摩擦」というように、摩擦という言葉にはネガティブなイメージがあるかもしれません。しかし、私の専門分野である機械工学においては、摩擦は必ずしもネガティブなものではありません。ブレーキやクラッチなど、摩擦がなくてはならない部品もあります。私は、機械の中で摩擦をいかに適切にコントロールするかを研究しています。機械工学の中では裏方のような仕事ですが、摩擦のコントロールなくして性能の良い機械は実現できません。私は、機械の高性能化・省エネルギー化を舞台裏で支える、この「摩擦工学（トライボロジー）」という学問分野をこよなく愛しています。19

## Page 022
![Page 022の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000022.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

冶金学を応用し、未来を変える結晶をつくる川西咲子エネルギー科学研究科原子が集まって結晶を形づくる「結晶成長」。結晶の特性を発現させるためになくてはならない、材料製造プロセスにおける心臓部です。創エネ・省エネの鍵を握る太陽電池材料やパワー半導体材料を結晶成長により作製し、高品質な材料を得るためには、高温で進行する結晶成長を原子レベルで制御しなければなりません。私は、結晶成長の過程で多彩に変化する結晶の「かたち」や「いろ」を直接観察する新しい方法を導入し、革新的な先端材料の作製やその成長プロセスの提案につなげたいと考えています。この研究にあたっては、先人たちが築き上げた冶金学（鉱石を製錬して金属を製造する技術に関する学問）の考えも取り入れます。材料研究の温故知新を通じて、私たちの使命であるカーボンニュートラルの実現に貢献したいと考えています。20

## Page 023
![Page 023の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000023.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

泡でつくる未来の技術名村今日子工学研究科お鍋でお湯を沸かすと、沸騰して泡がボコボコと出ます。炭酸飲料を飲むと、目の前でたくさんの泡が弾けます。泡はとても身近な存在ですが、その動きについては、実はわからないことだらけです。私は、目に見えないほど小さな泡の動きや、その周りにできる流れについて研究しています。この研究は、熱くなった機械を少ないエネルギーでスマートに冷却する技術や、血液検査や新しい薬の開発を少量の試薬で実現する技術の発展に役立っており、幅広い分野の省資源・省エネルギー化に関わるものです。世界には無駄になっている物質やエネルギーがまだまだたくさんありますが、私はそれらを泡ですくい上げて、持続可能な社会づくりに貢献します。21

## Page 024
![Page 024の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000024.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

ダイナミックな力は世界を変えられるMCNAMEE,CathyE.工学研究科化学、製薬、食品、バイオテクノロジー産業で使用される多くの製品では、コロイド（約0.000001mより小さい物質）を液体中に分散または凝集させる必要があります。分散するか凝集するかは、コロイド間に働く力によって決まります。多くの革新的なナノおよびバイオテクノロジー材料は特定の物理的特性を必要としますが、それらの特性は、システム内で働く力を通じて制御することができます。私たちはこうした力を変化させるだけでなく、定量的に制御する方法の開発にも取り組んでいます。原子間力顕微鏡や界面化学技術を用いて研究を進めており、磁場や電場、可聴音、熱などの刺激によってダイナミックに変化する力を利用して物理的性質を制御することで、望みの物理的性質を持つ材料を設計・製造する未来の実現をめざしています。22

## Page 025
![Page 025の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000025.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

光を操るナノ技術で超スマート社会に貢献するDEZOYSA,Menaka工学研究科さまざまな分野で応用されている「光」を自在に操ることができれば、私たちの生活や科学技術に革新がもたらされるでしょう。そこで私たちは、「フォトニック（光）ナノ構造」を用いた光制御の研究に取り組んでいます。具体的には、用途に応じた光物性を持つナノ構造を設計・探索し、さらにそれを人工的につくり出して光を制御するというもので、たとえば半導体チップ単体から高出力で平行なレーザービームを出射したり、狙ったビームパターンを出射したりすることが可能なフォトニック結晶レーザーという世界に先駆けた新たな光源の開発を行っています。研究成果は、車の自動運転やロボットの自動走行に不可欠なリモートセンシング、海洋や宇宙における光センシング・光通信、レーザー加工などのさまざまな分野に活用でき、来る超スマート社会を支える重要な基盤技術として期待されています。23

## Page 026
![Page 026の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000026.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

サステナブルなエネルギー開発をめざして吉光奈奈工学研究科世界人口の増加にともない必要とされるエネルギーの増加や、脱炭素社会に向けた発電方法の転換も求められるいま、新しい資源の採取方法や発電方法が必要とされています。たとえば、CTスキャンやレントゲンでX線といった波を通して身体の内部を調べるように、地下構造の調査方法の一つとして波を地下に通し、その特性から地下の構造を知る手法があります。私は、岩石試料に人工的に波を透過させる実験や、フィールド観測の記録、さらには自然地震の記録を活用して、地下の詳細な構造と波形特性の関係を明らかにし、環境負荷が少ない資源探査や次世代の発電方法の開発につなげようとしています。そして持続可能な社会の形成と成長に貢献したいと考えています。24

## Page 027
![Page 027の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000027.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

社会を下支えする地盤の環境を守る髙井敦史地球環境学堂構造物などの基礎を支える地盤は、すべての生命・社会の基盤として不可欠ですが、人類の社会活動によってさまざまな環境問題に直面しています。その代表例は、化学薬品や廃棄物の不法投棄などによる地盤汚染です。それだけでなく、日本では、環境基準を超える濃度のヒ素や鉛が含まれる地層を掘り起こすとき、掘削物の扱いがしばしば問題になります。しかし日本の国土は狭く、化学物質を含む土砂や岩石をすべて捨てるための土地を確保することは難しいことから、私は、安全性を確保しつつ、できる限り土砂や岩石を再資源化する技術や、合理的に地盤環境を修復する技術の開発・研究を進めています。このような環境負荷の少ない技術開発を通して、地球環境と共生しうる社会基盤の創造をめざします。25

## Page 028
![Page 028の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000028.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

地域に根差した建物やまち並みの保全をめざして杉野未奈工学研究科京都大学の立地する京都をはじめとして、日本には代々受け継がれてきた寺社仏閣や住宅などの伝統的な木造建物が多数残り、文化的な価値とともに地域に根差したまち並みを構成しています。一方、日本は地震の多発国であり、大規模な地震が発生した際には古い木造建物の被害が多数報告されています。多様な木造建物が安全かつ健全な状態で次世代に受け継がれていくように、私は現地調査や計測データの分析、耐震性能を確認するための実験シミュレーション解析といったさまざまな手法に基づいて、実用的な建物の性能評価法の開発や対策の立案に向けて取り組んでいます。また近年では、空き家の増加や、建物の維持に関わる担い手不足などの問題も生じており、耐震工学の観点に加え、地域の歴史・文化など社会的な視点からも研究を進めています。26

## Page 029
![Page 029の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000029.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

地震の発生予測をめざして大谷真紀子理学研究科私の専門は地震学で、地震発生シミュレーションを用いた研究を行っています。地球を覆うプレートの運動に駆動されて、地下の断層でゆっくりと歪みが溜まり、かかる力に断層が耐えきれなくなると、歪みを解消しようとして、地震などの急速な「断層すべり」が発生します。その様子をモデル化し、計算機で模擬するのが地震発生シミュレーションです。地下深くの断層を直接観察することは難しく、断層すべりの発生を左右するさまざまな要素はまだ明らかになっていません。そのため現代の地震学では地震の発生を高い精度で予測することはできませんが、いつの日か天気予報のように、「断層すべり予報」が実現するときが来ることをめざして、地震発生モデルの精密化に貢献する研究を行っています。27

## Page 030
![Page 030の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000030.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

データ科学と地震工学が変革する被害推定技術郭佳農学研究科日本では地震などの自然災害がますます頻繁かつ大規模化しています。建築物・公共構造物が損傷を受ける機会も増えており、災害発生直後、迅速に被害推定などの情報を行政や市民に提供できる技術を実用化することが、喫緊の課題です。私は、最先端のデータ科学を応用した地震工学の知見にもとづきながら、リアルタイムデータを活用する、構造物被害推定技術を開発しました。その技術によって、災害の「モニタリング」「評価」「対応」という３つの側面に対して融合的に取り組むことを可能にしました。今後も巨大地震の発生が危惧されています。被害が発生したときに、迅速かつ的確な対応ができるよう、今後の研究を展開していきたいと考えます。28

## Page 031
![Page 031の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000031.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

災害を起こす巨大海洋波のモデリングと予測CHABCHOUB,Amin白眉センターいま、気候変動が海洋や沿岸環境に深刻な影響を与えています。再生可能エネルギーの必要性も高まる中、海岸・海洋工学は、重要な研究分野となっています。近年増加している「極大波」は強い海上風によって生まれ、最大30mにも達し、船舶、海底油田掘削施設や空港などの海洋構造物、各種沿岸施設、住宅地に大きな被害をもたらします。私は、数学的なアプローチと水槽実験を組み合わせ、こうした極大波のモデル化をめざしています。水槽を揺らし実際に物理的な波を起こす実験は、理論モデルを検証するためだけでなく、巨大な波による被害を正確に予測するためにも重要です。複数分野にまたがる世界的研究者や企業と協働しながら、データ駆動型の極大波予測手法や、津波などの沿岸災害を軽減するための革新的な力学的コンセプトの設計にも取り組んでいます。29

## Page 032
![Page 032の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000032.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

山から海へ世界をつなぐスマートな河川管理KANTOUSH,SamehAhmed防災研究所河川を流れる水と、水により運ばれる砂や石といった土砂を取り巻く環境は、ダム建設、灌漑整備、森林伐採、砂利採取などの人間活動によって変化し、食料安全保障や水供給、河川環境などを脅かしています。私は、画像による土砂移動のモニタリング技術を開発し、土砂と洪水の関係を流域スケールで研究することで、河川生態系を改善し、気候変動に直面する河川周辺地域のレジリエンス（回復力）を強化することに取り組んでいます。さらに、当分野における日本での知識と実践を、フィリピン、ベトナム、マレーシアなどの東南アジア諸国と共有し、水資源を確保しつつ災害リスクを低減する戦略も提案しています。世界中の河川が同様の課題に直面する中、総合的な河川流域管理のために独創的なアプローチを開発することが、私の使命です。30

## Page 033
![Page 033の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000033.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

社会の幸福を育む未来の都市交通Schmöcker,Jan-Dirk工学研究科移動のあり方は生活に大きく影響します。私は都市の交通システムの理解と改善を通じて、社会の安全と幸福、持続可能性への貢献をめざしています。スマートで持続可能な都市のビジョンは多様で、「完璧な交通システム」は簡単に定義できません。歩きやすさ、質の高い公共交通機関、渋滞の最小化などは不可欠な要素ですが、その最適な組み合わせや実現手段は数多くの要因との兼ね合いで決まります。私は観光客による公共交通の混雑、各種のデータを融合した需要予測などの具体的な問題を研究するとともに、公共交通の運賃政策の影響など理論的な探究にも携わっています。数理モデリング、データサイエンス、シミュレーションを駆使して、人間の行動と経済的・物理的制約の一体化をめざします。このように研究することが、交通の研究の本質的な魅力だと感じます。31

## Page 034
![Page 034の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000034.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

地震と共に生きる山田真澄防災研究所日本は世界でも有数の地震大国です。地震の被害を減らすため、これまでさまざまな対策を行ってきました。私は、地震学の知見を社会に役立てたいと思い、緊急地震速報の研究を行っています。緊急地震速報は、日本全国に設置された地震計の記録をリアルタイムで解析し、地震の発生をいち早く検知して携帯電話やテレビでお知らせする仕組みです。いつの間にかインフラの一部になった緊急地震速報ですが、実は年々精度が良くなっているのをご存じでしょうか。新しい手法を開発したり、海底の地震計を設置したり、誤報が出たときは手法を改善して、より良い緊急地震速報となるように気象庁をはじめ研究者が取り組んでいます。将来は、この日本発の緊急地震速報を海外にも展開して、建物の脆弱な発展途上国での地震被害軽減に役立てたいと思います。32

## Page 035
![Page 035の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000035.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

column地震防災研究世界で起こるマグニチュード6以上の地震の約2割が日本周辺で発生しています。そのため、日本は「地震大国」と言われています。地震は、家屋倒壊や崖崩れ、津波、火災などを引き起こし、揺れが収まった後も避難や復興に影響を及ぼす複合的な災害です。京都大学では、地球科学、工学などによる地震の発生メカニズムや被害予測の研究、高精度なシミュレーション開発だけでなく、情報学、社会心理学、経済学など多角的な地震防災研究を展開しています。地震発生後、独自に設置した地震計で臨時余震観測を行うなど、国内外で種々の機動的観測を行ってきたことにより、「観測の京大」として知られています。これらの詳細なデータをもとに、地震のメカニズム解明に力を入れてきました。気象庁との共同研究で、地震発生直後に揺れの到達時刻や強さを予測して警報を出す「緊急地震速報」の技術開発にも貢献しています。現在、新たな地震予測手法の開発につながるとして、プレート境界でゆっくりと微弱なずれ動きが生じる「スロー地震」と巨大地震の関係性を探る研究にも注目が集まっています。2011年の東北地方太平洋沖地震の震源域で観測された後、メキシコやチリなど海外でも大地震の前に発生していることが報告され、国際的な共同研究も展開されています。京都大学は、最先端の研究と実践的な防災対策の開発を通じ、人々の生命と暮らしを守る研究を続けていきます。33

## Page 036
![Page 036の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000036.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

溶液中の分子の謎を解き明かすTHUERMER,Stephan理学研究科原子や分子内で働く力やそれらの内部構造が明らかになったことで、私たちは有益な特性を持つ新しい物質を創成できるようになりました。一方、液体中（特に水溶液中）では分子同士が複雑で予期せぬ相互作用を起こすため、溶液中の化学的・生物学的反応の解釈は仮定や経験に頼らざるを得ません。こうした複雑な現象を解明できれば、私たちの体内の仕組みや大気現象への理解につながることが期待されます。例えば、アミノ酸には二つの鏡像異性体がありますが、生体内ではその片方しかつくられていないという未解決の問題があります。私は分光法を用いて分子から放出される電子を測ることで化学反応性を決める原子・分子内の電子構造を研究し、単純イオンから生命分子までの広範囲の溶質に注目しながら、溶液中の分子過程の根本的理解をめざしています。34

## Page 037
![Page 037の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000037.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

無駄のない美しい分子を設計し、集めて機能化する田中隆行工学研究科一般に分子はナノメートルのサイズですので、機能性材料として扱いやすい形にするには、ひとつの分子を少なくとも10の6乗倍くらいまで大きくするか、あるいは10の6乗個の分子を集める必要があります。しかし、ただ集めただけでは機能が損なわれてしまうことが多く、集め方や単位となる分子の設計を工夫することが求められます。私は、無駄なく高度に設計された分子を創り、それを高密度に集積することで、既存の物質の機能を凌駕する材料を生み出し、エネルギー問題の解決に取り組みたいと考えています。基礎研究によって最適な分子デザインを追求し、美しく多彩な物質を供給することが、将来的に地球規模の課題を解決に導くブレークスルーにつながるでしょう。35

