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表紙

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ver.8なるほど!!血友病まねーじめんと

ver.8なるほど!!血友病まねーじめんと

目次

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~もくじ~第1章血友病って?・・・・・・・・・・・・・・1第2章血友病の診療体制は?・・・・・・・・・・9第3章血友病の診察と検査は?・・・・・・・・・13第4章血友病の遺伝は?・・・・・・・・・・・・31第5章血友病治療薬って?・・・・・・・・・・・41第6章止血治療の実際は?・・・・・・・・・・・69第7章各出血エピソードへの対応は?・・・・・・91第8章製剤由来感染症治療の現在は?・・・・・105第9章インヒビターって?・・・・・・・・・・113第10章整形外科的問題と治療は?・・・・・・・131第11章高齢化への対応は?・・・・・・・・・・163第12章遺伝子治療はどうなってる?・・・・・・173第13章血友病の心理社会的な問題は?・・・・・181

ごあいさつ

ごあいさつ

「血友病まねーじめんと」の扉を開けた方へようこそ、血友病の世界へ!消化器疾患や呼吸器疾患ならみんなwelcomeなのに、血液疾患とわかった瞬間から拒否反応を示される昨今。それだけならまだしも、さらに「出血性疾患・凝固系の異常」という枕詞がつくだけで、「ぱす!パス!pass!」「得体のしれない疾患…恐ろしい…」と感じ、近づいてもくれない方が大多数を占めるこの状況下で、この本の扉を開けてくださり、心より感謝しております。全国に散らばる血友病患者さんからの熱い眼差しに応えるべく、さらにもう1つ扉をあけてみましょう!「なんだ?読む価値ないかも…」とか思ってこのまま本を閉じないでください!文字をできるだけ削り、イラスト多めの構成にしているので、流し読みの感覚でも血友病のアウトラインはしっかりと把握できると自負する力作です!この本を読み終えれば、きっと血友病のマネージメントは出来るようになっていることでしょう。そればかりか、もっとしっかりとした書物や文献を読みたくなるかもしれません。むしろ、そうなっていることを願います。みんなで血友病診療を支えていきましょう!編集者代表広島大学病院輸血部山﨑尚也

第1章 血友病って?

第1章 血友病って?

第1章血友病って?止血について①血管壁(血管内皮細胞)赤血球血小板凝固因子血管に傷が出来ると・・・②活性化した凝固因子血小板血栓まず血小板が傷口を塞ぐ1○この段階の止血を一次止血という。○血小板は傷口を塞ぐと同時に、周囲にある凝固因子を活性化する。

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1③活性化した凝固因子が隙間を埋める④フィブリン血栓フィブリン血栓が出来て止血完了!!○この段階の止血を二次止血という。○フィブリンが出来る過程は次ページ参照。2

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第1章血友病って?凝固因子について(血液凝固カスケード)<内因系>ⅩⅡ高分子キニノゲンプレカリクレインⅩⅠⅠⅩCa2+ⅩⅠaⅠⅩaⅧⅧaCa2+<共通系>ⅩⅩaⅤⅤaCa2+トロンビンプロトロンビンフィブリノーゲンフィブリンⅩⅢⅩⅢa3凝固完成!!安定化フィブリン

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1<外因系>組織因子Ca2+、リン脂質ⅦaⅦ凝固因子は…•二次止血に必要不可欠なもの。•血漿に含まれる蛋白質で、ほぼ肝臓で作られている。•第Ⅰ因子から第ⅩⅢ因子まである。凝固は…•内因系と外因系に分けられている。•内因系は血管内の凝固因子の活性化から始まる経路。•外因系は血管外の組織因子が、血管内の第Ⅶ因子を活性化して始まる経路。<凝固因子一覧>Ⅰ=1(フィブリン・フィブリノーゲン)Ⅱ=2(プロトロンビン・トロンビン)Ⅲ=3(組織因子)Ⅳ=4(Ca2+:カルシウムイオン)Ⅴ=5Ⅵ=6(欠番)Ⅶ=7Ⅷ=8Ⅸ=9Ⅹ=10ⅩⅠ=11ⅩⅡ=12ⅩⅢ=13Ⅴa=活性化5Ⅶa=活性化7Ⅷa=活性化8Ⅸa=活性化9ⅩⅠa=活性化11ⅩⅢa=活性化134

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5活性化血小板血管内膜の損傷により露出した血管外膜などCa2+Ca2+Ca2+Ca2+Ca2+Ca2+Ca2+Ca2+ポリリン酸(IIaによるXI活性化促進)ADP(血小板を活性化)初期トロンビンCa2+凝固因子について(細胞基盤凝固メカニズム)第1章血友病って?5

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1<開始期>(左図の黒矢印部分)①血管内皮細胞や単球等に物理的・化学的凝固刺激②その細胞表面に組織因子(TF)が発現③血流中のVIIaがTFに結合する④ごく微量のトロンビン(初期トロンビン)が生成<増幅期>(左図の赤矢印(小・中)部分)⑤初期トロンビン等により血小板が活性化(活性化血小板の役割)1)flip-flop現象※1が起こり、凝固反応の場になる(※1陰性荷電のフォスファチジルセリン(PS)等が細胞表面に移動)2)ポリリン酸やアデノシン二リン酸等が外部へ放出・ポリリン酸=トロンビンによるXI活性化促進作用・アデノシン二リン酸(ADP)=周囲の血小板を活性化⑤’初期トロンビンによりV、VIII、XIが活性化⑥活性化血小板膜上でテンナーゼ複合体、プロトロンビ⑦ナーゼ複合体を形成し、さらにトロンビン(IIa)が生成<増大期>(左図の丸矢印部分)⑦生成されたIIaにより血小板/凝固因子がさらに活性化⑧上記2つの複合体形成が瞬時に繰り返される⑨爆発的にIIaが生成される(⑦⑧⑨の反復)⑩フィブリン形成に必要な量のIIa※2が生成される(=トロンビンバースト)(※2血小板や凝固因子活性化に要するトロンビンの数百倍)テンナーゼ複合体++PS+Ca2+凝固第X因子を活性化して凝固反応を著しく促進プロトロンビナーゼ複合体ロン++PS+Ca2+凝固第II因子を活性化して血小板や凝固因子を活性化し、凝固反応を著しく促進6

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第1章血友病って?血友病の特徴、原因、頻度、症状について特徴は…•二次止血に必要不可欠な凝固因子(第ⅧorⅨ因子)が、生まれつき(先天的に)少ないor働きが悪い。•一旦出血が始まると、血が止まりにくく出血が持続。※自然に出血するわけではない。•凝固因子補充にて、健常者と同じ止血能が得られる。•後天性血友病という疾患もあるが、こちらは凝固因子(第ⅧorⅨ因子)の産生は正常だが、それに対する自己抗体が出現し、高度な出血傾向を示す疾患。原因は…突然変異30%遺伝70%•遺伝形式は、ご存じのとおり「X連鎖性劣性遺伝」(母方のX染色体のⅧorⅨの遺伝子部位の異常)77•予想外かもしれないが、30%は家族歴のない、遺伝子の突然変異による孤発例。

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1頻度は…男性女性総数血友病A57541155869血友病B1275431318•およそA:B=5:1。症状は…<令和5年度血液凝固異常症全国調査より>•報告されていない症例を考慮すると、血友病の頻度は1万人あたり0.8~1人程度。①②•関節内出血や筋肉内出血などの深部出血が多い。(①:左膝関節内出血、②:左前腕筋肉内出血)•その他には、血尿や口腔内出血もしばしばみられる。•重症度が軽症の場合、外傷や手術の後に血腫ができるなどの止血困難例で見つかることがある。88

第2章 血友病の診療体制は?

第2章 血友病の診療体制は?

第2章血友病の診療体制は?血友病診療のポイントについて出血時には…•すぐに輸注(凝固因子の補充)。早期治療介入は、早期治癒&後遺症発症予防に繋がる。出血早期輸注早期治癒夜間の出血時には…•医師と患者との信頼関係が非常に重要。関係性が悪いと、患者が医師への連絡を遠慮してしまい、出血が重篤化してしまう可能性がある。•患者に主治医・当直医の緊急時連絡先を伝え、いつでも出血時の対処ができるようにする。早く対処できれば、治療期間も短期間で終えられる。しっかりとした関係が重要!!9

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臨床上重篤な出血とは…2•出血の種類により伴う合併症は違い、場合によっては生命を脅かすか、重大な後遺症を残す恐れもある。緊急入院を要する状態を下記に示す。入院が必要な重篤な出血部位とその理由①中枢神経→死亡や重篤な後遺症の恐れ②咽頭、気管周囲→窒息の恐れ③開放性骨折→局所の固定・安静が必要④重症の急性関節内出血→疼痛管理、穿刺・洗浄が必要⑤腸腰筋・後腹膜→ベッド上安静が必要、治療期間が長い⑥腹腔・胸腔・気道・消化管→短期に大量出血の恐れ⑦同時に二肢以上→単身者では身の回りの世話ができない⑧血友病性偽腫瘍→感染症の合併や骨融解などに注意10

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第2章血友病の診療体制は?血友病医療の概要について血友病専門外来は…•血友病に関しては、血液内科・小児科が担当しており、診療内容は主に以下の通り。診療内容①出血エピソードの診断と治療②合併症に応じた定期診察と検査③内服薬や血液製剤の処方とその在庫の確認④血友病教育やその他の医療相談血友病医療を行う上で…•血友病の問題点は多岐に渡るため、他職種との連携が非常に重要。特に血友病専門コーディネーターナースが中心的存在となる。•下記に示す他職種等と合同でカンファレンスが行える体制を整えることが望ましい。医師薬剤師看護師患者ソーシャルワーカー心理カウンセラー11

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製剤の管理は…2•出血時にいち早く対応するために、患者は自己注射・家庭療法を行っているが、患者自身が製剤の管理を行う必要がある。患者自身による製剤管理•患者または保護者は、患者手帳に下記を記載する。・出血エピソードと輸注日時・輸注量とその製剤のロット番号•外来受診時に毎回(!)持参してもらい、上記をカルテに転記する。•各出血エピソードと輸注について患者と話し合う。<手帳・ノート・カレンダータイプ><アプリタイプ>※患者手帳は各製薬会社が作成しているので、担当者に連絡するとよい。あ最近では、輸注日を知らせてくれるスマホアプリもあるので、こちらを活用あしてもよい。患者にきちんと輸注記録をとるように指導しましょう。12

第3章 血友病の診察と検査は?

第3章 血友病の診察と検査は?

第3章血友病の診察と検査は?重症度と出血エピソードについて重症度は…•凝固因子活性の値によって分類する。重症<1%中等症1~<5%軽症5~40%※血友病Aも血友病Bも同じ。•2~3回測定し、一番低い値で決める。※検査誤差があるため。•軽症は出血頻度が低く、患者自身も慣れていないのでしばしば出血が重症化する。出血は軽症の方が重症化?!•一生涯重症度の変更はないが、加齢とともに活性値が上昇することがある。凝固活性値上昇?!13

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出血エピソードは…•重症度によって出血エピソードは異なる。3重症・中等症の場合•各出血の起こりやすさは年齢により様々。※下記の図の横幅は出血頻度の多さを示している。軽症の場合•健常人とほぼ同程度にスポーツ可能(関節内出血は稀)。•外傷後の筋肉内血腫や手術・抜歯後の止血困難を認め、初めて血友病と診断されることがある。•術前スクリーニング検査で、活性化部分トンボプラスチン時間(APTT)を実施されて発見されることが多々ある。→診断が確定する年齢が高いことが特徴的。14

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第3章血友病の診察と検査は?問診・身体診察・血液検査所見について問診・身体診察では…•問診では念入りに家族歴の聴取を!!→X連鎖性劣性遺伝なので、母方や娘の家系を重点的に。•四肢周囲径(上腕、肘関節、前腕、大腿、膝関節、下腿)を測定して、筋肉の委縮の程度をみる。•経時的変化をみるために、同じ場所の周径を計る。→ex.上腕では肘関節から○cm、下腿では膝蓋骨下端から△cmと決めておく。△cm○cm•ターゲットジョイントを中心に、関節可動域(ROM)測定や徒手筋力テストも定期的に行う。同一関節において6ヶ月間に4回以上出血する関節をターゲットジョイントという。•慢性肝炎やHIV感染症合併者では、全身的な理学的所見は欠かせないので、抜けなくチェックする。15

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血液検査所見では…止血・凝固系3•血小板数や出血時間、プロトロンビン時間(PT)は正常。•APTTは延長、第Ⅷ因子または第Ⅸ因子活性は低下。前述のように数回測定し、最低値で重症度決定。•インヒビター検査は初診時には必ず実施し、初回の製剤使用から6ヵ月までは原則として毎月実施。その後は…→インヒビター保有者は3~6ヵ月毎に実施し、推移確認。→インヒビターのない患者も年1回はスクリーニングを行う。※インヒビター検査の詳細は第9章を参照。その他•初診時に…→血液型、不規則抗体(輸血後にも必須)、HBVマーカー、HCVマーカー、HIVマーカー、肝機能検査、血液・免疫機能検査。•HCVキャリアーであれば…→最初にサブタイプ検査と年1~2回のHCV-RNA定量。•HIV感染者であれば…→CD4実数、HIV-RNA定量を1~3ヶ月毎。•定期的(1~12ヶ月毎)に…→肝機能検査、血液・免疫機能検査16

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第3章血友病の診察と検査は?輸注試験について輸注試験について…•凝固因子製剤を使用した際の生体内回収率、半減期、クリアランスの計算に必要。•生体内回収率を求めると期待値とのズレが把握でき、さらに凝固因子クリアランスを算出して、持続輸注量設定の参考とする(詳細は後述)。•輸注試験はインヒビターがない患者の場合、待機手術をする前には必ず行う。※ヘムライブラ🄬🄬使用患者においては、凝固一段法によるFVIII活性測定では生体内回収率、半減期、クリアランスの把握は困難。•生体内回収率が50%を下回った場合、インヒビターの存在を疑わなければならない。•凝固因子活性は直後から約2~4時間までに急に低下し(Ⅰ相)、その後なだらかに低下する(Ⅱ相)。•第Ⅷ因子の半減期は8~12時間。(半減期延長型の半減期は10~20時間)•第Ⅸ因子の半減期は16~24時間。(半減期延長型の半減期は66~115時間)血友病Aにおける血漿クリアランスの簡易計算式(単位:ml/kg/hr)=40(ml/kg)×(輸注直後の凝固因子活性―輸注△時間後の凝固因子活性)輸注直後の凝固因子活性×△(hr)17※血友病Bの場合、分布容積が2倍となるため、上記の式を2倍すること。※製剤種によっては、凝固一段法により得られた活性値を補正する必要があるので、添付文書をよく確認すること。

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輸注試験の方法は…3①凝固因子活性を100%に上昇させる量を輸注。血友病A:上昇期待値(%)=第Ⅷ因子投与量÷体重(kg)×2血友病B:上昇期待値(%)=第Ⅸ因子投与量÷体重(kg)②長時間作用型でない製剤の場合,輸注前と輸注後15分or30分・2・(4)・12・(18)・24時間に、APTTと因子活性を測定。※()内の時間は省略可③片対数グラフで縦軸に対数尺の活性値、横軸に時間をプロット。③生体回収率は下記の通り計算。凝固因子活性(%)生体回収率=輸注直後の凝固因子活性値/期待値18

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第3章血友病の診察と検査は?その他の凝固能検査について①mmトロンボエラストグラフィ―について…•凝固過程の粘性や弾性変化を波形として描出。•全血にて測定し、下記の項目から凝固機能を評価。凝固時間clottingtime(CT)血餅形成時間clotformationtime(CFT)最大血餅硬度maximumclotfirmness(MCF)α角度alphaangleなど<ROTEM🄬🄬にて描出される波形と評価項目>αCTMCFCFT•保険適用。診療報酬点数は、検査料28点、血液学的検査判断料125点、検体検査管理加算40~500点。•ROTEM🄬🄬(rotationalthromboelastometry)が開発され、デジタル化・多チャンネル化。min19•添加試薬によって鑑別できる凝固異常が異なる。EXTEM・・・外因系INTEM・・・内因系HEPTEM・・・内因系(ヘパリン分解剤含有)FIBTEM・・・フィブリン重合APTEM・・・線溶亢進

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検査実施のタイミングは…•凝固因子活性と臨床症状が合致しないとき。ex.活性<1%であっても出血症状が比較的軽いex.活性が≦1~<5%、≧5%でも出血が多い3•止血治療薬剤による治療効果判定のとき。•抗凝固療法の治療効果判定のとき。注意点は…•血小板凝集は反映しない。•下記の様々な要因に影響を受ける。測定機器にセッティングするまでの時間年齢や性別Ht値・フィブリノゲン量・血小板数薬剤ROTEM®(https://amco.co.jp/medical/rotem_delta.htmlより)20

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第3章血友病の診察と検査は?その他の凝固能検査について②トロンビン生成試験について…•凝固過程のトロンビン生成率を波形として描出。•細胞基盤凝固メカニズムに基づく凝固反応を評価。→患者個々の凝固機能特性が評価可•下記の項目から凝固機能を評価する波形が立ち上がるまでの時間Lagtime(a)ピークに達するまでの時間Timetopeak(b)ピークの値PeakThrombin(c)総トロンビン生成量Endogenousthrombinpotential(d)一般社団法人日本血栓止血学会ホームページより抜粋•コンピュータ化トロンビン生成解析システムがThrombinoscopeBV社により開発。蛍光発色基質により精度・感度が向上、脱フィブリン化が不要。21

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検査実施のタイミングは…•止血治療製剤の治療効果判定のとき。3•血栓性疾患の評価のとき。•抗凝固療法の治療効果判定のとき。•凝固因子活性と臨床症状が合致しないとき。ex.活性<1%であっても出血症状が比較的軽いex.活性が≦1~<5%、≧5%でも出血が多い※通常の測定方法では判定困難の可能性あり。注意点は…•微量の凝固因子レベルの評価が困難。•試薬の組織因子濃度などでパラメータは大きく変動。•保険収載されていない。https://www.genengnews.com/magazine/181/thrombingeneration-assay-aids-development/より22