## Page 038
![Page 038の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000038.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

分子のチカラで地球規模の課題を解決する深澤愛子高等研究院（iCeMS）私たちの暮らしは、さまざまな性質をもつ物質によって支えられています。人類が抱える地球規模の問題の多くを根源的に解決するには、これまでの科学の常識では実現できなかった物性や機能をもつ新物質を生み出すことが必要不可欠です。中でも私は、光や電子に関わる物性や機能に焦点を当て、「こんなユニークな構造の分子ができたら、どのような性質が発現するだろうか？」という好奇心駆動型の研究と、「従来の物質では実現できないこんな機能、どうやったら実現できるだろうか？」という標的指向型の研究の両方のアプローチから研究に取り組んでいます。誰も見たことのないような突出した物性や新現象の源となるオリジナル分子を生み出すことができれば、人類の未来にとって新たな可能性が拓けるでしょう。36

## Page 039
![Page 039の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000039.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

©ScienceMangaStudio(2021)あな小さな孔を通してつくる、キレイな未来古川修平高等研究院（iCeMS）コーヒーに砂糖を入れるつもりが、間違って塩を入れてしまった！もう取り返しがつかない！日常で起きそうなこんなことが、いま、より深刻な形で世界中でも起きています。つまり、生活排水由来の極微量の環境汚染物質が海水に混入したり、人間活動によって大気中の二酸化炭素濃度が年々上昇したりしているのです。一度混ざってしまうともう取り戻せない、と感じるかもしれません。私たちは、そんな混ざりものをキレイにする、小さな孔を持つ材料を開発しています。汚染分子や二酸化炭素の大きさや形に合わせた孔をもつ材料をつくることで、水や大気の中から狙った物質だけを捕まえ、キレイな水や空気に戻すことができるようになります。この「多孔性材料」が持つ孔は小さいですが、未来に向けた大きな夢と希望を詰めることができます。37

## Page 040
![Page 040の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000040.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

いまさらではなく、いまこそ原爆を再検証する高宮幸一複合原子力科学研究所広島・長崎への原子爆弾の投下や福島第一原子力発電所での事故では、多くの方々が犠牲となり、その苦しみは今なお続いています。このような過ちが二度と繰り返されることのないよう、われわれ研究者は徹底的に科学的な検証を行い、その結果を広く社会に示す必要があると考えています。私は広島に投下された原子爆弾の痕跡として、爆弾の原料であったウランを含んだ微粒子に着目しました。写真のように深さ30cmの土壌試料を広島で採取し、その中から微粒子を見つけ出して最新の技術で分析することで、原子爆弾が炸裂したあとにキノコ雲の内部でどのような事象が進展したのか、「黒い雨」などの原爆降下物がどのようにもたらされたかを再検証しています。この研究を通して原爆の影響をあらためて考察しなおすとともに、合理的な原子力防災システムの実現にも貢献したいと考えています。38

## Page 041
![Page 041の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000041.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

ゼロ・エミッションに向けた公正な資源配分を考えるMCLELLAN,BenjaminC.エネルギー科学研究科気候変動に対処するためには、CO₂を排出する化石燃料技術の使用を減らし、クリーンな選択肢に移行する必要があります。同時に、世界中の人々がそれぞれの需要に見合う量のクリーンエネルギーにアクセスできる仕組みづくりも重要です。この取り組みは、自然環境や人々の健康に悪影響を与えないように、また負担と利益を公平に分かち合う形で進められなければなりません。そこで私は、再生可能エネルギーや水素燃料電池などの低炭素エネルギー技術への移行が自然や人々にもたらす影響を明らかにすべく、インフラ整備に必要な鉱物の採掘から加工、利用までのサプライチェーン全体を考慮し、社会的、経済的、環境的な影響の評価に取り組んでいます。さらに資源の公正な配分方法を探ることで、すべての国の人々の持続可能な発展への貢献をめざしています。39

## Page 042
![Page 042の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000042.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

しなやかなガラスが支える次の環境技術堀毛悟史理学研究科ガラスはわれわれの身の回りを支え、彩るものとして欠かせない材料です。紀元前2000年から人類が扱ってきたガラスは、現代では建築物や光ファイバーなどのインフラにも使用され、いまやガラスなしでの生活は成り立ちません。ガラスの持つ特徴といえば「脆さ」がイメージされるでしょうか、。ほかに「電気を流さない」「緻密で風雨を妨げる」といった特徴もあります。もし、このような従来の印象を覆すガラス、たとえば「しなやかなガラス」や「調湿するガラス」を生み出せれば、情報社会や住環境に新しい形を提供し、エネルギー問題にも貢献できます。私は、金属と分子の化学結合をうまく利用することで、このような新しいガラスを創り出す研究をしています。将来的にこの研究が、社会を支える材料技術として花開くことを願っています。40

## Page 043
![Page 043の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000043.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

地球の恵みを持続的に享受するためには澤山和貴理学研究科地球の恵みである温泉・地熱資源を持続的に開発しつつ、地震災害・火山噴火リスクが減災できるような社会をめざしています。これを達成するためには、地下を構成する岩石やその隙間を流れる水がどのように存在しているかを知る必要があります。目に視えないこの問題に挑むため、私は実際の岩石の内部構造からデジタルツインを作成し、地下の水の流れがどのようになっているかを探っています。また、さまざまな地下の圧力を再現した条件下で実験する計測システムを開発し、地上から観測可能な値（地震波速度や電気的特性など）から地下の水の流れに関する情報を得るための有効な物理モデルの構築に取り組んでいます。これらの研究を通じて、私たちの住む地球のことを今よりもっと理解したいと考えています。41

## Page 044
![Page 044の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000044.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

テクノロジーではなくシステムを変革しよう！TRENCHER,GregoryPatrick地球環境学堂気候変動を受け脱炭素化が強く求められる中、政策立案者は、再生可能エネルギーや電気自動車などの新しいテクノロジーを主に推進しています。こうした技術の生産と普及は、政策、企業行動、インフラ、生活様式、経済などの多様な社会的要素が絡み合う一つの複雑な「社会技術システム」として捉えることが重要です。脱炭素化を加速するには、火力発電所など従来の炭素集約型技術の規模を縮小することが必要ですが、社会技術システムは既存の仕組みやその成立過程への依存度が高く変化を拒む傾向があるうえ、影響力の強い大手企業が変革に向けた政策決定を阻止しようとしているのが現状です。私は、変革を阻害するこれらの諸要因に関して、実証的データにもとづく学際的知見を生み出し、事態を打開するための政策につなげることをめざしています。42

## Page 045
![Page 045の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000045.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

太陽光を上手に使える未来をめざして山本旭人間・環境学研究科化石資源の枯渇という問題に対して、地表に降り注ぐ莫大な太陽光エネルギーの有効活用が望まれています。しかし人類は、いまだ太陽光エネルギーを十分に活用できているとは言えません。長い研究開発の歴史の中で、太陽光利用に関する実用技術や知見が蓄積されてきた一方、光の使い方にはまだまだ可能性があると私は感じています。現在取り組んでいるのは、光エネルギーを利用して燃料を生産したり、環境負荷の大きい化合物を分解したりするための新しい光触媒技術の開発です。太陽光を利用したさまざまな技術が実用化され、それらが環境に優しい形で有機的に活用される社会が実現すれば、今よりもずっと効率よく太陽光を使えるはずです。そのような未来をめざして、新たな光分子変換技術をいくつも生み出していきたいと考えています。43

## Page 046
![Page 046の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000046.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

気候変動による紛争や対立の増大を防ぐ関山健総合生存学館気候変動がもたらす異常気象や自然災害、あるいは脱炭素や地球工学などの対策は、水、食料、土地、資源エネルギーの奪い合い、途上国や先進国との利害対立、地球規模で発生する影響の大きさなどによって、集団間さらには国家間での紛争や対立を招きかねないと考えられています。私が研究テーマとしている「気候安全保障」とは、そうした気候変動を遠因とする紛争や対立について考えるものです。今後、気候変動の進展にともない、気候安全保障リスクも顕在化するでしょう。しかし、気候変動によって必然的に紛争が増えるわけではありません。むしろ気候変動に関わる困難が協力の契機となる可能性もあります。私は、気候変動が国際政治経済に与える影響の程度やメカニズムを明らかにし、紛争や国家間対立の増大を防ぐことに貢献したいと考えています。44

## Page 047
![Page 047の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000047.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

化学の力で本当に「環境に良い」社会を形成する齋藤敬総合生存学館2050年を目標とされている温室効果ガス排出量ゼロの達成には、廃棄物を出さない循環型経済（サーキュラーエコノミー）の形成が不可欠と言われています。そのためには、SDGsの目標12にあるように“つくる責任”が求められており、リサイクルが簡単なだけでなく、傷や破損の修復も可能で長期間使用できる、ゴミにならないサブスクリプション対応の循環型製品などが必要です。私はグリーンケミストリー（環境に優しい化学）を用いてそのための素材を創成し、化学の力で環境に良い社会の形成をめざしています。また総合知の観点から、化学の目線だけでなく、何が「環境に良い」ということなのかを分野横断型の俯瞰的な視点から、産官学連携のもと研究を進めています。45

## Page 048
![Page 048の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000048.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

©岡崎累空気から材料を生み出す全元素循環型社会沼田圭司工学研究科食糧やエネルギー、化学製品などのもととなる資源には限りがあり、このままでは遠からず枯渇してしまうでしょう。一方、自然に還らないプラスチックなどの物質による環境汚染も深刻です。持続可能な社会を実現するためには、物質を利用するだけでなく、循環させる必要があります。そこで私は、地球上に無尽蔵に存在する空気と海水から高分子材料をつくり出し、利用後はまた自然に戻す仕組みの研究に取り組んでいます。その一つが、海中に生息する紅色光合成細菌を利用して空気中の二酸化炭素や窒素を固定し、人工シルクなどアミノ酸を基本骨格とした材料を取り出す方法です。エネルギーや食糧資源と競合せず、使用後は分解されて自然に還るほか、農業用資源にも活用できる材料の生産技術を確立することで、子どもに誇れる社会づくりに貢献したいです。46

## Page 049
![Page 049の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000049.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

海洋地球化学が人類に与えるインパクト鄭臨潔化学研究所海は、地球の気候調整において重要な役割を果たしています。大量の二酸化炭素と熱を吸収して蓄えることで、気候変動に対する緩衝材として機能し、地球温暖化を防いでいるのです。元素の循環を制御する生物学的プロセスの役割を考慮する海洋地球化学は、新しい重要な研究分野です。現代の海洋では、生物の活動に必須であり、また高濃度では毒にもなりうる生体活性微量金属の分布が極めて重要です。私は、海洋の循環システム「熱塩循環」の終点に位置する北太平洋で、9つの生体活性微量金属（アルミニウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、鉛）の分布を研究しています。この研究は、人工的な物質と岩石由来の物質が海洋プランクトンや地球の気候に与える影響を理解することに役立ちます。47

## Page 050
![Page 050の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000050.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

地球温暖化を解決した未来を創造する藤森真一郎工学研究科地球温暖化を防ぐための社会の脱炭素化は、今や重要な地球規模課題の一つとなっています。その解決には、革新的なエネルギー技術の導入、われわれのライフスタイルの変化など社会のさまざまなレベルでの対応が求められます。そこで私たちは、上述のような対策がどの程度温室効果ガス排出削減に寄与するのか、どの程度の費用を要するのか、南北間での対立を超えて世界が協調して温暖化を防ぐ道はあるのか、といった疑問に答えるために、シミュレーションモデルを使った研究に取り組んでいます。世界全域のエネルギー、経済、農業の状況を2100年という遠い将来にわたって推計するという研究はチャレンジが多いですが、未来のために社会や政策のありようを示し、そこへ社会を導くという大切な任務を担っていると自負しています。48

## Page 051
![Page 051の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000051.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

column気候変動研究気候変動は現代における最大の地球規模の課題の一つです。日本では2010年以降、豪雨、河川の氾濫、土砂災害など深刻な気象災害が頻発しており、温暖化の影響が顕在化していることが指摘されています。気候変動対策には、大きく分けて「適応」と「緩和」の二つのアプローチがあります。適応とは、気候変動の影響に対処するための対策。一方、緩和は、温室効果ガスの排出を削減することで気候変動そのものを抑制する取り組みです。京都大学は、この両方のアプローチに対して先進的な研究を展開しています。適応研究の最前線では、シミュレーションモデルの発達で気象災害を細かく予測し、治水計画の見直しにつなげてきました。京都大学は他機関と協働し、局所的な豪雨の予測も可能にする時間的・空間的に詳細で、極めて多数の将来の気象状況予測を創出。予測をもとに、気象災害も激甚化すると予測し、気象や防災、工学、農学などさまざまな分野の研究者が共同で、都市計画などの観点からも対策研究を進めています。緩和研究でも、長年「環境経済学分野」でリーダーシップを発揮してきました。循環経済や生物多様性維持の研究を通じ、温室効果ガス排出削減と地球の持続可能性の両立をめざしています。現在は、医学やエネルギー分野など、さらに多くの領域の研究者が一体となって気候変動対策に取り組む動きが加速しています。分野を越えて包括的な解決策を見いだすことが期待されています。49

## Page 052
![Page 052の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000052.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

刺激に応答する高分子材料で課題を創造的に解決するLANDENBERGER,KiraBeth工学研究科私の研究室では、持続可能な未来の実現をめざして、狙った長さや形にポリマー（高分子）を加工できる化学合成法「リビングカチオン重合」を使ったユニークな高分子材料をつくることに取り組んでいます。中でも私が研究しているのは、温度に応じて変化する「温度応答性ハイドロゲル」というもので、ソフトロボットへの応用をめざしています。この材料によって、モーターの駆動部品を減らし、省エネでありながら自然に作動する、幅広い用途で使用可能なロボットが実現できるでしょう。もう一つの研究プロジェクトでは、ハロゲン結合を使用した「自己治癒材料」の作成に取り組んでいます。自己治癒材料を用いることで生活の中のさまざまなデバイスを長持ちさせることができ、製造時の環境負荷を下げると同時に、製品の廃棄を減らすことも期待されています。50

## Page 053
![Page 053の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000053.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

電気が流れる酵素で持続可能な未来社会へ宋和慶盛農学研究科地球の埋蔵エネルギーは、このままでは早ければ数十年後に枯渇してしまい、究極的に人類が利用できるのは地球外から入ってくる太陽のエネルギーだけになると言われています。こうした前提でエネルギー収支を均衡させ、さらに人類社会と自然との調和も実現するにはどうすればいいでしょうか。私は、優れたエネルギー変換効率を持ち環境負荷の少ない生体触媒「酵素」の力によってそんな未来を実現させたいと考えています。私の研究対象は、電気エネルギーと化学エネルギーを自由自在に変換できる導電性酵素です。大気中の二酸化炭素を資源化できるバイオリアクターや、あらゆる有機物から発電できるバイオ燃料電池、尿などから任意の生体物質を検出できるテーラーメイドバイオセンサーなどに応用し、社会実装を進めたいと考えています。51

## Page 054
![Page 054の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000054.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

環境にやさしい技術で有機分子をつくりだす大宮寛久化学研究所医薬品や機能性材料の多くは、有機分子から成り立っています。これら価値のある有機分子は、さまざまな形・大きさ・性質の分子をレゴ®ブロックのように組み立てていく分子レベルのモノづくり、「有機合成」によって生み出されてきました。しかし、これまでの有機合成では、さまざまな種類の反応試薬を使用し、多くの工程を経ながら分子の形・大きさ・性質を次々と変化させる必要があり、その結果、途轍もないコストや時間を要し、環境に大きな負荷を与えてしまいます。そこで私は、環境負荷の少ない反応試薬やエネルギーを活用して、分子の形・大きさ・性質に左右されずに、価値のある有機分子を思い通りに組み立てる技術の確立をめざして研究に取り組んでいます。52

## Page 055
![Page 055の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000055.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

「どこでも電源®」で持続可能な社会を支える若宮淳志化学研究所これまで化石燃料に頼ってきた人類は今、大きな転換期を迎えようとしています。もし地球に降り注ぐ太陽光のエネルギーを100％使用できるなら、地球全体で消費するエネルギーの１年分をわずか１時間で生み出せると言われています。そんな太陽光を再生可能エネルギーとして有効利用すべく、私たちは有機半導体材料の分子設計や合成技術を活かして「ペロブスカイト太陽電池」の開発に取り組んでいます。印刷と同じ工程で、低温でつくれるこの太陽電池は、フィルム上に塗ると軽量でフレキシブルな形状を持ち、晴天の屋外だけでなく曇天時や室内光などの低照度でも効率良く発電できるのが強みです。これまでの成果をもとに設立した京大発スタートアップの（株）エネコートテクノロジーズとともに、ペロブスカイト太陽電池を「どこでも電源®」として広く社会に普及することをめざし、日々研究に取り組んでいます。53

## Page 056
![Page 056の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000056.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

電波を使って遠くからヒトの内面の状態を見つめる阪本卓也工学研究科体やこころの状態は、呼吸や心拍など、生理信号に影響を与えています。近年、生理信号を計測できるセンサ搭載のスマートウォッチなどが普及し、健康管理・スポーツなど、さまざまなシーンで活用されています。ところが、従来のセンサは皮膚への接触が必要で、着脱の負担や装着中の不快感により、長期観察には適しませんでした。そこで私は、皮膚表面の動きを電波で捉え、体動・呼吸・心拍を離れたところから計測する技術を研究しています。この技術が普及すれば、センサなどを身につけることなく、その場にいるだけで心身の健康状態が見守られ、必要なケアを受けられます。科学技術がいかに進歩しようと、私たちはヒトという動物の一種であることに変わりありません。人体の生理情報を計測する技術こそ、未来を開拓する鍵を握っていると信じ、研究を進めています。54

## Page 057
![Page 057の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000057.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

細胞内の代謝に学んで、分子コンビナートをつくるLINPengエネルギー理工学研究所細胞内の代謝酵素複合体であるメタボロンは、代謝経路に関与する酵素群が動的に複合体形成と解離を繰り返すことによって効率的に代謝を促進・制御しています。こうした時空間的な複合体形成過程の中で、代謝に関与するタンパク質・酵素の相互作用は絶えず移り変わってゆくため、酵素複合体の空間的な構成とそこから生じる酵素反応特性はまだ明らかになっていません。そこで私は、DNAナノ構造体上に複数の機能性分子を一分子レベルで配置した「分子コンビナート」を構築して研究に取り組んでいます。試験管内で特定の空間配置にある代謝酵素複合体を構築し、複合体の構成を動的に変化させながら代謝反応を解析して、複合体の形成と反応効率の関連を明らかにし、細胞内酵素複合体の機能発現機構の解明をめざします。55

## Page 058
![Page 058の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000058.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

©岡崎累化学で生命観を変える浪花晋平工学研究科人間はこれまで、化学反応を駆使してさまざまな有用な物質をつくることで社会を発展させてきました。一方、化学反応は自然にも深く関わっており、われわれの生命現象も化学反応の連鎖の結果であるとことがわかっています。化学反応を自在に制御し理解することができれば、生活がより豊かになるだけでなく、「生命とは何か」という根源的な問いにも答えることができるでしょう。私は、化学反応を促進する物質である固体触媒を用いた新しい化学反応の開発に取り組んでいます。すでに固体触媒が用いられている工業プロセスに関わる反応はもちろん、これまでは固体触媒との関連が薄いと考えられてきた生命に関する反応も固体触媒で制御する手法を確立し、固体の触媒作用にもとづいた新しい化学反応の価値の創出をめざします。56

## Page 059
![Page 059の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000059.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

Contribution森和俊高等研究院特別教授分子生物学研究を40年間続けてきましたが、私の学生時代には夢でさえなかった技術がこの50年間に次々と開発されています。そんな現状を鑑みると、未来を想像することは極めて困難です。そこで、私が死ぬつ書くことにしました。１つ目は「地球外に生命体は存在するのか」です。月や火星には水が存在することがわかっています。そこに微生物はいるでしょうか？その生命体の遺伝物質は何でしょうか？地球上と同様に、DNA→RNA→タンパク質という情報伝達の基本原則「セントラルドグマ」が成立しているでしょうか？アミノ酸は20種類でしょうか？アミノ酸が15種類まで減ると、塩基２文字でアミノ酸1個を表すことが可能となります。それとも、全く別の組み合わせが存在するのでしょうか？2つ目は「生命の基本単位である細胞はどのようにして誕生したのか」です。パスツールの実験以来、無から有（微生物）は生じない、が定説となって公衆衛生学が発達しました。しかし、地球上で１回だけ、無から有（細胞）が生じました。原始地球上で、低分子化合物から４種類のRNAが生成されたことは実験で証明されています。では、どれだけの物質を集めて膜で囲むと生命活動が始まり、分裂して自己複製できるようになるのでしょうか？私には解けそうにない合成生物学領域の超難問です。研究者の好奇心を刺激する謎が、尽きることはありません。57

## Page 060
![Page 060の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000060.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

病気に強い植物で未来の食料安全保障に貢献峯彰農学研究科われわれ人間と同じように、植物も病気になります。その多くは、病原性のカビや細菌、ウイルスなどが原因となる感染症です。これまで人類の歴史の中では、植物病に起因する飢饉が幾度となく起こってきました。そして現在でも、植物病は食料安全保障を脅かす重要課題です。皮肉なことに、人間活動が引き金となっている地球規模の気候変動によって、植物病の発生はますます増加するとされています。この難題に対処するために、私は、気候変動によってもたらされる気温の上昇や降水量の変化が植物病の発生にどのような影響を与えるかについて深く理解するための研究を進めています。得られた知見をもとに、病気と気候変動に強い植物を創り出し、未来の食料安全保障に貢献したいと考えています。58

## Page 061
![Page 061の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000061.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

多様で持続可能な世界を一粒の種子から実現する門脇浩明白眉センター私は、幼い頃からの生き物への探求心を原点に、マツやサクラ、カビやキノコ、カブトムシやキツツキなど、森林に生息する多種多様な生物がどのように共存しているのかを研究しています。これまで、観察対象に人的な操作を加える操作実験や理論モデルを組み合わせる新しいアプローチにて、植物が微生物や動物などさまざまな生物といかに相互作用し、その森林に固有の特徴を形づくっているのかについて解明してきました。目の前に広がる自然の生態系の仕組みをひも解けば、どのようにしてヒトと自然は持続的に共存できるのかという、地球と人類社会が抱える最大の課題に対する解決への道筋が見えると信じています。日々の研究から得た生態学の知見を活かし、これからの環境保全や森林再生に貢献したいと考えています。59

## Page 062
![Page 062の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000062.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

新しい果実をつくり私たちの生活を豊かに山根久代農学研究科私たちの生活に彩りと豊かさを与えてくれる果物。私は、その果物がなる樹、果樹を専門に生理学的・遺伝学的研究を行っています。気候変動が襲う環境下で野ざらしで育てられる果樹は、植えられた地の環境・栽培条件に適応するしかありません。温暖化はすでに果樹の開花、結実、果実成熟に影響を及ぼしています。持続的な果樹栽培・果実生産を可能とするためには、そのような環境に耐えうる、新しい品種や栽培方法を開発する必要があります。いま主に取り組んでいるのは、ブルーベリーです。ノーベル賞を受賞した新しい育種技術「ゲノム編集」などを利用して、環境適応性を持ち、消費者の購買意欲をそそるような魅力的な果実をつける樹（新品種）をつくりだすことを目的に、日々研究に励んでいます。60

## Page 063
![Page 063の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000063.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

豊かな自然が当たり前にあり続ける未来へ辻冴月情報学研究科私たちの暮らしは豊かな自然と、そこに息づくたくさんの生き物とのつながりによって支えられています。しかし現実は、活発化した人間活動により、地球規模で深刻な気候変動および生物多様性の低下が進行しています。大切なたくさんの隣人たちと共に地球で生きていくために、いまこそ身近な自然や生き物を知り、未来につなげる努力をすることが重要です。私は、生き物が水中などの生息環境中に放出したDNAを回収・分析することで、どんな種がそこに生息しているかを知ることができる「環境DNA分析」を駆使し、水辺の生物多様性評価や保全に取り組んでいます。自然の豊かさや現状を“見える化”し、人々の関心を高めるとともに、行政や企業による保全・管理策の実効性を高めることをめざしています。61

## Page 064
![Page 064の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000064.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

菌類視点で森林の捉え方を広げる杉山賢子フィールド科学教育研究センター森林では多様な生物が互いに影響を及ぼしあいながら生育しています。こうした森林生態系の構造の理解は、森林の適切な管理・保全を行う上で不可欠です。菌類は、難分解物質の分解や樹木との寄生・共生といったユニークな機能を介して樹木の成長を促進することもあれば、樹木を絶滅寸前まで追いやることもある、森林の維持にプラスにもマイナスにも働く偉大な存在です。しかし、直径数マイクロメートル（µm）の糸状の構造で生活する菌類はわれわれの肉眼で観察することができず、その多様性や機能の全容はまだ十分明らかになっていません。どこにどんな菌類がいて、どんな機能を果たしているのか――それを地道に解明していくことで、森林のより深い理解やより良い管理につなげていきたいと考えています。62

## Page 065
![Page 065の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000065.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

column社会との「対話」創立以来、「対話」を根幹とした教育研究活動を推進してきた京都大学では、常に社会との対話も実践しています。2011年に始まった「アカデミックデイ」は、年に一度、100人以上の研究者が一同に会し、市民と研究者が直接気軽に話し合えるイベントです。2023年に単独では初めて大学外で開催し、880人が来場。企画の一つ「ちゃぶ台囲んでひざ詰め対話」は、会場に用意された４帖の畳の上にちゃぶ台が設置されたブースで、研究者と来場者が同じ目線で語り合えると人気です。また、北海道の研究林から鹿児島の火山観測所など、京都大学が有する数多くの研究所や附属研究施設を公開する「京大ウィークス」では、毎年、天文台や観測所のツアーや研究林の自然観察会なども行われています。高校生を対象に研究の魅力を伝える対話型の高大連携活動もあります。京都大学の研究者による体験型科学講座「ELCAS（エルキャス）」を2008年から、大学院生等が研究紹介の授業を行う「学びコーディネーター事業」を2013年から実施しています。動画を通じた知的資源の活用にも取り組んできました。KyotoUChannelは、京都大学の動画を横断的に検索することができるウェブサイトで、2023年に開設されました。京都大学オープンコースウェア（OCW）に公開されていた2022年までの講義動画も含めた約4000本の動画を見ることができ、双方向型のコンテンツも追加されています。63

## Page 066
![Page 066の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000066.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

生命の多様性を理解し自然との共生に活かす服部佑佳子生命科学研究科生物はそれぞれ異なる環境に適応しています。たとえば、住む場所や食べ物、共生する微生物は、種によって大きく異なります。しかし、これまでの生命科学では、キイロショウジョウバエなど少数のモデル生物に研究対象が偏っており、多様な生存戦略や自然界での生物種間関係には十分な関心が向けられていませんでした。私は、遺伝子発現や代謝産物などの複数のオミクスデータを統合的に解析するマルチオミクスの技術を活用し、ショウジョウバエ近縁種や野外採取したサンプルの解析も行うことで、動物の栄養環境への適応や、共生微生物の作用の分子メカニズム解明に取り組んでいます。この研究を通じて生物多様性の理解と保全、利活用を推進し、人々が自然と共生できる豊かで持続可能な社会の実現に貢献したいと考えています。64

## Page 067
![Page 067の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000067.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

コケ植物の比較から生物の進化を理解する安居佑季子生命科学研究科地球上の多様な生物は、たった一つの共通祖先から進化してきました。進化の法則についてはまだまだ解明されていない部分が多いですが、今後理解が進めば、多様な生物資源の保全など、未来社会のためにその法則を有効活用できると期待されています。私は生物の進化を理解するための対象として、雌雄異株のコケ植物と、その近縁である雌雄同株のコケ植物に着目しました。性染色体を持ち、遺伝的に性を決定する雌雄異株のコケ植物と、性染色体を持たず、季節に応じて同一個体上に雌雄の生殖器官をそれぞれ形成する雌雄同株のコケ植物について、さまざまな側面を比較しながら研究を進めています。染色体レベルの比較から、進化過程で獲得された生命現象の仕組みまでを分子レベルで解き明かすことで、進化の法則そのものの理解へつなげたいと考えています。65

## Page 068
![Page 068の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000068.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

多様な植物に学び、活かす小野田雄介農学研究科66植物は光合成による有機物合成により、人間を含むすべての生物の営みを支えています。地球上には、35万種類以上の植物が存在すると言われており、われわれの日常生活においても、食品から医薬品、繊維、家具など、さまざまな場面で植物が利用されています。そのような植物はどうして生まれ、どのように共存してきたのでしょうか？私たちはさまざまな植物を研究対象として、その多様な形とその意義、環境応答、生態系における役割、持続的な利用と保全など、基礎から応用まで幅広く研究をしています。身の回りの植物にも、実に巧妙な仕組みが備わっており、そのような“自然の妙”を解き明かすのは研究者としての愉しみです。近年は、レーザー測量機器を搭載したドローンなど、先進技術を用いた森林資源量評価にも力を入れており、そのデータにもとづいた森林の成り立ちや生産力向上、自然環境保全に関する研究も盛んに行っています。

## Page 069
![Page 069の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000069.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