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第3章血友病の診察と検査は?その他の凝固能検査について③凝固波形解析について…•PT/APTT測定反応系に基づくフィブリン形成全過程を血漿透過度をモニタリングして凝固波形として描出。※PTやAPTTは凝固開始(凝固前相)までしか反映していない•凝固波形の各ポイントにおける透過度を、コンピューター解析することで客観的データを取得。一次微分最大値→凝固最大速度(|min1|)二次微分最大値→凝固最大加速度(|min2|)野上恵嗣:血液凝固の動的把握と血友病の進歩.血栓止血誌2014;25(3):371-379より抜粋•凝固波形と各種パラメータにより凝固の動的過程を質的量的に把握することが可能。•安価で測定時間が短くて済むことが利点。23•APTTが測定できる機器であれば、ソフトウェア導入のみでこの解析が可能となり、新たな機器は不要。

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検査実施のタイミングは…•周術期などでいち早く凝固活性を把握したいとき。※血友病のように単一の凝固因子活性が上下する場合3野上恵嗣:血液凝固の動的把握と血友病の進歩.血栓止血誌2014;25(3):371-379より抜粋•止血治療製剤の治療効果判定のとき。•抗凝固療法の治療効果判定のとき。•出血のリスク予想や総合的な止血能の推測をしたいとき。注意点は…•通常のAPTT測定と同様、下記の要因に影響を受ける。添加試薬血漿中のクエン酸濃度Ht値、乳び薬剤(ヘパリン混入など)•診断補助や治療効果判定に用いるには更なる症例蓄積が必要。24

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第3章血友病の診察と検査は?画像検査所見について①画像の選択は…•骨・関節(肘、足、膝など)=X線写真(最低2方向で)。•初期の関節症や滑膜炎の状態を評価=超音波、MRI。•深部出血(腸腰筋、腹腔内出血など)=超音波orCT。X線写真の評価方法は…•成人では年に1回、出血頻度が多い関節では年に2回。•初期の関節症変化をとらえることは難しいが、血友病関節症は多関節に及ぶため、一度に多くの関節を評価できる&すべての罹患関節を経時的に観察できるなどの利点がある下記の分類が用いられている。①DePalma分類(デパルマ分類)gradeⅠ~Ⅳの4段階に分類する段階式評価方法。②Arnold-Hilgardner分類(アーノルド・ヒルガードナー分類)stageⅠ〜Ⅴの5段階に分類する段階式評価方法。③Pettersson分類(ペターソン分類)8項目の所見の有無を点数化する加算式評価方法。世界血友病連盟も推奨。25

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3DePalma分類GradeⅠGradeⅡ関節周囲軟部組織の陰影増強骨端部の骨萎縮と過成長GradeⅢ1)骨端部の変化2)関節裂隙の狭小化3)軟骨下嚢胞形成4)骨棘形成5)関節裂隙の部分消失*上記のうち2項目まで満たすものをA、4項目までをB、全項目を満たすものをCに亜分類する桧山分類もある。GradeⅣ関節裂隙の完全消失<次ページに続く>26

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第3章血友病の診察と検査は?画像検査所見について①の続きArnold・Hilgardner分類StageⅠStageⅡStageⅢStageⅣ関節内血腫、軟部組織の腫脹で骨変化なし骨端の過成長、骨粗鬆軟骨下嚢胞形成、組織変化関節裂隙の狭小化、軟骨の破壊StageⅤ滑膜組織の破壊、関節裂隙の欠損、関節可動域の著明な減少Pettersson分類評価項目所見:点数骨粗鬆症なし:0、ある:1骨端核の拡大なし:0、ある:1不規則な軟骨下骨表面なし:0、部分的:1、ある:2関節裂隙の狭小化なし:0、関節裂隙1㎜以上:1関節裂隙1㎜以下:2軟骨下骨嚢胞の形成なし:0、1つ:1、2つ以上:2関節端の不整なし:0、ある:1関節面の不一致なし:0、わずか:1、明らか:2関節変形(角ばり、変位)なし:0、わずか:1、明らか:2合計0点(正常)~13点27

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第3章血友病の診察と検査は?画像検査所見について②関節超音波検査について…•初期の状態変化を捉えることができる。•検査実施時に保護者も近くで見守ることができるため、乳幼児であっても関節評価ができる。•出血による痛みか、血友病性関節症による痛みかを即座に判別することができる。•リアルタイムに検査所見を得ることができるため、問診しながら関節の状態を把握することができる。•再現性の面で他の画像検査に劣る。•血友病性関節症のある関節だと検査の難易度が上がり、検査実施者の技量が問われる場合がある。関節超音波検査の評価方法は…•リニアプローブを使用。•肘・膝・足関節が検査対象。•滑膜肥厚や軟骨の均一さ/滑らかさなどを評価。•HEADUSに基づき点数化することも可能。※詳細はMartinoliCetal.ThronbHaemost2013;109:1170-9.参照299•点数化することに囚われず、経時的変化を捉えることに主眼を置き、半年~1年ごとに実施し続けることが肝要。

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HEADUSについて…•HaemophiliaEarlyArthropathyDetectionwithUltrasound。超音波による血友病性関節症の早期検出。•各関節において下記の3項目を評価し、点数化。HEADUSスコアリング3なし/軽微0滑膜肥厚軽度/中等度1軟骨重度正常%に厚みの変化あり≦50%に厚みの変化あり>50%に厚みの変化あり関節軟骨が描出できない正常2012340骨軟骨下骨の軽度不整1骨棘形成・軟骨下骨の不整2本院輸血部ではSONIMAGEMX1()を使用https://www.konicaminolta.com/global-en/healthcare/products/us/mx1/index.htmlより引用303

第4章 血友病の遺伝は?

第4章 血友病の遺伝は?

第4章血友病の遺伝は?血友病の遺伝についてX連鎖性潜性遺伝とは…•言わずと知れた血友病の遺伝形式。•ヒトの染色体・常染色体が22対の44本・性染色体が2本計46本•男性のX染色体は1つだが、女性はX染色体を2つ。そのため、X染色体1つが異常でも、対となるもう1つが正常であれば発病しない。その場合は保因者となる。①(血友病男性)(正常女性)ⅩYⅩⅩⅩYⅩYⅩⅩⅩⅩ正常男性正常男性保因者女性保因者女性131可能性の高い血友病の遺伝形式3パターン①血友病男性と正常女性②正常男性と保因者女性③血友病男性と保因者女性

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ⅩYⅩⅩⅩYⅩYⅩⅩⅩⅩ(正常男性)(保因者女性)血友病男性保因者女性正常女性正常男性ⅩYⅩⅩⅩYⅩYⅩⅩⅩⅩ(血友病男性)(保因者女性)血友病男性保因者女性正常男性血友病女性Ⅹ:遺伝子異常のあるⅩ染色体Ⅹ:正常なⅩ染色体Y:正常なY染色体②③324

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第4章血友病の遺伝は?保因者診断について保因者とは…•血友病患者ではないが、血友病患者を出産する可能性のある女性を指す。確定保因者と推定保因者の二つに分類する。①確定保因者(Obligatecarrier)1)血友病の父親から生まれた娘2)2人以上の血友病患児を出産した母親3)1人以上の血友病患児を出産し、母方家系に確実な血友病患者のいる女性②推定保因者(Possiblecarrier)1)母方血縁に血友病患者がいるが、血友病患児をまだ出産していない女性2)1人の血友病患児を出産したが、家系には血友病患者がいない女性確定保因者?健常?推定保因者?33

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保因者診断の実際は…•凝血学的な検査による方法第Ⅷ因子活性とvonWillebrand因子抗原量を測定。4第Ⅷ因子活性/vonWillebrand因子抗原量が、<0.5だと保因者の可能性が高くなる。※1体調や年齢、月経などでも変動するため、複数回(最低2回)の検査で判定すること。※2確定保因者でも妊娠中には第Ⅷ因子は増加する。診断のための採血には適さない。•凝固因子の正常域第Ⅷ因子活性50~200%第Ⅸ因子活性70~130%保因者の凝固因子活性正常域の約半分が平均•ABO式血液型別の第Ⅷ因子活性(中央値)O型約80%A型とB型約100%AB型約120%(※第Ⅸ因子はABO式血液型による差はない。)※保因者でも凝固因子活性が10%台の方もおり、上記のように変動することもあるので、再度日を改めて凝血学的検査を!!それでも著明低値を認めれば血友病の可能性も考えられるので、遺伝子検査を行わないとはっきりとしたことはわからない。34

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第4章血友病の遺伝は?女性血友病/症候性保因者について女性血友病/症候性保因者とは…•従来、XX性染色体を持つ女性は保因者(推定or確定)と表現するに留まっていた。Ⅹ:遺伝子異常のあるⅩ染色体Ⅹ:正常なⅩ染色体•近年、保因者であってもFVIII活性≦40%を示す症例においては女性血友病と診断、治療対象となっている。•FVIII活性≧40%であっても、過剰出血を認める場合、症候性保因者として治療対象と考えられている。重篤な出血経験の割合は…•genotype保有者の因子活性中央値は60%•genotype保有者の28%は因子活性<40%•重篤な出血をした経験のあるのは約50%なし50%あり50%535•正常因子活性であっても25%は重篤な出血経験あり

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出血エピソードは…•月経過多•産後出血4•月経困難症•鼻出血•紫斑•処置/外傷後の出血過多および遷延•関節内出血•筋肉内出血保因者だから出血で困らないというのは過去の話なのね。病院に相談してみよう。CedricHermansetal.Womenandgirlswithinheritedbleedingdisorders:Focusonhaemophiliacarriersandheavymenstrualbleeding.Haemophilia.2024Apr:30Suppl3:45-51.より引用36

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第4章血友病の遺伝は?遺伝子診断・出生診断について遺伝子診断とは…(長所)○採血時期や血液型の影響がない。(短所)○「遺伝子診断を受ける前に」を参照。<遺伝子変異を直接検出する方法(直接法)>•各家系内で血友病の原因となっている遺伝子変異を同定し、クライアントがその変異を有しているか否かを確認する方法。•現在の主流な方法。<塩基配列の多型を解析する方法(間接法)>•X染色体上の遺伝子多型マーカーを解析し、家系内で血友病を引き起こすX染色体を同定・追跡することで間接的に保因者を診断する方法。•具体的には、リンパ球からDNAを抽出し、制限酵素による切断断片の泳動パターンで診断する。•直接法が可能でない家系でも実施可能だが、信頼性が劣る。多型マーカーがヘテロ接合体である必要あり。•現在ではほとんど行われていない。37

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出生前診断について…•胎児由来の細胞を採取することにより診断する方法。•下記が挙げられる。○妊娠第11~14週での絨毛採取による遺伝子検査○15週以降の羊水穿刺による遺伝子検査○妊娠20週までに臍帯血(胎児血液)を採取し、凝固因子活性測定や遺伝子検査4注意点•胎児が血友病であった場合の対応を、検査前にしっかり話し合って決めておく必要がある。•臍帯血採取の際に出血のリスクがある。•いずれの方法でも、流産の可能性はゼロではない。※上記の問題を十分に理解・納得した上で、検査・診断の出来る専門機関へ紹介すること。※たとえ血友病患者として生まれても、現在は凝固因子製剤の定期輸注で健常な子供と同じように生活できることや、遺伝子治療の進歩により「血友病=治る疾患」となる可能性は十分あるので、このような情勢を考えると出生前診断の医学的意義は大きくないと考えられる。38

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第4章血友病の遺伝は?遺伝相談・遺伝子診断について遺伝相談のポイントは…•遺伝疾患であることが及ぼす心理的影響。→本人や家族(クライアント)への十分なカウンセリング。•血友病へのネガティブなイメージをもつクライアント。→心理カウンセラーの援助を得られる環境。→他の患者や家族、保因者との懇談の場を設置。•保因者診断を受ける長所・短所を明確に伝える。(長所)○起こりうるさまざまなことに対しての準備が可能例)分娩時の出血リスク回避分娩法の選択など児の出血に対する的確で早急な対応が可能(短所)○心理的なストレスの発生○クライアントや家族が遺伝差別を受ける可能性•実際に保因者であったときに生じる心理的影響。→施行後も精神的・心理的支援のできるカウンセリング体制の構築が必要39

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遺伝子診断を受ける前に…•より詳しい検査(遺伝子診断)を行いたいという場合、施行前には下記の点を十分に伝えておく必要がある。4①家系内の患者の協力が必要②診断結果に絶対的な信頼性はない③100%確実な診断に至らないことがある④時間と費用を要す⑤限られた施設のみで可能な検査•保因者診断実施の決定を行う上での注意点①医療者の価値観を押しつけない②現時点でわかっている医学的な情報のみ伝える③クライアントの権利を尊重する※権利=自己決定・選択権、幸福追求権、知る権利/知らないでいる権利、プライバシー権④最終決定はクライアントの自由意志による40

第5章 血友病治療薬って?

第5章 血友病治療薬って?

第5章血友病治療薬って?凝固因子製剤についてヒト血漿由来製剤とは…•日本赤十字血液センターで献血された血漿が原料。※輸入製剤(ファイバ)は除く。•下記の処理を組み合わせ、安全性は非常に高い。○原材料中および最終製剤の病原体のスクリーニング検査・遺伝子検査○ウイルス除去フィルター○モノクローナル抗体純化○親和性カラム○化学(SDSD)処理○加熱処理○紫外線照射ヒトの血漿が原料である限り、検出できない感染性病原体、未知のウイルスなどを100100%完全に除去することは不可能。クロスエイトMCクロスエイトMCノバクトMノバクトコンコエイト-HTコンコエイト-HT41411バイクロットバイクロットファイバファイバコンファクトFコンファクト

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遺伝子組換え型製剤とは…•日本では1993年より市販化。。※遺伝子組み換え型製剤のことをリコンビナント製剤とも呼ぶ。。•第Ⅷ因子製剤の臨床効果と安全性は、、血漿由来製剤と同等。。※遺伝子組換え第Ⅸ因子製剤は、血漿由来製剤に比し同単位での、回収率が低い傾向があり、変更時は回収率を評価する必要がある、。。•現在の遺伝子組み換え型製剤の製造工程には、、ヒトアルブミンが含まれていない。。※ヒトおよび動物由来タンパクは添加しないプラズマプラズマ/アルブミンフリー製剤もある/。。5•製造工程のトラブルや薬価の問題で使用できなくなるなどの不測の事態が生じる可能性がある。。アドベイトアディノベイトアドベイトアディノベイトイスパロクトイデルビオンイロクテイト静注用キット静注用キットイスパロクトイデルビオンイロクテイト静注用キット静注用キットエイフスチラオルツビーオオルプロリクスコバールトリイエイフスチラオルツビーオオルプロリクスコバールトリイジビイジビイヌーイックヌーイックノボエイトノボエイトベネフィクスレフィキシアベネフィクスレフィキシア4242

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第5章血友病治療薬って?いろいろな血友病治療薬について①第Ⅷ因子製剤について…製剤名製造/販売クロスエイトMC血漿由来第Ⅷ因子製剤コンファクトFコンコエイト-HT43

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※2024年12月時点で、我が国で使用可能な凝固因子製剤。原材料または由来細胞規格(溶解液量)その他250単位500単位5国内献血血漿1000単位2000単位溶解液:注射用水3000単位(全規格5ml)vWF極少量含有約13IU/1000IU250単位国内献血血漿500単位1000単位(250単位=10ml、濃縮5ml)(500単位=20ml、濃縮10ml)(1000単位=40ml、濃縮40ml)溶解液:注射用水vWF約60IU/ml国内献血血漿500単位溶解液:注射用水(10ml)vWF約100IU/ml4444

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第5章血友病治療薬って?いろいろな血友病治療薬について②第Ⅷ因子製剤について…製剤名製造/販売ヌーイック遺伝子組換え第Ⅷ因子製剤(標準型)アドベイト静注用キットノボエイトコバールトリイ45

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その他規格(溶解液量)原材料または由来細胞溶解液:注射用水500単位250単位ヒト胎児由来腎細胞2000単位1000単位4000単位3000単位(全規格5ml)溶解液:注射用水500単位250単位チャイニーズハムスター卵巣細胞1500単位1000単位3000単位2000単位(全規格5ml)溶解液:生理食塩液500単位250単位チャイニーズハムスター卵巣細胞1500単位1000単位3000単位2000単位(全規格4ml)溶解液:注射用水500単位250単位ベビーハムスター腎細胞2000単位1000単位3000単位(250・500・1000単位=2.5ml)(2000・3000単位=5ml)46※2024年12月時点で、我が国で使用可能な凝固因子製剤。465

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第5章血友病治療薬って?いろいろな血友病治療薬について③第Ⅷ因子製剤について…製剤名製造/販売遺伝子組換え第Ⅷ因子製剤(半減期延長型)イロクテイトアディノベイト静注用キットエイフスチラ47

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その他規格(溶解液量)原材料または由来細胞溶解液:注射用水500単位250単位ヒト胎児由来腎細胞1000単位750単位2000単位1500単位4000単位3000単位(全規格3ml)溶解液:注射用水500単位250単位チャイニーズハムスター卵巣細胞1500単位1000単位3000単位2000単位(全規格5ml)溶解液:注射用水500単位250単位チャイニーズハムスター卵巣細胞1500単位1000単位2500単位2000単位3000単位(250~1000単位=2.5ml)(1500~3000単位=5ml)48※2024年12月時点で、我が国で使用可能な凝固因子製剤。485

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第5章血友病治療薬って?いろいろな血友病治療薬について④第Ⅷ因子製剤について…製剤名製造/販売遺伝子組換え第Ⅷ因子製剤(半減期延長型)オルツビーオジビイイスパロクト49

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その他規格(溶解液量)原材料または由来細胞溶解液:注射用水500単位250単位ヒト胎児由来腎細胞1000単位750単位2000単位1500単位4000単位3000単位(全規格3ml)溶解液:注射用水1000単位500単位ベビーハムスター腎細胞3000単位2000単位(全規格2.5ml)溶解液:生理食塩液1000単位500単位チャイニーズハムスター卵巣細胞2000単位1500単位3000単位(全規格4ml)5※2024年12月時点で、我が国で使用可能な凝固因子製剤。505

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第5章血友病治療薬って?いろいろな血友病治療薬について⑤第Ⅸ因子製剤について…製剤名製造/販売血漿由来第Ⅸ因子製剤ノバクトM遺伝子組換え第Ⅸ因子製剤(標準型)ベネフィクス511