食・栄養研究で人類のレジリエンスを強化する木村郁夫生命科学研究科医食同源として古くから知られるように、食生活は生体内の恒常性（環境が変化しても生理機能が一定に保たれる性質）を調節しており、その調節機構の破綻は多くの病気を誘発します。近年、食と健康の関係は分子レベルで証明され、食は健康と恒常性の維持において最も重要な因子であることがわかっています。たとえば油に含まれる脂肪酸はエネルギー源になるだけでなく、細胞に重要なシグナルを与えているのです。私たちは、食べ物が代謝される過程でつくられる多様な化学物質を指標に、万物の生命現象の起点となる「栄養シグナル」の全容解明に向けて、医・薬・農を統合した生命科学研究を進めています。そして、病気を治すのではなく病気にかからなくする、すなわち生体恒常性を頑強にするための予防医学・先制医療・創薬・機能性食品素材開発へつなげます。67

## Page 070
![Page 070の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000070.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

失くしたしっぽから「ひと」の成立を読み解く東島沙弥佳白眉センターわれわれは「ひと」です。しっぽを持たない生物学的な「ヒト」であると同時に、文化表現（神話や民話）の中にたくさんのしっぽ（を持つキャラクター等）を登場させてしまう人間性を備えた「人」でもあります。これら両側面をあわせもつ「ひと」の成り立ちを知るために、私はしっぽに着目した研究を進めています。なにかを知りたいと思うとき、その手段は一つで十分なはずがありません。既存の○○学という括りにとらわれることなく、自由で多様な視点で考えることの重要性を、私は「しっぽ学(Shippology)」として発信しています。ヒトがしっぽを失くした過程を、進化・発生に着目した生物学的アプローチで解明していくとともに、人が残した歴史的資料に残るしっぽの表現を読み解くことで、人らしい認知の変遷を読み解く取り組みも行っています。68

## Page 071
![Page 071の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000071.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

多様な生物機能が生まれるメカニズムを解き明かす佐藤拓哉生態学研究センター生物種の約40%は寄生生物であり、すべての野生動物は少なくとも一種の寄生生物に寄生されていると言われています。そうした寄生生物の中には、寄生相手の生物の生理状態・形態・行動を自らの利益となるよう効果的に操作している種が多くいます。寄生生物による宿主操作は個体レベルの影響にとどまらず、生態系レベルのエネルギーの流れや物質の循環といった高次の生物機能を創発することも明らかになりつつあります。たとえばハリガネムシはバッタの仲間カマドウマに寄生し川に飛び込ませますが、それをサケ科の魚が食べることで、川の生態系にも影響を与えているのです。宿主操作の仕組みは未だ謎に包まれています。私はこの仕組みを解き明かし、多様な生物機能が生まれるメカニズムを人間社会のために持続的に利用する道を模索していきます。69

## Page 072
![Page 072の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000072.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

音で探る水中生物の世界野生動物との共生へ向けて木村里子東南アジア地域研究研究所海洋では、船舶航行や工事、探査などさまざまな人間活動が繰り広げられています。近年、これらの活動にともなって出る音が、海洋生物に影響を与えていることがわかってきました。中でもイルカは聴力が高く、音を使ってコミュニケーションを取ったり、環境を認知したりする生物です。音に大きく依存した生活を送るため、とりわけ海洋騒音の影響が大きいのではないかと心配されています。私は、イルカを主な研究対象として、海洋の大型動物の行動や生態の解明、騒音影響評価に取り組んでいます。将来的には、水中に放射される騒音を規制する基準やガイドライン、それらを踏まえた静穏化技術の開発が求められるようになるでしょう。その際に、現在、私が取り組む生物の基礎的な知見が重要になると信じています。70

## Page 073
![Page 073の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000073.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

アクティブマターで切り開く未来の物質科学角五彰理学研究科鳥や魚、蟻やバクテリアなどの生き物は、時として整然とした「群れ」をつくり出し、効率的に移動したり、大きな餌を運んだりと、一個体では見られない機能や仕事を実現します。彼らは、どのようにしてそのような群れをつくり出しているのでしょうか？また群れの機能や仕事は、どのようにして生み出されているのでしょうか？私たちは、自ら動く物質の群れである「アクティブマター」を使って、このような未解決の問題を物理学的な視点で解き明かそうとしています。その答えが得られれば、生物の群れが持つ恒常的な機能を有した物質の開発や、環境に適応して七変化するロボットの開発など、未来の物質科学の可能性が開かれます。さらにはこの研究を通じて、生命現象の起源の一端にも触れられるのではないかと期待しています。71

## Page 074
![Page 074の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000074.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

生命の方程式が導く未来医療と新しい工学技術井上康博工学研究科私たちの体は、遺伝子の指令を受けた細胞によって、力のつり合いという普遍的な物理法則のもとに形づくられます。私は生物の「形づくり」を理解するため、細胞の運動方程式を研究しています。これは、細胞がどのように動き、形をつくり出すかを数式で表す研究です。ニュートンの運動方程式によって天体運動の理解が進み、人工衛星の運用が実現したように、将来的には、細胞の運動方程式によって生物の形づくりが理解でき、細胞を操って人工的に臓器などをつくる技術が生まれるでしょう。また、ニュートンの運動方程式の対象が天体に限らないように、細胞の運動方程式の対象も生物に限りません。細胞の運動方程式を人工材料で再現することで、材料が自ら形をつくり出す新しい工学技術にもつながるのです。72

## Page 075
![Page 075の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000075.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

「タンパク質のガン」を克服できる高齢化社会へ森本大智工学研究科認知症患者は3秒に1人のペースで増えており、2050年には患者数が1.3億人を突破する見込みです。今すぐ有効な予防策や治療法を開発しなければ、医療崩壊だけでなく、社会全体の崩壊を招くことになります。認知症を引き起こす神経変性疾患は「タンパク質のガン」とも称され、タンパク質の凝集体が脳内に蓄積することが発症の一因となります。つまりタンパク質凝集の詳細な研究が、疾患の理解や治療法の開発に不可欠なのです。私は、タンパク質が凝集する「その場」を高い時空間分解能で捉えることで、疾患の原因解明や予防に役立てたいと考えており、特に凝集初期に生じる過渡的なタンパク質の構造変化や状態変化に注目して研究を展開しています。人類が「タンパク質のガン」を克服する日を迎えられるよう、研究を通して貢献したいと考えています。73

## Page 076
![Page 076の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000076.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

タンパク質の動態を調べて生命を知る岩崎未央iPS細胞研究所私たちの身体は数十兆個の細胞で構成されています。個々の細胞は集団となって、臓器の機能を担い、外部からの情報に応答しています。その細胞集団の動きは細胞内外に存在する膨大な種類の分子によって制御されており、その制御が破綻すると、細胞老化や細胞死、個体としての疾患発症につながります。細胞の分子には、DNAとRNAという二種類の核酸、代謝物、タンパク質などがありますが、細胞の機能を基本的に制御しているのはタンパク質です。私は、プロテオーム解析と呼ばれる、細胞内のタンパク質を測定する分析技術のさらなる精度向上にも取り組みながら、数万種類以上のタンパク質の動態を調べることで、なぜ疾患が発症するのかという生命現象の謎に迫りたいと考えています。74

## Page 077
![Page 077の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000077.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

ゲノムDNAから疾患を予測できる未来へ西山朋子理学研究科私たちの体は、一人ひとり異なる遺伝情報、つまり、ゲノムDNAの個性を持っています。もし、DNAの個性に合ったオーダーメイド医療を受けられるようになれば、より無駄のない、的確な治療が可能になります。ヒトゲノム解読により、人類の遺伝情報がほぼ明らかになり、オーダーメイド医療は大きく前進しました。私はさらに、ゲノムDNAの形やふるまいを明らかにすることで、ゲノムDNAの個性が形づくられる仕組みを解き明かしたいと考えています。ゲノムDNAの形は、地球上に生きてきた生命の進化を映し出す鏡とも言えます。ゲノムDNAの形を読み解くことで、人類が直面する数々の疾患の克服に向けた、新たな予測法と治療法の可能性を切り拓きたいと考えています。75

## Page 078
![Page 078の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000078.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

遺伝子変異難病を治せる未来へ堀田秋津iPS細胞研究所現代の医学をもってしても治療することのできない難病、その多くが遺伝子変異を原因とする病です。「遺伝子変異なんて自分とは関係ない」と思われるかもしれませんが、実は健康な人間も含め、誰もが平均17～20個の疾患関連変異を持っています。遺伝子は細胞の核の中に大切に保管されているため、変異のある部分だけを探し出して修復することは簡単ではありませんでした。しかし、狙った遺伝子のDNA配列を改変できるCRISPRゲノム編集技術の登場により、それが可能となりました。私の研究室では、微生物が持つゲノム編集システムや、ウイルスが持つ細胞への遺伝子送達機構、そしてiPS細胞の技術をフル活用して、筋ジストロフィーなどの遺伝子変異難病に対する治療法の開発に取り組んでいます。76

## Page 079
![Page 079の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000079.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

ヒトゲノムの謎を解き明かすBHAGAT,Shruti高等研究院（ASHBi）ヒトゲノムは、私たちがヒトとして機能するために必要なDNAの総体です。そこには32億個のヌクレオチド（A・T・C・G）が含まれますが、タンパク質に翻訳されるコーディング遺伝子の領域はそのうち1％に過ぎず、残りの99％を占めるノンコーディング領域は謎に包まれています。私の研究の焦点は、従来「ジャンク」と考えられていたノンコーディング領域の機能の解明です。近年、ノンコーディング領域に遺伝子の機能を制御する役割があることや、この領域での変異がヒト疾患を引き起こす可能性があることがわかってきました。私はヒト疾患におけるノンコーディング領域の機能を解き明かすため、高度な計算ツールを組み合わせた最先端技術を開発しています。最終的な目標は、私たちを「ヒト」たらしめているヒトゲノムの作動原理を解明することです。77

## Page 080
![Page 080の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000080.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

column新領域を切り拓く２つの拠点「生き物とは何か」「ヒトとは何か」。この根源的な問いに、新たな学問分野を創り出すことで挑む国際的な研究拠点があります。iCeMS（物質アシュビーアイセムス－細胞統合システム拠点）と、ASHBi（ヒト生物学高等研究拠点）です。iCeMSは2007年設立。「自己集合」をキーワードに、細胞生物学と化学の融合研究を進め、生命と物質の境界を突き詰めています。研究により生物の理解を進め、化学者は生物のようなさまざまな機能を持った材料開発につなげる。成果の社会還元も積極的に模索し、創薬、環境、材料化学の分野で、５社のスタートアップを立ち上げています。「ヒト生物学」という新たな領域を確立させ「人間を解明する、21世紀の生命科学」を進めるASHBiは、2018年に設立されました。iPS細胞の登場や、遺伝子解析技術の向上などにより、マウスなどのモデル動物ではなくヒトの細胞を使った研究が可能になりました。ヒトの誕生や発生、生涯の変化を探る研究を進め、将来起こりうる倫理的な課題も研究しています。ともに新領域のコンセプトを打ち出し、世界中から研究者が集まる拠点です。公用語は英語。人種も、ジェンダーも立場も越えて思考を融合し、画期的な成果を次々と発表する姿は、研究大学の最先端のあり方とも言われます。物理学と哲学の交流など、古くから分野を越えて混ざり合ってきた京都大学にとって、世界をフィールドにした新たな「融合」の拠点です。78

## Page 081
![Page 081の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000081.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

科学の叡智と人類の「徳」が調和する社会斎藤通紀高等研究院（ASHBi）ヒトの命はなぜ永遠でないのか？これは、私の子どもの頃の疑問です。個人の命は短いですが、ヒトの生命の営みはとてつもなく長い間続いてきました。それを支えるのが精子や卵子、そして、その起源となる生殖細胞です。私は、生命の永続性を支える仕組みを解明するべく生殖細胞を研究し、ヒトのiPS細胞からヒトの生殖細胞を試験管の中で大量につくることに成功しました。現在、この技術の発展や遺伝病などさまざまな疾病研究への応用、そして倫理的課題が議論されています。人類は「徳」を道しるべとし、どう生きるべきかを常に考えてきました。科学が自然の摂理を次々と解明する中、その成果を豊かな社会構築につなげるために、いま、新しい生命哲学が求められています。科学の叡智と人類の「徳」が調和する社会の実現に貢献できればと思います。79

## Page 082
![Page 082の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000082.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

シャーレの中で人間の発生を再現するALEV,Cantas高等研究院（ASHBi）「人間らしさとは何か？」「人間はどのようにしてつくられるのか？」、この根源的な問いが私の研究の中心です。マウスやニワトリなどのモデル生物を使った何十年もの先行研究は、複雑な生命の出現を導き制御する細胞と分子の仕組みを明らかにしてきました。それにも関わらず、私たちヒトの生物学的理解は、実はそれほど深まってはいません。特に、受精卵から胚の形成・成長までの過程に関連する多くの疑問は未解決のままです。私たちの研究チームは、ヒトの初期発生を理解するため、ヒトiPS細胞を用いてシャーレの中でヒトの発生と器官形成の特定の側面を再構成できる、倫理的に懸念のないモデルを確立しました。これは、ヒト生物学研究における新しい分野のはじまりに過ぎず、今後、私たちの発生、疾患、進化を解き明かしていくものと確信しています。80

## Page 083
![Page 083の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000083.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

合成生命システムで豊かな未来社会へ齊藤博英iPS細胞研究所私は、生命を構成するために欠かせない分子、RNA（リボ核酸）を元に、人工システムを組み上げる合成生命システムの創成を通じて、未来の医療や社会に貢献したいと考えています。多様な分野の知識と技術を融合させ、独自の新技術を開発することで、細胞機能に重要な役割を果たすRNAやRNA結合タンパク質の相互作用への理解を深め、人工細胞の創成や生命の設計原理の解明をめざします。また、RNAの構造に着目した相分離現象（水と油のように成分が異なる層に分離する現象）の制御や、人工遺伝子回路・構造体による細胞・個体の増殖・分化といった運命制御、生命の成り立ちの探究にも取り組んでいます。生命科学と医療分野に革新をもたらし、健康な社会の実現に貢献するとともに、次世代の基礎研究・応用研究を切り拓いていきます。81

## Page 084
![Page 084の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000084.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

©岡崎累臓器成長の謎に迫るドナーのいらない未来へ稲葉真史理学研究科再生医学の進歩はめざましく、将来的には臓器まるまるひとつを培養して患者さんに移植することが可能になるでしょう。しかし、そこに至るためには基礎研究が必要です。現在の技術でも幹細胞から小さな臓器(オルガノイド)が作成できるようにはなっていますが、大きさも機能も本来の臓器からは程遠いものです。オルガノイドを本物の臓器に近づけるために、私は発生段階で臓器が実際の大きさと「かたち」にぜんどううんどうなる仕組みを解き明かしたいと考えています。この謎を解く鍵として腸の蠕動運動に着目しました。蠕動運動は腸の伸長に密接に関与しています。蠕動運動で腸の伸長が促されるメカニズムを解明し、その成果をオルガノイド研究の発展へとつなげます。82

## Page 085
![Page 085の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000085.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

「個体発生」の謎を解明し臓器形成を実現する永樂元次医生物学研究所一つの受精卵から数十兆個の細胞で構成される人体がつくられる「個体発生」は極めて複雑なプロセスで、未解明の謎が多く残されています。非常に複雑にも関わらず、なぜ再現性が高いのか？遺伝子などのゲノムの情報はどのように読み取られて手や顔といった複雑な形が出来上がっていくのか？また、個体発生は先天的な病気にも密接に関与しており、こうした謎を解き明かすことは人類の健康にも重要な意味を持っています。私は人体の発生プロセスを試験管内で部分的に再現することで、体のさまざまな部位になる能力を持つ「幹細胞」から、臓器に似た組織を誘導する技術を研究しています。現時点では臓器の一部分の再現にとどまっていますが、発生過程の理解を進めることで、十分に機能する臓器を自在につくれる技術につながることを期待しています。83

## Page 086
![Page 086の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000086.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

免疫の力であらゆる世代が健やかな未来へ濵﨑洋子iPS細胞研究所免疫は、私たちの体をウイルスなどの病原体やがんから守るために欠かせない防御システムです。その機能が低下すると感染症が重症化しやすくなり、また、免疫の過剰反応や制御異常は、自己免疫病、アレルギー、代謝病などさまざまな疾患を引き起こします。免疫システムの司令塔であるT細胞を生み出すのは心臓の上にきょうせんある胸腺という臓器ですが、胸腺は人生の早期から機能が低下してしまいます。私は、T細胞と胸腺の発生および老化を深く理解し、その知見をヒト疾患の予防や治療に役立てることをめざしています。また、iPS細胞も活用し、胸腺の機能を再生する技術の開発にも取り組んでいます。必要に応じた免疫システムの自在な制御あるいは再生を可能にすることで、あらゆる世代が健やかに生きる未来社会の実現に貢献したいと考えています。84

## Page 087
![Page 087の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000087.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

心を生み出す神経回路を解明して新たな医療へ松本正幸ヒト行動進化研究センターヒトの脳では、数百億を超える神経細胞同士がシナプスでつながり合い、神経回路という複雑なネットワークを形成しています。我々の「心」はこの神経回路の働きによって創り出されると考えられますが、その仕組みはほとんど明らかになっていません。私は予測や注意、意思決定、意欲、情動などの心理現象を実現する神経回路とその動作原理を明らかにすることで、心が生まれるメカニズムを解明したいと考えています。そのために、ヒトに近縁で似た構造の脳を持つサルを対象に、神経生理学的、神経薬理学的、遺伝学的手法を組み合わせた研究を行っています。そしてこの研究の成果を、精神・神経疾患の新しい診断法や治療法の開発へとつなげます。85

## Page 088
![Page 088の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000088.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

脳の影の主役に光をあてる有薗美沙白眉センター私は脳細胞の中でも、従来の研究で焦点とされてきたニューロンではなく「アストロサイト」という謎多き細胞に着目しています。近年の研究で、アストロサイトの活動が学習や記憶といった脳の機能に必須であり、アストロサイトの異常がアルツハイマー病や統合失調症などの脳の病気に深く関わっていることがわかってきたからです。超解像・超高速イメージイング、光操作、コンピュータシミュレーションなどの最先端技術を駆使してアストロサイトを研究することで、脳の働く仕組みをより良く理解し、脳の病気に対する新しい治療法を提供することをめざしています。そして、ひいてはそれが私の理想とする「多様なその人らしさが活かされる社会」の実現につながればと考えています。86

## Page 089
![Page 089の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000089.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

column手厚い研究支援研究者の楽園――。在籍した研究者がそう表現する組織が、京都大学にはあります。「白眉センター」です。「白眉」とは、三国志の故事に由来し、優れた人や物からなる集団の中で最も傑出している人や物のこと。ここでは、次世代研究者を手厚く支援する「白眉プロジェクト」を運営し、まさに白眉な研究者を育成しています。2009年度から始まったこのプロジェクトには、世界中からユニークな研究に取り組む若手研究者が集まっています。公募倍率は約30倍と狭き門。学内外の著名な研究者たちが実績に加えて将来性も見ながら選考します。採用されれば最長５年の任期で雇用され、一人当たり年間最大400万円の研究費が支給されるほか、教育や、研究科の運営などに関わる業務からは基本的に外れて自身の研究のみに没頭できます。センターには、これまでの15年間で237人が所属「魚類の社会的知性。の研究」「浄土教美術の起源に関する研究」など、さまざまな領域でオリジナリティにあふれた挑戦的な研究に取り組んでいます。専門を越えて在籍者同士が議論する場も定期的に用意されており、天文学と歴史学のコラボレーションなど、新たな共同研究も生まれています。研究を推進するためには、ほかにも全学的な研究費の支援として複数の学内ファンドが展開されています。長期的なビジョンに基づく独創的な研究や、新領域開拓への発展が見込まれる研究に挑戦する研究者たちを支援しています。87

## Page 090
![Page 090の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000090.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

脳の窓から超高齢社会の問題へ迫る月浦崇人間・環境学研究科超高齢社会において、加齢による認知機能の低下への対応が重要な課題となっています。これに対し、従来は加齢にともなう脳の生物学的な変化に着目した研究が多く行われてきましたが、社会的動物であるヒトにとって、認知機能を社会との関係性の中で捉えることも重要です。私たちの研究では、認知機能の中でも特に「記憶」に着目し、加齢や脳損傷などの脳の生物学的変化と、情動や報酬などの心理過程との相互作用によってヒトの記憶がどのように変化するのかについて、機能的磁気共鳴画像（fMRI）などの脳機能画像研究から検証しています。研究を通して、認知機能がさまざまな社会的文脈によってポジティブにも変化し得ることを示し、「加齢＝低下」の枠組みを超えた新しい生涯観を、科学的エビデンスをもとに提唱していきたいと考えています。88

## Page 091
![Page 091の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000091.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

©岡崎累「好き」の脳とこころのメカニズムを解き明かす上田竜平人と社会の未来研究院私の研究テーマは、「恋愛関係」と「美的体験」の認知神経科学です。両者は一見すると関連がないように思えるかもしれませんが、いずれも「好き」という主観的体験をともなうという点で共通しています。これらの体験の背後に、どのような脳とこころのメカニズムがあるかを解き明かすことをめざし、心理実験と脳機能画像解析を組み合わせた研究を行っています。ときには、美術史学や美学、文学等の異なる分野の研究者と協力して問題に取り組むこともあります。このような分野横断的な取り組みは、単に学術的な知見を得るのみならず、愛や美といった普遍的なものごとに対する新たな視点を人々にもたらすことができるという点において意義があると考えています。89

## Page 092
![Page 092の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000092.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

次世代人類の脳とこころの育ちを支える明和政子教育学研究科情報科学技術の急激な進歩により、人類はリアル空間とバーチャル空間が融合した環境で生きることになりました。しかし、こうした環境の激変が、とくに環境の影響を強く受けながら脳を発達させる時期の子どもたちにどのような影響をもたらすかについての科学的検証はいまだ行われていません。今後、保育や教育の現場では、「知能（intelligence）」の側面だけではなく、人間らしさの根幹にあたる好奇心や探究心、意欲、感動、歓びなどの「感性・知性（intellect）」をいかに育むかが重要課題となるはずです。生涯にわたる心身の健康の土台は、子ども期につくられます。私たちは、次世代人類の「身体―脳―こころ」の健やかな育ちを可能にする人間科学の発展とイノベーション創出をめざしています。90

## Page 093
![Page 093の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000093.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

好奇心駆動型社会に向けたミュージアムのデザイン塩瀬隆之総合博物館「社会のための科学」や「イノベーションのための研究」が、限られた社会資源の有効活用に欠かせないことは承知しています。しかし、純粋にただそのことを解き明かしたいとする好奇心にもとづく研究も大切なはずです。高等教育にとどまらず、初等・中等教育においてまで、社会や地域のために役立つか否かという判断基準だらけの社会より、好奇心を真ん中においた社会も共存できるあり方を探りたい。私は、もっと子どもたちの好奇心に向き合い、好奇心から素直に立ち上がる行動を選べる社会のありようを探究しています。子ども自身が出会った違和感を「問い」として表出し、その問いを抱えて「探究」し続ける起点としてのミュージアムに期待を寄せており、その可能性を最大化する新たな展示手法やコミュニケーションデザインについて研究しています。91©JanBuusforForbesJAPAN

## Page 094
![Page 094の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000094.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

知能をつくることで、自分たちという存在を理解する谷口忠大情報学研究科人間の心も知能もこの世界で起きている現象です。そのダイナミクスは、物理的な法則と、創発的な階層を経て、身体的な経験から意識的体験までもが連続して作動しているのだと考えています。また、人間による世界の認識および言語使用は、自らの感覚運動に紐づいた認知に加えて、社会的な文化や言語、制度（記号系）の制約を受けます。ボトムアップとトップダウンの影響の中にありながら、その記号系を自らが生み出しているということこそ、人間の知能の本質なのだと思います。私はこれまで、人間が自らの経験に基づき認識を構成し、また社会のなかで言語を含めた記号システムを組織化していくダイナミクスを捉えるために「記号創発システム論」を提唱し、ロボットを用いた構成論的研究に取り組んできました。さらにその先に、人間という存在に迫る文理融合の学問構築をめざしています。92

## Page 095
![Page 095の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000095.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

人間の視覚的注意を再現しロボットに応用するVEALE，Richard医学研究科人間は日常生活の中で、目の前にある風景のうち、注意すべきものとそうでないものを瞬間的かつ無意識に選別しています。「注意」に関わる脳の働きは生命にとって必要不可欠な機能ですが、その仕組みは解明されていません。私は、注意や学習に関する脳の活動を解析し、ロボットで同じ脳の働きをシミュレーションにより再現させることによって、脳や知能行動の原理を解明しています。そのために、実世界と異なる行動パターンが生じるさまざまな不自然な制限がかかっている実験室でだけではなく、より自然な状況で行われる実世界での実験結果も研究に取り込んでいます。このギャップを埋めたうえで、人間の神経回路と人工知能を組み合わせ、ロボットが人間とより自然にコミュニケーションできる未来を実現したいと考えています。93

## Page 096
![Page 096の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000096.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

ブレイン・デコーディングこころは身体から自由に神谷之康情報学研究科脳の信号は、私たちのこころの状態をコード化した暗号のようなものです。私のグループでは、その暗号を解読し、イメージや夢、錯覚などの内容をAIを介して再現する方法を研究してきました。この「ブレイン・デコーディング」の技術が発展すれば、私たち人間は、身体の制約を超えた新たな可能性を手にすることができるでしょう。脳と外界、脳と脳が直接つながることで、言葉を超えたコミュニケーションが可能になり、脳とAIが融合することで、新しい知性が生まれるかもしれません。そのためには、脳とこころの関係を深く理解し、信頼性の高い知見を生み出しながら、社会的、倫理的な検討も重ねていく必要があります。私のグループでは、人類の未来に責任を持ちつつ、この挑戦に取り組んでいきます。94

## Page 097
![Page 097の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000097.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

睡眠を知りウェルビーイングな社会へ長谷川恵美薬学研究科私たちは睡眠が不足すると、日常生活に支障が出たり心身の調子が悪くなったりすることを経験しています。慢性的な寝不足や睡眠の乱れは、さまざまな生活習慣病や循環器疾患、精神疾患、認知症などの発症・重症化の原因になるうえ、経済損失も引き起こします。睡眠が生命活動を維持するためにも大変重要な機能であることはわかっていますが、睡眠の機能や制御メカニズムは未解明な部分が多く残されています。そこで私は、最新の神経科学的ツールを用いてドーパミンやオレキシンなどの神経伝達物質に迫り、睡眠の生理的意義について調べています。最も身近な存在だけれども多くの謎がある睡眠を深く知ることで、睡眠障害により生じるさまざまな疾患に対する新しい治療法や画期的な新薬の開発につなげ、健康で幸福な社会の実現に貢献したいと考えています。95

## Page 098
![Page 098の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000098.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

column知の社会還元「エッジの効いたディープテック（革新的技術）企業が多い」。そう評されることも多い京都大学発スタートアップ。厚い基礎研究の蓄積を基に、20年後の世界を変える企業が数多く生まれています。2023年度時点の企業数は273社。その多くはバイオ・創薬、工学、化学系の研究に基づく高度な技術を持つスタートアップです。次世代エネルギー技術として期待が高まる核融合発電炉の設計・製造をめざす企業や、薄くて軽い太陽電池開発により場所を選ばず発電できる仕組みを作ろうとしている企業、真のワイヤレス送電実現をめざす企業などへの注目が集まっています。京都大学で開発されたiPS細胞（人工多能性幹細胞）技術を用いて薬剤候補を探す「iPS創薬」の分野では、人への応用をめざした臨床試験が始まった企業もあります。世界にない会社を作る。それを可能にするのは、研究者の興味や好奇心を出発点とした真理の探究を続けてきた研究文化にあります。京大スタートアップは、破壊的イノベーションをもたらし、既存の市場や産業構造を根本から変える可能性を秘めています。すでに社会で活用されている技術も多くあります。知的財産収入は2023年度で263件、約18憶円。生命科学や工学関連の知的財産が多く、iPS細胞を作るための基本技術や、企業との共同研究成果から生まれた半導体製造装置、果樹の新品種など、幅広い分野の知的財産が含まれています。96

## Page 099
![Page 099の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000099.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

健康的に年を重ねるための精密医療をめざしてNAMASIVAYAM,GaneshPandian高等研究院（iCeMS）私は、ゲノム科学の進歩によって健康的な高齢化を促進するとともに、希少な遺伝性疾患や、エネルギーをつくり出すミトコンドリアに異常をきたすミトコンドリア病の治療の実現をめざしています。現在は、遺伝子の発現（働き）を調節する遺伝子スイッチの解読と再構成に焦点を当てています。遺伝子、RNA、たんぱく質などを一度に解析する手法により、遺伝子がどのようにオン・オフされるかを理解し、加齢にともなう病気の発症を遅らせるほか、遺伝性疾患の治療や、ミトコンドリア機能の改善をめざします。最終的な目標は、経済状況に関わらず誰もが利用できる革新的な治療法を開発し、医療の民主化を実現することです。精密な科学研究と社会正義を果たす責任を結びつけ、病から解放され、より長く健康的な生活を享受できる未来を築きたいと考えています。97

## Page 100
![Page 100の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000100.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

鏡の国のアミノ酸で健康長寿髙田匠複合原子力科学研究所私たちの体をつくるタンパク質は、ほぼL型アミノ酸で構成されています。近年、白内障やアルツハイマー病などの加齢性疾患の原因となるタンパク質の中に、通常のL型アミノ酸を“鏡写し”にした形をしている（鏡像異性体）D型アミノ酸が見出されることがわかってきました。しかし、その存在意義は不明です。この「タンパク質中にD型アミノ酸が存在する意味」を解明することが、私のライフワークとなっています。この研究は高齢化が進む中で大きな社会的意義があるばかりではなく、生命がその“種の起源”でL型アミノ酸を選択した理由など、既存の生命科学では説明・解決できなかった生命現象の多くの謎も解明へと導くでしょう。自分の研究を人類の健康寿命の延長につなげたい！D型アミノ酸で生命現象の謎を少しでも明らかにしたい！と考えています。98