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その他規格(溶解液量)原材料または由来細胞溶解液:注射用水500単位国内献血血漿1000単位2000単位(全規格5ml)溶解液:0.234%塩化ナトリウム溶液500単位チャイニーズハムスター卵巣細胞1000単位2000単位3000単位(全規格5ml)52※2024年12月時点で、我が国で使用可能な凝固因子製剤。525

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第5章血友病治療薬って?いろいろな血友病治療薬について⑥第Ⅸ因子製剤について…製剤名製造/販売遺伝子組換え第Ⅸ因子製剤(半減期延長型)オルプロリクスイデルビオンレフィキシア5353

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その他規格(溶解液量)原材料または由来細胞溶解液:0.325%塩化ナトリウム溶液250単位ヒト胎児由来腎細胞500単位1000単位2000単位3000単位4000単位(全規格5ml)溶解液:注射用水250単位チャイニーズハムスター卵巣細胞500単位1000単位2000単位3500単位(250~1000単位=2.5ml)(2000・3500単位=5.0ml)溶解液:注射用水500単位チャイニーズハムスター卵巣細胞1000単位2000単位(全規格4ml)54※2024年12月時点で、我が国で使用可能な凝固因子製剤。545

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第5章血友病治療薬って?いろいろな血友病治療薬について⑦バイパス製剤について…製剤名製造/販売血漿由来活性型プロトロンビン複合体製剤(aPCC)ファイバ遺伝子組換え活性型凝固因子第Ⅶ因子製剤(rFVIIa)ノボセブンHIシリンジ乾燥濃縮人血液凝固第X因子加活性化第Ⅶ因子バイクロット555

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規格(溶解液量)原材料または由来細胞500単位(注射用水10ml)米国非献血血漿1000単位(注射用水20ml)1mg(注射用水1.1ml)ベビーハムスター腎臓細胞2mg(注射用水2.1ml)5mg(注射用水5.2ml)8mg(注射用水8.1ml)FVIIa1.56mgFX15.6mg(注射用水2.5ml)国内献血血漿5※2024年12月時点で、我が国で使用可能な凝固因子製剤。565

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第5章血友病治療薬って?いろいろな血友病治療薬について⑧第Ⅷ因子機能代替製剤について…製剤名製造/販売抗血液凝固第Ⅸa/Ⅹ因子ヒト化二重特異性モノクローナル抗体血液凝固第Ⅷ因子機能代替製剤ヘムライブラ作用機序は…•ヘムライブラ🄬🄬(一般名:エミシズマブ)は、FIXaとFXに結合し、リン脂質膜上で両因子を適切な位置関係に保持する、FVIIIaの補因子機能を代替する抗体医薬品。活性化第Ⅷ因子ヘムライブラ🄬🄬577北沢剛久,他:生化学89(3):325-32,2017より

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※2024年12月時点で、我が国で使用可能な凝固因子製剤。原材料または由来細胞規格(溶解液量)チャイニーズハムスター卵巣細胞他製剤との違いは…•静脈注射ではなく皮下注射。30mg(1.0ml)60mg(0.4ml)90mg(0.6ml)105mg(0.7ml)150mg(1.0ml)5•出血予防療法としてのみ使用可能。•抗体製剤であり、4週に1回の定期注射も可能。•従来通りの検査方法では、血液凝固第Ⅷ因子活性などの凝固能を評価することは困難。•出血時対応や周術期管理が従来と異なる。<インヒビター陰性>本薬剤使用中であっても第Ⅷ因子製剤を減量することなく、現行ガイドラインに沿って投与量を決定。<インヒビター陽性>まずノボセブン🄬🄬を使用。それでも止血困難な場合のみ、バイクロット🄬🄬、ファイバ🄬🄬の使用を考慮。※P68の副作用についても必ずチェック!58

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第5章血友病治療薬って?いろいろな血友病治療薬について⑨第Ⅷ因子機能代替製剤について…製剤名製造/販売抗TFPIモノクローナル抗体アレモ作用機序は…•アレモ🄬🄬(一般名:コンシズマブ)は、トロンビン生成を抑制する抗凝固因子であるTFPI(TissueFactorPathwayInhibitor)を阻害する抗体医薬品。①アレモ®がTFPIのK2ドメインに結合②TFPIのK1とTF/Ⅶa複合体、K2と第Ⅹa因子の結合を阻害③TFPIの抗凝固作用阻害により、初期相のTF/Ⅶa複合体を介した第Ⅹa因子生成が促進、延長④活性化第Ⅱ因子(トロンビン)生成が促進5959上図はノボノルディスク社が作成している医療従事者向けパンフレットより抜粋・一部改変

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※2024年12月時点で、我が国で使用可能な凝固因子製剤。原材料または由来細胞規格(溶解液量)チャイニーズハムスター卵巣細胞15mg(1.5ml)60mg(1.5ml)150mg(1.5ml)300mg(3.0ml)5他製剤との違いは…•静脈注射ではなく皮下注射。•出血予防療法としてのみ使用可能。•毎日の投与が必要。•凝固能を評価することは困難。•出血時対応や周術期管理が従来と異なる。<インヒビター陰性>各凝固因子製剤の承認最低用量を目安として、出血状況に合わせて投与量や投与期間を判断。<インヒビター陽性>ノボセブン🄬🄬、バイクロット🄬🄬、ファイバ🄬🄬いずれのバイパス製剤も使用可。※P68の副作用についても必ずチェック!60

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第5章血友病治療薬って?いろいろな血友病治療薬について⑩非凝固因子製剤について…•凝固因子製剤や第Ⅷ因子機能代替製剤は、生理的な凝固メカニズムに則って安定化フィブリン形成を誘導。•その一方、凝固抑制因子により過凝固を抑制。TissueFactorPathwayInhibitor(TFPI)アンチトロンビン(AT)プロテインSプロテインC•これらの凝固抑制因子を阻害すれば、理論上では止血に十分な安定化フィブリン形成を誘導可能。→非凝固因子製剤として治験進行中。インヒビターができても安心と言える時代が来たのかな?161

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抗AT製剤について…•ATは、凝固制御系において中心的な役割を果たす肝臓で合成されるセリンプロテアーゼインヒビター。•ATは、トロンビン、FXa、FXIaを制御し、抗凝固を発揮。5•肝細胞でのAT合成を阻害するsiRNA治療薬をサノフィ社が開発し、Fitusiranとして第III相治験進行中。・1回/月~1回/2月の皮下注製剤・冷蔵不要•Fitusiranは、AT活性のベースラインを約75%低下させ、血友病患者でも正常下限相当のトロンビンピーク値に。問題点は…•凝固因子製剤併用にて血栓発症リスク上昇の懸念。•緊急時に補給できるTFPI製剤がない。•抗AT製剤は中止後も長期間低値が持続。62

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第5章血友病治療薬って?血友病治療薬の扱い方について保存法は…•各メーカーが実施した安定性試験により保管温度が決定。•保管温度は添付文書を確認すること。(P65・66に一覧あり)•溶解用の蒸留水は冷やす必要はない。•冷暗所保管でも持ち帰り時はクーラーボックス等は不要。•室温保管可能であっても高温になる車内放置は厳禁。溶解法は…•製品により溶解法は違うので、添付文書を読むこと。•付属する溶解用キットにより輸注アドヒアランスが変わることもあり、製品を複数選択可能な場合は、患者に一度は練習用キットに触れてもらうこと。(ファイバ®における溶解時注意点)363○蒸留水が冷たいと溶けにくい。→蒸留水をひと肌に温めておいてから溶解させる。○緩やかに回転させながら溶解させ、泡を作らない。○どうしても解けない不純物があれば使用しない。→他の製剤に変更。→溶解しなかった製剤は回収し、原因調査依頼。

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使用法は…•5ml/分以下で輸注。※ファイバ🄬🄬・ヘムライブラ🄬🄬以外の製剤•ファイバ🄬🄬の注入速度は、2単位/分/kg以下。※上記を超えるスピードで注射しても副作用はほとんどない。副作用の詳細は後述。5•アレモ🄬🄬およびヘムライブラ🄬🄬は皮下注射。ロット番号の記録と有効期限…•すべての血液製剤はロット番号管理が義務化。※1997年9月より•医療機関にて使用記録は20年間の保管が義務化。※2005年施行の「改正薬事法」や「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」により•製剤のロット番号や有効期限を確認してから使用。•カルテまたは患者手帳にロット番号を必ず記載する。•一旦家庭療法用に処方した製剤は、保存状態が保証できないので交換できない。•患者同士の製剤の貸し借りは避ける。※緊急時を除く646

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第5章血友病治療薬って?血友病治療薬の保管温度について推奨冷蔵クリスマシン®(≦10℃)コンファクトF®(≦10℃)バイクロット®(≦10℃)アドベイト®(2~8℃)アディノベイト®(2~8℃)室温可あ®(≦30℃)あ®(≦30℃)あ®(1~30℃)あベネフィクス®(1~30℃)あイデルビオン®(2~25℃)あイスパロクト®(2~8℃)イロクテイト®(2~8℃)エイフスチラ®(2~8℃)オルツビーオ®(2~8℃)オルプロリクス®(2~8℃)コバールトリイ®(2~8℃)ジビイ®(2~8℃)ヌーイック®(2~8℃)ノボエイト®(2~8℃)ファイバ®(2~8℃)レフィキシア®(2~8℃)アレモ®(2~8℃)<真夏の最高車内温度>車体黒(対策なし)57℃車体白(対策なし)52℃サンシェード50℃窓開け(3cm)47℃https://jaf.or.jp/common/safety-drive/carlearning/user-test/temperature/summerより引用ヘムライブラ®(2~8℃)65

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非推奨保管可能温度(有効期間短縮に要注意!)クロスエイト®(≦60℃で6か月以内)イスパロクト®(≦40℃で3か月以内)イスパロト®(≦30℃で12か月以内)ノボエイト®(≦40℃で3か月以内)ノボエイト®(≦30℃で12か月以内)アドベイト®(≦30℃で6か月以内)イロクテイト®(≦30℃で6か月以内)コバールトリイ®(≦30℃で6か月以内)アディノベイト®(≦30℃で3か月以内)オルツビーオ®(≦30℃で6か月以内)ジビイ®(≦30℃で3か月以内)エイフスチラ®(≦25℃で3か月以内)ノバクトM®(≦45℃で6か月以内)イデルビオン®(≦30℃で6か月以内)オルプロリクス®(≦30℃で6か月以内)レフィキシア®(≦30℃で6か月以内)バイクロット®(≦30℃で6か月以内)アレモ®(≦30℃で4週間以内)ヘムライブラ®(≦30℃で7日以内)55ヌーイック®(15~25℃で3か月以内)いすぱろ※250単位の身1か月以内注1)全製品とも凍結不可。注2)ほぼ全製品において遮光は必須。注3)車内放置は厳禁。夏場は窓を開けていても45℃前後に達する。(JAFユーザーテストより)注4)保管可能温度内であっても、冷蔵庫・室内への出し入れを繰り返すのは不可。6666

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第5章血友病治療薬って?副作用についてインヒビターの発生●ほとんどが初回輸注後6ヵ月~1年以内or輸注回数20回以内に発生。●インヒビターが持続的に検出される割合は…血友病A10~15%血友病B2~5%※インヒビターの詳細は第9章。最近輸注の効きが悪い?悪心・嘔吐●APCC製剤(ファイバ)などでは起こることがある。※モノクローナル抗体鈍化高濃度濃縮製剤やリコンビナント製剤ではほとんど経験しない。輸注速度を遅めたり、輸注後しばらく安静にして防ぎましょう。67

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血栓症•ファイバ🄬🄬で脳梗塞や心筋梗塞の報告あり。→製造過程で活性型Ⅹ因子やトロンビンなどの活性化凝固因子が混入している可能性。•ノボセブン🄬🄬でも脳梗塞や心筋梗塞の報告あり。→局所的に外因系凝固の活性化がおこり、トロンビン産生や血小板活性化が原因の可能性。※モノクローナル抗体鈍化高濃度濃縮製剤やリコンビナント製剤ではほとんど経験しない。•高齢者や動脈硬化症、虚血性心疾患などのリスクを有する場合には血栓症マーカーを定期的にチェック。•ヘムライブラ🄬🄬の有害事象として血栓塞栓症(5.6%)および血栓性微小血管症(8.3%)があるため、緊急対応(血漿交換等)が可能な施設で治療開始が必要。568

第6章 止血治療の実際は?

第6章 止血治療の実際は?

第6章止血治療の実際は?早期治療および初回輸注と追加輸注について初回輸注・早期治療について…•出血の原因は・・・重症血友病:思い当たる原因がないことがしばしば。軽症血友病:外傷などの外的損傷が加わった時。2~3日経過して症状が出現することも。•「止血のための初めての輸注」=「初回輸注」。•出血早期は、患者が違和感を自覚した時。この時期の凝固因子製剤輸注が早期治療であり、初回輸注で大部分の出血は止血可能。※医療者が血腫としてわかってからでは早期治療とは言えない。•出血毎に凝固因子製剤を輸注する止血治療。=オンデマンド療法●同じ部位・1ヶ月以内に再出血させないことが大切。●再出血を繰り返すと・・・→治癒遅延を来たす。→出血しやすい関節(ターゲットジョイント)となる。※ターゲットジョイントの定義はP15に記載69

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追加輸注について…•中等度以上の出血や、少し輸注が遅れると・・・→注射しても止血が得られないこともある。→その場合には、追加輸注が必要となる。•追加輸注の理想的なタイミングは・・・血友病A:半日後血友病B:1日後6•投与量は、血友病A・Bともに初回輸注量の半分。※初回輸注量に関しては後述。•維持レベルを高くする必要がない場合は,初回輸注量を24時間毎に輸注してもよい。凝固因子補充とそれに伴う因子活性の動き70

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第6章止血治療の実際は?出血予防療法(定期補充療法)について出血予防療法について…●出血頻度・関節障害は、軽症・中等症<重症。●凝固因子活性が少しでもあれば、関節障害の発生や進行阻止が出来るのでは?↓↓出血予防療法が始まる。※英語表記としてはprophylaxis。定期補充療法とも呼ばれる。<利点>○関節障害の防止・進行遅延効果○出血回数減少による欠席/欠勤日数の減少○時間外受診の減少○健常人と変わらぬ社会貢献<欠点>○総輸注量増加に伴う医療費増加○未知の血液媒体病原体に曝露する確率の上昇○(乳幼児期)中心静脈カテーテル留置による感染、血栓症、出血のリスク上昇71

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開始時期は…●臨床的に明らかな関節内出血をきたす前が望ましい。●治療歴の把握や関節状態を想起しやすくするため、開始時期によって下記のように区別している。Primaryprophylaxis(一次定期補充療法)3歳未満かつ臨床的に明らかな関節内出血が1回以下で、画像所見上で関節障害がない状態で開始する。6Secondaryprophylaxis(二次定期補充療法)一次と三次の基準に合致しない状態で開始する。Tertiaryprophylaxis(三次定期補充療法)血友病性関節症を認めるが、悪化阻止のために開始する。予備的補充療法(*日本のガイドラインのみ記載あり)運動会や遠足などのイベント当日に出血予防で行うこと。用法・用量は…•出血予防療法のレジメンは、スウェーデン方式やカナダ方式など様々ある。•しっかりとした出血予防療法を無理に押し付けはせず、医療者と患者がしっかりと話し合い、輸注量や方法を個々に決定することが望ましい。WFHガイドライン第3版(2020年)では、出血予防療法レジメンは、凝固因子活性や出血回数ではなく、健常人と同等の活動度やQOLが達成できることを基準にすることを提言している。72

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第6章止血治療の実際は?家庭療法・自己静脈注射について概念・目的・適応は…●血友病止血治療の原則は、出来るだけ早く、かつ十分になので、↓家庭療法・自己注射が最良の方法●目的はQOL低下軽減自立促進※家庭療法の開始適齢期:5歳頃自己注射:10歳頃もちろん上限はなし。6歳未満でカテーテル(ポート)留置後、家庭で出血予防療法を行うこともある。73

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適応基準①患者および家族が望んでいる。②目的、意義、遵守事項を十分に理解している。③身体的・精神的苦痛を軽減し、QOLが高められる。④医療従事者と患者、家族の間に安定した信頼関係がある。⑤患者や家族が心理的に安定している。⑥輸注製剤による重篤な副作用を起こしたことがない。⑦規定の教育プログラムを受け、教育目標を達成している。⑧遵守事項を守ることが出来る。6遵守事項①定期的(最低3ヶ月毎)に受診する。②家庭療法に関して主治医の評価と指導を受ける。③出血症状が強い・判断に迷う場合は主治医に連絡する。④医師が指示した輸注量、輸注方法を守る。⑤輸注日・輸注量などを記録し、病院に定期的に提出する。⑥製剤は規定の方法で管理する。⑦針や注射器などの医療廃棄物を適切に処理する。⑧製剤を、兄弟を含む患者の間で流用したりしない。※輸注記録に記載する点○製剤のロット番号○出血エピソード(出血部位、程度)○輸注までの時間○輸注量○輸注毎および全体の止血評価○副作用併用薬○主治医への質問事項・主治医からのコメント・指導74

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第6章止血治療の実際は?家庭療法・自己静脈注射についての続き実際の手順は…•清潔操作に充分気を配る。製剤により付属のセットが異なるので、溶解操作も異なる。各製剤の溶解操作は添付文書を熟読すること。①施行者はせっけんと流水で充分手を洗う。これは非常に大切。②溶解操作や注射器への充填の時に、瓶のゴム部部、キャップ離脱後の針先、注射器の先の部分、翼状針の注射器との結合部分に、手や他の者が当たらないようにする。③溶解は泡立てないようにしながら、図の通り円を描くようにして溶解。溶解不良で、いつまでも溶液内に個体が混ざっている製剤は使用せず、違う製剤を使用。溶解不良の製剤は次回病院へ持参する。④注射する部位の近位(肩に近い方)を駆血帯で駆血する。巻きつける強さは強すぎないように、手首の脈が消えない程度にする。自己注射用の駆血帯は片手で簡単に駆血できる便利なもの。製薬メーカーも供与している。75