## Page 101
![Page 101の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000101.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

速く、安く、上手くコンピュータで薬をつくる奥野恭史医学研究科医薬品開発には1000億円以上の多額の費用と10年以上の長い年月が必要とされています。私は、人工知能（AI）やシミュレーションなどのコンピュータ技術を用いて、より速く、より安く、より効果的な医薬品開発をめざしています。具体的には、患者の遺伝子情報から病気の原因となっている分子を特定するAIや、その原因分子に作用する薬剤の化学構造を自動設計するAIの開発に取り組んでいます。また、「富岳」などの世界最高レベルのスーパーコンピュータを用いて、薬剤の効果や副作用を予測するシミュレーション技術の開発も行っています。将来、私が開発するコンピュータ技術によって創り出された薬が、治療法のない病気で苦しんでいる多くの患者を救うことが私の夢です。99

## Page 102
![Page 102の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000102.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

細胞療法の新規開発と運用最適化をめざして新井康之医学部附属病院自分自身やドナーの細胞を用いて疾病の治癒をめざす治療のことを「細胞療法」と呼びます。私は、基礎研究から新しい細胞療法の“芽”を選び出し、治療法として確立するまでの開発を支援する「細胞療法開発学」を任務の一つとしています。一方、すでに保険診療として使用されている細胞療法に目を向けると、治療効果の最大化や合併症の事前予測など、臨床の現場では今後の課題が山積みです。私は、多くの患者さんにより良い細胞療法を提供することを目標に、はたらく細胞たちのふるまいを予測・制御して治療の運用を最適化する「細胞療法運用学」という新しい学問体系を打ち立て、こちらも重要な任務として日々研究と実践に励んでいます。「細胞療法」という新しい治療法のますますの発展のために、世界に向けた情報発信にも注力していきます。100

## Page 103
![Page 103の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000103.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

細胞が遂げる進化を見極め病を克服する垣内伸之白眉センター人類は多くの病を克服してきましたが、未だ原因がわからず適切な治療法がないために命を落とされる方が多くおられます。近年の科学技術の発展により、医学の領域では細胞や動物を用いた実験に加えて、実際の患者さんから多くの情報を引き出せるようになりました。私たちは個体の遺伝学で培われた“進化”の摂理にもとづいて、一人のヒトの中で数十兆個の細胞が遂げる進化を研究しています。一般に、進化は多様性の創出と環境による選択によって成し遂げられますが、個々の細胞の場合は、生理現象や生活習慣、病が環境要因となることでそれぞれ特異な進化が促されることがわかってきました。私たちは、このような細胞の進化の研究を通して病気のメカニズムを解明し、新たな治療法の開発に貢献することで、人々がより健康に過ごせる社会をめざしています。101

## Page 104
![Page 104の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000104.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

ウイルスをつぶさに解析し感染症から世界を守る野田岳志医生物学研究所近年、エボラウイルスや高病原性鳥インフルエンザウイルスなど、人々の脅威となる動物由来ウイルスが次々とヒトの世界に出現しています。しかし、私たちはこれら致死的なウイルス感染症から身を守る術をほとんど持っていません。これらのウイルス感染症に対抗するためには、ウイルスが増殖するメカニズムをつぶさに解析し、つまびらかにする必要があります。そこで私は、さまざまな種類の電子顕微鏡を駆使して、ウイルス粒子やウイルスに感染した細胞（感染細胞）の構造をナノレベル／原子レベルで解析しています。感染細胞内でさまざまなウイルスタンパク質が機能して新しいウイルス粒子（子孫ウイルス粒子）が組み立てられていく様子を可視化し、ウイルスの増殖メカニズムの詳細を視覚的に解明することをめざしています。102

## Page 105
![Page 105の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000105.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

RNAにより免疫を制御し疾患治療をめざす竹内理医学研究科免疫システムの活性化は病原体の感染から体を防御するために重要である一方、その暴走は、関節リウマチなどの自己免疫疾患をはじめさまざまな病気の原因となります。免疫細胞の活性化を制御するのはメッセンジャーRNA（mRNA)です。mRNAワクチンの実用化によりRNAは身近な存在になりましたが、体の中でのRNAの調節メカニズムや投与されたRNAがどのような運命をたどるかなど、まだ多くの謎が残されています。私は、mRNAを分解することで免疫系の暴走を防ぐ「ブレーキ」の仕組みを研究しており、RNAを介した免疫調節の全容を解明していきたいと考えています。このブレーキを、核酸医薬と呼ばれる最新の医薬品などで自在に踏んだり離したりできるようになれば、免疫疾患の新たな治療法が確立できるでしょう。103

## Page 106
![Page 106の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000106.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

RNAの制御メカニズム解明から疾患の治療へ吉永正憲医学研究科生命は無数の細胞から成り立っています。細胞の中に普遍的に存在するRNA（リボ核酸）は、DNAの遺伝情報を読み取って実行するプロセス（遺伝子発現）において必須の役割を果たしています。一方、細胞内RNAが適切に化学的変化を受けたり分解されないと、細胞の機能や私たちの免疫系に異常が生じます。このようなRNAの異常が、自己免疫疾患などさまざまな疾患と関連することが近年明らかになってきました。私は、RNAの量や性質を調節する分子レベルのメカニズム（分子機構）がどのようなものかを最先端のツールを用いて網羅的に探索し、見出された分子機構が私たちの体においてどのような役割を果たすのか明らかにすることをめざしています。さらにはRNAを取り巻く分子機構と疾患との関わりを解明する研究を通して、疾患の治療法開発に貢献したいと考えています。104

## Page 107
![Page 107の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000107.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

感染症で困らない社会へ長尾美紀医学研究科感染症は、外からやってきた生物（病原体）によってヒトの体に引き起こされる病気です。生活環境や持病の有無、年齢や人種に関わらず起こり、ヒトが微生物と共存している以上、根絶するのは難しいでしょう。一方で、COVID-19のパンデミックを通じて、感染症は検査や治療といった医療的なことだけでなく、社会生活に与える影響も大きいということを誰もが経験しました。私たちの研究室では、薬剤耐性菌、インフルエンザ、COVID-19といった誰もが感染しうる病原体と、免疫力が落ちると感染することがある病原体を、ミクロ的な微生物学と感染症学の社会的側面を融合させた視点から分析しています。多彩な分野の共同研究者と共に「大切な人」を感染症で失わずにすむような方法を臨床医の視点から考えています。105

## Page 108
![Page 108の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000108.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

©岡崎累がんと共に生きがんで死なない社会滝真奈医学部附属病院現在、日本でがんを患う方は人口の約半数、死亡原因としては全体の約3分の1を占めています。がんで亡くなる場合、苦しい闘病生活の末に悔いの残る最期を迎えられる方も多いのが現状です。一方で、加齢にともなって小さながんができることはよくありますが、進行を防ぐことができれば生活に大きな支障はありません。そこで私は、がん細胞の浸潤や転移の要因となる「上皮間葉転換」という現象に着目し、がんの悪性化を防ぐ免疫治療の研究に取り組んでいます。がん細胞の根絶をめざす治療は患者さん自身にも負担が大きいですが、免疫治療によってがんの進行をコントロールできれば、根絶はできなくとも、深刻ではない普通の病気として付き合ってゆくことができるようになると考えています。多くの人がより充実した人生を送れる未来を実現したいです。106

## Page 109
![Page 109の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000109.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

健康長寿社会の実現に薬の力で貢献する小野正博薬学研究科私は現在、がんや認知症の診断や治療に役立つ薬の開発研究を行っています。私が開発中の薬は普通の薬とは異なり、放射線を放出する「放射性薬品」と呼ばれる薬です。放射線には物質透過性と細胞殺傷性という二つの特徴があり、医療分野においてはそれぞれ、画像診断と内用治療に応用されます。すなわち、放射性薬品を病気の原因となる臓器や細胞に届けることで、診断と治療を同時に行うことが可能となるのです。私はこの診断と治療の両機能をあわせ持つ“二刀流”薬の開発に挑戦しています。京大発、世界初の薬を一日でも早く世界中のがんや認知症で苦しむ人に届け、地球全体での健康長寿社会の実現に貢献したいという思いのもと、日々研究に取り組んでいます。107

## Page 110
![Page 110の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000110.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

患者さんにも外科医にも優しい手術を西野裕人医学部附属病院医学や科学技術は日進月歩で、がんをはじめとして外科治療により命が救われる患者さんは増加し、今後もさらなる発展が期待されます。このような環境において、これまで外科医の経験と自己犠牲に頼ってなされてきた外科医療の持続可能性にも目を向ける必要性が出てきています。私はこれまで、手術中に対象臓器の変形や移動をリアルタイムで追うことで正確な切除や治療を支援するリアルタイムナビゲーションという技術を研究してきました。今後はこれをさらに多方面へ普及させ、患者さんにとって効果的で安全な、そして次世代の外科医にとっても正確で快適な手術が叶う社会を世界中で実現させたいと考えています。医学と科学技術を融合・応用することで、患者さんにとっても次世代外科医にとっても優しい新たな未来型手術を開拓していきます。108

## Page 111
![Page 111の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000111.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

アトピー性皮膚炎の克服を夢見て椛島健治医学研究科アトピー性皮膚炎は、世界で約2.3億人の患者がいる病気であり、そのかゆみによって、生活の質（QOL）にも大きな影響を与えます。長い間、ステロイド外用剤以外に効果的な治療選択肢が少ない状態が続き、近年になってようやくいくつかの新薬が開発されたものの、依然としてすべての患者さんに効果がある薬剤は存在せず、薬の中断後に症状が再燃することが多いのが現状です。私たちは、アトピー性皮膚炎の病態解明と安全な治療法の開発をめざして、基礎研究および臨床研究に取り組んでいます。その際に、皮膚を切らずに内部を観察できる新しいテクノロジー（生体イメージング）の開発にも力を入れています。これまで、私たちと製薬会社との共同研究から、二つの新薬が誕生しました。アトピー性皮膚炎の完治をめざし、今後も研究を続けていきます。109

## Page 112
![Page 112の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000112.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

前期破水を減らして早産をふせぐ最上晴太医学部附属病院早産は新生児にときに合併症、後遺症を残す、周産期医療の大きな課題です。私の研究は、胎児を包む卵膜が妊娠中期に破綻する「早産期の前期破水」に対して、自然免疫の視点からの治療をめざしています。マウスモデルを使った実験で、羊膜（卵膜の一部）が破れるとその箇所にマクロファージが集まり、傷の治癒を促すことがわかってきました。この現象を解明することが、羊膜の修復・再生、ひいては前期破水による早産の予防につながる鍵になると考えています。赤ちゃんが満期で元気に出生できれば、人生を健康にスタートできます。前期破水・早産を減らすことで、少子化が急激に進むこの社会で一人でも多くの赤ちゃんに元気に育ってほしいと、日々研究を続けています。110

## Page 113
![Page 113の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000113.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

©岡崎累脳腫瘍患者、家族が共に未来を描ける社会へ田畑阿美医学研究科がんに対する集学的治療の進歩はめざましく、脳腫瘍患者の生命予後は改善されつつあります。しかし、生きられるからこその課題も存在します。身体的な後遺症や、目に見えない障害（神経心理学的合併症）により、“元通り”ではない自分と共に生きていく患者、家族がいます。しかし、現在の社会では、長期的な視点での支援が十分になされているとは言えません。そこで私は医療人として、医療の現場と生活の場である地域社会がつながり、継続的な支援が受けられる連携システムの構築を図りたいと考えています。そして、教育者、小児がんサバイバーの当事者として、正しい知識の発信とピアサポートの充実を図り、ライフステージに応じた支援が受けられる社会を築きたいと考えています。111

## Page 114
![Page 114の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000114.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

発達特性を理解し、包摂する社会へ上月遥医学部附属病院個々人の多様性を認めていこうという社会の潮流のもと、神経発達症、いわゆる発達障害の人々の存在も広く知られるようになってきました。現在ケアの現場ではそうした人々の早期発見、早期支援に着目した対応がなされていますが、将来的には一人ひとりの発達特性がよく理解された上で、区別ではなく包摂される社会へ向かうことが期待されます。神経発達症と診断された子どもが心身ともに健やかに育ち、社会に適応していく過程では、子どもの生育に関わる医療、福祉、教育等、多分野の連携が不可欠ですが、そのような連携を後押しするエビデンスはまだまだ不足しています。私は、医療の立場から、分野の垣根を越えた連携が子どもを取り巻く環境に与える影響を明らかにしたいと考えています。112©岡崎累

## Page 115
![Page 115の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000115.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

誰も取り残さない健康な社会の実現に向けて井上浩輔白眉センター従来の医療では、治療する対象集団を選定する際、疾病リスクの高い患者を優先してきました。しかし、治療の効果や副作用（反応性）は人それぞれ異なり、リスクの高い集団が必ずしも治療効果の高い集団であるとは限りません。そこで私はAIモデルを医療の分野に応用し、個人の治療効果（ベネフィット）を推定することで、リスクではなくベネフィットが高い集団にターゲットを絞った「高ベネフィット・アプローチ」という新しい治療戦略を打ち出しました。高ベネフィット・アプローチは適切な医療資源の分配および健康格差の是正を達成し、患者一人ひとりに最適な真の個別化医療の実現に貢献するという点で、医療のあり方の歴史的転換点を創造する可能性があると考えています。113

## Page 116
![Page 116の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000116.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

Contribution出口康夫文学研究科教授哲学とは価値の提案の学だ。僕は今、そう考えています。人々や社会に対して、めざすべき価値を、絶対不変の真理としてではなく、一つの可能な提案として示す。哲学はそのような営みであるべきだと思うのです。過去半世紀ほど、日本の哲学界は、北米発の（クーンの言う「通常科学）化」の波に晒されてきました。大きな問題には蓋をして、高名な哲学者の有名なテーゼに対する反例の反例の、そのまた反例を思いついて査読雑誌に載せる。そういった「パズル解き」論文を積み上げ、公募に応募してテニュア職をゲットする。このような風潮が蔓延してきたのです。このような動向は、哲学の議論の標準化、精密化、研究評価の客観化を促し、全体として研究の質の向上をもたらしたことは間違いありません。一方で、通常科学化した哲学は、徒にアカデミックな知的好奇心に閉じ籠り、社会との接点を見失ってしまったこともまた確かです。しかし現在、パズル解きに別れを告げ、かつてニーチェやマルクスや西田幾多郎を始めとする京都学派がそうしたように、新たな価値観を社会に大胆に提案する動きが、世界の哲学界で同時多発的に生まれつつあります。人々も京大に対して新たな京都学派を求めているように思われます。僕も、「WEターン」という自分なりの新たな価値観を社会に問い、人々の価値の選択肢をより豊かにし、異なる価値が多層的に共存する「価値多層社会」の実現に貢献したいと考えています。114