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⑤針の穿刺部位はアルコール綿で、よく擦り皮膚の汚れを取る。⑥針を刺す。針の角度は皮膚に対して30度くらいが適切。血管に到達したら抵抗がなくなり、血液が逆流する。血液の逆流を確認してから針の角度を水平近くに下げて針が抜けないように少し進める。6⑦注射速度を守り、ゆっくりと静注する。⑧注射が終わったら針を抜き、穿刺部位をアルコール綿などで1分間以上よく押さえて止血。この圧迫止血が不十分だと、紫斑の原因となる。止血を確認した後、絆創膏などを貼り、傷口を保護する。●輸注後の後始末も十分気を配ること。他人が使用済みの針で刺したり、血液付着物に触れたりすることは、避けなければならない。下記の通りに分別。1)製剤瓶、溶解液瓶、注射器→まとめて病院で廃棄2)翼状針、溶解針(両頭針)→専用の針廃棄ボックスに入れて病院で廃棄3)その他血液付着物→まとめて病院で廃棄4)空箱、ビニール系→一般ごみで廃棄も可●輸注後は、患者手帳に輸注日時・輸注量・製剤ロット番号・症状の変化についてきちんと記録。76

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第6章止血治療の実際は?輸注量の計算方法について血友病Aの計算方法は…•正確には体重、ヘマトクリットから循環血漿量を計算し、それに基づいて計算するが、臨床では下記の式を用いることが多い。体重1㎏あたり1単位の輸注で第Ⅷ因子は2%上昇。第Ⅷ因子の輸注量(U)=上昇期待値(%)×体重(kg)÷2or上昇期待値(%)=第Ⅷ因子の輸注量(U)÷体重(kg)×2実際の臨床では、製剤を何単位使えば凝固因子活性が何%上昇するかと考えることが多いので、下枠の計算式で計算することが多い。•血中凝固因子活性をモニターし、臨床症状と照らし合わせて製剤投与量の調整をすることが望ましい。7777

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血友病Bの計算方法は…•こちらも血友病Aと同じく正確には体重、ヘマトクリットから循環血漿量を計算し、それに基づいて計算する。体重1㎏あたり1単位の輸注で第Ⅸ因子は1%上昇。第Ⅸ因子の輸注量(U)=上昇期待値(%)×体重(kg)÷0.7~1or6上昇期待値(%)=第Ⅸ因子の輸注量(U)÷体重(kg)×0.7~1<活性測定値の解釈に注意を要する製剤>‣イスパロクト🄬🄬適正に検査を実施するにあたり『血液凝固第Ⅷ因子活性測定の手引き』あり‣エイフスチラ🄬🄬凝固一段法で得られた活性値の約2倍が実際の値‣オルツビーオ🄬🄬検査試薬や活性レベルにより測定値が異なる。‣イデルビオン🄬🄬一部のAPTT試薬を用いた凝固一段法によるFIX活性値は実際よりも低値を示すことあり‣ベネフィクス🄬🄬回収率が低いため上昇期待値×0.7程度の測定値になる‣レフィキシア🄬🄬適正に検査を実施するにあたり『血液凝固第Ⅸ因子活性測定の手引き』あり7878

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第6章止血治療の実際は?各種出血別の目標凝固因子活性について①出血部位目標ピーク因子レベル(1)関節内出血a)軽度(患者の自覚症状のみ)20-40%b)重度(理学的所見があるもの)40-80%(2)筋肉内出血a)腸腰筋80%以上b)その他の筋肉関節内出血に準じる。(3)口腔内出血歯科治療(抜歯・切開なし)20-40%(4)歯科治療(抜歯・切開あり)50-80%(5)舌や舌小体、口蓋裂傷40-60%(6)消化管出血80%以上(7)気道出血(閉塞の恐れあり)消化管出血に準じる。(8)皮下出血a)小さい血腫や四肢・体幹部原則不要b)大きな血腫や頚部・顔面20-40%79

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追加輸注備考原則1回のみ。12~24時間毎、出血症状消失まで。トラフ因子レベル30%以上、出血症状消失まで。急性期はRICEを実施。外傷性関節内出血もこの投与方法に準じて行う。関節穿刺はこの投与方法ではないので注意。原則入院加療。急性期はRICEを実施。持続輸注を選択してもよい。6関節内出血に準じる。急性期はRICEを実施。原則1回のみ。止血困難時は…→ピーク因子レベル20%以上、12~24時間毎、出血症状消失まで。処置直前に1回のみ。経過に応じて…ピーク因子レベルを20-30%になるように1~3日間トラネキサム酸1回15~25mg/kgを1日3~4回内服か、1回10mg/kgを1日3~4回の静注を併用してもよい。口蓋裂傷などの柔らかい食事を心がけ、入院加療を考慮する。ピーク因子レベル40%以上、12~24時間毎、3~7日間。ピーク因子レベル40%以上、12~24時間毎止血しても3~7日間。消化管壁内出血に対してもこの方法に準じる。持続輸注を選択してもよい。消化管出血に準じる。入院にて行う。症状に応じて、12〜24時間ごとに1~3日間。気道圧迫の恐れがある場合は気道出血の止血治療に準じ、入院加療を考慮する。(インヒビターのない血友病患者に対する止血治療ガイドライン2013年改訂版より引用・一部改変)80

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第6章止血治療の実際は?各種出血別の目標凝固因子活性について②出血部位目標ピーク因子レベル(9)肉眼的血尿a)初回原則不要b)止血困難時40~60%(10)頭蓋内出血100%以上(11)乳幼児の頭部打撲50~100%(12)骨折100%以上(13)外傷a)ごく軽微な切創口腔内、皮下、鼻出血の止血治療に準じる。b)それ以外骨折の止血治療に準じる。(14)コンパートメント症候群関節内出血(重度)に準じる。81

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追加輸注備考症状に応じて、12〜24時間ごとに1~3日間。トラフ因子レベル50%以上、少なくとも7日間継続。速やかに1回輸注、必要に応じてCTスキャン実施。トラフ因子レベル50%以上、少なくとも7日間継続。安静臥床と多めの水分摂取(あるいは補液)を行い、原因検索を行う。トラネキサム酸の使用は禁忌。入院治療にて持続輸注が望ましい。CTスキャン結検査で頭蓋内出血が否定された場合でも2日間は注意深く観察を行う。乳幼児の頭蓋内出血の初期は典型的な症状を呈することが少ないので注意を要する。関節手術に準じて持続輸注を選択してもよい。上下肢の骨折では血腫によるコンパートメント症候群の発症に留意する。6口腔内、皮下、鼻出血の止血治療に準じる。骨折の止血治療に準じる。軽微な外傷以外は入院治療とする。関節内出血(重度)に準じる。整形外科紹介が必要。(インヒビターのない血友病患者に対する止血治療ガイドライン2013年改訂版より引用・一部改変)82

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第6章止血治療の実際は?持続輸注療法について概念は…●ボーラス輸注だと体内の凝固因子活性は・・・輸注直後:最も凝固因子活性が高い輸注直前:最も凝固因子活性が低いこの2つの活性値の間で上下することになる。↓しかし・・・健常人には上記のような凝固因子活性の上下はなく、それが一定になれば健常人と同様の止血能となる。↓そこで・・・持続輸注(利点)○より効果的な止血が得られる(持続輸注が好ましい状況)①第Ⅷ因子製剤(標準型)による下記の止血管理-周術期-安静臥床が必要な大出血②インヒビター保有患者での大出血等※コンファクトFやファイバの溶解後の安定性は不明→持続療法は避ける。※モノクローナル抗体生成の製剤/リコンビナント製剤→溶解後24時間以内ならば室内でも安定。83

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クリアランスと分布容積とは…●凝固因子クリアランス[単位/kg/時間]1時間当たり・体重1kgあたりで、血漿中の凝固因子が消失していく単位数のこと。(凝固因子が消失する原)脾臓で処理出血部位で消費など●凝固因子分布容積[単位/ml]輸注された凝固因子製剤が分布する量のこと。○凝固因子血漿分布容積=輸注量÷体内の血漿量例)凝固因子分布容積0.5単位/mlの人に1500単位輸注すると…→3000mlの血漿中に製剤が分布することになる。6※手術などで出血が多くなる。→血漿以外にも凝固因子が分布し、見かけの分布容積は大きくなる。※第Ⅸ因子は第Ⅷ因子に比べthirdspaceへ移行しやすい。→分布容積は第Ⅷ因子に比べて大きくなる。(約2倍)持続輸注量の決定方法は…時間投与量(単位/kg/時間)=クリアランス(単位/kg/時間)×目標活性値(小数表示)①輸注試験を行い、回収率と半減期を算出。→その値から凝固因子クリアランスを計算。②それに目標活性値(100%を1とする。90%なら0.9)を掛ければ、1時間当たりの輸注量が算出できる。84

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第6章止血治療の実際は?持続輸注療法についての続き持続輸注の実際は…①凝固因子活性が目標レベルになるようボーラス投与。↓②凝固因子クリアランスを指標に、シリンジポンプなどを用いて持続輸注開始。※凝固因子製剤単独では流量不足でルート閉塞を来たすため、細胞外液の持続点滴を行いながら、側管から輸注することが多い。↓③適宜凝血学的検査を行いながら、投与量を決定する。※止血により凝固因子消費量が減少し、凝固因子クリアランスが低下すると、同量同速度での輸注では徐々に凝固因子活性が上昇するため。※インヒビターのある患者ではインヒビター力価が急上昇するため。85

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注意点•シリンジポンプでも誤差が生じる。1ml/時間以下の輸注速度は避けた方が賢明。※注射用蒸留水にて2~4倍希釈して使用しても問題なし。同製剤の単位が小さいものを使用するのもよい。•末梢静脈・中心静脈どちらでも効果は変わらない。6•凝固因子活性の結果がすぐに得られない施設では、凝固因子活性とAPTTを同時に測定し、凝固因子活性が80~100%であった時のAPTTよりどの程度延長or短縮しているかを止血モニタリングとして連日測定を行い、ベースとしているAPTTより延長していれば、追加輸注および持続輸注量増量とし、止血コントロールを行う。•血友病Bの患者では、出血量の多い大手術でなければ、持続輸注にこだわる必要はない。※第Ⅸ因子の分布容積やクリアランスは高く、半減期が長いため。•半減期延長型第Ⅷ因子製剤の持続輸注は、溶解後の安定性の問題から避けるべき。※半減期が延長しているため、約12時間毎のボーラス輸注でも止血に必要な第Ⅷ因子活性の維持が可能。※本院では、人工関節置換術や肝部分切除といった周術期止血管理は、半減期延長型第Ⅷ因子製剤のボーラス投与で実施。※半減期延長型第Ⅷ因子製剤のボーラス輸注による周術期止血管理は、自施設で第Ⅷ因子活性が測定可能な状況が好ましい。86

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第6章止血治療の実際は?周術期のボーラス輸注管理について始まったきっかけは…•半減期延長型製剤の希釈は、修飾たんぱく質(PEG、Fc)の不安定化により非推奨。•半減期延長型製剤の溶解液量は少なく、持続静注用(24時間)シリンジの準備不可。•半減期延長型製剤であれば、1日2回のボーラス輸注でもトラフ値>50%50%(利点)○持続輸注用シリンジの準備が不要。○ルート管理が不要となり、早期離床を促進。○メインの輸液製剤の用意と組成への配慮が不要。○血管外漏出リスクの低減。○製剤総使用量減少により医療コスト減少(欠点)○投与前後の生理食塩水によるルートフラッシュが必要。○活性50~80%での術後止血管理の安全性が未検討。○止血治療ガイドラインの推奨から外れる。877

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静注製剤の半減期は…8発売年半減期(日本人)半減期商品名199215.3-クロスエイトMC2007-13.0アドベイト201412.610.8ノボエイト201519.019.0イロクテイト201620.614.3アディノベイト201612.813.8コバールトリイ201716.414.2エイフスチラ201916.317.1ジビイ202019.9イスパロクト202117.315.3ヌーイック202352.247.2オルツビーオ199224.0―ノバクトM2010―24.5ベネフィクス201479.478.0オルプロリクス2016144.2143.2イデルビオン201883.0レフィキシア※2024年12月時点の各製剤の添付文書(成人データ)より抜粋886

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第6章止血治療の実際は?その他の薬剤についてその他の止血治療剤は…●合成バゾプレッシン(デスモプレシン🄬🄬)・適応:軽症血友病Aフォン・ヴィレブランド病(typeⅠ・ⅡA)。・機序:血管内皮細胞からのフォン・ヴィレブランド因子(vWF)を放出促進し、第Ⅷ因子がこのvWFと複合体を形成することで半減期が上昇し、凝固活性上昇。・使用法:0.2~0.4μg/kgを生理食塩水50~100mlに溶解。30分かけて点滴静注。・効果:第Ⅷ因子活性がベースラインの2~5倍に上昇。半減期は凝固因子製剤と同じ。・副作用:顔部紅潮、低ナトリウム血症、水中毒など・注意点:反復使用で第Ⅷ因子活性の上昇が悪くなる。※間隔を置けば反応も改善し、再使用可能。●トラネキサム酸(トランサミン🄬🄬)・適応:線溶が亢進している口腔内、消化管粘膜出血時。・使用法:500mgを1日に4~6回の内服。・術後や消化管出血、腹腔内出血などの大出血時には、トランサミン4~6g/日を4~6回に分けて静注する。・ワンショット静注で一過性に悪心、悪寒、口腔内違和感、色覚異常が出現する可能性がある。・肉眼的血尿の際にはトランサミン使用禁忌。※凝血塊により尿路閉塞を来たす可能性があるため。・抗線溶剤使用による血栓傾向を懸念し、心血管の術後、脳出血時の使用は賛否両論ある。899

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鎮痛剤は…●血小板機能を抑制する薬剤の全身使用はなるべく避ける(アスピリン、インドメサシンなど)※疼痛が強い場合、メフェナム・ロキソプロフェンなどの頓用は可能です。●外用剤は問題なく使用できる。(インドメタシン軟膏などでも)6●激痛に対しては麻薬・合成麻薬系統の薬剤を用いる。※ペンタゾシン静注が簡便でよいですが、薬物依存に注意。RICEとは…●出血時の補助的治療法として非常に重要!凝固因子の輸注だけでは不十分です。RestIceCompressionElevation安静冷却圧迫挙上9090

第7章 各出血エピソードへの対応は?

第7章 各出血エピソードへの対応は?

第7章各出血エピソードへの対応は?関節内出血について関節内出血症例…•血友病A患者が、右膝関節内出血を起こした。症状は局部の痛み、熱感、腫脹であった。<対応は?>とにかく第Ⅷ因子製剤の輸注が必要な状態です。ヘムライブラ使用患者であっても、出血してしまえば第Ⅷ因子製剤ですので注意してください!輸注量決定のため、P79・80の表を参照しましょう。今回は視診でもわかる程の膝関節出血であり、重症です。この場合の目標ピーク因子レベルは40~80%となっていますね?ちなみに軽症とは、身体所見が明らかでなく、患者自身が違和感を訴えているときのみを指します。輸注量の計算には体重が必要なので、忘れずに体重測定をしてください。出血予防療法中であれば出血時点のおおよその第Ⅷ因子活性をを40~80%から差し引いて計算しましょう。腫れがヒドいからといって、ピーク因子レベルが100%になるように輸注しなくても、止血コントロールは出来ますので、医療費削減、血栓症リスク回避のため、過剰投与はしないように。輸注以外で重要なのはRICEです。91

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•約半日後、局部の痛みは消失したものの、熱感・腫脹はまだ残存していた。<対応は?>血腫吸収時期になっても熱感が残存していることも多々あり、それのみで止血の判断は出来ません。初回対応時の症状から判断すると、さらに追加輸注した方が、確実な止血が得られると判断します。追加輸注の方法としては、第Ⅷ因子の半減期から12時間毎・初回投与量の半量が理想です。しかし、同規格の製剤がない場合には、同量でもよいでしょう。その場合の間隔は、標準型、半減期延長型共に24時間以内であれば、よいでしょう。(血友病B患者で、出血時予防療法に半減期延長型の第Ⅸ因子製剤を使用中であれば、出血時には標準型の第Ⅸ因子製剤が好ましい)。もちろんRICEは継続です。7•さらに約半日後の右膝関節の状態は、熱感・腫脹は初期対応時よりは軽減した状態であったため、追加輸注はせずにRICE継続にて経過観察の方針とした。<ポイント>○初回充分量の凝固因子輸注と局所安静が第一。患部の腫脹なく、違和感の自覚のみである時期に輸注が出来れば、単回輸注で軽快する症例が多い。○非常に強い関節の腫れがあると痛みが強く、動けない日々が長くなります。このようなときは関節穿刺をして溜まった血液を排除したり洗い出すこともある。※現在では定期輸注を行う患者が増えたことや、オンデマンド療法が行える患者も多くなり、本症例のような関節内出血を起こして来院されることは少なくなっている。92

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第7章各出血エピソードへの対応は?筋肉内出血について筋肉内出血症例…•血友病A患者が、右大腿筋肉内出血を起こした。症状は最初は局部の鈍痛、熱感、腫脹および荷重時の疼痛であったが、疼痛により歩行困難となった。<対応は?>やはり第Ⅷ因子製剤を輸注です。ではその輸注量は?P79・80の表を参照しましょう。腸腰筋以外の筋肉内出血なので、目標ピーク因子レベルは40~80%となっていますね?しかし、歩行困難を訴えるほどの筋肉内出血ですので、ピーク因子レベルは80%を目標に輸注してよいでしょう。出血予防療法中であれば出血時点のおおよその第Ⅷ因子活性を80%から差し引いて輸注量を計算するのでしたね。輸注以外の対処も同時に行いましょう。ではその対処は?RICEでしたね。93

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•第Ⅷ因子製剤および消炎湿布剤を処方、歩行時には松葉杖使用を指示して約半日後、局部の鈍痛は軽減するも残存し、その他の症状も治まっていない。<対応は?>動かさないように指示をしていても、ちょっとした移動や寝返りなどで無意識に患部の筋肉を動かしてしまうので、筋肉内出血はなかなか治りづらく、この症例も追加輸注が必要と判断します。追加輸注方法は、12時間毎・初回投与量の半量が理想でしたね?同規格の製剤しかない場合には、同量を24時間以内に投与となります。もちろんRICEも継続です。7•その後も第Ⅷ因子製剤の追加輸注を行い、合計4回必要であった。その間は安静維持とし、治療開始3日目には症状改善を認めた。そのため、杖なしでの歩行を許可とし、リハビリを徐々に開始した。<ポイント>○筋肉内出血は、関節内出血に比べて出血早期に痛みを感じにくく、痛みを感じた時には出血量が多くなっている場合が多いです。○凝固因子も単回輸注で済むことは少なく、数回追加輸注が必要となる場合がほとんど。○完全に軽快するまで、罹患筋肉を動かさないようにすることも、再出血を防ぐには非常に重要。94