## Page 117
![Page 117の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000117.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

伝統知とテクノロジーで明るい未来を創出熊谷誠慈人と社会の未来研究院テクノロジーや経済の発展により、わが国は物質的な豊かさを実現しました。しかし、いまだ多くの人々がこころの苦しみを抱えています。変化が激しい時代となり、そうした生き辛さはますます増大していくでしょう。稀代の宗教者や哲学者たちは、こころの悩みや生き辛さを解消するための術を探し求め、人類はそれらの叡智を伝統知として蓄積してきました。私たちは、この伝統知と生成系AIなどのテクノロジーを融合した「伝統知テック」の開発を進めています。さらに、数値化によって人々がこころの状態を正確に把握し、ありたい状態に遷移できるよう、分子生物学や脳神経科学、人文社会科学などを融合した「こころテック」の開発にも取り組んでいます。人々が精神的な豊かさを得て、生き生きと活躍できる社会の実現をめざします。115

## Page 118
![Page 118の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000118.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

東洋の叡智に学ぶ共生社会の倫理学福谷彬人間・環境学研究科現代の日本社会では「助け合い、譲り合い」という言葉を耳にすると、やりがいを求めて率先して行動したくなるというよりは、むしろ負担に感じて気おくれする人が少なくないのではないでしょうか。一方、私が注目する朱子学や陽明学のような、前近代の東アジア世界に絶大な影響力を持った倫理思想には、人間誰もが持つ「共感」の力を基礎とすることで、他者との「共生」を自然と促すユニークな発想が存在しました。これらの思想は、個人の日頃の心がけに始まり、コミュニティの形成、さらには制度や政策の創出へとつながっていきました。個人の幸福と社会の繁栄の両立を促す知恵の豊かな源泉として、東洋の叡智の価値を発信していきたいです。116

## Page 119
![Page 119の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000119.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

言語の歴史的な変化から人間のあり方を考えるCATT,AdamAlvah文学研究科私の専門は言語を歴史的な観点から分析する「歴史言語学」で、主にヴェーダ語、アヴェスタ語、トカラ語などの古代インド・ヨーロッパ語を研究しています。これらの言語はもはや使用されておらず、多くの謎に包まれています。そこで私は、断片的に残された写本を眺め、文脈を考慮しつつテキストを解読しながら、これらの言語の未解明の側面を明らかにすることに取り組んでいます。古代文献のより正確な翻訳が可能になれば、仏教学や歴史学など他分野への貢献にもつながります。言語の歴史を見ると、その変化は決してランダムではなく、一定の規則性があることがわかります。言語学研究を通じて、人類の歴史、文化、思考方法や価値観をより深く理解することができ、人間のあり方に迫ることができると考えています。117

## Page 120
![Page 120の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000120.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

古代インド文献に「耳を澄ます」天野恭子文学研究科約3000年前にサンスクリット語で書かれた古代インドの文献、特に『マイトラーヤニー・サンヒター』を研究しています。研究の核となるのは「文献を読んで理解すること」です。文法を解析し語の意味を明らかにしても、その文が何を言わんとするのかわからないことが多々あります。そんなとき、何かヒントがないか、どんな細かいことも見逃すまいと調べ考え続けます。それは遠い昔の遠い場所からの声を何とかして聞き取ろうとする行為で、そのこころの構えを学べるのが人文学だと思っています。未来の社会にはますます情報が溢れ、次々と目に飛び込む情報を処理することで日々精一杯になるでしょう。でも本当に大切なことは耳を澄まさないと聞こえない声にあるのかもしれない。古代文献の解読という営みを通じて「耳を澄ます」大切さを伝えていきます。118

## Page 121
![Page 121の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000121.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

column日本独自の哲学研究二十世紀前半の京都大学には、西田幾多郎や田辺元ら著名な哲学者が多く在籍し「京都学派」と呼ばれる哲学者集団が形成されていました、。西洋哲学を基盤としつつ、東洋的思想も背景に取り入れた、日本初の独創的な哲学と評されています。近年、その非西洋的でオリジナルなアプローチに注目が集まり、海外でも高く評価されています。なぜ、京都大学でこうした哲学が生まれたのでしょうか。そこには歴史的要因があると考えられています。創立当初からドイツ式の研究中心主義を採用し、学生も自立した研究者として扱う環境が整っていました。この主体的な思索を尊重する風土が、独自の哲学を生みだし、弟子らがその知を受け継ぎ発展させていく「学派」が形成される基盤となりました。京都大学の哲学は、他の学問分野にも影響を与えています。生態学者で霊長類学の祖である今西錦司の理論や、学生時代には西田幾多郎による哲学の講義を熱心に聴講していたという物理学者・湯川秀樹の思考の根底にも、その影響が見られます。変化が激しく、これまで根幹をなしていた価値観や基準が揺らいでいる現代において、哲学の重要性はますます高まっています。「京都学派」以来、100年以上の長きにわたり、現実に基づく多くの問題を考察してきた京都大学の哲学者たちの思索は、科学哲学、生命倫理学などへも広がりを見せ、人類が持続可能な社会と未来を築くための指針を発信し続けています。119

## Page 122
![Page 122の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000122.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

異質な意見が新たな視点と創造力を生み出す津田謙治文学研究科古代地中海世界でユダヤ教から派生し、さまざまな民族・文化を取り込みながら教説を発展させてきたキリスト教。その中には、早い段階から主導的な共同体に対して異質な意見を説く集団がいたことが確認されており、彼らは後に異端者と見なされるようになります。異端には、正統を脅かす者という否定的な意味が含まれますが、近代以降、むしろ異端の見解によってそれまで曖昧だったものが可視化され、彼らとの論争が正統的教義を形成する契機の一つとなったと考えられるようになりました。異端研究は、その時代の共同体や社会に隠された問題やニーズを浮き彫りにし、それに対する応答のメカニズムの分析を可能にしてくれます。これらは、現代のカルト問題や社会のさまざまな軋轢を分析する手掛かりを提供してくれるものと考えています。120

## Page 123
![Page 123の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000123.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

人と木との歩みに思いをはせ古代の才知を未来へ田鶴寿弥子生存圏研究所しめなわ注連縄のついた巨木を前に心を無にし、厳かな気持ちで木彫像に手を合わせる。静謐な茶室での一服に心研ぎ澄まし、鮮やかな新緑に明日への活力をもらう。便利で豊かな今を生きる私たちですが、古代人と同様、災害、疫病や争いなどといった不安は決してなくなるわけではなく、今も自然や木を拠り所としてささやかな精神的安定や充足を得ているように思います。私は古い木製品等の小さな木片から樹種や年代を調査し、古代の人々のこころに寄り添う研究を行っています。人々の用材観や死生観、あるいは息遣いを見つめ未来に届けることは、人が自然と手を取り合い、心穏やかに安心して生活ができる、真の意味で調和のとれた地球社会の実現にきっと役に立つ、そう信じています。121

## Page 124
![Page 124の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000124.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

美術作品の過去をひも解き未来を提案する田口かおり人間・環境学研究科「美術作品をなおす」ということに、人間はいつから興味を持ちはじめたのでしょう？古代の記録をひも解けば、そこには「古くなったものを交換する」「磨き洗う」人間の姿が垣間見えます。こうした技法は、ときに隠された技としてひそやかに伝承され、詳細はあいまいなままになってきました。私の研究では、謎に満ちた保存修復の発展の歴史を、医学や科学、美学、美術史などとの交わりから見晴らしつつ再構成することを試みています。オリジナルとは何なのか、より望ましい保存や修復とは何なのかを、美学や思想史の文脈からも考察し、作品の多様な「生」のあり方や未来について検討する──そんな日々の研究成果を、現代美術をはじめとする作品群の実践的な保存修復に応用して、私たちの未来の文化財を守り記憶する方法を考案しています。122

## Page 125
![Page 125の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000125.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

アートこそがイノベーション山内裕経営管理研究部私は経営学者として、イノベーション、つまり価値の創造に取り組んでいます。ここでの価値とは資本主義の中での便益や利益ではなく、美学的に新しい時代を表現し、歴史をつくることだと考えています。たとえば、グローバル資本主義の典型として批判されるスターバックスも、60～70年代のカウンターカルチャーの時代に人々の新しい自己表現を可能にし、80～90年代に新自由主義の時代に軽い自己表現を生み出したことで、一つの時代の象徴となりました。社会の変化を感じ取り、既存の支配的な価値観を覆すことで新しい表現を生み出してきた一例です。すなわち、イノベーションとは美学（aesthetics）的でありアートの実践、社会批判としても捉えられます。このような視点から、持続可能性、ジェンダー、人種主義などが抱えるさまざまな問題にもアプローチしています。123

## Page 126
![Page 126の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000126.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

高橋雄介教育学研究科教育はどこから来てどこへ行くのか教育は国家百年の大計と言われます。そのような長期にわたる教育的効果をわかりやすいモノ・コトをもって短期間の研究で示すことは難しいようにも思われます。しかし、私は、人間の性格（パーソナリティ特性や気質）や社会性（共感・協調・粘り強さ・コミュニケーションなど）の発達のしかたやその個人差に着目し、教育心理学・発達心理学・行動遺伝学・心理情報科学などの複数の観点から、データサイエンスを重視し、科学的な根拠にもとづく教育関連の施策について考えることで、より効果的で持続可能な教育のあり方の検証に寄与できると考えています。子ども期から生涯にわたって続く学習に関して、国家百年の大計の一助となるべく、政策決定などの巨視的な見地と学びの個別最適化などの微視的な見地の両者に対して、学術的・社会的示唆を与えることのできるような個人差の教育心理学に関する基礎研究を行います。124

## Page 127
![Page 127の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000127.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

子どもたちの学力と幸せに向けて奥村好美教育学研究科日本には孤独を感じる子どもが多いことが指摘されており、不登校の子どもたちも増加しています。一方で、オランダの子どもたちはウェルビーイングが総合的に高いことが知られており、中でも精神的幸福度が高いとされています。私はオランダの教育に着目して研究することで、子どもたちの学力を保障するとともに、一人ひとりの子どもが尊重され、幸せに生きられるような教育に寄与したいと考えています。もちろん日本とは異なる文化や社会の中で形づくられてきた諸外国の教育を、そのまま日本で実施することはできません。しかしながら、その国で何が議論され、その結果何が生じているかを検討することは、日本の教育を捉え直し、示唆を与えてくれると考えています。125

## Page 128
![Page 128の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000128.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

ジェンダーギャップを日本企業からなくすためにCOLPAN,AsliM.経営管理研究部世界的に大企業の役員のジェンダーダイバーシティが進む中で、日本では、女性役員の選任についていまだに進展が見られません。女性役員は、より向社会的、かつ創造的な戦略的意思決定に貢献し、他の女性のロールモデルとなり、企業の社会的正当性を高める役割を担っています。しかしながら、社内外のジェンダーバイアスにより、女性役員の選任や彼女たちの意思決定力が阻害されてしまうケースが多いのが現状です。私は、このような状況を変えるために、投資家などステークホルダーからの協力によるジェンダーダイバーシティの推進、そして女性幹部候補の裾野を広げるための高等教育の拡充など、日本における女性トップマネジメントの存在感を高めるための研究を行っています。126

## Page 129
![Page 129の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000129.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

障害のある学生の権利を大学での実践から問う村田淳学生総合支援機構現在、日本の大学等において修学支援が必要な障害のある学生が増加しています。多様な学生が多様な学びによって未来を描いていく。本来、このようなビジョンを持つことは大学等の普遍的な価値や役割であるはずです。しかしながら、現時点では障害のある学生が十分な学びの機会を得ることができないという課題が生じており、それは現代社会と障害に関する諸問題の象徴でもあると考えています。私はこの解決すべき課題に対して実践と探究を繰り返し、高等教育にとどまらないさまざまな教育の機会を確保すること、そして、現代社会と障害に関する多様な課題を解決することをめざしています。私たちが生きていく社会はどうあるべきなのか、障害という観点から問い続けたいと考えています。127

## Page 130
![Page 130の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000130.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

社会と個人がwell-beingを実現する場づくりを内田由紀子人と社会の未来研究院大学院生のころから文化心理学の研究に携わってきました。日本文化と他の文化における「こころの働き」を比較し、可視化するような実験・調査研究を行っています。well-beingや幸福についての研究もその一つで、社会の変化や違いによって異なる部分もあれば、共通性もあります。比較することを通じて、個人そして社会的に蓄積されてきた「こころ」についての理解が深まり、ひいては、人々が当たり前だと思っているが実はあいまいに成り立っている「規範意識」から少しでも自由になるような視野を持つこともできるのではないかと思っています。人文社会科学の力を国際的に集約して取り組むことができるのも文化心理学研究の長所であり、グローバルに協働する方法論を提示していきたいです。128

## Page 131
![Page 131の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000131.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

column京都大学の歴史自由。それは京都大学を語る上で、欠かすことのできない言葉の一つです。学生の自主性を重んじ、知的好奇心に基づく自由な研究を尊重する姿勢が、日本を代表する研究型大学を作り上げ、数多くの成果を生み出してきました。この独特の学風の源泉は、創立当初にさかのぼります。1897年、京都大学は東京帝国大学に次ぐ２番目の帝国大学として、京都の地に誕生しました。首都東京で、すでに多くの卒業生を輩出し、その地位を確立していた東京帝国大学に対し、学生・研究者の個性を重んじる独自の特色を打ち出しました。創立当初、ドイツの大学を手本とし「研究を通じた教育」という新たな教育方針を導入したのはその一つ。学生と教員が対等な立場で議論する「ゼミナール」を取り入れ、学生もひとりの研究者として扱い「卒業、論文」の提出を求める教育を本格的に導入したのは、日本で初めてだと言われています。コンパクトな京都の町で、学生と教員が昼夜を問わず議論を交わし密接に交流できる環境も、「自由の学風」の形成に大きく寄与しました。こうした教育の流れは厳然と受け継がれています。その結果、約125年にわたり社会に個性豊かな卒業生を送り出してきました。1949年には、日本人として初めて湯川秀樹がノーベル物理学賞を受賞。以来、11人のノーベル賞受賞者が誕生し、フィールズ賞やブレークスルー賞など多数の国際賞受賞者を輩出しています。129

## Page 132
![Page 132の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000132.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

ヒト、モノ、カネの連結を強靭化する経済学渡辺誠経済研究所多くの経済社会問題は、ヒト、モノ、カネのつながりに関わっています。私の研究では、それぞれの場面で適切な、売り手と買い手をつなぐ取引仲介の役割を考えています。たとえばモノの仲介では、なぜプラットフォーム型の経済モデルが現代経済を牽引するに至っているのか。ヒトの仲介では、労働者保護のための雇用仲介が本当に労働者のためになっているのか、特に、低賃金労働の発生・温存や格差拡大につながってしまうのはなぜか。カネの仲介では、効率性をもたらすはずの金融仲介がなぜ流動性危機やバブルを助長してしまうのか。こうした現実問題に対して、既存の市場や制度でカバーできない領域から経済学的な解答を与え、持続可能な発展をめざす価値創造社会の実現に資する研究を行います。130