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第7章各出血エピソードへの対応は?腸腰筋出血について腸腰筋出血症例…•血友病A患者が、2~3日前から左下腹部~鼠径部痛を自覚するも、便通異常などなく放置していた。すると徐々に疼痛が増悪し、大腿を進展することが困難になり、大腿前面の感覚まで鈍ってきたため来院した。診察台に横になってもらったところ、下図のような体位をとっていた。<対応は?①>出血部位が深部にあるため、同部位の腫脹や熱感を感じ取ることはできず、右下腹部~鼠径部痛であった場合、虫垂炎との鑑別も必要です。上図の体位は「腸腰筋出血体位」と呼ばれ、診断の一助となります。CT検査で出血部位を明らかにしましょう。95

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<対応は?②>出血だとわかれば、やはり第Ⅷ因子製剤を輸注ですね。投与量はP79・80の表を参照してください。筋肉内出血ですが、腸腰筋は大きな筋肉であり、ピーク因子レベルは80%以上を目標とし、症状消失までトラフ因子レベルが30%以上となるように追加輸注しましょう。インヒビターがなく、半減期延長型の第Ⅷ因子製剤を使用していれば、初回投与量の半量を12時間毎の輸注でトラフ因子レベルが30%を下回ることはほぼないでしょう。RICEは必須です。トラネキサム酸の併用もよいでしょう。•症状消失後から歩行を許可し、再出血しないことを確認の後に退院としたが、リハビリテーションのための通院が必要であった。7<ポイント>○腸腰筋出血は、自立歩行が不可能になる上、安静が保ちにくいため、入院加療が原則。○右腸腰筋出血は虫垂炎とよく間違えられる。画像検査以外の鑑別ポイントとしては、白血球数やCRPの上昇があまりないことが挙げられる。○腸腰筋出血時にときおり大腿神経麻痺を生じる。麻痺症状から完全に回復するまでに要する期間は、半年以上を要すこともある。○大きな筋肉の出血なので、凝固因子輸注量に注意。容易に再出血を起こし、血友病性嚢腫や血友病性偽腫瘍へと移行しやすいため、治療は慎重を要す。○股関節内出血と腸腰筋出血の鑑別が難しそうだが、大腿部の進展で痛みが増強、大腿部のしびれ(大腿神経麻痺)であれば腸腰筋出血、荷重により痛みが増強すれば股関節内出血と考えることができる。96

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第7章各出血エピソードへの対応は?口腔内出血について口腔内出血症例…•血友病A患者が、抜歯後より止血困難となった。•抜歯前にピーク因子レベルが50%になるように単回輸注して、直後は止血していたが、その翌朝には口腔内が血塊でいっぱいの状態になっていた。<対応は?>口腔内は線溶系が亢進している部位なので、抜歯時にはトラネキサム酸を併用した方がよかったですね。前日に第Ⅷ因子製剤を単回輸注しただけなので、現在の第Ⅷ因子活性を考えると追加輸注が必要そうですね。輸注量は覚えなくていいので、P79・80の表を参照しましょう。抜歯に伴う出血ですので、ピーク因子レベル20~30%を目標に輸注をするとなっていますね。今度はトラネキサム酸の併用をお忘れなく。•その後大きな出血はないものの、同部位からじわじわといつも出ている状態が持続している。97

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<対応は?>食事、会話等で安静が保ちにくい部位であること、圧迫しにくい部位であること、線溶亢進部位であることから、適切に対応していても止血に難渋することはあります。第Ⅷ因子製剤の12時間毎の追加輸注継続およびトラネキサム酸内服継続にて経過観察としましょう。•最終的には抜歯後2日目で止血が得られた。7<ポイント>○口腔内は生理的に線溶系が亢進している部位です。この症例のように一旦止血し作られた血塊が溶けたり、破れたりして再出血をしばしば認める。○じわじわとした出血の場合、トラネキサム酸を併用することにより良好な止血を得ることができる。○トラネキサム酸併用や追加輸注をしても止血不良が持続する場合、縫合の必要性等を歯科医に相談する。○口腔内出血であっても、咽頭や舌根からの出血は侮るなかれ。気道を圧迫することがあるので非常に危険です。自発痛や圧痛を認めたり、飲み込んだり呼吸が苦しいなどの訴えがある場合、表面上では出血が見えないため、超音波検査やCTによって血腫の存在を確かめましょう。もしも血腫を認めた場合は、筋肉出血時に準じた凝固因子の補充を行う。98

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第7章各出血エピソードへの対応は?頭蓋内出血について頭蓋内出血症例…•血友病Bの患者が、2~3日前から頭痛を自覚。頭痛薬を服用しても軽快せず増悪した。悪心、嘔吐を認めるようになったため来院した。頭痛発症時から来院時に至るまで発熱はなかったとのこと。<対応は?>健常人が上記症状を訴えた場合でも頭蓋内出血の鑑別が必要ですが、血友病であれば鑑別疾患の上位に挙げなければならなりません!迷わずCT検査を行いましょう。また、出血している可能性が高い場合には、第Ⅸ因子製剤を輸注してから検査を行うとよいでしょう。•CT検査を行ったところ、下図のような所見が得られた。99

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<対応は?>硬膜下血腫の所見であり、即入院ですね。ベッド上安静、絶食を指示すると同時に第Ⅸ因子製剤が必要です。さすがにあの値を目指すのだと思いますが、とりあえずP81・82を参照してみましょう。頭蓋内出血のところをみると予想通り目標ピーク因子レベルは100%以上となっていますね。初回投与以降は、その半量を12時間毎に輸注しましょう。予想外に凝固因子活性トラフ値が50%を下回ることを避けるために、標準型の第Ⅸ因子製剤を持続輸注としてもよいでしょう。致命的な出血となる可能性も十分にあるため、連日APTTや凝固因子活性の測定を行い、止血状態を確認しながら、輸注計画を立てていくことが賢明です。7•症状も軽快し、CT再検にて血腫の吸収を認めたため、2週間後に退院となった。<ポイント>○「血友病患者の致死的な出血は?」と聞かれれば、「頭蓋内出血!」とすぐに想起できるようにすること。○血友病患者が発熱なく徐々に増悪する頭痛を訴えた場合には、必ず脳出血ではないかと疑う。○大泉門の閉じていない乳幼児期であれば、頭痛や嘔気嘔吐の症状が不明瞭で、いつもより不機嫌というのみにとどまる症例もあり、見逃しには要注意。○診断、治療を早期に行えば、後遺症も残さず軽快する症例が多い。○脳出血におけるトラネキサム酸の使用の是非は専門家によって意見が異なっている。100

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第7章各出血エピソードへの対応は?血尿について血尿症例…•血友病A患者が、「コーラのような尿が出た!!」と不安交じりに電話連絡があった。<対応は?>血尿の場合は、まずは十分な水分補給と安静をしっかり行うように説明する。指示通りに対応したが、2日間経過しても血尿が持続する場合は、再度連絡するようにも説明しておく。•「丸2日経過したが、血尿が出続ける。」と、再度電話連絡があった。<対応は?>止血困難な血尿であり、ピーク因子レベル40~60%を目標に単回輸注の指示をする。輸注量はP81・82を参照のこと。101

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•「一旦血尿が止まったが、また出始めた。」と、初回輸注後から3日目に再度電話連絡があった。<対応は?>尿路系も線溶系が亢進している部位であり、一旦止血した後に再出血をきたしたと考えられます。ピーク因子レベルは前回同様40~60%ですが、12時間毎に連続2回輸注するように指示しましょう。初回以降の輸注量は、半減期の関係から、初回の半量でよいでしょう。7•上記の通りの輸注にて血尿は軽快した。なお止血が得られる間、患者は通常の仕事をこなしていた。<ポイント>○血尿を認めた場合、まずは水分摂取および安静。○水分摂取および安静でも軽快しない血尿の場合、凝固因子の輸注を行う。○尿路結石などによる出血の可能性もあるため、止血治療を行うだけでなく、原因を一度チェックしておく。○肉眼的血尿がみられる場合には、絶対にトラネキサム酸の使用はしてはいけない。102

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第7章各出血エピソードへの対応は?消化管出血について消化管出血症例…•血友病B患者は、以前より心窩部痛および空腹時嘔気を認めていたが放置していた。すると、突然吐血したため、救急車にて救急外来に搬送された。上部消化管出血を疑い、緊急上部消化管内視鏡検査を施行。下図に示す様な出血性潰瘍を十二指腸前壁に認めた。<対応は?>露出血管のクリッピングはしてもらったと仮定して…次は第Ⅸ因子製剤の輸注ですね。輸注量はどうします?P79・80の表を見てみましょう。上部消化管出血に対しての目標ピーク因子レベル80%以上ですね。その他にすることは何でしょう?もちろん凝固異常のない患者と同じく絶食および消化性潰瘍治療薬は必要ですね。さらに追加した方がよい対応といえば?消化管は線溶が亢進している部位なので、トラネキサム酸投与も必要でしょう。103•ピーク因子レベル80%以上を目標に初回輸注を行い、止血以後はピーク因子レベル40%以上を目標に1日2回・連日輸注を5日間行った。トラネキサム酸は1回10mg/kg静注を4回投与も行った。

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<食事開始時期は?>一番気になるところだと思いますが、明確に「こうなったら食事開始!」というのは残念ながらありません。基本的に凝固因子を輸注しているので止血能は正常と変わりないとか考えてよいので、内視鏡的止血術にて止血が得られれば、その翌日もしくは翌々日から重湯などの流動食を開始としてよいでしょう。また、食事が再開できるようになれば、トラネキサム酸は内服に変更してもよいでしょう。•内視鏡的止血術後翌日の血液検査にて貧血進行が止まっていること確認し、流動食を開始した。再出血することなく順調に食上げを行い、内視鏡的止血術を施行後1週間後に退院した。7<ポイント>○内視鏡検査の前処置として、ペンタゾシンの筋肉注射を行うことがあるので、それに伴う筋肉内出血予防として、検査前に通常の予防量の凝固因子輸注を行う。○消化管出血の場合はいくら凝固因子を補充しても、原因の対策を行わないと止血できないため、内視鏡検査を行い、確実な止血を行う。○消化管も生理的に線溶が亢進している。血塊が容易に剥がれ落ちて再出血しやすいため、トラネキサム酸の併用を行う。104

第8章 製剤由来感染症治療の現在は?

第8章 製剤由来感染症治療の現在は?

第8章製剤由来感染症治療の現在は?HIV感染症について①血友病とHIV感染について…•血友病のHIV感染は、1980年代前半に使用していた非加熱輸入血液製剤が原因。日本では1986年の時点で40%が感染したと推定されている。•令和5年度血液凝固異常症全国調査の報告書によると、血友病(類縁疾患も含む)のHIV感染者は1433名で、そのうち742名がすでに死亡している。•1996年以降有効な抗HIV薬を中心とした治療の進歩によって生命予後や生活の質は劇的に改善し、最近はAIDSのために命を失う血友病患者は激減した。105内服薬で救命できる時代に

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HIV感染症の治療について…•現在はCD4数やウイルス量に関係なく、早期に治療を開始し、患者の免疫能低下や他者への二次感染を防ぐことが推奨されている。※詳しくはDHHSガイドラインやHIV感染症治療研究会発行のHIV感染症「治療のてびき」を参照。•きちんと服用できた場合、9割以上の患者でウイルスを検出限界以下に抑えられ、免疫能も回復する。•2024年12月時点での抗HIV薬①核酸系逆転写酵素阻害剤②非核酸系逆転写酵素阻害剤③プロテアーゼ阻害剤④インテグラーゼ阻害剤⑤侵入阻害剤⑥HIVカプシド阻害剤主に①と②およびとそれ以外1剤を組み合わせ,3剤以上の多剤で使用するのが一般的8•どの製剤が第1選択となるかは年々変わるので、最新のガイドラインを参照にすること。<20歳時でHIV感染と診断された人の平均余命>1剤療法(1988-1991年)2剤療法(1992-1995年)ART(初期;1996-1998)ART(後期;1999-2005)ART(現在;2006-2013)一般人口(2006-2013)2011.820.844.750.854.963(歳)AyselGueler,etal.LifeexpectancyinHIV-positivepersonsinSwitzerland:matchedcomparisonwithgeneralpopulation.AIDS2017,31:427–436.より改変106106

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第8章製剤由来感染症治療の現在は?HIV感染症について②社会的な問題について…•HIV感染症には、偏見や差別の問題がある。→1980~90年代に「エイズパニック」を助長した一部のマスコミと同調した医療者自身が原因。•薬害エイズ訴訟等を通じて患者自身が積極的に働きかけた結果、医療現場での偏見や差別は解消傾向。HIV感染被害の補償について…•輸血用血液や輸入血液製剤によるHIV感染者では、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)より健康管理費用が支給される制度がある。(対象)○エイズ発病していない感染者○二次感染者(配偶者)○三次感染者(母子感染者)※エイズ発病後は、健康管理手当が支給。•薬害エイズ裁判は、1996年に原告の主張に沿った和解が成立。その後エイズに対する恒久的医療対策が行われることになり、毎年、地方・中央・大臣レベルで交渉が行われている。107

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エイズ医療対策について…•1997年から国の事業として、東京にエイズ治療研究開発センターを設け、全国8ヶ所のエイズ治療のための地方ブロック拠点病院と約360ヶ所の拠点病院が指定された。さらに2004年より各県に1つ以上の中核拠点病院が制定された。•ブロック・中核拠点病院の主な役割①包括医療の提供②拠点病院を含む地域医療機関へのエイズ教育と研修③情報発信④基礎・臨床研究など•ブロック・中核拠点病院では、下図に示すように医師、看護師、薬剤師、心理カウンセラー、医療福祉担当者(医療ソーシャルワーカー)などが連携して、チームで治療やケアを行っている。8医師薬剤師看護師患者ソーシャルワーカー心理カウンセラー108

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第8章製剤由来感染症治療の現在は?C型肝炎について①血友病とHCV感染症について…•1990年までに輸血や血液製剤による治療を受けた血友病患者の90%がHCV抗体陽性であり、この世代は肝炎の進行が懸念される。•HBVと同様に、現在の製剤からのHCV感染は発生なし。•HIVに代わり、近年の血友病患者の死因のトップ。C型肝炎の概要について…•C型肝炎ウイルスキャリア=推計で全国200万人以上。•HCVの遺伝子型(ジェノタイプ)は数種類存在する。•HIVとの重複感染では、肝炎が重症化するデータが数多く示されている。•以前はインターフェロンの点滴治療が主流であったが、現在はDAAの内服治療が主流となっている。※サブタイプ,ウイルス量,SNPにより有効率が異なる。直接作用型抗ウイルス薬(DirectActingAntivirals;DAA)※製造販売が中止された薬剤は除いているNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬Glecaprevir(マヴィレット®Pibrentasvirとの合剤)NS5A阻害薬Ledipasvir(ハーボニー®)Pibrentasvir(マヴィレット®Glecaprevirとの合剤)Velpatasvir(エプクルーサ®Sofosbuvirとの合剤)NS5Bポリメラーゼ阻害薬(核酸型)Sofosbuvir(ソバルディ®)(エプクルーサ®Velpatasvirとの合剤)109

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C型肝炎の治療について①…•日本肝臓学会編『C型肝炎治療ガイドライン(第8.3版)』に従う。※2024年12月時点。•日本人はジェノタイプ1bの感染が多いが、血友病患者に限れば1a,3aなどが多く見られる。1a,3aは1bに比べIFNの有効性は高いと言われるが、HIV重複感染では肝線維化が進行しているため、非血友病者に比べ有効性は概して低い。1型2型C型肝炎の治療フローチャート初回治療DAA治療歴なし再治療SMV+Peg-IFN+RBVVAN+Peg-IFN+RBVTVR+Peg-IFN+RBVDAA治療歴あり初回治療DAA治療歴なし再治療TVR+Peg-IFN+RBVDAA治療歴あり・SOF/LDV(重度腎障害なし)・GLE/PIB(8週投与)・SOF/VEL(重度腎障害なし)・SOF/LDV(重度腎障害なし)・GLE/PIB(12週投与)・SOF/VEL(重度腎障害なし)・SOF/LDV(重度腎障害なし)・GLE/PIB(8週投与)・SOF/VEL(重度腎障害なし)・GLE/PIB(12週投与・NS3変異はエビデンスなし)・SOF/LDV(重度腎障害なし)・SOF/VEL(重度腎障害なし)8代償性肝硬変1、2型・SOF/LDV(重度腎障害なし)・GLE/PIB(12週投与)・SOF/VEL(重度腎障害なし)SOF:ソホスブビル、LDV:レジパスビル、GLE:グレカプレビルPIB:ピプレンタスビル、VEL:ベルパタスビル、RBV:リバビリン※治療選択の注意点等は本書では省略しているため、詳細は日本肝臓学会編『C型肝炎治療ガイドライン』を参照すること。110110

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第8章製剤由来感染症治療の現在は?C型肝炎について②C型肝炎の治療について②…•IFNフリーDAA前治療不成功例の再治療に関しては、下記に示す治療法を検討する。1型・プロテアーゼ阻害剤+NS5A阻害剤の不成功例・NS5A阻害剤+NS5B阻害剤の不成功例・SOF/VEL+RBV24週・GLE/PIB12週(P32欠失なし)2型・NS5B阻害剤+リバビリンの不成功例・GLE/PIB12週・SOF/VEL+RBV24週•C型非代償性肝硬変例の治療に関しては下記に示す治療法を検討する。非代償性肝硬変(全てのゲノタイプ)Child-Pugh分類gradeBChild-Pugh分類gradeC・SOF/VEL12週間(重度腎障害なし)・SOF/VEL12週間(重度腎障害なし)※肝臓専門医による治療方針判断・経過観察※治療選択の注意点等は本書では省略しているため、詳細は日本肝臓学会編『C型肝炎治療ガイドライン』を参照すること。•ALT値改善目的にSNMC、UDCA等の肝庇護療法も併用。•血清フェリチン高値例は肝機能を悪化させるとして、瀉血によって血清フェリチンの低下を図り、肝機能の改善を見た例も報告されている。111

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C型肝炎の治療について③…•肝硬変・肝癌の場合は、HIVの感染の有無に関わらず、非血友病者と同様の基準で肝移植の適応となる。•HIV感染症合併例でCD4数が低値(<200/µL)の場合、移植後免疫抑制剤の使用に十分注意が必要。•HCC肝切除術時の止血管理①凝固因子レベル80〜100%を目標に術前〜5日間は持続輸注を行う。②その後2週間まではトラフレベル30%のボーラス輸注に切り替える。③出血の合併がなければ術後より血栓症予防の目的でヘパリンを開始。※凝固因子レベルが50%以上である限りこれを継続する。8•肝移植後は移植肝が凝固因子を産生するため凝固異常は健常化し、凝固因子製剤の輸注は不要となる。112

第9章 インヒビターって?

第9章 インヒビターって?

第9章インヒビターって?インヒビターについてインヒビターとは…タイプ1インヒビター○凝固因子を中和する働きを持つIgG抗体。⇒抗体量に応じて凝固因子活性を失活する。○先天性血友病患者が輸注することで発生。○輸注による効果が乏しいことで気付くことが多い。タイプ2インヒビター○凝固因子と結合するIgG抗体。⇒複合体が脾臓などで異物処理。⇒凝固因子の血中での半減期が短縮。○インヒビターと凝固因子が共存する状態。○後天性血友病患者に多いのがこのタイプ。※後天性血友病=健常人が第Ⅷ因子に対してインヒビター(自己抗体)を作る病態。113

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単位と表現について…インヒビターの単位=※測定方法に関しては後述<現時点でのインヒビター価のみでの分類方法>lowtiterhightiterロータイターハイタイターと呼んでいる。<これまでのインヒビター価の最高値での分類方法>(※輸注継続下で)lowresponderhighresponderローレスポンダーハイレスポンダーと呼んでいる。•凝固因子製剤輸注によりインヒビター価が急上昇する現象ベセスダ単位(BU/ml)<≦5ベセスダ単位<≦5ベセスダ単位既往反応(anamnesticresponse)※輸注開始3~7日後からみられることが多い。1149

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第9章インヒビターって?頻度と原因について頻度と原因は…あり一過性のインヒビター出現率なし20~30%あり生涯インヒビター保有率なし血友病A5~7%血友病B3~5%115

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<インヒビターの発現リスク>血友病A>血友病B重症>中等症・軽症黒人>ヒスパニック>白人<高率にインヒビターを起こす遺伝子異常>○イントロン22の逆位○大きな遺伝子挿入・欠損、○軽鎖ナンセンス点変異など…9•遺伝子異常の一致する血友病A患者の兄弟間でもインヒビター陽性の一致率は40%前後。•遺伝子異常以外の因子(免疫など)も影響している。116

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第9章インヒビターって?測定方法について測定方法について…●測定方法ベセスダ法・・・基本的な測定方法。ナイメゲン変法・・・低力価インヒビター検出に優れる。現在は最も頻用されている。ELISA法・・・タイプ2インヒビター検出に優れる。中和療法時のインヒビター価の変動不明。保険収載なし。<ベセスダ法の手順>①正常血漿と患者血漿(A)および、正常血漿と凝固因子(Ⅷ、Ⅸ)欠乏血漿(B)を作成する。②37℃、2時間反応させる。※それぞれ1:1に混和する③(A)(B)の凝固因子活性を測定し、残存活性化比率が50になる場合、1ベセスダのインヒビター価とする。例)(A)が100%(B)が12.5%→3ベセスダ117

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(A)(B)凝固因子欠乏血漿+正常血漿患者血漿+正常血漿37℃2時間(A)(B)それぞれの凝固因子活性測定9残存活性化比率(%)(=(B)/(A)×100)50251.02.0B.U.(片対数グラフ)118

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第9章インヒビターって?出血エピソードの治療について①バイパス療法について…●インヒビターがあると…出血迂回路経由VIII/IX因子輸注ではダメ止血Ⅷ/Ⅸ因子輸注以外で凝固促進を図らないといけない。これをバイパス療法と呼んでいる。バイパス療法の適応○インヒビター力価が5ベセスダ以上○ハイレスポンダーの軽度出血※凝固因子製剤輸注では抗体価が増加し、中和出来なくなるため。注)インヒビター力価が5未満の重篤な出血は、中和療法が第一選択。119

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<バイパス療法で用いられる薬剤>①活性型プロトロンビン複合体製剤(aPCC)商品名:ファイバ/武田薬品社●使用法:50~100単位/kg・1~2回/日。輸注時間は20~50分とゆっくり静注。●早期に輸注すれば効果は高い。※症例・出血症状による。②遺伝子組み替え型活性化第Ⅶ因子製剤(rFVIIa)商品名:ノボセブンHIシリンジ/ノボ・ノルディスク社●出血局所・血小板膜上でトロンビンを大量産生⇒止血。●使用法:1回90~120μg/kg・1回/2~3時間毎(止血まで)。輸注時間は2~5分で静注。●早期輸注が重要。※出血後輸注までの時間が止血効果を左右する。③乾燥濃縮人血液凝固第Ⅹ因子加活性化第Ⅶ因子製剤商品名:バイクロット/日本血液製剤機構社●使用法:FVIIaが60~120μg/kgとなるように投与。投与間隔が他より長く複雑。要添付文書確認。●止血効果は高く、溶解も容易。9●①~③に共通する副作用は血栓症。※②は出血局所で作用するため、全身の凝固能への影響は少ない。●①および②に関しては反復使用にて効果減弱。※aPCCやrFVIIa単剤で止血が得られない場合…→双方の薬剤を組み合わせて投与する逐次投与療法*を行う。*sequentialcombinedbypassingtherapy;SCBT投与例※一時休薬にて効果回復。機序不明。●ヘムライブラ🄬🄬を使用中の場合、安易にバイパス製剤を併用せず、専門施設に判断を仰ぐこと。APCC:20~80IU/kg・8~12時間毎rFVIIa:90~270μg/kg・3~12時間毎120

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第9章インヒビターって?出血エピソードの治療について②中和療法について…●抗体が凝固因子と結合できない程の量を輸注する方法。凝固能のある凝固因子抗体と結合し、失活している凝固因子●中和療法の適応①lowtiter&lowresponderである。②lowtiter&highresponderで手術や重篤な出血を認め、確実に止血を図りたい。※hightiterでも体重が少なければ中和できる※highresponderでは、製剤輸注3~7日後の既往反応に注意。中和量の計算について…①循環血漿量から得られた式中和に要する凝固因子単位(U)=20×ベセスダ単位×体重(kg)②Kapserらの式中和に要する凝固因子単位(U)=(40+20×ベセスダ単位)×体重(kg)121

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注意点•インヒビター(=IgG)には血管外プールがあり、持続的にモニターを行い、適宜輸注量の調節が必要。•血友病Bでは計算式が当てはまらない可能性あり。※第Ⅸ因子の血管外プールが多いため。•後天性血友病などの場合も計算式が当てはまらない。※タイプ2インヒビターが多いため。•フォン・ヴィレブランド因子との結合を阻害するタイプの第Ⅷ因子インヒビターもあり。※この場合、第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体製剤が有効。9•第Ⅷ因子活性の異常高値(例:200%以上)が続いた場合、血栓症のリスクが高くなるかもしれない。※適切に凝固因子活性のモニタリングをすれば極めて安全性は高い。•血友病Bインヒビターの場合、第Ⅸ因子製剤の副作用によるアナフィラキシーなどのアレルギー反応、ネフローゼ症候群などの腎障害を起こしたという報告あり、要注意。122

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第9章インヒビターって?出血エピソードの治療について③止血モニタリング検査について…<中和療法の場合>○第Ⅷ(Ⅸ)因子活性○APTT<バイパス療法>※モニタリングは通常通りで比較的容易。○PT○APTT○第Ⅶ因子活性(rFⅦa製剤の場合)○凝固波形解析○トロンビン生成試験○トロンボエラストグラフィー(TEG/ROTEM)※現時点ではバイパス療法の最適なモニタリング検査はない。123

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インヒビター保有患者における治療法選択について…●lowtiter&lowresponder→「中和療法」*成人なら5ベセスダ以下(小児は10〜20ベセスダでも可能)●lowtiter&highresponder→通常の関節出血などは「バイパス療法」→手術や生命にかかわる出血の場合は「中和療法」●Hightiter→「バイパス療法」(必要であれば持続輸注も考慮)※インヒビターの中和が難しいため。9インヒビター保有患者における治療法選択のフローチャートを次ページに掲載○中和療法を用いた場合、既往反応が3~7日後に出現。それまでに止血し得るような十分な治療を行う。○既往反応後にて上昇したインヒビター値は、元の値に戻るまで1年以上かかる。124

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第9章インヒビターって?出血エピソードの治療について④Lowresponderインヒビター力価<5BU軽度の出血Highresponderインヒビター力価≧5BUインヒビター力価<5BU重篤な出血外科手術インヒビター力価≧5BU125※インヒビター力価が不明な場合、ハイタイター・ハイレスポンダーとして対応。

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第一選択第二選択中和療法バイパス療法バイパス療法中和療法第一選択バイパス療法第二選択9中和療法バイパス療法バイパス療法中和療法(血友病診療の実際より引用)126

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第9章インヒビターって?インヒビターを消失させる治療について①免疫寛容導入療法について…•1977年にBrackmannらが初めて有効性を報告。•各国独自のプロトコールで行われ、寛解率は50~80%。•インヒビター発生後早期に開始、開始時のインヒビター値が低い、などが寛解率の高い条件。代表的なプロトコール①vanCreveldプロトコール(低用量)•25〜50単位/kgを隔日輸注し、生体内回収率が30%を超えるたびに減量または間隔をあける。•週2回または週3回の出血予防療法で、コントロール可能になるまで継続。‣高用量に比しコストがかからず、成人にも行いやすい。②Bonnプロトコール(高用量)•150単位/kgを1日2回連日輸注。※出血高リスク患者では、活性型プロトロンビン複合体製剤50単位/kgを1日2回追加。•インヒビターが1BU/mlに低下するまで継続。‣患者および家族の負担が大きく、極めて高コスト。③Malmoプロトコール(高用量)•100〜200単位/kgを連日輸注。•プロテインA吸着カラムを用いてプラズマフェレーシス。•γ-グロブリン製剤and/or免疫抑制剤併用。‣日本では吸着カラムが使用できない。‣小児では免疫抑制剤は使用しない。:127

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国際前方視的無作為化免疫寛容導入療法試験•低用量法群(第Ⅷ因子製剤50単位/kg×週3回)と高用量法群(第Ⅷ因子製剤200単位/kg/毎日1回)のインヒビターの消失率を比較した試験。•2002年~2009年の間に17か国134例が登録。•登録条件・7歳以下の重症血友病A患者・登録時インヒビター値10BU/ml未満・インヒビター最高値が5~200BU/ml・インヒビター発症から24か月未満・免疫抑制療法を実施した場合は除外•寛解率70%。•両群間で寛解率の有意差なし。•出血頻度は低用量群で有意に多かった。•フォン・ヴィレブランド因子含有の有無での有意差なし。•出血・感染エピソードは、寛解成功率に影響しない。9128

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第9章インヒビターって?インヒビターを消失させる治療について②免疫抑制療法について…•ステロイドやイムラン、エンドキサンなどの免疫抑制剤を用い、インヒビター消失を試みる治療法。•有効率が低く、単独では行われない。血漿免疫吸着療法について…•プロテインAの吸着剤を用い、患者血漿中に存在するインヒビターを除去する方法。•インヒビターは主にIgGなので血管外プールがあり、完全除去は出来ないため、一時的な方法。•単独で行うことはほとんどない。さらに日本では行うことはできない。※海外では高用量免疫寛容療法と組み合わせて行うことが多い。•日本で行う場合には、血漿交換になる。129

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抗CD20抗体について…•後天性血友病Aのインヒビター除去治療として抗CD20抗体(リツキサン®:一般名リツキシマブ)の有用性が報告が報告されている。•免疫寛容導入療法不成功であった先天性血友病Aインヒビター症例でも、インヒビター消失の報告あり。•先天性・後天性にかかわらず、寛解後再発症例を認め、再発時期は約1年前後が多い。※免疫寛容導入療法前のインヒビター除去目的として利用できると考えられているが、現在保険適応がなく、今後より有効な用量や期間の検討の必要がある。9130

第10章 整形外科的問題と治療は?

第10章 整形外科的問題と治療は?

第10章整形外科的問題と治療は?血友病性関節症(肩)について肩関節の症状について…•特徴は下記に示す通り○初回肩関節内出血は10歳代で、小児では少ない○出血のきっかけは外傷が多い○利き手側に起こりやすい○著しい関節変形を来たすことは多くない○可動域制限としては上肢の挙上制限がある○関節変形が著しくてもある程度可動域がある場合、強い痛みを訴えることは少ない※1他関節症とは異なる強い痛みを訴える場合があり、強力な鎮痛剤が必要となる場合もある。※2肘を抱える体勢から動かすことを嫌い、肩関節の可動域は狭く、動かし方も滑らかではないため、より肩関節に負担がかかり、痛みは徐々に強くなる。肩関節の関節症について…•関節症は患者の約20%に見られる。※出血予防療法により有病率は低下傾向。•関節変化としては…○関節面の不整○骨内の嚢胞○関節周囲の骨棘形成○臼蓋窩の関節面の延長○上腕骨骨頭との関節裂隙狭小化○関節症が進行すると骨頭が変形・消失することもある131

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肩関節症の治療について…(理学療法)•関節変形の治療より、関節可動域の維持が重要。•肩は関節のみでなく、肩甲骨の動きも重要。※1肩の動きの悪い方は、肩甲骨の動きも悪いことが多い。※2肩関節の変形が著しく、理学療法で関節可動域の改善が期待できない場合でも、肩甲骨の動きを改善する目的で理学療法を行えば、多少の動きの改善が得られる可能性がある。•肩関節の可動域維持は、日頃から関節を動かし、現状維持に努めることが第一。※方法としては、背伸びをするときのように手を組んで空に突き上げる運動を一日に一回でもしておくことが大切。ベッドで寝転がっていても同様のポーズを取ることで効果が得られる。(手術療法)•関節の引っ掛かりとるための骨棘除去術などがある。•肩の人工関節もあるがあまり選択されていない。※関節の状態によっては治療効果が期待できる方法ではある。10百聞は一見にしかず。次ページで画像を確認!132

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第10章整形外科的問題と治療は?血友病性関節症(肩)の画像骨嚢包関節裂隙の消失臼蓋窩の延長133

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骨頭の縮小化10関節面の不整134

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第10章整形外科的問題と治療は?血友病性関節症(肘)について肘関節の症状について…•特徴は下記に示す通り○幼少期から肘関節周囲や関節内に出血を起こす○多くの患者はこの関節に変形を来たしている○症状としては肘の屈曲・進展、手の回外が難しくなる※肘を曲げるのに親指が肩に向かうように肘を曲げるようになる。○外反変形(=前腕から手が強く外側に向く)を起こす※この変形が起こると、遅発性尺骨神経麻痺を来たし、小指と薬指のしびれが出現することがある。肘関節の関節症について…•関節の変化としては…○関節裂檄の狭小化○骨嚢包形成、○骨棘形成他関節症にもよく見られる変化(下記は特徴的な変化)○尺骨の変化で肘頭が鳥のくちばし様に伸びる○橈骨の変化で橈骨頭がつぶれ、前方脱臼を来たす○上腕骨の変化で肘頭窩が大きくなり、上腕骨が融解→脆弱になり骨折の危険が出てくる場合もある関節症の進展、関節内出血の持続による骨吸収が持続すると、関節が緩くなり、動きが良くなることがあるが、関節症自体は悪化しているので注意。135

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肘関節症の治療について…(理学療法)•改善というよりは現状維持に努めることになる。※成人で変形が完成してしまっている場合、肘の可動域を理学療法で改善させるのは困難。•積極的な理学療法というより軽い肘の運動を心掛ける。(手術療法)•出血回数の減少を図る滑膜切除術などがある。•肘の関節変形による可動域制限に対しては、骨切り形成術や人工関節による関節形成術が行われる。•尺骨神経麻痺が大きな問題であり、神経障害による痺れがとれない場合には手術が必要となる。注)放置すると握力が落ちてくることがある。10ページの関係で、正常構造は載せてないよ。136

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第10章整形外科的問題と治療は?血友病性関節症(肘)の画像肘頭の先が伸びてとがっている137

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橈骨頭が上にずれている。10緩くなった肘関節138

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第10章整形外科的問題と治療は?血友病性関節症(股)について股関節の症状について…•特徴は下記に示す通り○他の下肢関節(膝や足関節)に比し、出血が少ない○上記同様に、関節変形を来たしている人も少ない○股関節内出血は年長者に多い傾向あり○筋肉内出血と関節内出血の区別が難しい○重症の関節内出血一回のみで関節破壊が起こる場合もあり、注意を要する必要がある○股関節の著しい変形は左右の脚の長さに差が出ることが多く、歩く姿が悪くなり腰痛を伴う場合もある股関節の関節症について…•関節の変化としては…○関節裂隙の狭小化○骨嚢胞形成○骨棘形成他関節症にもよく見られる変化(下記は特徴的な変化)○骨塩量の低下による骨頭の圧壊○大腿骨の外反角が大きくなる※骨頭から骨幹部まで真っ直ぐな状態になってしまっている状態。※小児期に股関節に荷重がかからなかったことや、脚を使えなかったことが原因。同側の膝・足関節内出血による痛みで歩行困難な時期があった場合に見られる。○股関節の骨が大腿骨骨頭を覆うように増大→股関節の可働域が狭まり、日常生活が難しくなる139

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股関節症の治療について…[理学療法]•股関節が伸びない・開かないという状態となるので、この方向の動きを確保することが重要。•股を広げ、後ろに反るような動きを意識的に行う。•大腿骨の圧壊などで脚の長さに違いが出るため、足の長さをあわせる補装具の使用も必要。※腰痛の原因となるため[手術療法]•人工関節置換術が一般的。•人工関節の耐久年数の問題から、青年~壮年期の変形性股関節症では、股関節周囲の骨切り術や関節固定術が選択されることも多い。•股関節固定術は選択しにくい。※多くの関節に変形を持つ血友病患者には、他の関節に負担が増えることになるので不向き10外反角が大きくなるって、どんな状態だろう!?140