## Page 133
![Page 133の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000133.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

法の比較研究を通じてより良い法へ、より良い社会へKOZIOL,Gabriele法学研究科民法は、契約、所有権、家族関係などといった人間の生活や経済に関するさまざまな問題に適用される法律です。世界のどの国においても、そうした問題の本質は似かよっていますが、法による解決の仕方は、国によって異なります。私の研究は、それぞれの国の民法における問題の解決のあり方を比較することが中心です。ルールの違いだけではなく、その背景にある歴史的な発展の経緯、文化、考え方、価値判断などの違いも明らかにしようとしています。このような研究によって、他国の人々によるものの見方をより深く理解できるようになるだけではなく、私たちが日常的に直面している問題についてのより良い解決、ひいてはより良い社会のあり方をお互いに学び合うことも可能となります。131

## Page 134
![Page 134の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000134.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

©岡崎累AI・ロボットとの幸福な共生社会を実現する稲谷龍彦法学研究科19世紀に欧州で誕生し、現在の法学の基礎をなしている近代法学には、「自律的個人」を構成単位とする民主主義の実現という重要な理念が存在します。しかし、AIやロボットなど人間と相互に影響を与えあう科学技術の急速な発展によって、あるいは「自律的個人」という概念自体の持つある種の暴力性が認識されるに従って、その妥当性は揺らぎつつあります。そこで私は、認知科学・現代思想・文化人類学・経済学などさまざまな分野の知見を応用し、新たな法の基礎となる人間観や世界観を練り上げることを通じて、これからの社会にふさわしい法のあり方を研究しています。研究を通じて、先端科学技術がもたらすリスクをより民主的・合理的にコントロールしつつ、人々がその恩恵を最大限に享受し、幸福に過ごすことができる社会の実現をめざします。132

## Page 135
![Page 135の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000135.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

リスクマネジメントによる経済の安定の追求KEVKHISHVILI,Rusudan経済学研究科企業は経済の原動力。企業活動における問題を早期に発見することは、企業の失敗を防ぐために不可欠です。私は、企業が抱える問題を定量化し可視化するため、金融市場で公開されている情報にもとづき、企業の財務状況を評価するツールを社会に提供することをめざしています。株式や債券などの金融商品の市場データは、その発行体企業の財務健全性を市場参加者が間接的に評価した指標ですが、データ量が膨大で、内容も難解です。私は、こうした複雑なデータから正確な情報を抽出した、アクセスしやすいデータにもとづくシンプルなリスク管理ツールを開発し、個々人も各企業を効率的に調査できるようにしたいと考えています。このようなツールは、企業の財務状況に関する透明性を高め、突然の危機の可能性を減らし、より安定した経済へ導くと信じています。133

## Page 136
![Page 136の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000136.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

データ分析の知見を適切に意思決定に活かす柳貴英経済学研究科情報技術の発展とともに、経済・社会の多様な事象について、大規模なデータを収集・分析することが可能となっています。データを適切に収集・分析し、その結果を適切に解釈することができれば、政策評価・政策立案やビジネスにおける意思決定のために役立つさまざまな知見を得ることができます。私の研究分野である計量経済学の目標の一つは、そのような重要な意思決定を行うために、データをいかに収集・分析・解釈できるかを考えることです。特に、私は統計的因果推論と呼ばれる、原因とそれによって生じる結果との関係を推論する統計学のアプローチを応用・拡張することで、経済・社会に関わる意思決定に活用できるデータ分析方法を開発したいと考えています。134

## Page 137
![Page 137の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000137.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

低炭素の未来を現実のものにするDelosReyes,JulieAnn白眉センター低炭素社会の実現は、私たちの時代の最も差し迫った課題の一つであり、皆の行動を必要とします。私は、低炭素社会へ移行するためにアジア太平洋地域が果たす役割を研究しています。特に、東アジアと東南アジアの関係や、両地域がテクノロジーのリーダーとして、また、重要鉱物の供給源、グリーンファイナンスなど低炭素移行を支援する金融手法が展開する場として果たしている役割に着目しています。国家や企業、金融機関などの当事者は、どのように化石燃料からの脱却を仲介し、クリーンエネルギー市場や重要鉱物サプライチェーンを創出しているのか。彼らの戦略は、環境的・社会的に公正なシステムをもたらすのか、あるいは環境負荷と格差を強化するのか。私は、これらの課題を批判的に検討し、政策決定にも適時、影響を与えることをめざしています。135

## Page 138
![Page 138の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000138.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

災厄の中の日常的営みに創造の力がある酒井朋子人文科学研究所私は紛争や災害、公害など破壊的出来事の爪痕と共に生きる人間と地域社会の経験を、20世紀後半に長期紛争をくぐり抜けた英領北アイルランドや、東京電力福島原発事故が起きた東北太平洋沿岸地域を事例として、人類学的視点から調べています。特に、家事やケアや娯楽のような日常的な営みに長期のフィールドワークを通じて接近します。掃除や洗濯、食べること・遊ぶことなどは、取るに足らないようにも見える生活の営みですが、心身の安全が脅かされる状況下で逆にその重要性が浮かびあがるのです。気候変動や長期化する軍事紛争など、社会が常に災厄や巨大暴力と共にあるようになり、異常状態と通常状態の境界が薄らぎつつある現代だからこそ、日常の営みから生まれる新しい関係や創造的な力の可能性に光をあてていきます。136

## Page 139
![Page 139の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000139.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

犠牲者をつくり出さない地球社会へ藤原辰史人文科学研究所私は、地球という惑星の現代史を「犠牲」という観点から研究し、叙述してきました。この数百年の高度産業社会は、ゴム、カカオ、バナナ、大豆、綿花などの農園、石炭や肥料やプルトニウムを掘り出す鉱山などで暴力を用いて働かされた労働者の犠牲と、森林、土壌、海洋、水源の大規模な破壊によってしか成り立ってきませんでした。人間存在の尊厳を謳う近代社会はしかし、奴隷や男性以外の性や支配した民族などを“劣っている”とみなし、人権の外に置くことでようやく発展を遂げることができました。私が「世界犠牲システム」と呼ぶこのような構造の歴史と仕組みを社会に示すことで、深刻化するばかりの人間と自然の同時的破壊を一日も早く終わらせることに微力を尽くしたいと思っています。137

## Page 140
![Page 140の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000140.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

食文化への敬意を込めた持続可能な未来の料理FEUER,HartNadav農学研究科20年前、私は食糧生産の改善によって環境、健康、文化に関する多くの課題を解決できると信じて、カンボジアで持続可能な農業の研究を始めました。時間が経つにつれわかってきたのは、高効率で公平な農業システムは「実験室でつくられる」のではなく、都市部の消費者、農家、研究者がより密接で敬意ある関係を築く中で生まれるということです。同時期に世界中で花開いた「フードスタディーズ」という新しい分野に触れ、食糧システム全体を見渡すアプローチを教育・研究に取り入れてきました。現在は、古代の料理の栄養的合理性の解明、在来の野生作物や土壌細菌、伝統医学と食や農業の関係の解明といった、新たな課題に取り組んでいます。さらに、持続可能な方法で伝統的な食文化をアップグレードするための、若い世代への食文化継承のあり方も探究しています。138

## Page 141
![Page 141の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000141.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

場所を喪失した人々の場所と語りの再構築杉江あい文学研究科紛争や迫害、災害などで、多くの人々が故郷や大切な人を失っています。そうした人々は、失われた故郷や大切な人を偲ぶ場所や記録を、どのように（再）構築しているのでしょうか。私は、バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプや、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市でフィールドワークを行い、この問いを追究しています。それによって明らかになったのは、必ずしもそうした人々が望むような形で新しい場所がつくられたり、語ったことが記録されたりしていないことでした。研究者が彼らの場所づくりや語りのオーナーシップ（主体性）を奪うのではなく、その営みにどのように貢献することができるのか、考えて研究を続けています。139

## Page 142
![Page 142の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000142.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

都市と人類の存在を再び地球の生態系に埋めもどす大山修一アジア・アフリカ地域研究研究科地球上では都市が増え、都市に住む人口も増えつづけています。都市にはたくさんの食料やエネルギーが集中する一方で、その廃棄物はうまく利用されていません。一方、世界の穀倉地帯では土地荒廃が深刻で、食料生産の持続性には強い懸念が残ります。その土地でつくられた作物の多くが都市で消費されるため、土壌がやせ細っていきます。いわば、都市の存在が地球の生態系における循環から逸脱しているのです。私は、アフリカ西部・サヘル帯のニジェール、中南部のザンビア、東部のジブチといった国々、そして京都において、都市で出た食品ごみや下水汚泥といった未利用の有機性ごみを使って、農村部の食料生産の改善、荒廃地の修復を進めています。食料の増産や環境の修復を通じてテロや紛争などの地域問題の解決、豊かな社会づくりに取り組んでいます。140

## Page 143
![Page 143の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000143.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

columnアジア・アフリカ地域のフィールド研究京都大学が得意とする研究活動の一つに、「フィールド研究」があります。野山や海、地域などの現場に出かけ、土地を歩き、見て、体感し、時には現地の人々とともに暮らして、机上では得られない貴重な成果を得る。特に、アジア地域やアフリカ地域で世界に先駆けてフィールド研究に取り組み、伝統をつくり上げてきました。1965年、日本で初めて「東南アジア」の地域名を冠した研究組織が設立されました。現地での研究は、地域社会の調査、熱帯林や農業技術の調査などから始まり、防災やエネルギー・環境分野にも広がっています。以来、長きにわたりASEAN（東南アジア諸国連合）各国とつながりを持ち、加盟国すべてに学術交流を進める研究所や大学があります。生態学者で日本の霊長類学の生みの親と言われる今西錦司らによる、アフリカをフィールドとした野生動物研究は、文化人類学研究へと拡充され、1986年、日本初のアフリカ専門の研究機関が開設されました。「ヒトがなんであるかを知りたい」という探求心を原動力に、ヒトに近い類人猿の研究、自然に強く依存して生きる狩猟採集民の調査を通じて成果を上げ「探検大学」とも言われる海外調査の歴史を積み上げてい、ます。京都大学の地域研究の特徴は、複数の研究分野を組み合わせた学際性にあります。狩猟採集による栄養摂取状況の調査など、自然科学的な手法を用いた「生態人類学」といった研究分野の展開にもつながりました。141

## Page 144
![Page 144の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000144.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

AALEV,Cantas80AMANOKyoko118ARAIYasuyuki100ARIZONOMisa86BBHAGAT,Shruti77CCATT,AdamAlvah117CHABCHOUB,Amin29COLLINS,BenoitVincentPierre14COLPAN,AsliM.126DDelosReyes,JulieAnn135DEZOYSA,Menaka23EEIRAKUMototsugu83ENOTOTeruaki5FFEUER,HartNadav138FUJIHARATatsushi137FUJIMORIShinichiro48FUKAZAWAAiko36FUKUDAEllenHidemi15FUKUTANIAkira116FURUKAWAShuhei37GGUOJia28HHAMAZAKIYoko84HASEGAWAEmi95HASHIMOTOKoji7HHATTORIYukako64HIRAKATAHiroyuki18HIRAOKAYasuaki12HIRAYAMATomoko19HORIKESatoshi40HOTTAAkitsu76IINABAMasafumi82INATANITatsuhiko132INOUEKosuke113INOUEYasuhiro72IRIEKei10IWASAKIMio74KKABASHIMAKenji109KADOWAKIKohmei59KAKIUCHINobuyuki101KAKUGOAkira71KAMITANIYukiyasu94KANTOUSH,SamehAhmed30KAWAHARAJun13KAWANISHISakiko20KEVKHISHVILI,Rusudan133KIMURAIkuo67KIMURASatoko70KINFumiyoshi6KOUZUKIHaruka112KOZIOL,Gabriele131KUMAGAISeiji115LLANDENBERGER,KiraBeth50LINPeng55142

## Page 145
![Page 145の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000145.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

MMATSUMOTOMasayuki85MCLELLAN,BenjaminC.39MCNAMEE,CathyE.22MINEAkira58MOGAMIHaruta110MORIMOTODaichi73MURATAJun127MYOWAMasako90NNAGAOMiki105NAKAYAMAYu16NAMASIVAYAM,GaneshPandian97NAMURAKyoko21NANIWAShimpei56NISHINOHiroto108NISHIYAMATomoko75NODATakeshi102NUMATAKeiji46OOGATAYoshiko8OHMIYAHirohisa52OHTANIMakiko27OKUMURAYoshimi125OKUNOYasushi99ONOMasahiro107ONODAYusuke66OYAYoko11OYAMAShuichi140SSAITOKei45SAITOHirohide81SAITOUMitinori79SAKAITomoko136SAKAMOTOTakuya54SATOTakuya69SAWAYAMAKazuki41Schmöcker,Jan-Dirk31SEKIYAMATakashi44SHIOSETakayuki91SOWAKeisei51SUGIEAi139SSUGINOMina26SUGIYAMAYoriko62TTABATAAmi111TAGUCHIKaori122TAKAHASHIYusuke124TAKAIAtsushi25TAKAMIYAKoichi38TAKATATakumi98TAKEUCHIOsamu103TAKIMana106TANAKATakayuki35TANIGUCHITadahiro92TAZURUSuyako121THUERMER,Stephan34TOJIMASayaka68TRENCHER,GregoryPatrick42TSUDAKenji120TSUJISatsuki61TSUKIURATakashi88UUCHIDAYukiko128UEDARyuhei89VVEALE,Richard93WWAKAMIYAAtsushi53WATANABEMakoto130YYAMADAMasumi32YAMAMOTOAkira43YAMANEHisayo60YAMASHITAMayuko9YAMAUCHIYutaka123YANAGITakahide134YASUIYukiko65YOSHIMITSUNana24YOSHINAGAMasanori104ZZHENGLinjie47所属は2024年8月時点143

## Page 146
![Page 146の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000146.jpg)

【ページ内のテキスト情報】

本冊子で紹介した未来の実現に向け、ここ京都に多様な研究者が集い、知の探究を続けるためには皆さまのご支援が欠かせません。これまでのご支援により、新技術の開発に資する革新的な研究が進み、次世代研究者の育成にもつながっています。共に豊かな未来を築く京大コミュニティのメンバーとして、研究が切り拓く新たな地平を見届けませんか。https://www.kikin.kyoto-u.ac.jp/KyotoUFutureCommons125SolutionsforOurGlobalSociety2024年10月発行京都大学広報課京都大学学術研究展開センター（KURA）〒606-8501京都市左京区吉田本町https://www.kyoto-u.ac.jp/ja144

## Page 147
![Page 147の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000147.jpg)

【ページ内のテキスト情報】



## Page 148
![Page 148の画像](https://img01.ebook5.net/kyoto-u/visual_book2024_jp/contents/image/book/medium/image-000148.jpg)

【ページ内のテキスト情報】