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第10章整形外科的問題と治療は?血友病性関節症(股)の画像外反股関節裂隙の消失骨頭を骨棘が全周性に覆っている141

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骨のきめが粗く、骨量が少ない状態10骨嚢胞が多発し、骨頭が圧壊している142

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第10章整形外科的問題と治療は?血友病性関節症(膝)について膝関節の症状について…•特徴は下記に示すとおり〇重症血友病患者(成人)で最も問題となる関節○関節内出血を繰り返し、最終的に歩行困難となる○初回出血は歩行し始めた幼少期に多い○膝は骨が近く、関節腫脹や滑膜増生がわかりやすい※出血を繰り返している膝は膝蓋骨の上が腫脹し、多くの場合は関節内に出た血液が溜まっている。※膝蓋骨の下がブヨブヨとした膨らみがあれば、滑膜が増生しており、易出血性。慢性滑膜炎と呼ぶ。○変形が軽い場合でも膝関節の動きが悪いことがある※原因としては、安静にし過ぎたために、周囲の筋肉や腱などが硬くなり動かなくなっている。○変形がない場合、理学療法により改善が見込める○変形がひどい場合には外科的な処置が必要膝関節の関節症について…•関節の変化としては…○関節裂隙の狭小化○骨嚢包形成○骨棘形成他関節症にもよく見られる変化143(下記は特徴的な変化)○最も特徴的な関節変形は山型*に変形する*脛骨の中央部から内・外側に向かって関節面が下がっていく変形。※変形性関節症や関節リウマチの膝の変形では見られない変形。○成人男性の膝として細く小さい場合がある○膝蓋骨の脱臼傾向が見られる

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膝関節症の治療について…[理学療法]•歩くためには、膝が伸びることが重要。→出血が続いている場合でも伸ばすことを意識すると、関節の変形が起こっても歩行能力の維持に繋がる。•変形がなくても動きが悪い場合は、理学療法を行うことで改善する可能性がある。[手術療法]•出血が続く場合には滑膜切除術を行う。関節変形を遅らせる効果がある(詳細はP135参照)。•偏った体重負荷を分散させ痛みを軽減する目的で、骨切りを行いアライメントを矯正する方法もある。•変形や疼痛が著しい場合は、人工関節が適応となる。※人工関節の耐久性の問題があり、青年期に行うと再置換術を受ける可能性が高くなる。10[関節内注入療法]•変形が軽度から中等度で、出血による疼痛でない場合には、関節内にヒアルロン酸を注入する方法もある。※この方法は1~2週ごとに外来で行う治療方法で、適切な止血管理が行える状況であれば簡便な治療方法。※もちろん凝固因子の補充は必要。関節の状態をしっかり見極め、リハビリや手術のプランを立てよう!144

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第10章整形外科的問題と治療は?血友病性関節症(膝)の画像山形変形膝蓋骨が大腿骨からはみ出している145

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巨大嚢胞10小さいのう胞と関節破壊146

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第10章整形外科的問題と治療は?血友病性関節症(足・趾関節)について足・趾関節の症状について…•特徴は下記に示す通り○膝関節と同様に出血・変形が起こりやすい関節○関節の動きは特に足を背屈しにくくなり、歩行時に踵を浮かすような歩き方になる○つかまり立ちの時期にすでに出血をする患者もいる○出血予防療法を行っている小児患者でもよく見られる○くるぶし周囲など関節腫脹が外観から判りやすい○レントゲンで著明な変形が見られても、痛みや日常生活への悪影響を訴えることが少ない※膝関節変形はとは大きく違うところです。○足趾の関節内出血・血友病性の変形はほとんどない※関節外出血で血腫を認めることがあります。特に小児期では足趾周囲は起きやすい場所なので注意が必要。足・趾関節の関節症について…•関節の変化としては…○主に距骨に変形が起こる(下記は特徴的な変化)○脛骨の前面に骨棘が伸び、距骨の凸が潰れて、最終的に関節が平坦になる○くるぶしとその下に距骨から骨棘が形成される※関節の動きがなくなり、自然に関節が固定され安定するため、歩行時など足関節の痛みが少なくなると考えられる。147

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足関節症の治療について…[理学療法]•足関節の背屈がしにくくなるので、この方向の動きを重点的に行うことが重要。•スニーカーなどの靴底が衝撃吸収素材であるものを選ぶと痛みが少なくなる。•足関節の背屈が出来ない場合は、踵の下に少し厚めの敷き革をいれると歩きやすくなる。[手術療法]•血友病性関節症が起こりやすい関節であり、下記に示すように様々な手術方法が行われている。○増殖した滑膜を取り除く滑膜切除術○骨切り術(関節の変形を矯正する目的)○骨棘切除術(関節の変形を矯正する目的)○人工関節置換術○関節固定術10•しかし、症状の訴えが少ないため、手術を希望したり、手術適応となることは少ない。出血予防療法をしていても出血してしまう部位!どう変形して見えるのか、よく見ておこう。148

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第10章整形外科的問題と治療は?血友病性関節症(足・趾関節)の画像距骨の扁平化関節裂隙の消失149

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骨棘関節裂隙の消失10150

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第10章整形外科的問題と治療は?滑膜炎について発生について…•関節内出血をきっかけに滑膜炎が起こる。•炎症(滑膜炎)は、滑膜増生・血管新生を起こし、易出血状態へと変化するためにさらに出血という悪循環が形成される。•繰り返し関節内に出血する関節をターゲットジョイント(標的関節)と呼ぶ。•出血が原因で関節の変形が進行することは間違いないが、どのように進行するかは不明なところが多い。※組織学的上、滑膜内および滑膜下領域におけるヘモジデリン沈着がみられ、そこにびまん性にリンパ球浸潤を伴っており、それらが様々な化学物質を放出し、関節破壊が進行すると考えられている。出血滑膜炎炎症細胞浸潤滑膜肥厚絨毛形成血管増生関節破壊151

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治療について…•以下の2点がまず大事。○関節内出血を繰り返さない○ターゲットジョイントを作らないことがまず大事。•凝固因子の補充やRICE(P80参照)を行うこと。•繰り返し出血する場合、関節穿刺で血液を抜いたり、関節を洗浄するなどの処置を外来で行う。•滑膜増生が著しく、出血を繰り返している関節の場合、増生した滑膜を取り除く滑膜切除術が適応となる。•滑膜炎治療とは直接関係ないが、変形した関節の痛みが続く場合、ヒアルロン酸の関節内注入を行っている。10滑膜関節包関節液軟骨152

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第10章整形外科的問題と治療は?血友病性偽腫瘍について偽腫瘍について…•繰り返す筋肉内出血を適切に治療しないと、被膜で覆われた血腫ができることがある。•この血腫は、出血時に積極的に出血予防療法などを行わない中等症~軽症の患者に見られることが多い。•症状のない血腫を嚢腫と呼んでいる。•骨や神経・血管を侵食して症状が出現した場合や、感染を合併した場合、偽腫瘍(狭義)と呼んでいる。☆小児の偽腫瘍の特徴〇最初の出血は原因がないことが一般的。○起こりやすい場所は手足などのからだの末梢。〇距骨・踵骨・中足骨といった足の骨で起こりやすい。〇止血治療を十分に行えば、完全に治癒できることが多く、手術による切除が必要になることはほとんどない。☆成人の偽腫瘍の特徴〇成人の血腫が起こりやすい場所は腰~骨盤、膝周囲。〇外傷後の出血から起こり、ゆっくりと巨大化し、周囲の骨を破壊したり、血管・神経を巻き込み神経障害や循環障害を起こしたりする。〇多くは止血治療などの治療では効果が乏しいため、外科的に切除することが多い。153

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治療について…•小児・成人ともに、止血治療が第一選択の治療方法。•止血治療で治癒が不可能な場合、外科的治療を行う。•完全治癒には被膜ごと全て切除することが必要だが、大きいものや血管・神経を巻き込んでいる場合、偽腫瘍の内容物を出来るだけ除去し、出血が起きないよう、除去後に出来た空洞に人工骨やフィブリンのりなどを入れて、偽腫瘍の進行を抑えるよう手術を行う。•骨への影響が大きい場合や感染を起こしている場合、偽腫瘍のある部位によっては、救命のために患肢の切断などを余儀なくされることもある。10154

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第10章整形外科的問題と治療は?滑膜切除術について滑膜除去の方法について…•滑膜除去の方法は、下記に示すように様々ある。☆滑膜切除術(狭義):手術によって滑膜を取る方法〇関節鏡視下滑膜切除術〇観血的滑膜切除術☆滑膜浄化術:薬品を入れて滑膜を取る方法〇化学的滑膜浄化術〇放射性滑膜浄化術関節鏡視下滑膜切除術について…•関節の周囲5~10mmの小さな傷を3~4箇所作り、そこから関節内に筒状の手術器具を挿入し、これをガイドとしてカメラを挿入して関節内部を観察し、さらに別に設けた傷から滑膜を取り除く為の道具を入れて関節の中の滑膜を取り除く方法。•傷が少しで済み、手術侵襲度が低い手術法。•術後に関節が動き難くなる可能性も低い。•膝関節を中心に、足や肘関節でも行われている。155

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観血的滑膜切除術について…•関節を大きく切り開いて滑膜を切除する方法。•直接滑膜を見るので切除しやすい方法だが、傷が大きく出血も多くなりやすい。•手術後に関節の動きが悪くなることもあり、一般には行われない。化学的滑膜切除術について…•関節内に化学物質を注入する方法で、薬剤費が廉価で、南米を中心に海外で外来治療として行われている。•薬品が国内では認可がなく、注入後の疼痛が強く、治療効果が弱く、関節や軟骨への影響も危惧される。110放射性滑膜切除術について…•関節内に放射性同位元素を一回注入する方法で、薬剤費は比較的高価。欧州を中心に行われており、外来治療として行なっている施設もある。•日本では、放射性同位元素の取り扱いが厳しく、薬剤として認可されていないため、この方法は行えない。•放射線の子供の染色体に与える影響が危惧されるが、影響がないとの報告が出ている。156

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第10章整形外科的問題と治療は?人工関節置換術について概略について…•人工関節置換術とは、骨・軟骨が変形したために痛みが起こっている関節に対して、人工物で置き換えて痛みを取り除き、関節の機能を温存する手術。※股関節、膝関節でよく行われる。•使用される多くの人工関節の組成は…チタン合金(金属)超高分子ポリエチレン(プラスティック)•人工関節は既製品であり、決まったサイズしかない。→極端に小さいor細い骨では手術が困難。→人工関節を入れるための骨が足りない場合も困難。適応・効果・禁忌について…•適応○著しく痛んだ関節必須条件○関節に出血していなくても関節痛が強い○関節内出血を繰り返す○リハビリに対する意欲がある•効果○痛みがとれる○関節内出血が減る○関節が動く157•禁忌○全身状態が著しく悪い○人工関節を入れる骨がない○適当な大きさの人工関節がない

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注意すべき合併症について…☆細菌感染(約4%、一般の数倍の頻度)•人工関節への感染は、手術直後だけでなく、術後数年経って起こる場合もある。•感染に対する治療は、抗生剤の全身投与と局所洗浄。※多くの場合人工関節を取り除かないとおさまらない。•関節を取り除いたあと、再度人工関節を入れ替え可能。☆人工関節の緩みと再置換(人工関節置換術後10~15年)•人工関節を長期経過すると、人工物と骨との間に緩み→痛みが生じ、入れ替え手術が必要になる。※必ず一定期間経過すると起こってしまう。リハビリについて…10•関節の動きが改善するかどうかはリハビリ次第といえる。•関節を動かすことや動かしてもらうことに慣れておらず、精神的にも怖いため、リハビリを受けるという意気込みは、手術を行う前の大事な適応のひとつ。可動域の改善≒リハビリの頑張り158

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第10章整形外科的問題と治療は?人工関節置換術前後の画像人工関節置換術前(左膝)159

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人工関節置換術後(左膝)10160

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第10章整形外科的問題と治療は?関節固定術について概略について…•関節固定術は関節の動きを犠牲にするかわりに痛みをとることができる手術。•人工関節と違って感染を起こす可能性は低く、感染しても機能の著しい低下を来たすことは一般にない。•一旦金属で固定すれば、感染を起こさない限り骨融合が起きた後も金属を取り除く必要はない。人工関節(右膝)感染により人工関節抜去および固定術後(右膝)161

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適応・注意点について…•第一選択とはならない治療方法。•適応されるのは下記の場合のみ。(適応)①人工関節置換術後などに感染を起こしてしまい、再度人工関節を入れにくい場合。②足関節の変形が一側のみで、なおかつ関節が変形し、足関節が動かなくなってきたのに痛みがとれない場合。※距骨と踵骨の間で痛みが生じている。注意点○一度関節を固定してしまうと、その後人工関節に入れ替えることはほぼ不可能。10○関節症を持つ多くの血友病患者は、複数の関節障害を持っているため、一つの関節を固定するとその両隣の関節に負担がかかり、その部位の関節症の進行を助長することが危惧される。○足関節では、関節症の進行とともに関節の動きが制限され、自然に関節固定がされてくる可能性があるので、あえて手術で関節を固定しなくてもよい場合がある。162

第11章 高齢化への対応は?

第11章 高齢化への対応は?

第11章高齢化への対応は?高齢血友病患者の抱える問題点①心血管系疾患(Coronaryarterydisease;CAD)…•40代以降の患者では高血圧症の合併が多く、高齢患者では動脈硬化の進展例も多い。•関節障害による運動不足から肥満になりやすい。•高血圧、耐糖能障害、脂質異常症、喫煙、慢性腎臓病(Chronickidneydisease;CKD)などの危険因子が背景にあれば、その有病率は非血友病患者と変わらない。•抗血小板薬ではバイアスピリン(80~100mg/日)を推奨する場合が多い。•ワルファリンは推奨されない。止むを得ず用いる場合、PT-INR<2と低めに設定する。<ポイント>○循環器内科医との密接な連携が重要。○定期的な生活習慣病の評価と栄養指導を行う。○禁煙指導。○PWV/ABI(脈波伝播速度/足首上腕血圧比)検査を年1回程度評価し、動脈硬化について認識させる。→動脈硬化進展例では、CAD発症や頭蓋内出血、解離性病変に注意。高血圧脂質異常糖尿病喫煙163肥満慢性腎臓病

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心血管系疾患のマネジメント…急性冠症候群ST上昇心筋梗塞→経皮的冠動脈形成術非ST上昇心筋梗塞急性期の管理(基本的に健常者と同様に治療)・アスピリン+クロピドグレル・未分画ヘパリンか低分子ヘパリンを短期投与・橈骨動脈アプローチ・ベアメタルステントの使用・止血治療;PCI前に第Ⅷ因子活性値60~80%となるようボーラス輸注(穿刺部位の止血のため)。その後は、12-24時間毎に3-7日間は輸注を継続。発症後1ヶ月間・アスピリン(≦100mg/日)+クロピドグレル(75mg/日)を4-6週間・出血傾向が強い場合、出血予防療法血友病A:週3回25-30単位/kg血友病B:週2回30-40単位/kg)を4-6週間併用。※軽症患者では不要な場合もある。11安定狭心症長期管理・低用量アスピリン(≦100mg/日)164

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第11章高齢化への対応は?高齢血友病患者の抱える問題点②心房細動(Atrialfibrillation;Af)…•出血予防療法を行っている場合には、塞栓症を起こすリスクは非血友病者と同等考えて良い。•CHADS2スコアを用いたリスク評価が有用。•重症で出血予防療法がない場合、通常治療は不要。•CHADS2スコア≧2なら低用量アスピリンを推奨。•ハイリスクの軽症患者で塞栓症イベントがある場合、ワルファリンを使用する(PT-INR<2と低めに設定)ことも。•出血を合併するようであれば抗血栓療法は中止する。<ポイント>○止血治療の種類(出血予防療法かオンデマンドか)を考慮して抗血栓療法の適応を選択する。○出血症状や身体的活動性に応じて、抗血栓療法を継続するかを判断する。<CHADS2スコア>CHADS2危険因子Congestiveheartfailure(心不全)Hypertension(高血圧)Age(年齢75歳以上)DiabetesMellitus(糖尿病)Stroke/TIA(脳卒中/一過性脳虚血発作)点11112165※6点満点で、スコア3以上の脳卒中発症率は≧5%/年と高い。

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心房細動のマネージメント…<重症度(凝固因子活性値)による抗血栓療法の選択>軽症軽症中等症重症>30%5-30%1-5%<1%ありCHADS2CHADS2出血予防療法≧2<2≧20なしワルファリン低用量アスピリン治療なしR.E.G.Schutgensetal.Anticoagulationtherapyinhaemophilia.Hämostaseologie2013より引用11166166

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第11章高齢化への対応は?高齢血友病患者の抱える問題点③脳血管系疾患(頭蓋内出血)…•生涯における頭蓋内出血発症率は約20%で、重症に多い傾向があるが、中等症でも注意が必要。•頭蓋内出血による後遺症で長期療養が必要となると…→血友病診療に不慣れなリハビリ施設へ転院する際など、受け入れ先の問題が生じる。•本邦では30代以降の成人患者の約40%にHIV感染、約90%にHCV感染を認めるため、頭蓋内出血を起こすリスクは高い。•40代以降の患者では高血圧症の合併も多いことから、頭蓋内出血のリスクをさらに上昇する可能性がある。•頭蓋内出血の既往がある患者では、発症を機に再発予防を期待して、出血予防療法を導入すると良い。<頭蓋内出血のリスク因子>重症患者頭蓋内出血既往インヒビターの保有HIV感染HCV感染167<ポイント>○リスク因子を多く持つ患者では、頭蓋内出血予防効果を期待して、出血予防療法の導入を勧める。○高血圧症の治療をきちんと行う。○アルコール摂取が多い患者、関節症進展による転倒リスクが高い患者では、外傷性頭蓋内出血を起こす可能性があることを念頭に入れておく。

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脳血管系疾患(脳梗塞)…•血友病における脳梗塞の報告はまれではあるが、CADと同様にリスク因子を多く抱える患者では、その発症に注意が必要。•出血予防療法の普及により発症率が増えるかどうかに関してはデータがなく、議論の残るところ。•脳塞栓症に関しては、Afにおける抗血栓療法を参照。急激な頭痛、嘔気、めまいに注意!!11168

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第11章高齢化への対応は?高齢血友病患者の抱える問題点④悪性新生物(癌)…•本邦における成人血友病患者ではHCV感染率が高く、肝臓癌の発症率が高い。•泌尿器系腫瘍、喫煙が関連する呼吸器系腫瘍なども注意する。•外科的切除が必要な場合には各診療科と連携し、周術期の止血管理を行う。•HIVとHCVの重複感染例ではC型肝炎の進展が早い。•HIV感染者では悪性リンパ腫やカポジ肉腫が多い。また非エイズ関連の癌発症率も高い。※悪性リンパ腫やカポジ肉腫はエイズ指標疾患とされている。•化学療法や放射線療法による骨髄抑制に伴う血小板減少、感染症の合併により出血頻度が増加するため、凝固因子補充と血小板輸血を適宜行う。<ポイント>○胃カメラ、大腸カメラによるスクリーニング検査を行う際には検査による出血予防のため、検査前に第Ⅷ因子活性値50~80%となるようボーラス輸注を行う。生検や観血的処置を行った際は、その後12~24時間毎に1~4日間輸注を継続。169

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腎・尿路系疾患…•血友病では糖尿病や高血圧の合併頻度が高く、慢性腎臓病(Chronickidneydisease;CKD)のステージが進行する可能性がある。•HIV感染者ではCKD合併率は有意に高い。•関節痛の緩和目的に鎮痛剤を常用する場合には注意。<ポイント>○尿管結石症や自然出血で血尿がある場合には、トラネキサム酸は禁忌であり、止血困難なら凝固因子の補充を行う。<慢性腎臓病のリスク因子>高血圧症HIV感染加齢人種インヒビター腎出血の既往11<血友病患者における透析療法>腹膜透析血液透析○腹膜出血のリスクや感染症が問題。○上肢の関節症を有する場合、透析液の交換や局部の消毒が困難。○ヘパリンの使用で出血傾向が問題。○ヘパリンを使用せず、透析終了後に、抜針時に凝固因子を補充する。170

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第11章高齢化への対応は?高齢血友病患者の抱える問題点⑤筋骨格系疾患…•関節症の進展が見られ、過度の安静による筋力低下や運動負荷の減少による骨粗鬆症の合併が問題。•血友病患者では大腿骨頸部の骨密度低下が多く、HIV感染があるとさらにその傾向は強くなるため、大腿骨頸部骨折に注意する。•膝関節症があるとつまずきやすく、転倒の可能性大。•転倒→出血・骨折→寝たきりの流れを予防するため、理学療法による筋力強化、平衡保持能力訓練が重要。•成人期でも出血予防療法を行うことで、ターゲットジョイントでの出血頻度を減少させ、関節障害進展の予防効果が期待できる。<高齢血友病患者の身体的特徴>複数の関節で関節症進展筋力・平衡保持能の低下骨密度の低下転倒、骨折のハイリスクリハビリテーション、出血予防療法によるサポートを!171<ポイント>○リハビリテーションを行う前には第Ⅷ因子活性値が20~40%となるよう予備的補充療法を行う。○骨密度測定による骨粗鬆症のスクリーニングを年1回程度行う。

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その他の問題…•自己注射の導入:高齢患者では老眼、肘関節症、針を刺すことへの過剰な不安感、物覚えの悪さなどから、その習得は難しく、多くの時間を費やす。•心理的な問題:HIVやHCV感染を抱える成人患者ではうつ病の合併も多い。抗HIV薬内服や出血予防療法のアドヒアランス低下につながる。•社会的な問題:就学困難による進学率、就職率の低下から未婚、経済基盤が脆弱である患者が多い。未就労、独居生活者に対してはソーシャルワーカーの支援のもと必要な社会資源を提供していくことが重要。<ポイント>○訪問看護や訪問診療を積極的に利用して、服薬や製剤輸注を支援する。○日常動作、や通院が困難な患者では、介護福祉士やホームヘルパーに介入してもらい、日常生活をサポートする。11172

第12章 遺伝子治療はどうなってる?

第12章 遺伝子治療はどうなってる?

第12章遺伝子治療はどうなってる?背景について背景について…血友病の原因は、第Ⅷ・第Ⅸ因子の遺伝子異常があり、凝固因子が作れない・量が少ない。(※第VIII、IX因子は肝細胞で産生)凝固因子の正常な遺伝子を細胞に導入。遺伝子治療※異常ある生体内対象遺伝子をすべて修復・正常化することを意味しない。※正常遺伝子を導入し、目的の因子を発現する狭義で用いられている。173

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•第VIII、第IX因子レベルが数%あれば、関節出血の頻度を減少させることが可能。→遺伝子治療でわずかでも凝固因子産生が可能になれば、外から凝固因子を補充する必要が少なくなる。•1990年代前半に始まった血友病遺伝子治療の研究は、血友病Bが先行し、臨床で使用されるところまできた。※血友病Bが先行した理由は?1)第VIII因子の遺伝子は非常に大きすぎて導入が困難2)第IX因子の方が第VIII因子に比べて安定•第VIII因子の遺伝子の中で、凝固に必要な部位のみを導入することにより、数か月以上恒常的に第Ⅷ因子を産生することに成功している。12正常遺伝子導入174

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第12章遺伝子治療はどうなってる?具体的な方法について導入する細胞…•第VIII・第IX因子が産生されている肝細胞が、導入する細胞の候補となる。•導入率が悪く、凝固因子の発現が少ない場合には、より大きな臓器である筋肉の筋芽細胞や、腹膜の脂肪細胞などが選択される。遺伝子導入の方法…•種類は、病原性をなくしたベクターやリポゾームなど。細胞に感染または取り込まれた後、ベクター内の遺伝子が、細胞の核内・細胞質にとどまる。そして、細胞の働きを利用して遺伝子発現して、凝固因子が作られていく仕組み。ベクター=運び屋・媒介するもの=正常の第Ⅷ、第Ⅸ因子の遺伝子を細胞へ運び、導入する役割を果たすものの総称。175

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体内へのベクターの投与方法…•肝細胞に導入する際には、肝細胞への指向性のあるベクターを選択し、経門脈的にまたは経静脈的に注入。•全身の筋肉に筋肉注射で打ちこむ方法もある。脂肪細胞へも同様の方法がとられることがある。•ベクターとして、遺伝子導入効率、発現性、安全性などを考慮すると、アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)ベクターが選択されることが多い。12JournalofThrombosisandHaemostasis,Volume:13,Issue:S1,Pages:S133-S142,Firstpublished:19June2015,DOI:(10.1111/jth.12926)より図を引用176

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第12章遺伝子治療はどうなってる?具体的な方法についてアデノ随伴ウイルスについて…•Adeno-associatedvirus。•パルボウイルス科ディペンドウイルス属。•1965年にアデノウイルス調製中の混入物として発見。Dr.BobAtchison(ピッツバーグ大学)Dr.WallaceRowe(アメリカ国立衛生研究所)•AAVウイルス粒子の複製はAdenovirus存在下のみ可。<AAVをベクターとして用いる利点>病原性がない。自己増殖しない。染色体へ挿入されにくい。長期にわたり遺伝子発現が可能。非細胞分裂細胞にも遺伝子導入が可能。様々な血清型で臓器指向性が異なる。<AAVをベクターとして用いる欠点>挿入可能な遺伝子サイズが5kbに限定。遺伝子導入効率が血中の中和抗体の有無に左右。細胞分裂で効果が減弱。177OhmoriT,Advancesingenetherapyforhemophilia:basis,currentstatus,andfutureperspectives.InternationalJournalofHematology(2020)111:31–41より引用

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遺伝子治療の現状について…•細胞治療に関する治験のうち、遺伝子治療が多くを占めるほど、盛んに実施。GeneTherapy/GeneModification45件,30%64件,42%43件,28%invivoexvivonon-GeneCellandGeneTherapyCatapultClinicalTrialsDatabase2019を基に作図•ウイルスベクターを用いた遺伝子治療が主。8件,7%6件,6%25件,24%30件,28%37件,35%AAVLentivirusRetrovirusothersnon-Virus12CellandGeneTherapyCatapultClinicalTrialsDatabase2019を基に作図•そう遠くない将来に臨床現場に登場。P171・172の治験一覧参照178

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第12章遺伝子治療はどうなってる?遺伝子治療の問題点について遺伝子治療の問題点…•正常凝固因子発現量の5~10倍発現させることは可能。•発現した凝固因子が正常の活性を有すことも証明済。しかし…未解決の問題点〇ベクターに対する抗体を保有する場合肝細胞への感染抑制され、遺伝子治療失敗の可能性。本邦での抗AAV8抗体保有率は30~40%。AAVは感冒の原因であり、年齢が上がるほど保有率up↑〇発現量の経時的な低下導入後から徐々に凝固因子発現量と活性が低下し、発現量を一定に、数カ月~数年以上維持することが困難。遺伝子治療時に用いたベクターは抗体出現にて使用不可となる問題も〇導入した細胞に対する免疫反応遺伝子導入した肝細胞や筋肉の細胞が、抗原性を有し、それを破壊しようとする免疫機構が働いてしまうことで、肝障害・筋障害が起こってしまう。→遺伝子導入後に副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤の併用が試みられている。〇インヒビター出現遺伝子導入を行った際のdangersignalや発現凝固因子に対する免疫応答により、インヒビター発生の危険性。179

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~iPS細胞で完治は望めないのか?~何かと話題の「iPS細胞」だが、血友病の治療への応用は困難。というのも、iPS細胞は「自己の細胞を若返らせる」ことで作られるため、自己細胞ではいずれの細胞であっても凝固因子の遺伝子異常があり、正常な凝固因子を産生しうる細胞にはなりません。このことから、結局正常な遺伝子導入を行う「遺伝子治療」の技術に頼らざるを得ません。iPS細胞神経細胞心筋細胞肝細胞膵細胞12遺伝子異常のあるiPS細胞を分化させて、移植しても意味がない。180

第13章 血友病の心理社会的な問題は?

第13章 血友病の心理社会的な問題は?

第13章血友病の心理・社会的な問題は?心理的な問題について心理的な問題について…•医療は医療提供者と患者・家族との信頼関係が重要医療提供者と患者・家族との信頼。信頼関係が重要!!•信頼関係の構築から問題解決へのプロセスとして…傾聴共感的理解疾病による不適応状態を把握一緒に解決策を探す181

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血友病で起こりやすい心の問題①慢性疾患致死的出血をきたす可能性。出血リスク回避のための行動制限/抑制。血友病性関節症による慢性疼痛。→劣等感の抱きやすさ/自尊心・自己肯定感の低さ。②遺伝性疾患<血友病患者/症候性保因者/確定保因者>恋愛と結婚、子供をもうけることへの葛藤。→未婚を選択する方も少なからず存在。→孤独・孤立からくる寂しさ・虚しさ<推定保因者>血友病遺伝子の保有を払拭できない漠然とした不安自分は健常であって欲しいと願うことへの罪悪感③患者を取り巻く家庭内の人間関係過保護になりがちな母子関係血友病児のケアの在り方をめぐる夫婦仲きょうだい児の抱えるストレス妻子との関係(血友病を伝えていない場合)④社会との関係学校、職場、友人への対応。職業選択の制限。(インヒビターや血友病性関節症を有す場合は特に)→経済状況にも配慮が必要。13⑤他の合併症やHIV感染症の問題「血友病」=「エイズ」と言われた時代がある。→患者社会にとって大きな心の傷に。(他者への感染リスクがゼロとなった現在も)182

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第13章血友病の心理社会的な問題は?患者会の存在について患者会の存在について…•患者会で行っていること○患者・家族間相互の親睦を図る催し※サマーキャンプやクリスマス会など○専門医の講演などの勉強会○行政団体に陳情(必要時)患者会同じ立場で安心して話し合いができる場の提供、経験豊富な患者仲間の交流、困ったときの支援などを行っている。183

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•1986年まで全国会は存在したが…→エイズパニックなどの影響を受け、事実上崩壊。→2009年に各地区の患者会の緩い連合体である「全国ヘモフィリアネットワーク」が設立。•各都道府県や医療機関の患者会への入会などについては、インターネットサイトより検索し、担当者に連絡をとってみることが大切。※患者会側は医療機関からしか患者の存在を知ることができないため。•世界最大の患者会であるWorldHaemophiliaSociety(WFH)は、世界中の医療専門家によるAdvisorycommitteeを設けており、医学専門誌の発行や学会なども主催している。13184

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第13章血友病の心理社会的な問題は?血友病患者が受けられる医療制度について①特定疾病療養(俗に‘マルチョウ’)(内容)•対象疾病(a)血友病(b)透析を行っている慢性腎不全(c)血液凝固因子製剤の輸注に起因するHIV感染•この制度を受けて健康保険と合わせることにより、上記疾病に関する医療費の自己負担上限が月額1万円まで軽減される。(申請方法)•国民健康保険加入者であれば市町村役場、健康保険加入者であれば健康保険組合より申請書類をもらう。•医師は申請書類に必要事項を記入。•書類を保険証の事務を行う部署に提出。•原則的に保険の変更がなければ、毎年自動的に更新。185

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小児慢性特定疾患治療研究事業(内容)•主に先天性疾患が対象。これに血友病が含まれる。•患者年齢が満18才までに申請が必要。利用可能年齢は満20歳未満まで。•この制度と前述の特定疾病療養を受けて、健康保険と併せると医療費の自己負担はない。•しかし、今後自己負担が発生する可能性があり、行政にしっかりと訴えかけていく必要がある。以前案として出たのは…(申請方法)低所得者:月額6,000円高所得者:月額22,000円※特定疾病療養を取得していれば10,000円•患児の保護者が居住地の保健所より書類を受け取る。また病院に申請書類がある場合も多い。•医師に必要事項を記載してもらう。•書類を保健所に提出。13•年度更新は、医療機関より各自治体へ申請する方法をとっていることが多い。186

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第13章血友病の心理社会的な問題は?血友病患者が受けられる医療制度について②先天性凝固因子障害治療研究事業(内容)•対象疾病(a)血友病A、Bを含む先天性凝固因子欠乏疾患(b)血液凝固因子製剤の輸注に起因するHIV感染症•この制度を利用することにより、他の制度と併せて医療費の自己負担はなくなり、無料とすることができる。•満20歳以上の患者が対象であり、小児は対象外。•申請時に指定した医療機関でしか原則使用できない。(申請方法)•県の担当係と連絡をとり、必要書類を郵送してもらう。•書類に必要事項を記入し、住民票(初回のみ)、医師の診断書、特定疾病療養のコピーとともに返送。•毎年更新。その際医師の診断書が必要。※HIV感染症を合併している場合には不要。※更新時期になると、各自治体より更新の案内が郵送されてくる。•指定外の医療機関を受診した場合、立て替え払い制度が利用できる。特定用紙に記入して、領収書と一緒に県の担当係へ郵送する。187

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医療制度の図解(成人の場合)1カ月に医療費が100万円かかった場合…100万国民健康保険などにより7割が補助される。30万特定疾病療養から補助。自己負担が1万円に。1毎年自動更新。毎年の手続きは必要なし。どこの医療機関を受診しても適応される。先天性凝固因子障害治療研究事業から補助。自己負担はなくなる。0円毎年更新手続きが必要。指定した医療機関でしか適応されない13血友病患者が利用できる福祉制度には、身体障害者手帳(人工関節置換術後など)や障害年金、特別児童扶養手当など様々ある。各種の内容や申請方法に関しては、医療ソーシャルワーカーに相談し、適切に制度を利用することが望ましい。188

謝辞

謝辞

謝辞この小冊子の発行に際し、様々な方のご協力をいただきました。感謝申し上げます。<参考文献およびウェブ>1)白幡聡編みんなに役立つ血友病の基礎と臨床改訂3版2)インヒビターのない血友病患者に対する止血治療ガイドライン2013年改訂版:血栓止血誌24(6):619~639、20133)インヒビター保有先天性血友病患者に対する止血治療ガイドライン2013年改訂版:血栓止血誌24(6):640~658、20134)血友病患者に対する止血治療ガイドライン2013年補遺版:血栓止血誌26(1):75~78、20155)血友病患者に対する止血治療ガイドライン2019年補遺版:血栓止血誌31(1):93~104、20206)救急領域における止血機能異常症の診療ガイド第2版7)HaroldRossRoberts:HaemophiliaandHaemostasis8)厚生労働省委託事業血液凝固異常症全国調査(令和5年度):財団法人エイズ予防財団9)ヘモフィリアねっと:http://hemophilia-japan.org10)クラブヘモフィリア:https://www.clubhaemophilia.jp11)ヘモフィリア・ヴィレッジ:https://www.hemophilia.jp12)ヘモフィリアステーション:https://www.hemophilia-st.jp13)ヘモフィリアライフ:https://www.hemophilia-life.jp14)ヘモフィリアToday:https://www.hemophiliatoday.jp15)ヘモフィリアナビゲーター:https://csl-info.com/hem_pt/16)ヘモフィリアガーデン:https://hemophilia-garden.jp※P41~P59の製剤写真および社名ロゴは、各社よりご提供いただきました。

奥付け

奥付け

なるほど!血友病まねーじめんと2014年3月第1版2014年5月第1版一部改訂2015年2月第2版2016年1月第3版2019年3月第4版2020年2月第5版2021年2月第6版2022年2月第7版2025年1月第8版厚生労働省エイズ対策研究事業「HIV感染症の医療体制の整備に関する研究班」「HIV感染者を含む血友病患者の高齢化に伴う新たな合併症に関する研究班」分担研究者広島県エイズ受託研究事業「中国・四国エイズブロック医療システム構築に関する調査研究」研究代表者藤井輝久(発行者)研究協力者:広島大学病院エイズ医療対策室山﨑尚也独立行政法人国立病院機構福山医療センター広島県東部地区エイズ治療センター・センター長齊藤誠司国立病院機構敦賀医療センターリハビリテーション科竹谷英之広島大学病院エイズ医療対策室〒734-8551広島市南区霞1-2-3Tel/Fax082-257-5351http://www.aids-chushi.or.jp非売品※無断複写・転載を禁じます。

裏表紙

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INDEX12345678910111213血友病って?血友病の診療体制は?血友病の診察と検査は?血友病の遺伝は?血友病治療薬って?止血治療の実際は?各出血エピソードへの対応は?製剤由来感染症治療の現在は?インヒビターって?整形外科的問題と治療は?高齢化への対応は?遺伝子治療はどうなってる?血友病の心理社会的な問題は?

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